1-5 感性を養うに、先ず身体感覚を亢める
新聞記者や刑事は、現場に何度も足を運ぶことで真相に迫ることができると言われています。
まず、現場で情報収集をするべく、勘をはたらかせて、場の空気を、細かに肌で感じ取ります。その上で、目撃した人の話を良く聞いたりすることで、「体験」となり、その「体験」を積み重ねることによって思考力が深まります。体験とは「体で感じ、考えること」と言って良いでしょう。そして、やがて直感が冴えるようになって、本質を見抜くことができるようになるのです。
今、団塊の世代の大量退職の時期を迎え、各職場で、その技術や能力の継承が取沙汰されています。
警察においては、「刑事的捜査能力」の、若者における、著しい衰退が問題になっているのです。
野口整体の操法は「背骨とお腹があるからできる」、と師は言われましたが、背骨やお腹は「生活している心」を語っています。
しかし、背骨を観察することでその人を識ることができるようになるには、やはり「感性」が亢まらなければなりません。背骨の様子は「知性」がどれほど高くても観えないのです。
私の言う「感性」とは、色彩感覚などで言われる「センスがいい」という程度の意味ではなく、このように、「体験」によって「心の眼が啓かれる」ことを意味しています。
このような「感性」は「身体感覚」と一つなのです。
そして、「身体感覚」は、体で感じる「体験」を重ねていくことで亢まっていきます。
「気」を集めての、「感じる力」は年と共に積み重ねることができ、「感性」を深めていくことができるのです。