QアンドA98
 「シンハラ語の話し方」、途中で飽きちゃいました。

「シンハラ語の話し方」のテキスト、30ページまで読んだのですが、段々と飽きてきて、読み進めるのが面倒になりました。言い回しの細かいところを覚えるのがきつくて、これ以上先に進めそうもない。どうすればいいでしょうか。


No-102 2007-*-*
30ページまでというと疑問代名詞のところまで進まれたのですね。「なに」「どこ」「いつ」の使い方まで進まれたのですから、一端そこでテキストを読み進めるのを休んで、30ページまでのシンハラ語の知識でシンハラ語を話してみませんか。近くにシンハラの方が居られたらぜひともチャレンジ。あなたが今、スリランカにおられるなら、「書を捨てよ、町へ出よう!」です。会話というのは、体系的な文法知識をテキストで覚えなければ話せないというものではありません。
 覚えただけの言葉を使うだけでも充分に会話は出来てしまうし、言葉があまりわからないというゾクゾクする不安感は、シンハラ語の勉強の原動力になります。

 「シンハラ語の話し方」は会話の実践に役立つように編集されています。テキストのどのページから読んでも構いません。毎日、少しづつ、ランダムにテキストのページを開けて、例文の一つだけでもいいですから声に出して読んでください。例文を覚えたら、早速シンハラの方にぶつけてみましょう。これは醍醐味ですよ。継続は力なり。一日一例文の練習を積み重ねてください。
 文法なんて面倒だ、という方はⅤ章の「日常会話文例」からシンハラ語学習を始めてもいいでしょう。これなら手っ取り早く、話したい事が話せるでしょう。その時に文法のことが気になったら、Ⅰ~Ⅳ章で文法の決まりをおさらいすればいいと思います。もっとも、シンハラ語の口語は日本語の口語文法と瓜二つですから、あまり文法のことは気にしないでいいと思うんです。
 気にしなくていいというのは、例えば、テキストのシンハラ文に添えられた和訳はシンハラ語の文そのままの逐語訳です。シンハラ口語文は日本語の文と同じ仕組みで出来ていますから逐語訳でほぼ完璧。いつもお話しているのですが、シンハラ語のニパータは日本語の助詞と同じ役割を文の中で果たします。日本語が「てにをは」で成り立つようにシンハラ語もシンハラ語のテニヲハ、つまり、ニパータで成り立っています。シンハラ語のニパータが覚えやすいようにして「シンハラ語の話し方」は書かれています。このことだけ、頭の片隅においてテキストを呼んでください。言語学に興味のある方は比較文法の視点で読むと、シンハラ語の面白さが倍増するはずです。

追記

「シンハラ語の話し方」にはプレーヤー用CDがあります。
 アマゾンで紹介されている「シンハラ語の話し方」への評2008年11月19日に「録音状態は最悪」と載っていました。でも、この「シンハラ語の話し方」のCDでシンハラ語が聞けないことはありません。

※追記の追記  この後、2011年5月6日のamazonへの投稿で「別売のCDの音声は明瞭で、全く問題ありません。聞きたい所がピンポイントで聞けるので使いやすいです。それに、吹き込んでいる方々が、のんびりしたおじさん、強力なおばさんなど、英会話教材などでは決してお耳にかかれない、あまりにも生活感のある方々ばかりで、何度聞いても笑ってしまうところもあり、「おお、スリランカだ!」と感動できます。」とあります。「かしゃぐら通信」のCDは個性がにじみ出ています。好き嫌いの選別が大きいかも。2015-Apr-08

CDのシンハラ語音声はスリランカのコロンボ市北部・キリバトゴダにある民家で2006年10月に採取しました。ナマの音声ですので聞きづらい部分があります。しかし、シンハラ語のもつ独特の雰囲気を耳で覚えるには最適の音声資料です。特に四つのタ音、四つのダ音の違い、二つのナ音の違いなど、シンハラ人にさえ発音が難しくなった類似音の差異をこのCDで確認できます。実はこのCDにシンハラ語を吹き込んだのは40代の方で、シンハラ語にある四つのタ音、四つのダ音をはっきりと言い分けることの出来る年齢層ではありません。でも、彼にはそれが出来る。なぜか。この方のお父さんが毎朝唱える読経を繰り返して聞いていたことから、彼は子供の頃から自然とシンハラ「あいうえお」の微細な音に注意深くなったそうです。
 台所の脇にパハナを置き、その灯火を前にして毎朝、経を暗唱する彼のお父さんの姿を、私も覚えています。CD-ROM「解説・シンハラ語の話し方」の最初のページで流れる「ナモータッセ、バガワトー・アラハトー・サンマー・サンブッダセッ」と経を唱えているのはそのお父さんの声です。遠出をするときにはお父さんにピリットの糸を巻いてもらい聖水を垂らして旅の無事を祈ってもらう慣わしです。

 「シンハラ語の話し方」のCDは、お聞きになりたい部分を繰り返して再生されることをお勧めします。iPodに入れて通勤途中に聞いていると言う方もおられます。CDの内容を総てパソコンやiPodなどにコピーすれば再生の手順も楽になり、通勤通学の途中でもお聞きになることが出来ます。

また、評には「シンハラ語の勉強にこの本しか選択の余地がない状態、ということで買いました」とありますが、シンハラ語の本は、そのアマゾンで調べてさえも14冊あります。いろいろと選択は可能です。
 「シンハラ語の話し方」は同種のシンハラ語学習本の中では異質です。他の学習本が旧来のシンハラ文語学習に重きを置いているのに対して「シンハラ語の話し方」はシンハラ口語を扱っています。
 シンハラ口語は文語とまったく異なり、パーリ語の影響が殆どありません。言い換えれば、インド・ヨーロッパ語族的ではないのです。屈折語であるとか、語形が性・数に一致するとか、そうしたルールからは遠いのがシンハラ口語です。「シンハラ語の勉強にこの本しか選択の余地はない」というご指摘は、余程にシンハラ語のことをご存知の方の言でしょうか、それにしても「シンハラ語の話し方」より平易なイラストいっぱいの教本などもあるのですから、「余地はない」などとは他の本に失礼かも。
 それでも、学習に丁度よい本を選ぶとしたら、と問われれば「…むむ」と、考えて、「かしゃぐら通信」としましてはやはり「シンハラ語の話し方」をお勧めさせていただきます。このテキストは使えます。広島の大学では「スリランカの言語と文化」という講座でテキストとして「シンハラ語の話し方」を使っていただいていました。

「シンハラ語の話し方」は発行から2年を過ぎて2008年12月に2版2刷目を刊行しました。プレーヤー用CDは2009年4月末で240点ほどを頒布しました。スリランカへ行かれる方がその直前にシンハラ語を学習されるという例が目立ちます。また、シンハラ人のお友だちがいらっしゃる方も、ご友人とシンハラ語で話したいという動機でシンハラ語を勉強されているようです。相手の方の言語で話すということは、特にシンハラ語のように”存亡の危機”が時折叫ばれる言語にあっては、相手の方を喜ばせることができるようです。スリランカでは日本語を学ぶ方が多いのですから、日本でもシンハラ語を学ばれる方が増えても不思議なことはありません。
 昨今はシンハラ語の海外流出を狭める傾向も出てきまして、BBCがコロンボから発していたサンデーシャのラジオ放送は何故か?聴くことが出来なくなりました。あの放送もナマのシンハラ語で生のスリランカを知ることが出来て臨場感たっぷりだったのですけど、ほんとうに残念です。情報が閉ざされるスリランカはいま、政府が勝利宣言をした後に人権侵害と大虐殺というクレームを受けています。

 日本ではまだまだ、マイナーな言語ですが、シンハラ語に一度でも触れた方は、特に言葉に敏感な日本人はその面白さに取り付かれてしまうでしょう。「シンハラ語の話し方」と「シンハラ語の話し方」のプレーヤー用CDがそうしたシンハラ語ファンの方々に少しでもお役に立てるなら、「かしゃぐら通信」としてこれほどの喜びはありません。


2009年4月に「シンハラ語の話し方・別冊」として「日本語=シンハラ語小辞典」を発行しました。「シンハラ語の話し方」で文法を学んだら、この小辞典でシンハラ語の世界を広げてください。きっとお役に立ちます。現在2版目。

「シンハラ語の話し方」は最初、マイナーな地方出版社から刊行されました。シンハラ語そのものがマイナーな言語で、シンハラ語に不慣れな編集者では追いつかない内容となり、著者の出版社KhasyaReportに所属を変え、現在は「増補改訂版」に引き継がれています。
 紙の本「シンハラ語の話し方」(南船北馬舎刊)は絶版となりましたが、kindleで当初の「シンハラ語の話し方」がKhasyaReportから発行されています。Ⅴ章の「日常会話文例」をテキストの先頭に持ってきました。これで、ますます使いやすくなりました。また、「増補改訂・シンハラ語の話し方」は紙の本でも、kindle版でも読むことができます。ご利用ください。

「シンハラ語の話し方」1章の「シンハラ語で話そう」の部分が音声化されてキンドルから発売されました。「シンハラ語の話し方・音声audio版」がそれで、CD版の会話編がここに再現されています。音声再生は端末のデバイスが制限されてペーパー・ホワイトなどのスピーカーが付いていない機種ではaudioが機能しません。音の出るキンドル端末でご利用ください。