シンハラ語=日本語の簡易な辞書「シンハラ語ノート」はガリ版刷りの軽易な冊子だけど、会話の辞書として使える。例えば、シンハラ語の「ニカン・アウィデンダ」という言い回しを「ちょっと散歩に行ってくるよ」と訳している。なんとも心憎い |
No-95 2008-Mar-26
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前回ご紹介したシンハラ語=日本語の簡易な辞書「シンハラ語ノート」。ガリ版刷りの軽易な冊子だけど、会話の辞書として使える。
と、訳されるはずだけど、でも、このシンハラ語の簡単な言い回しを聞いた「シンハラ語ノート」の若い隊員はこのフレーズの意味を「ちょっと、散歩」と察したのです。 辞書ばかりに集中していると、この「ちょっと散歩」を誤訳と決め込むだろうな。そして、辞書の指し示す意味のままに、「なんとなく、歩きます」と訳すだろうな。 「なんとなく、歩きます」ではKクーキ・Y>ヨメナイだな。 事務室にいる。何人か仕事をしている。誰かが少し気分を変えたくなって席を外す。仲間が気付いて「どうした?」と声を掛けた。「ちょっと散歩に行ってくるよ」と応えた。そんな状況の会話だとすると、この「ちょっと」にどれだけの意味が込められるかは事務室の雰囲気によって変わってくる。 仕事に行き詰ったので、外に出て気分を変えたい。友達と紅茶を飲む約束を思い出して事務室をそうっと抜け出したい。はたまた、会議の進行が気に食わなくて事務室にいるのが嫌になった。 正面からそうした理由を並べ立てて席を立つこともない。柔らかに「ニカン・アウィデンダ」と告げて席を立つ。そう、これは婉曲話法のフレーズなのです。 単語を聞いて、それが分からないときは辞書を引く。辞書には言葉の意味が載っている。だけど、言葉は辞書に載っているだけの意味で縛られてはいないのです。言語は社会的な存在です。
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