QアンドA94
 「~と一緒に」はどう言うか

「~と一緒に」は「エッカ」と言う。そう辞書にあるのだけど、実際には「エッカ」じゃなくて、「ト・エッカ」と言うみたい。でも、よく分からない。
 「私と一緒に」は「マー・エッカ」なのか、「マート・エッカ」なのか。


  No-94 2008-Mar-26


 もう30年も前になるかと思うのだけど、JAICAの隊員がスリランカで現地のシンハラ人の協力で作ったシンハラ語=日本語辞書「シンハラ語ノート」があります。
 そのノートは、昔のガリ版刷りで、しかも手書き。あとで、それは1988年のことですが、改訂版が作られて駒ヶ根訓練所で新隊員教育の資料として使われました。改訂版はシンハラ人の協力を得て書かれたのですが、どうも「使えるシンハラ語辞書」としては最初のガリ版刷りの方が出来がいい。
 元のノートには、確かにシンハラ語会話本からの受け売りやらがあるのだけど、実際にシンハラ語に直面した筆者が、日本人の言語感覚を生かしながら耳で聞いたシンハラ語を拾い上げている部分が光っていて、そこに口語シンハラの言い回しが持つ意味を良く汲み上げています。

 ここに、今回の質問の「と一緒に」のフレーズが掲載されています。
 さて、ここからですが、ガリ版刷りの元のノートには「と一緒に」が「ト・エッカ」で載っていて、後の方のワープロで仕上げた改訂版には「エッカ」で載っています。「ト・エッカ」と「エッカ」どちらが正しいのでしょう?

 辞書には「エッカ」が「一緒に」という意味で掲載されています。「ト・エッカ」の言い回しは掲載されていません。
 でも、辞書を離れると、例えば、スリランカのAL大学受験用シンハラ語参考書には、ත් එක්කが現れます。また、昨年3月に発表されたシンハラ語の格caseに関する論文(「シンハラ語における必須要素としての共格名詞と動詞の結びつき」/宮岸哲也)にもこの-ත් එක්ක(ト エッカ)の用法が紹介されています。どちらも辞書ではないのですが、日常使っているシンハラ語を素材にしていますから実用性は高い。
 -ත් එක්කは、シンハラ人の誰もが使う平易な言い回しなのですが、辞書にはそのフレーズが載らないようです。

 「私と一緒に」は「マート・エッカ」でも「マー・エッカ」でもいいようです。
 
  

    මාත් එක්ක
   maa - th    ekka
       
 私-と      一緒に
一人称単数/対格-ト/ニパータ   ニパータ