QアンドA92
の音はwaか、vaか?

シンハラ語の子音の中ではどう発音すればいいのか。これを wa と書いている本があれば、va と書いているのもある。va なんて難しそうで、ちょっと発音できないかも。


No-92 2015-Apl-10
 シンハラ動詞の原形はの音で終わります。

යනවා
ඉන්නවා
බලනවා
පේනවා

 これらを「かしゃぐら通信」では次のように発音表記しています。

「かしゃぐら通信」の発音表記
යනවා ヤナワ yanavaa
ඉන්නවා インナワ innavaa
බලනවා バラナワ balanavaa
පේනවා ペーナワ peenavaa

 片仮名を読めば大体シンハラ音と同じように発音していることになります。アルファベットですが、これはシングリッシュsinglishの表記と同じです。
 語末のワですが、アルファベットではvaaと表記しています。ワならwaとすべきで、vaaは「ヴァー」のように書き表すべきだと思われる方がおられるでしょう。
 の音は本来両唇音でした。唇を軽く閉じて、その上でワと発音する音です。でも、日常では唇を閉じないままワと言う方がいます。やや荒っぽい言い方なのですが、これでもいい。でも、このの文字で表される音が元は両唇音だったということを、そして今でも両唇音で発音するほうがシンハラ語の理にかなっているということから、片仮名では[ワ]、アルファベットでは[vaa]と表記しています。これをヴァと表記すると[バ]のように発音する方が多くて、シンハラ語の音が汚く発音されてしまいます。

 「父には一度も会わず、母には二度会う」という謎々があります。
 さあ、なんのことでしょう?
 答えは「唇」。
 chi-chiでは上下の唇が触れることはないが、ha-haでは唇が触れ合う。ha-haはfa-faだったからです。日本語の「は」音はF音だったということがここから分かるのですが、「ふぁふぁ」が「はは」になるのは音素の軽量化(日本語に激しい)という発音の変遷現象です。
 シンハラ語のワも上下の唇が一度合わさって(閉じて、ではない!)そこから息が漏れるようにワと発音されます。音の美しさがそこに宿っています。ヤナワと言うとき、そこを意識してみてください。

 備考
 ワをvaaとaを重ねて書き表しているのは、これが長音だからです。[ワ]は本来[ワー]なのです。でも、日本語は語末音を意識しないまま伸ばして発音してしまいます。だから日本人のワ音はシンハラ人には「ワー」として聞こえます。短音のワを日本人が発音するには[ワッ]のように促音を意識する必要があります。これは語末の音韻の長音化は、近年、若い人たちに再び現れています。

 このほか、シンハラ語にはR音とL音の違いや、T音D音それぞれに現れる平音激音濃音のような違いなどがあって、細かな注意が必要です。R音とL音は英語の音とかなり違います。T音は四つ、D音も現在は四つの音の違いがありますが、あまりの音の多さにシンハラ人自身が上手に発音できない事態まで生じています。その原因はサンスクリット、パーリ語の移入語になんとも奇妙奇天烈な、と言っては失礼ですが、日本人には到底発音できない音が多いためです。