QアンドA90
シンハラ語の動詞已然形と「行けども」

シンハラ語の動詞活用は難しそうに見えるのだけど、ちょっと操作を加えると簡単に覚えることが出来ます。「行けども」という仮定の表し方は日本語の動詞・仮定形と同じ。仮定形というよりは、むしろ已然形に近いその言い方は…


No.90 2015-Apl-10

 

仮定の表しかた

 「行けど/行けども」という仮定を表す表現はシンハラ語で次のようになります。

   行けど/行けども
   ගියෝත්
   ギヨーット
   giyooth

 ギヨーットは「行く」の過去形ගිය「ギヤ」と仮定/条件を表すシンハラ語の助詞ත්「トth」が組み合わされた言葉です。

ගොයෝත්
ගියා + ඔත්

ギヨーット
giyooth
行ったにしても
ギヤ  +  オト  (→ギヨーット)
 giy-     oth
行った  + にしても
動詞・過去形  ニパータ/条件


 「行けど/行けども」は仮定形と呼ばれる動詞の語形です。仮定形はかつて、日本語の文法では已然形(已然言)と呼ばれ、「すでに然り」、つまり「既に行なった」状態をあらわす動詞に助詞をつけて条件や仮定を表しました。「行け-」という動詞語形が既に然りの状態を明確に表すかどうか、そう言い切るには不安定なのですが、シンハラ語のギヨーットという語形はこの已然形という呼び名にぴったりと当てはまります。ギヨーという動詞語形は「行く」の過去形だからです。
 ギヨーットgiyoothはギヤgiya(「行くyanava」の過去形)の語末母音aを落としgiy-として、ここに助詞のト-th(~としても)を結びつけた形です。「すでに然り」の已然形と受け取ることが出来るでしょう。シンハラ語文法でこの仮定法を用いた条件節を説明するより、日本語の已然言で理解してしまうとすんなり解ける、というのも不思議といえば不思議。だけど、日本語文法でシンハラ語文がスムーズに読み解けたっていいんじゃないか。無理なくシンハラ語の仮定表現がわかるのですから。

 シンハラ語では、 

   動詞過去形 + -オト/-oth

 の形で仮定表現を表します。
 
 「カェーウォットකෑවොත්(食べたにしても)」「ビブオトබිබුවොත්(飲んだにしても)」「アェーウォットඈවොත්(来たにしても)」などの言い回しもすべて動詞過去形を用いた仮定表現です。これらを「食えど」「飲めど」「来たれど」と古風な日本語に言い換えれば、これらの音感からしてもシンハラ語の已然形表現により近づいて覚えやすいでしょう。

参考

二人行けど行き過ぎ難き秋山を いかにか君が独り越ゆらむ   万葉集巻第2 162
දෙදෙනාම ගියෝත් පසු කොට යන්න අමාරු කඳුව නම් කොහොමද ඔයාට තනියම යන හැකියැ