QアンドA86
「会う」と「訪問する」はどう違う?

[あなたに会う」と[あなたを訪問する。
 [会う]は[~に会う]と言うのに[訪問する]は[~を訪問する]と言う。どちらも同じ面会という行為なのに助詞を使い分けている。こうした「に」と[を]の微妙な使い分けってシンハラ語にもある?


No.86 2008-Mar-03 2015-Apl-14

 

「~に会う」と「~を訪問する」

 助詞の使い方に注意してみましょう。
 「会う」は相手と顔を会わせることにポイントが置かれます。一方の「訪問する」は訪ねて行くことがポイントです。この違いが「会う」という行為の対象は「に」で表し、「訪ねる」行為の対象は「を」を用いて表すことにつながります。
 さて、この「に」と「を」の違いはシンハラ語ではどう表されるでしょう。

 シンハラ語では、次のように表現します。

මම ඔබව බලන්න යනවා
mama obava balanna yanavaa
ママ オババランナ・ヤナワ
私は あなた 訪問する
මම ඔබව හම්වෙනවා
mama obawa ham venavaa
ママ オバ ハム・ウェナワ
私は あなた   会う

 助詞の「に」「を」、ともに「ワ」が対応しています。「オバ-ワ」は「あなた-を」という対格の表現。これを直訳して、「私はあなた会う」としても日本語にはなりません。
 助詞の「に」は「タTa」というニパータが対応するのですが、タは方向を表すシンハラ語の助詞ですので、「会う」という動詞には繋がらないのです。同様に「訪問する」はシンハラ語でバランナ・ヤナワ(見・行く)とい言い回しですので、このバランナ・ヤナワも方向を表す「タ」とは繋がりません。ただし、ヤナワ(行く)という動作を表す動詞が含まれていますから、行先の場所を提示する文なら、例えば「コロンボへ見に行く」というときは、コロンボ-タ????? となるのはもちろんのことです。
 シンハラ語文法では「オバワoba-va」を対格と呼んで、これをオバという名詞の格による語形変化としますが、これが日本語の名詞(オバ)+助詞(ワ)と同じ仕組みであることはここで常々、お話しさせていただいているとおりです。