大雪山黒岳・旭岳縦走 2015年7月21日 一般旅館利用

7月20日 曇り

往きは JAL の旭川行きがとれた。JAL を使うのは2010年ごろの倒産騒ぎ以降、初めてだ。あのときの再建策かなんかで株主優待がなくなったため、それから使わなくなってしまったのだ。株主優待が復活していたのを今回初めて知った。
宿も飛行機も予約したあと予報が変わり(これは毎度のことだ)、縦走予定の21日の午後から小雨が降るかもしれないという。

渡道

機内では wifi サービスがあり、『孤独のグルメ season3』が流れていたので思わず見てしまった。旭川空港は24℃で爽やかだった。
まずは旭川駅に向かう。空港と違って市内は暑かった。3年前工事中だった駅再開発は終わったようで、駅前に立派で分かりやすいバスターミナルができていた。北口すぐのいかにも地方都市的な古いビルはイオンモールに変貌していた。
イオンモールの1階には大きなフードコートがあり、ちょうど昼時で、そこでサンドイッチを食べた。柳月と六花亭が入っていたので、東京では見かけないお菓子を行動食用に買った。

層雲峡へ

層雲峡ロープウェイ
層雲峡ロープウェイ駅(17:15)
層雲峡行きのバスは7番から出た。車両は観光バスでなく、普通の路線バスのものだった。平日だし誰も乗らないだろうと思っていたら、意外にも地元の人がそこそこ乗り降りした。上川駅で数人の登山客を乗せた。
層雲峡温泉に着いて、まずはビジターセンターに情報収集に行った。先週あたりに見頃だったという小泉岳のウルップソウはもう終わりとのこと。所員氏によると、今年は花はイマイチという話で、ウルップソウも本来は6月の花なのに、今頃咲いていたりして、やはり不順のようだ。お鉢の南北のどちらを行こうか迷っていたが、雲の平も花は一面ではないというので、南の北海岳を経由することにした。
宿はセンターのすぐ近く(つまりロープウェイ駅にも近い)の銀泉閣。宣伝に高橋英樹親娘が大々的にフィーチュアされていた。ネット予約だと水ペットボトルかオロナミンCが特典でついているので、迷わず水をチョイスした。パッケージには高橋真麻の写真がでっかくあしらわれていた。
部屋でデジタルテレビのデータ放送で天気予報を見ようと思ったら、なんとリモコンにDボタンがない。データ放送の機能をカットした機種みたいだ。こんなのあるなんて知らなかった。
夕食は火鍋で、むちゃくちゃ暑かった。飲み放題つきだが、まだ山行前なのでグッと我慢した。北海道の高所の宿の部屋には冷房がなく、風呂上がりはとにかく暑かった。窓を開放して扇風機をつけて寝た。最初は暑かった部屋も、夜中に涼しくなってきて、終いには扇風機を止め、窓を閉めた。

7月21日 曇りのち一時小雨

4時に起床。フロントに朝食弁当をとりに行くついでに外を見ると、空は明るかった。今日の予報は曇り時々晴れで、夕方に小雨マークが付いていた。弁当を平らげて、出発。平日でロープウェイも混んでないだろうと、のんびりと駅に行ったところ、団体客がいたため始発を10分早めて5:50にするとのアナウンス。げ、あと3分とな。慌ててきっぷを買いに窓口に並んだが(ロープウェイは往復券だと自動券売機があるが、片道は窓口購入なのだ)間に合わず。むう、これは迂闊だった。
結局、定時の6時に乗った。臨時始発にみんな乗り込んだせいか、結構空いていた。凌雲岳から上川岳への稜線がきれいに見えた。
7合目へと向かうリフトも運行を早めていた。ウグイスやノゴマの囀りが聞こえた。7合目登山口には6時半頃には着いてしまった。あたりにはシマリスがうじゃうじゃいて、団体客たちは大喜びしていた。

6:46 黒岳7合目登山口発(高度計:1540m)

登り始めると、空からは時折陽が射したりした。振り返るとニセイカウシュッペや石狩岳といった山々が見えた。
20人くらいの団体が2つほどあって、挟まれる格好になってしまった。自分のペースで歩けないし、写真もゆっくりと撮れないが、黒岳のような初心者向けの山では仕方ない。道はなだらかなジグザグで、大きな段差もなく大変歩きやすい。

7:16 8合目(1720m)

道
とても歩きやすい道が続く(07:30)
8合目と9合目には小さいベンチがあるが、平日のためか空いていて座ることができた。
登りの主役はチシマノキンバイソウだった。オレンジがかった黄色い派手な大輪の花が咲き乱れていた。同色のミヤマキンポウゲもきれいで、また、ウコンウツギも見事だった。少なかったが、チドリやフウロソウも見られた。

7:36 9合目(1815m)

キンバイ
9合目近くのキンバイの群落(07:33)
マネキ岩
マネキ岩に向かって登る(07:51)
展望もきき、コマクサ平の方がよく見えた。あの辺を歩く選択肢もあったのだ。
9合目を出てマネキ岩を目指して歩いていると、すぐ近くにノゴマがやって来て大声で縄張りを主張し始めた。北海道に来たんだなあと思った。

8:14 黒岳登頂(1970m)

マネキ岩
マネキ岩とウコンウツギ(08:04)
マネキ岩を見下ろすようになって数分もすると頂上の人声が聞こえてきて、やがて山頂に着いた。
曇ってはいたがいわゆる高曇りで展望は良く、旭岳まできっちり見えた。団体は、記念写真を撮って数分休んだだけで石室へと降りて行った。石室で大休止するらしい。

8:37 黒岳発(1965m)

道
黒岳石室へと下る人々(08:54)
今日は長丁場なので、休憩はそこそこにして出発。
石室への下り道は、メアカンキンバイやらコマクサやらエゾツツジやらが咲いていた。東斜面とはまったく違い、風衝地の花に変わるのだ。そして下りきった石室近くでは、雪解けあとの雪田植物が群落を成している。ここはいつも凄まじいほどの花畑なのだが、この日はそれほどではなかった。チングルマがずいぶん少ない。やはり、今年は花がイマイチということなのだろうか。ただ、我々は過去にすんごいのを見てしまったからそう思ってしまうのであって、今目の前にある花畑が素晴らしいことには変わりない。

9:06 黒岳石室分岐(1890m)

花畑
分岐付近の花畑(09:13)
渡渉
赤石川を渡る:右隅にあるのが蛇籠(09:24)
花がきれいすぎてスピードが上がらない。山頂から石室へのコースタイムは10分なのに、30分もかかってしまった。
石室には寄らずに十字路を左に曲がり、赤石川に向かう。この下り道はミネズオウの名所だが、もうほとんど終わりで、そのあとの雪田植物が咲いていた。これがまたきれいで一向にスピードが出ない。
赤石川は、1週間ほど前から渡渉用の蛇籠が出ているということだったので安心していたが、水量が多く、蛇籠に到達するまでがちょっとスリルがあった。

9:41 北海沢(1845m)

道
北海沢を渡ったあと右に進む(09:32)
道
楽園のような北海沢の道(09:37)
渡渉後は残雪の崖を短く登り、小さな尾根の先端を乗っ越す。乗っ越して下ると今度は北海沢。こっちの渡渉は浅くて短い。渡ったあと右岸に乗り上げてから、今度は沢に沿って登って行く。この沢沿いの道は雪田植物の宝庫になっていて、エゾコザクラやアオノツガザクラなどが咲き乱れる楽園のような道だ。数分行くと沢が直角に曲がり、その角が広場で休憩適地。ザックを下ろしてパンを頬張った。
ここから北海岳に向かって登る。最初は沢に沿って緩やかに、途中で沢から離れて左(南)に曲がり、斜面を直登気味に行く道となる。途中にベンチがあり、よい目安になる。イワヒゲが増えてきた。ベンチから数分行くと滑りやすいえぐれた箇所があり、そこを突破すると緩やかに右にカーブして斜上気味のトラバース道になる。

10:46 北海岳(2135m)

道
直登が終わり徐々に斜上する道になる(10:22)
花畑
慰霊碑近くの見事な花畑(10:32)
トラバースを進むとまた花畑があり、遭難慰霊碑の周囲にアオノツガザクラがわんさか咲いていた。さらに進んであともう少しで北海岳山頂というところまで来て、ようやく忠別岳とトムラウシ山が姿を現した。だいぶ霞んではいるが、見えることは見える。
黒岳石室分岐からはコースタイムどおりに北海岳に着いた。今後の行程を考える。16時には姿見に着いていたいので、北海岳を出るタイムリミットは11時半。あと40分くらい時間がある。ということで、北海平の花畑を見に寄り道することにした。花でも眺めながら休憩して、11時半にココ(北海岳)に戻るようにしよう。

10:58 北海平(2065m)

花畑
今ひとつだった北海平の花畑(10:59)
白雲岳方面へ10分ほど下った北海岳の南斜面は、大雪山の中で最も好きな花畑のひとつ。チングルマやエゾツガザクラといった花々がきれいなのはもちろんのこと、背景がトムラウシ山というのが素晴らしいのだ。今日はトムラウシが見えているので相当ワクワクしながら行ってみたのだが。・・・ムムッ。どうも花が少ない。斜面はまあまあだったが、下りきった平地がまだ黒ずんだままだった。過去に最盛期を見てしまっているので、どうにも見劣りがしてしまう。この状態なら、長居をするまでもない。仕方なく山頂へと引き返したのだった。
平日だからかもしれないが、それにしても人が少ない。山頂にいる間は、白雲方面から数人と、黒岳方面から数人が来ただけだった。黒岳から旭岳へ縦走する場合、お鉢の北側を行く人が多いのだろうか。

11:29 北海岳発(2135m)

タカネスミレ
一面のタカネスミレ(12:07)
間宮岳方面への道は砂礫地で、見るべきものは彼方のトムラウシ山くらいだ。と、思っていたら、なんとタカネスミレが最盛期で、生きのいいのが一面に咲いていた。これほどの群落は見たことがなかったので、かなり感動した。写真を撮りまくりながら歩く。対向者数人とすれ違った。

12:26 間宮岳分岐(2170m)

旭岳
裏旭の眺め(12:55)
間宮岳山頂よりやや南にある分岐で一休み。写真をたくさん撮ったのでかなりゆっくりだったはずだが、コースタイムをあまり超えていなかった。
ここまで来ると、旭岳周遊の人もいる。旭岳への道に進むと、すぐに雪渓跡のチングルマがあり、そのあとまたまたタカネスミレの群落があった。滑りやすい斜面を降りた鞍部には裏旭のキャンプ指定地があり、テントが1張りあった。今夜から明日は大雨予報なのに、強者だ。そしてこの鞍部には、キバナシャクナゲの群落が広がっていた。葉っぱの緑に薄黄色の花が蛍光色のようで、そのコントラストが美しい。
旭岳の雪渓に取り付く団体がアリの行列のようだ。そして、徐々に雲が増えてきた。むむむ・・・

13:47 旭岳登頂(2270m)

山頂
閑散とした旭岳山頂(13:49)
鞍部を旭岳へ少し登ったあたりから残雪とザレが続く急斜面の難所が始まる。取り付くと20分はザックも降ろせなくなるので、直下で休憩をとる。すると、悪いことに、このタイミングで雨がポツポツ降ってきた。休憩もそこそこに、出発。空には明るいところもあって、目の前の難所を通過する20分の間には本降りにはならないと予想。相棒は念のためにザックカバーだけ付けた(おニューのザックだったので)。
雪渓はまだよかったが、その上のザレのよく滑ることと言ったら。ここをテント装備で登ったことがあるとは、我ながら信じがたい。それでも雪渓6分、ザレ10分で突破できた。幸い、雨は強くなることはなく、時折止んだりもした。
7年ぶり5度目の旭岳山頂(なんだか甲子園出場校の紹介みだいだ)は、どガスだった。夏は2006年以来の2度目なのだが、その2回ともガスガスということになった。登頂を祝して、旭川で買った三方六のイチゴ味の小割りを食べた。これは好みだ。キャッチコピーの『苺一会』が気に入った。

14:05 旭岳発(2270m)

道
ガスガスの道を下る(14:13)
雲がとれて姿見が見えた(14:23)
久々の北海道最高峰をもっと味わいたいが、景色はゼロのうえに、ポツポツ雨が続く。スマホで雨雲レーダーを見ると、1時間後には本降りになる予想。こいつはまずいと時間を置かずに下山することにした。
ガスの中に金庫岩やキバナシャクナゲがぼうっと浮かぶ道を行く。下山を始めて15分もすると、なんと雲がとれてきて、姿見が見えるようになってきた。振り返ると山頂も見えてきた。ええええ、そんなんなら山頂にいたのにいいい、と相棒は言うが、さっきのあの状況では致し方ない。終いにはトムラウシ山はおろか、北海稜線では見えなかった十勝連峰まで見えてきた。

15:26 旭岳石室(1680m)

姿見
姿見からは旭岳がきれいに見えた(15:28)
靴底が減っているせいか、やたらとスリップした。7合目の岩の上では姿見の方に向かって座禅を組んで瞑想している白人女性がいた。
下りきった石室で、団体に追い付いた。姿見の池には、(我々が通過するのに珍しく)旭岳がちゃんと映っていた。
黒岳7合目から石室までの登高記録は、最大高度2275m、最低高度1535m、累積上昇1100m、累積下降955mだった。
団体と中国人に混じって姿見の池の前のベンチで休んだ。このあとは、姿見駅までまだ10分ほど歩く。

姿見

姿見周辺はチングルマがたくさん咲いていたが、なんかパッとしなかった。これまで見てきた花畑で麻痺してしまったのに違いない。大雪登山によくある症状である。
16時のロープウェイ便に乗ることができたが、団体のみなさんと一緒になったため結構混んでいた。

旭岳温泉

宿へ向かう。過去にも泊まったことのあるラビスタ大雪山だ。ロープウェイ旭岳温泉駅から結構下るが、それでもベアモンテの次に近い宿なのだ。
チェックイン後、風呂に浸かって汗を流していると、見る見る雨が強くなってきた。いやはや、ラッキーだった。夕食は選択制で、今回も狩人焼きを選んだ。大雪地ビールと、旭川の地酒を呑んだ。
雨は時間が経つにつれて強まってきた。翌日のことを考える。空港へのバスは11時なので、それまでの時間を姿見散策でもしようと、今回の宿の予約は旭岳ロープウェイ往復券付きで予約していたのだ。仮に降られても、雨の姿見散策もまたいいもんだろうと呑気に予約したのだが、まさか大雨になろうとは。

7月22日 雨

予報どおり、朝から大雨だった。これじゃあさすがに姿見まで行ってもしょうがない。いや、でも行かないとロープウェイ料金分が損になる。雨雲予想を見ると、10時になると雨雲は過ぎ去るという。

雨の姿見

姿見
雨の姿見園地(10:30)
というわけで、意を決して10時ちょっと前にチェックアウト。雨はまだ降っていて、傘をさして出る。10:15のロープウェイに乗り、姿見に着くと、スパッツをつけたいかにも登山者な我々を見た係員が駆け寄ってきて、「山に登るんですか」と問うので即否定。係員氏はほっとしたような顔をしていた。10:45の便で降りねばならないので、許される時間は20分程度。雨も小降りになってきたので少し外に出てみよう。誰もいない姿見は、歩きだしたら花がきれいでずんずん進む。数分行くと風雨が強まってきた。こ、これはひどい。結局、第一展望台にすら辿りつけずに引き返す。駅に帰ったときには腿から下がびしょ濡れになっていた。これはこれで想い出に残る姿見となった。

下山して空港へ

予定どおり10:45の便で旭岳温泉に降り、11:15のバスいで湯号で空港に向かった。忠別湖を過ぎたあたりで雨は上がり、時折陽が差すようになってきた。12時過ぎに空港に着き、土産を買ったりサッポロクラシックビールを飲んだりと忙しい時間を過ごしてから飛行機に乗った。機内では爆睡だった。相棒は三方六の苺小割りを土産に買い忘れて猛烈に悔しがっていた。
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