紅葉の大雪山(黒岳・裾合平・旭岳) 2002年9月14日-16日 一般旅館利用

9月14日 雨ときどき曇り

羽田を朝一番のJAS便で旭川に向かった。旭川駅には登山客が多く、中には今朝の相鉄線で見かけた人もいた。登山客の半数以上は旭岳温泉に行くようで、層雲峡行きのバスは席がいっぱいになる程度の混雑具合だった。層雲峡には12:30に着いた。今日のスケジュールはレンタサイクルで層雲峡めぐりという観光企画だったのだが、バスが層雲峡に近くなった頃から雨が降ってきた。
カッパを着て自転車で観光というのもなんだかなあ。歩くにはちょっと遠いし、タクシーを使って行くほど執着していない。どうしようかとバスターミナルで迷っていると休憩していたタクシーの運転手が声をかけてきた。いろいろ話を聞くとどうも銀泉台の紅葉がちょうど見ごろを迎えているという。今からタクシーで行けば銀泉台には14時頃に着くだろう。帰りの層雲峡行きのバスは16時発で、2時間くらい時間ができることになる。それならいっそ銀泉台に行こうということになった。大雪湖のあたりではやや強い雨が降り続いていたが、運転手は「上はあがっているんじゃないかなあ」と予言。タクシー料金は7,000円弱だった(小型)。

銀泉台へ

ヒュッテ前でタクシーを降りると、あたりは濃いガスに包まれおり、小雨が降っていた。しかも下山してくる人たちはみんなずぶ濡れ泥まみれでミョーに憔悴した顔つきだ。どうしたことかと思い様子を窺うと、山の上ではなんとみぞれが降っているらしい。運転手の罠にはまった気分になったが、カッパを着込むなど身支度を調えているうち、さきほどの予言どおりに雨が上がってきて、有名な銀泉台の紅葉が片鱗を見せ始めた。行ける所まで行って、バスの時間に合わせて帰ってくるということにして、いざお散歩出発。

紅葉の斜面

銀泉台の紅葉
銀泉台の紅葉
10数分登ると紅葉の斜面が視界に飛び込んできた。日が出ていないのでまったく引き立たないが、それでも天下の銀泉台。彩りは見事なものだ。タクシーの運転手は、今年は夏の天候不順がたたって色づきがよくないといっていたが、それは贅沢というものだ。我々はプロのカメラマンなどではない。ちょうど見ごろの紅葉を見られるという幸運に感謝しなければならない。とは言うものの、確かに色はくすんでいてあまりよくないなあ。・・・いや、感謝感謝。

撤退

銀泉台・撤退地点の紅葉
銀泉台・撤退地点の紅葉
30分くらい登ると再び雨が降ってきた。今度はかなり大粒だ。即撤退を決め、ザックカバーをつけて下山開始。しかしこんな雨の中、なんとスーツに革靴という女の子が登ってくる。いったいどうしたことかと見ていると、実は彼女は観光ツアーの添乗員で、その後ろから客がぞろぞろと出現。総勢20人くらいはいるだろうか。道はぬかるみがひどく、我々もバランスをとるためにストックを出したところだ。そんな悪条件の中を革靴で、ポンチョすらないツアー客たちはひるまず突進してくる。前の日に旭岳で凍死者が出たばかりなのに・・・よくもまあこんな条件の中を登ってくるなあと半ば感心し半ば呆れながら、しばらくして振り返ってみると、みんな道を歩けないので登山道からどんどんはみ出て草の中を歩いていた。あちゃー。
雨はどんどん強くなってきた。最後にもう一度紅葉の斜面を見ようと振り返ると、ツアー客たちは我々よりはるかに上の地点まで登っていた。う・・・ま、負けた・・・

層雲峡にて

この日は天気も眺めもよくなかったが、層雲峡めぐりでなく銀泉台に行ったことで、まったりとした観光気分から登山意欲に切り替わったのが収穫だった。
今日の宿はホテル雲井。ロープウェイ駅のすぐ近くだ。翌朝早いので朝食にはおにぎり弁当を頼んでおいた。
宿に着いてすぐ、去年入って気に入った「黒岳の湯」に行った。休憩室では横綱貴乃花の復活をかけた取組をみな食い入るように観ていた。
夕食後は、19時から層雲峡ビジターセンターで黒岳周辺の四季をテーマにしたスライド上映会があるというので観に行った。説明は層雲峡博物館の館長さんだった。ウスバキチョウの生態など(館長さんの専門だ)たいへん興味深い内容だった。
スライド会から帰って宿の風呂に入りにいったが、今どきめずらしく飾りというか、眺めすらほとんどない風呂でびっくりした。しかし浴槽の幅は大人が足を伸ばしてちょうどよいくらいで、実はよく考えられているのではないかとも思った。良く言えば実用的、質実剛健というところか。翌朝は早いので、21時頃には眠りについた。

9月15日 晴れのち曇り

リフトから見る紅葉の黒岳
リフトから見る紅葉の黒岳
4時起床。窓から空を眺めると星がひとつも見えず暗い気持ちになった。しかしすでに旭岳温泉の宿を予約しているので行くしかない。朝食弁当を食べてから宿を出て駅に向かうと空は意外に明るく、時折晴れ間からロープウェイ5合目の駅も見えたので、これは単なる朝霧なのだと思った。
ロープウェイは通常の6時始発の前、5:50の便から動き始めた。我々は2本目の6時の便に乗れた。ロープウェイは雲の中に突っ込んでいった。上は晴れていると思ってはいても内心は不安だったが、ロープウェイが上がるにつれて雲が徐々に薄くなり、そして唐突に視界が開けた。車内に歓声があがった。大快晴だ。

6:44 黒岳七合目発(高度計:1615m, 温度計:17.8℃)

マネキ岩付近の紅葉
マネキ岩付近の紅葉
登山届に記入して出発。この道は3度目だが、記憶と違って予想以上にぬかるみが多い。昨日の雨のせいだろうか。またほとんど無風で、気温は低いが体温がどんどん上がって暑かった。
3度目の今回も初心者らしき集団と一緒になった。極端な段差もなく、8合目・9合目と標識があるのでペースがつかみやすい。1時間も登れば山頂からの大展望。人気があるのは当然と言える。さてこの集団に巻き込まれて自分のペースで歩けなくなってしまった。すっかりリズムが狂って疲れてきた。そこでストックを出して使ってみるとみるみる快調になり、また腿の負担が明らかに軽くなった。すっかりストックに頼った歩き方になってしまったのだなあと思った。
黒岳の斜面も紅葉が美しいことで有名だ。この日はマネキ岩の直下が美しかった。しかしちょうどマネキ岩が見えてくるあたりから雲が多くなってきたのだった。

7:54 黒岳登頂(2060m, 19.8℃)

白雲岳と烏帽子岳
白雲岳と烏帽子岳
山頂に着くと、西には雲がなく、展望が開けた。見渡すと、烏帽子岳斜面の紅葉が一番見ごろのようだった。
風があって、汗が一気に冷えて寒くなった。風は西から吹いていたので、ここまでの東斜面の道は暑かったのだろう。

8:09 黒岳発(2040m, 17.6℃)

桂月岳
桂月岳
黒岳山頂から北鎮・凌雲岳を望む
黒岳山頂から北鎮・凌雲岳を望む
だれそれはここで引き返すだの携帯番号はいくつだのと団体が喧しい。下りの途中で振り返ると、黒岳の西斜面は紅葉したウラシマツツジがパッチワーク状に配されて美しかった。ちょうど見ごろのようだ。
西の山々はウラシマツツジの紅葉とハイマツの緑が縞模様に見える。前夜のスライド上映会での館長さんの説明によれば、これはこの西風の影響という。ハイマツの風下側にウラシマツツジが陣取るのだそうだ。

8:29 黒岳石室(1950m, 11.9℃)

雲の平から凌雲岳
雲の平から凌雲岳
雲の平の登山道
雲の平の登山道
休憩しながら見ていると、ほとんどの人は我々と同じ方角に行くようだ。ここから先は雲の平と呼ばれ高原状になっている。ほとんど傾斜のない道をだらだらぶらぶらと歩くのが楽しい。右も左も赤く彩られている。とくに左側の斜面がきれいだった。夏の名残のコマクサがたったひとつだけ咲いていた。

9:18 お鉢展望台(2065m, 13.5℃)

北鎮岳への道
北鎮岳への道
お鉢展望台に到着、小休止。意外にもお鉢の中も紅葉していた。右(北)を見上げると、すっかり秋の装いの北鎮岳が聳え立っている。この頃から雲が多くなってきた。北鎮岳にも雲がかかったり消えたりしている。
さて出発しようかという段になって団体さん到着。うわー巻き込まれなくてよかったーと思っていたらなんとリーダーは層雲峡博物館の館長さんだった。博物館主催の日帰りツアーのようだ。

9:50 北鎮岳の肩(2210m, 13.9℃)

風が少し強く、寒くなってきた。時間があまりそうなので、北鎮岳を往復することにした。ザックはデポしないで背負っていく。

10:06 北鎮岳登頂(2320m, 17.1℃)

北鎮岳山頂から凌雲・黒岳をのぞむ
北鎮岳山頂から凌雲・黒岳をのぞむ
雲が多く展望はさほどよくなかった。旭岳も雲に隠れがちだ。風はいくぶん落ち着いたようだがさすがに寒く、山頂標識にはえびの尻尾ができかかっていた。マグヌードルを食べて暖まる。
目指す裾合平も遠く望まれた。赤いじゅうたん、と言った感じだ。期待はふくらむ。

10:36 北鎮岳発(2350m, 25.0℃)

肩に着くとまた風が強くなってきた。山頂の方が暖かかったくらいだ。かつりんは暑がりで夏秋はほとんど手袋はしないのだが、ここではたまらずに手袋をつけた。

11:45 中岳温泉通過(1905m, 18.5℃)

熊が岳斜面の紅葉
熊が岳斜面の紅葉
裾合平ばかり気にしていたが、実は温泉へ下る斜面も彩りが美しい。温泉ではちょっと腰を下ろして水を飲んだだけで通過、一気に裾合平へGOだ。

裾合平

チングルマの紅葉の裾合平から見る旭岳
チングルマの紅葉の裾合平から見る旭岳
雲がとれ、チングルマが輝く
雲がとれ、チングルマが輝く
この山行のメインイベント。期待通り、見渡す限りチングルマの赤いじゅうたんが広がっていた。穂が残っていたのがちょっと意外だったが、それがまた白い花のようで美しい。雲がかかったりぱーっと晴れたりと忙しない空模様。木道が複線になっているところにザックを下ろして陣取り、飽きることなく眺めていた。旭岳の山頂が雲に隠れてしまったのを機に、ようやく腰をあげたときには1時間近くが経っていた。

13:18 裾合平分岐(1760m, 15.6℃)

裾合平分岐のあたり
裾合平分岐のあたり
分岐は通過する。周辺はナナカマドが色づき始めたところだった。
分岐から姿見までは初めて歩く道。木道はすぐに終わり、えぐれてぬかるんだ、緩い登りになる。振り返ると、遠く沼の平あたりの池塘の周囲が彩られているのが見える。
だらだらと歩いているとハイマツの中にベンチがあり、そこから数10m行くと姿見の駅が目に入ってきた。今日の行程ももう終わりだ。

14:42 夫婦池着(1715m, 22.4℃)

ハート型の夫婦池
ハート型の夫婦池
景色を眺めながらずいぶんゆっくりと歩いたが、ガイドブックのコースタイム通りに着いてしまった。まだ宿に行くには早いので、観光モードに切り替えて姿見散策に。姿見池のベンチなどでのんびりと過ごした。

15:30 姿見駅

ロープウェイは行列!!
ロープウェイは行列!!
ぐるっと1周姿見を散策してからロープウェイの駅に行ってみると、なんと、凄まじい行列が。50分待ってようやく下り便に乗れたのだった。

宿

今宵の宿はこまくさ荘。ロープウェイの旭岳温泉駅から歩いて10分ほど下ったところにある。バス・トイレ付きの特別室(2000円プラス)しか空いていないというので仕方なく特別室を予約したのだが、部屋に着いてみるとなんとスイートルームであった。2階にある大浴場からは旭岳が見えた。夕焼けに染まる姿は神々しかった。この日の夕食は海のものばかりで肉類がなかった。山の宿なのになあ。
次の日は宿でまったりしてから旭川市内の酒蔵でも周って帰るつもりでいたが、天気予報が最高級だったので、予定を変更して旭岳に登ることにし、ここでも朝食をおにぎり弁当にしてもらった。
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