紅葉の大雪山(裾合平・旭岳) 2008年9月22日 一般旅館利用

9月21日 曇り

20日の土曜日から出かけたかったが、さすがに4連休の初日だけあって飛行機はほぼ満席状態。それに19日午後の段階ではまだ台風が紀伊半島から御前崎沖にかけて進んでいて、翌日の交通機関にどのような影響を与えるかもわからなかった。しかたないので、20日は準備にあてて、21日の朝早い便で旭川へと向かうことにした。

旭岳温泉

旭岳
遊歩道「展望台」からの旭岳
実
ベリーのような実がそこここに
空港からはまず旭川駅へ。駅前の西武の地下で翌朝の朝食のためのパンを買う。10:45発のバスに乗って旭岳温泉についたのはほぼ12時。とりあえずロープウェイ駅の食堂で昼飯を食べてからビジターセンターに寄る。センターの掲示板によると、裾合平はチングルマの紅葉が盛りということで、期待がふくらむ。ビジターセンターを出てもまだ13時前。宿のチェックインは15時なので、それまで付近の遊歩道を散歩することにした。
遊歩道の「展望台」と名付けられた地点からは旭岳や十勝岳がよく見えた。しかし空が曇っているので印象はいまひとつだった。コース中は紅葉が進んでいて美しく、木や草の実を探すのが楽しかった。

ラビスタ大雪山

この旅の宿は、前年にオープンしたばかりのラビスタ大雪山。予約が間近すぎて料金の高い部屋しか残っていないということで、ゴージャスなトリプルの部屋に通された。部屋にはコーヒー豆とミルが用意されていて、挽きたてのコーヒーが飲める。ポットは瞬間沸騰のできる電気ポットで、水も冷蔵庫にミネラルウォーターが置いてあって、無料だった。無料といえば、大浴場の入り口にアイスキャンディーが置いてあって、これまた無料だった。自販機のジュース類は街と同じ値段なのが嬉しかった。
風呂もいくつか種類があって楽しめたが24時間入れないのはチト残念。効能は筋肉疲労とのこと。
部屋に備え付けのテレビは液晶ハイビジョンテレビだった。地上波はアナログだったが、BSデジタルが配信されていたので、データ放送の天気予報が好きなときに見られたのはよかった。こんな宿初めてだ。
夕食は和食と洋食の2種類あって予約時に選べる。2泊するので初日を和食、翌日を洋食にした。和食は鉄板焼きで、イノシシ肉が美味かった。

9月22日 快晴のち曇り

4時半起床。保健所の指導とかで、宿では登山者向けの朝食弁当を用意してくれないため、前日買ったパンを部屋でぱくついた。
ロープウェイは土休日は5:30が始発になるようだが、今日は平日なので通常通りの6:00始発。さすがに平日なので、ロープウェイ駅は6年前に比べると閑散としていた。しかし例によって大型観光バスがやってきた。始発に乗れないと一大事とばかりに猛ダッシュ。
それでもどうやら、並んだ全員が始発便には乗れたようだった。格好を見ると、登山客・観光客はだいたい半々くらいと思われた。バスの団体はツアー登山だ。混んでる車内にもザックを背負ったまま乗ってきやがった。マナーがなっとらん。
天気は上々で、ロープウェイからはトムラウシや十勝岳もよく見えた。ばっちり予報どおりだ。見下ろすと、森ではカンバの黄葉が始まっていて、紅と黄のコントラストが美しかった。
姿見駅テラス下のベンチに座ってスパッツを着けたりなど身支度を調えていると、先ほどの団体が押し寄せてきた。ザックのパッキングを直そうとちょっとかつりんが立ち上がったその隙にそのうちの一人が、「ちょっと座らせてもらいますよ」とベンチに座りやがった。んなろー。

6:15 姿見周遊

朝陽
6:30、旭岳の肩から朝陽が差し込む
凍てつく霜付きチングルマとガンコウラン
駅から左手、裾合平方面に向けて進む。6年前に比べてはるかに暖かく、Tシャツ+ウールシャツという軽装でもぜんぜん平気だった。霜で縁取られたチングルマが見たかったが、暖かいせいか霜がついてない株ばかりでちょっぴりがっかり。しかししばらく進んだ日陰にようやく霜付きチングルマを発見。相棒とふたりで写真を撮りまくる。こんなにきれいなのに、みんなあまり関心がないようで、 登山客・観光客とも我々の背後を素通りしていく。なんともったいないことだろう。

6:48 姿見を出る(高度計:1605m, 温度計:15.8℃)

姿見
姿見の紅葉と当麻岳・安足間岳
結局姿見で30分ほど撮影に費やした。少し本気になって歩き出す。
夫婦池を過ぎると人通りが途絶えた。はるか前方を行く人が3人程度見えるだけ。観光客が来ないのはもちろん、登山客もみな旭岳に向かったに違いない。そういえばさっきの団体は旭岳から黒岳に縦走するようなことを言っていた。
朝の光に輝くチングルマを愛でながらゆるく登っていく。姿見のあたりからも見える、トリカブトの花のような特徴的な形の岩のたもとにはシラタマノキがたわわに実っていた。そして、その巨岩の向こう側には世にも美しい景色が広がっていた。

7:10 トリカブト岩

安足間岳
当麻岳・安足間岳と紅葉
トリカブト岩(勝手に命名)は小さく突き出た尾根のような地形になっていて、その上からはそれまで見えなかった北側の景色が見渡せた。はるか遠くの下方には、カンバらしき黄色い樹が点在していた
旭岳の裾をトラバースする形で、何度か沢形地形を横切りながらゆるく登っていく。歩を進めると景色がどんどん変わってきた。見下ろすと、沢形に沿って色付いたナナカマドが連なり、その先の池塘は草もみじに彩られていた。また、北を見渡すと、当麻乗越へと続くハイマツの緑の海に、赤やオレンジのナナカマドがパッチワーク状に点在していた。6年前はナナカマドはこれほど色がなかったので、この眺めが見られたのはとても嬉しかった。
ちょっと歩くと立ち止まって写真を撮ったりするので遅々として進まない。何人かが我々を追い抜いていった。

8:08 裾合分岐(1685m, 21.7℃)

道
整備されて歩きやすくなった裾合分岐付近の道
道は徐々に下るようになる。このあたりはぬかるみがひどかった記憶があるのだが、階段状に整備されて木が埋め込まれ歩きやすくなっていた。
ほぼ下りきったところが裾合平への分岐点だ。ここは何度か通過したことのあるところだが、いつも大勢の団体客が占拠していた。ところが今日は年配の登山者がひとり休んでいるだけだった。我々もザックを下ろして休憩した。行動食をとっていると、先客は当麻乗越方面へと発っていった。我々も少ししてから裾合平へと向かう。歩いて暑くなったので、かつりんはここでウールシャツを脱いだ。

8:28 裾合平(1755m, 28.5℃)

紅葉
紅葉したチングルマと当麻岳の斜面
火山岩がゴロゴロした道をゆるく登るとすぐに木道に変わり、裾合平に入る。原っぱ全体の2/3くらいすすんだあたりの木道の待避線にザックを下ろし、身軽になってゆっくり景色を楽しむことにした。
ビジターセンターの掲示板では裾合平のチングルマは見頃となっていたが、実際は少し進んでいて、枯れはじめた葉も目立った。中岳温泉に近い方に枯れはじめた株が多く、逆側には活きのいいものが多かった。枯れはじめた場所は色がくすむのでよくわかる。
そんなわけでチングルマはまあまあだったが、この日は周りを囲む山の中腹がきれいに色づいていて、ひときわ美しかった。

9:38 裾合平発(1760m, 24.0℃)

木道
紅葉は美しいが、完璧に踏みつけられた木道の両脇が痛々しい
すばらしい景色をじゅうぶん堪能し、つづいて旭岳登頂を目指すことにした。
ところで今回、旭岳登頂を後回しにして裾合平に先に来たのは、朝の光線で紅葉の旭岳を見たかったからだ。裾合平は旭岳の北側に広がるため、昼になると旭岳の上に太陽が周ってしまい、旭岳本体が完全に逆光になってしまう。前に来たときは昼ちょっと前で、なにしろまぶしかった。この問題は朝早ければ改善されるのではないかと期待してのことだったのだ。作戦はまあまあ成功で、まぶしいことはまぶしいが、目を開けていられないということはなく、横からの光を浴びた旭岳は美しく輝いていた。
それにしても人が少なかった。1時間以上いたのだが、やってきたのは単独行の女性が2人だけ(今回はなぜか単独女性を多く見かけた)。素晴らしい景色を独占できて、ここまで気持ちよく過ごせるのはなかなかないことだ。

10:06 中岳温泉通過(1835m, 26.2℃)

中岳温泉
中岳温泉付近から裾合平を振り返る
旭岳
温泉上の尾根からの旭岳
歩き始めると中岳温泉の近くで少数の人とすれ違ったが、中岳温泉には誰もいなかった。素っ裸になって入れる状況だったが、まだまだ先があるのでここは通過した。
温泉からは斜面の急な登りになるが、それは10分くらいで終わって、尾根の突端に躍り出る。そこからは旭岳の斜面と裾合平が一望のもとだ。裾合平のチングルマは遠目にもくすんで見えた。

10:53 中岳分岐(2050m, 24.4℃)

道
一転して殺風景な道を登る、稜線はもう近い
何度も何度も裾合平を振り返りながらゆるゆると登る。逆コースだったらこの景色を眺めながら歩けて素晴らしいだろうと思った。この登りではかなり暑くなって、寒がりの相棒もフリースのセーターを脱いだ。登ると徐々に草木がなくなってきて荒涼としてきた。稜線付近には枯れかけたウラシマツツジがぽつんとあるだけだ。
中岳分岐で一休み。お鉢の全景が広がった。快晴で、大雪の山々がよく見えた。

11:09 中岳分岐発(2030m, 19.0℃)

行動食をほおばりながらふと見上げると、間宮岳の方から30人近い人たちが一団となって下りてきた。やってきたそれは、同じロープウェイに乗っていたあの登山ツアーだった。そのまま通過するよう祈ったが、ガイド氏が「ここで休憩します。お昼ごはんでーす」とのたまった。
人々はいっせいに散らばったが、驚いたことに、周辺のロープなんか完全無視で草地のうえをずんずん突き進むのだ。彼らはガイド氏に、ロープ外に出るなとしこたま叱られた。それでも叱られてるそばからまたロープの外に出る人が続出して、とうとうガイド氏の説教が始まった。小学生みたいで笑えた。それにしても登山道のロープに対する認識がそんな程度なのだというのが不思議だった。ロープが張ってあったら普通はその外に出るなっていう意味にとると思うのだけど。公園の芝生なんかと同じような感覚でいるのかもしれない。軽いカルチャーショックを覚えた。
そんなこんなで騒がしくなったので出発。間宮岳への登りはガレていて歩きにくい印象だったが、記憶と違ってそんなことはなく、歩きやすかった。

11:36 間宮岳分岐通過(2155m, 19.1℃)

凌雲岳
紅葉したお鉢の斜面と凌雲岳
裏旭
雄大で美しい裏旭の眺め
間宮岳の稜線はかつりん好みの広々とした道だ。道の両脇に枯草がぽつんぽつんと置いてあって、不思議な景色が広がる。間宮岳山頂の標識を過ぎてなおも行くと分岐がある。ここでロープウェイ以来のトムラウシが見えたが、もう時間が遅く、霞んでいた。
ザレた道をジグザグに下っていく。左下(東)斜面のはるか下はハイマツとナナカマドのパッチワークが広がっていて美しかった。歩く道の周りは荒涼としていたが、ところどころにチングルマがあったりした。このあたりから見る旭岳は雄大で美しくて、大好きな眺めだ。この日はテレビかなんかの取材ヘリがうるさいのが残念だった(と、このときは思っていたのだが、遭難者の捜索だったことを後から知った)。

12:11 鞍部

斜面
超難所のザレザレ斜面は砂のない輝いているところが滑りにくい
最低鞍部が裏旭のテント場で、ここから旭岳に向けて登りが始まる。
大きな岩に腰掛けて休憩してから、この日最大の難所であるザレザレ急坂にかかる。念のため、ストックを使うことにする。上からも何人かがおっかなびっくり下りてきた(あの30人のツアー客が全員ここを下りたというのが驚異的なことのように思えた)。斜面の左側にはわずかながら雪が残っていて、ここが裏旭テント場の水源だ。水はまだ不自由しないくらいに流れていた。
カチカチに固まった地盤の上にうっすらと砂が積もっているところがよく滑る。この砂のないところ、つまり地盤に直接足を置くと滑りにくいようだった。2年前の夏にはテントを担いでここを登っているのだから、まあ今日は大丈夫だろう。と思っていたが、なかなか手ごわかった。相棒は、今回が一番滑ったと言っていた。やはりここは下りには使いたくないなあ。

12:51 旭岳登頂(2260m, 18.5℃)

白雲岳
広々とした旭岳山頂から白雲岳を望む
山頂は思ったほど混んではいなかった。4度目の旭岳だが、今までで一番空いていたかもしれない。これならきっと、帰りのロープウェイで散々待たされる、なんてことはないだろうと予想した。
着いて少ししてから南の方に雲がわいてきて、トムラウシは隠れてしまった。東と北はまだよく晴れていて、お鉢を囲むメインの山々はすべて見えた。
テルモスのお湯でカフェオレを淹れて飲んだりしてまったりと過ごした。

13:59 下山開始(2270m, 19.3℃)

紅葉
旭岳南斜面を見下ろす
徐々に雲が増えてきてとれる気配がないので下山することにした。姿見への下りもザレがひどい。ザレはいったんニセ金庫岩で終了して、少しの間は岩がちな道になるが、すぐにまたザレ道になる。この時間に登ってくる人の多くは観光客で、登山者はほとんどいない。どういうわけか、外国人が多かった。
左下(南)のはるか下を見下ろすと、いくつもの谷筋が紅葉しているのが見えた。ちょっと霞んでしまっているのが残念だ。

14:43 7合目(1940m, 20.6℃)

道
7合目近くの道(噴煙の左に見えるのが姿見池)
岩
巨岩を鑑賞しながら下る
7合目の大きな岩に腰掛けて足をぶらぶらさせて一休み。
登山道には大人の背丈ほどもある巨大な岩がごろごろ転がっている。よくよく見ると様々な表情をしていておもしろい。左(南東)の斜面はあいかわらず美しかったが、あいかわらず霞んでいた。

15:14 姿見池(1675m, 19.0℃)

ザレが徐々に収まって岩がちになると姿見池に着く。池の周りは観光客でそこそこ賑わっていた。旭岳は中腹より上が雲の中だった。池のほとりでのんびりと休んだ。
ここからロープウェイ駅までの道はコンクリート舗装と岩が混じった硬い路面で歩きにくい。観光客にまじりながらチングルマを眺めつつゆっくりと歩いて姿見池に到着。池に映る旭岳は下半分だけだった。

15:44 姿見駅(1600m, 18.4℃)

16時になんなんとしていたが、なんとこんな時間にあがってくる観光ツアーが。登山装備に身を固めた地元ガイドらしき人が引率しているが、客はパンプスとか履いちゃってて街の格好。そんな不思議な集団が、2列縦隊のままで準備運動開始。ある意味異様な光景だった。

下山

黄葉
ロープウェイから眺める天女ヶ原付近の黄葉
下りロープウェイは順番の直前で満員になり(あと6人だったのに!!)、次の便にまわされた。まあそのおかげで窓際に陣取ることができ、ロープウェイ直下の黄葉をかぶりつきで堪能することができたわけだが。
腹が減ったが宿の夕食は20:30。ロープウェイ駅の土産物屋で旭岳ビールと北海道チーズを買って宿に戻って食べた。夕食まで、風呂に入ったり少し寝たりしてリラックスして過ごした。
この日の夕食は、前日の和食に対してフレンチコース。でも北海道の山まで来てフランス料理ってなんだかピンとこない。そういうのは都会で相当美味しいものが食べられるうえ、どうしても都会のものと比べてしまうし。メインのローストビーフは地元食材で美味しかったし、他のメニューも味は悪くなかったけど、そんなわけで可もなく不可もなし。ただし、白ワインが冷えていなかったのはいただけない。

9月23日 雨のち曇り

23日は朝からどん曇りで、チェックアウトした9時ごろにはとうとう雨が降ってきた(この夜には雪に変わり、旭岳では初冠雪を記録した)。
以前から行ってみたかった旭山動物園に、宿の送迎バスが直行するというので行ってみた。朝のうちは風雨が激しくて、スパッツと、山で使わなかったカッパがここで役立った。我々以外にももろに山登りの格好の人が何人かいて笑えた。雨はまもなく上がったが、園内メインストリートの温度計が示しているのは16℃。人々は寒がっていたが、カッパを装着した我々にはちょうどよいくらいだった。動物園はペンギン好きにはたまらないところで、期待以上によかった。こりゃあ人気が出るわけだ。一日楽しんで、旭川空港への直行バスで動物園を後にしたのは15:35。
旭川空港には、台湾人がわんさかいた。どうも国際チャーター便があるらしい。我々はいつもチェックインの前に1階の窓側で荷造りしたりしていたのだが、この日は彼らに占拠されていた。2階の土産物屋の奥には国際線の待合ができていて、ここにも彼らが大勢たむろしていた。
空港2階のビールスタンドのメニューから富良野ビールが消えていたのが残念だった。有名空弁のジンむすと生ハム握りを買って機内で食べた。羽田で飛行機を降りると、蒸して不快だった。
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