白峰三山縦走 2008年7月26日 - 29日 テント縦走

7月26日 晴れのち曇り


甲府から広河原へ

甲府駅を9時に出発するバスに乗り込むためにお馴染みの八王子始発松本行きの各駅停車に乗る。勝沼からの南アは予想通り雲の中。
甲府着は8:10。電車には登山客は多かったが甲府で降りる人はあまりいなかった。みんなどこ行くんだろう。その後あずさと各駅の2本の電車が着いてそこそこの人数が集まった。山梨交通の客さばきは相変わらずでやきもきしたが(客の整理すらしなかった頃を考えると進歩したといえるかも)、大きな混乱はなくバスは3台を連ねて出発。
広河原に着いて唖然。アルペンプラザがなくなっていた。と思ったら道路脇のプレハブで営業していた。ここのトイレで着替えようと思っていたので戸惑った。バスターミナルのトイレは工事現場にあるような仮設トイレで、中で着替えなんかとんでもない。しかたなく建物の陰で着替えた。

11:24 広河原発(高度計:1685m, 温度計:34.4℃)

電車からは雲の中だった北岳は、広河原からはよく見えた。大樺沢の雪渓はずいぶんと残雪が多そうだ。
以前のアルペンプラザの建物はないが、その前にあった水場はちゃんと生きていた。

11:49 お池分岐(1785m, 29.1℃)

多くの登山者が休んでいたが、ほとんどの人は御池方面へ向かうようだ。思ったよりも花が少ないのがちょっぴり意外で残念。
ここで、うちわをバスに置き忘れてきてしまったことに気づく。

12:19 下の橋(1890m, 27.3℃)

橋
下の橋
崩壊地の下流、右岸への渡渉点に到着。以前の橋は木だったが、鉄パイプの立派なものになっていた。
ところで御池への分岐からたった30分しかたってない。こんなに早く着いたっけと首をかしげる。そういえば橋の手前にはガレ場のトラバースがあったけど、通ってないぞ? ひょっとして、橋の場所が変わったのか?
とりあえず渡ったところで休憩。このスペースも以前とは違うような気がする。

13:17 上の橋(2100m, 28.4℃)

道
右岸の登り
上の橋への登りが結構辛かった。ここはこんなに長くなかった。やはり道が付けかわったようだ。下の橋がさらに下流に付けられたのだろう。だから、ガレのトラバースを通らなかったのだ。
上の橋も鉄パイプになっていた。

14:08 二俣着(2370m, 24.2℃)

大樺沢
今年の大樺沢は残雪が豊富だ
コースタイムをちょっとオーバーして二俣着。最後は少しだけ雪の上を歩いた。
それにしてもやたらと汗が出て止まらない。意識的に水分をとるようにはしていたのだが、スポーツドリンクではないただの水だからなのかもしれない。

14:31 二俣発(2320m, 27.9℃)

道
白根御池へは木の張り出した道を行く
お池までは30分ほどなので、ゆっくり休憩してから出発。木の張り出したあまり良くない道を行く。マルバダケブキの蕾が目立った。
道はアップダウンはあるが、基本的にゆるく下る。木を何度もまたいでいくが、それが突然なくなり、平坦な歩きやすい道になると御池小屋に着く。

15:00 白根御池小屋着(2320m, 26.1℃)

小屋
大賑わいの白根御池小屋
テント場
池のそばのテントサイト
かなり疲れて御池小屋着。白根御池にはまだ残雪があった。御池小屋は新しくなってから初めて来たが、立派すぎて、南アルプスじゃないみたいだ。
入道雲がもくもくと湧いていたので、急いで受付をすませてサイトの選定にかかる。テントを池のそばに張り、中で小一時間ほど昼寝をしたら少し元気が出てきた。相当バテていたみたいだ。

あちこちにちらばっていたのでよくわからないが、テントは全部で20張以上はあったみたいだ。妙に暖かい日で、17時を過ぎてもテント内の気温はまだ22℃もあった。
夕食を食べたのは18時ごろと、我々にしては遅い時間だった。池は、小屋からの散歩の人がひっきりなしに来て、おしゃべりがうるさくて、なんだかもううんざりした。
暗くなって散歩に来る人もいなくなり、ようやく静かに眠れたと思ったら、今度は雷鳴で目が覚めた。夜の21時ごろだ。眠れなくなってしまったので外に出てみると、雷雲は北の鳳凰三山の方にとりついているようだった。稲妻も何度か見えたが、北岳の上空はまったくの晴れだった。月が雷雲に隠れてしまったせいで、逆に星がよく見えた。これほど星がよく見えたのは初めてかもしれない。雷と星が同居した、なんとも不思議な光景だった。

7月27日 晴れのち曇り

北岳
朝の北岳
3時起床。とてもよく晴れた朝で、北岳がよく見えた。テント内の温度は16℃だった。シュラフには下半身だけ入って寝たのだが、夜のうちに一度、寒くなって目が覚めて、肩までシュラフに入った。きっとそのときに一気に気温が下がったのだろう。
テントよりも小屋泊まりの人たちの方が早いくらいで、まだ暗いうちから次々と出発していく。見ると、草すべりを登る人と二俣へ向かう人の割合は半々といった感じだった。コースタイムはさほどかわらない。我々は草すべりを行くことにした。右俣コースの方が花がきれいかもしれないが、昨日歩いた二俣までの道をまた引き返すのがイヤだったからだ。

5:09 出発(2310m, 19.2℃)

カンバ
印象的なカンバのたもとには小さな広場とシナノキンバイが広がっていた
とにかく細かいジグザグを切って直登する。道はザレているが登りではあまりスリップの怖さを感じない。30分も登るとひときわ目立つ印象的なカンバの木があり、たもとが小さな広場になっていて休憩ができる。なぜかもう腹が減ったのでさっそくザックを降ろして行動食をとった。木陰は涼しく、シナノキンバイが広がっていて気持ちよかった。
カンバから少し登ると直登をやめて右側の林の中に入っていく。この林もそこかしこに休憩適地があった。

6:58 合流点のちょっと下

花畑
シナノキンバイを眺めながらひとやすみ
木々の間から時折北岳が頭を見せる道を楽しく登ると突然開けた斜面に到達。森林限界だ。右俣コースとの合流点はすぐそこで、登山者が往き来しているのが見えた。
この斜面が一面のシナノキンバイで埋め尽くされていて、スバラシイ。今日の予定は北岳山荘までと時間に余裕がありまくりなので、ここでザックを降ろして大休憩をとった。

7:25 合流点通過(2820m, 29.8℃)

北岳
シナノキンバイ斜面と北岳
写真をとったり行動食をとったりしながら30分近く休み、腰を上げた。
分岐点から上もシナノキンバイの花畑は続いた。6年前歩いた8月はトラノオだらけだったが、さすが7月は華やかだ。空はどこまでも青く、花の黄色がよく映えた。

7:49 小太郎分岐(2915m, 30.1℃)

富士山
富士山と雲
富士山が見えるようになり、階段が登場すると小太郎分岐に到達。さっきの合流点から30分しか歩いていないがまたまたザックを降ろす。
甲斐駒・鳳凰・八ツはよく見えた。最初仙丈は雲をまとっていたが徐々にとれてきた。中央アルプスも宝剣岳あたりは雲の間から見えたが、北アルプスは雲の中だった。

8:33 北岳の肩(3020m, 17.4℃)

肩
大賑わいの肩
雲
肩で休んでいると突然雲が湧いた
下山の人が多く、すれ違いに多少苦労しながら肩へ。空は相変わらず青く、北岳は雄々しかった。
またまたザックを降ろして休憩。小屋前の広場は結構な混雑ぶりだった。テント場にはまだ雪が少し残っていた。花壇にキタダケソウが1輪だけ残っていたらしいが、花壇がどこにあるか知らなかったので見なかった。

9:08 両俣分岐(3115m, 20.6℃)

花
両俣分岐のチョウノスケソウ
道
分岐からの道は岩がちだ
両俣への分岐には肩から25分で着いた。ここでようやく塩見岳が見えるようになる。
分岐にはチョウノスケソウの見事な群落があった。オヤマノエンドウやミヤマキンポウゲが彩りを添えていて見栄えがよい。よくよく見るとハクサンイチゲも混じっていた。
花の写真を撮ったりしてから再び歩き出すと、まったく予期していなかった雲が湧いてきた。

9:40 北岳登頂(3180m, 19.2℃)

道
甲斐駒をバックに山頂を目指す(右下の青いのは肩の小屋)
山頂
標高の書き換えられた山頂標識と仙丈ヶ岳
山頂は、人がいっぱいで休む場所もないんじゃないかと思っていたが、まあまあの混雑だった。記念写真を撮ろうとしてもケイタイに夢中になっている人がやたらと多くてどうアングルを変えてもうつむき加減の人の姿が入ってしまう。まあしかたないけど。
登頂したころには間ノ岳が半分雲に隠れてしまい、鳳凰は見えなくなっていた。甲斐駒も見る見るうちに雲に包まれて、見える山は仙丈と遠くの塩見だけとなってしまった。

10:40 北岳発(3190m, 21.0℃)

道
崩壊した登山道と花畑
みかんを食べたりしてのんびりしたが景色は一向に変わらず。北岳山荘に向けて下りることにした。
山頂の南側は道が悪い。道の崩壊が激しく、5年前にはまだいくらか役目をなしていた鉄柵は、この日は完全に倒壊していた。ここってこんなにひどかったっけ? と相棒がつぶやく。ただし花は素晴らしい。ハクサンイチゲ、イワベンケイ、シナノキンバイ、イワカガミ、キバナノコマノツメ、ミヤマオダマキ、ハハコヨモギ、タカネツメクサ、etc...

11:07 八本歯分岐(3095m, 19.8℃)

道
下りてきた道を振り返る
まっすぐ山荘を目指さずに、花のきれいそうなトラバース道を選択する。分岐から八本歯方面へ曲がる。この下りもまた岩くずの道。神経を遣う。

11:21 トラバース道分岐(3025m, 23.4℃)

花
トラバース道の花畑:イワオウギとクルマユリ
キタダケソウが残っているという情報があったので、トラバース道では目を皿のようにして斜面を見たがさっぱりわからなかった。
この時期の斜面の主役のひとつはイワオウギだった。クリーム色で地味な花だが、これだけ集まると圧巻だ。もうひとつの主役はキンロバイ。これは目にも鮮やかな黄色で、否応なしに目を奪う。ほかに目についたのはタカネグンナイフウロ、ミヤマキンバイ、イブキトラノオ、ミネウスユキソウ、ミヤマムラサキ、クルマユリといったあたり。トラノオはまだ咲き始めといった感じだった。なにしろ凄い花畑で、これほどの種類・量は見たことがない。大雪山なんかの花畑も圧巻だが、種類がこんなにないのでまた違う印象なのだ。

12:24 北岳山荘着(2940m, 29.0℃)

時間が早いが今日は行動終了。農鳥小屋まで行けないことはないが、午後の雷雨が怖いので無理はしない。日程も食料もたっぷりあるし、焦る必要はまったくないのだ。
この時間ではさすがにテント場はまだ空いていた。富士山側に遮るもののない一等地を確保。しかしあたりはすっかり雲の中だった。時折、上空だけぽっかり雲がとれて陽が射したりするが、おおむね曇りで、テントの中が暑くてたまらない、ということはなかった。コーヒーを飲んだりしてくつろぐ。ここで初めてフライシートのシームテープがあちこちで剥がれているのを発見したが、豪雨にならなければ問題ないだろうとのんびり昼寝する。

稜線のテント場

16時過ぎに起きて夕食の準備をしようとしたら雲行きが怪しくなってきた。と思っていたらゴロゴロと鳴り出し、あっという間に土砂降りに。前室の地面を見ると水がとうとうと流れていて、川の上に浮いているような錯覚に陥った。さきほど発見したシームテープの剥がれ目から浸水してきて焦ったが、雨は30分ほどでおさまり、被害は特になかった。
しかし雨の後は暴風が吹き荒れた。石で固定した張り綱が一発で外れたので慌てて外に飛び出してペグで固める。周りの人たちも補強に出てきていた。雨は止んでいたのでのんきに周りを見まわしていたら、雲が猛烈なスピードで北岳を通り過ぎて、なかなか迫力のある光景が見られた。風はかなり強力で、いくつかのソロテントは、まるで目に見えない巨大な怪物が先っちょをつまんで左右に動かして遊んでいるかのように、のたうちまわっていた。人間自身が重石になっているから、補強に出たくても出られないのだろう。こういうとき単独行はツラいなと思った。
また、こんな中を山頂から降りてくる人がいて驚いた。夕方5時近く、雷雨の稜線を歩いてきたとは無謀にもほどがあるが、まあ止むに止まれぬ事情があったのだろう。
そんなこんなで夕食は18時とちょっと遅くなった。この頃には富士山も見えていた。テントは20張ちょっとだった。
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