花真っ盛りの北岳 2000年8月11日 - 12日 テント泊縦走

8月11日 晴れ

9:51 広河原発(高度計:1590m, 温度計:31.6℃)

行く手に見える大樺沢は、残雪はわずかだ。今年の南アは雪がひどく少なく、雪に埋もれなかったレンゲツツジの芽がすべてやられてしまった、とは広河原の登山指導員氏の言。

12:35 二俣(2255m, 27.4℃)

暑い。いや熱い。

12:54 二俣発(2275m, 31.4℃)

バットレス
バットレス
当初は右俣コースをとって肩の小屋を目指す、疲労度によっては上には登らず御池小屋泊りにする、という計画であった。が、大樺沢上部の雪が目にちらつき、そちらが涼しいのではないかという理由で、八本歯 - 北岳山荘に目標変更。
大樺沢の中腹くらいまでは晴れていたのだが、バットレスには雲がかかっていて、そら恐ろしい感じがする。

15:59 ようやく八本歯のコルに到着(2855m, 24.8℃)

八本歯のコルの上部のハシゴ場
八本歯のコルの上部のハシゴ場
大樺沢上部の登りはきつい。木のハシゴがコルの少し先までひたすら続く。もうすでにばてばてで、ハシゴも三点確保で一段ずつ登る始末。

16:38 分岐着(2955m, 21.1℃)

ハシゴが終わると今度は巨岩の累積する登りを経て、ようやっと分岐に到着。あとは小屋へのトラバースだけだ。やっと目鼻がついた。17時ちょっと過ぎにはなんとか小屋に着けそうだ。あー、ほっとした。

16:52 事故発生(2965m, 23.1℃)

この巻道は花が美しい。ウスユキソウが多く咲いていた。キタダケソウはさすがにもう咲いていなかった。なかでもトリカブトとクロトウヒレンの群落はすばらしかった。
と、思っていたら石を踏み外して左足首捻挫。またやってしまった。花畑に見とれ、疲労もピークに達し、小屋まであと少し、という気分から注意が散漫になっていたことが原因と思われる。エアーサロンパスで応急処置をして、とりあえず小屋を目指す。

17:38 北岳山荘着(2870m, 24.2℃)

ものすごくゆっくり、おそるおそる歩いて到着。テント場は思ったより狭く、平らに整地されている面が少なかった。

その夜

夕食
夕食・ワインと焼肉
本日の夕食はカルビ焼肉・野菜炒めとワイン、デザートはゼリー。いつもならもう寝ている時間だが、ようやく食事ができた。ご飯を炊かなかったので、水を使わずにすんだ。北岳山荘の水場は稜線のはるか下。水はポンプでくみ上げているのでことさら貴重だ。1リットル100円。
捻挫によって計画の変更を余儀なくされた。ここは3000mの稜線である。一番早く下山できるのは今日登ってきた大樺沢ルートだが、上部のハシゴ場や岩ガレは捻挫の足ではどうだろう。疲労のためか猛烈に眠く、上手く考えがまとまらない。とりあえず4時に目覚まし時計をセット、下山ルートは明朝の足の具合で決めることにして、エアーサロンパスを大量に吹きつけ、湿布を貼って19:00過ぎに眠りについた。

8月12日 晴れのち曇

4時起床。すばらしい天気。ガイドブックの標準コースタイムの1.5倍を見込んで計画を練る。結局、大樺沢よりも道が良さそうな右俣コースから下ることに決定。そうすれば山頂も踏めるし。一日かけてのんびり下りよう。

7:05 出発(2870m, 25.7℃)

北岳山荘からの朝の北岳
北岳山荘からの朝の北岳
テント撤収、左足をテーピングでガチガチに固めて、出発。
天気は最高。右には富士山、左に中央アルプスや仙丈ヶ岳、後ろに間ノ岳。名峰たちに見守られながら、本邦第二の高峰にチャレンジ。登り始めは捻挫した足が少し痛かったが、そんな痛みを吹き飛ばしてくれる大パノラマだ。
しかし徐々に雲が出てきて、いつのまにか間ノ岳や富士山が見えなくなってしまう。

8:47 北岳登頂(3140m, 23.1℃)

鳳凰三山
北岳山頂から鳳凰三山の眺め
八ヶ岳は赤岳の頭がちょっと見える程度。中央・北の両アルプスも、雲に隠れてしまった。甲斐駒も雲の中だったので、主な山で山頂から見えたのは仙丈岳のほかは鳳凰三山くらいだった。鳳凰を上から見下ろすアングルで見られることに感動した。
時間的なこともあるのだろう、山頂には10人程度しか人がいなかった。

9:36 北岳発(3135m, 20.5℃)

山頂から肩の小屋に下る
山頂から肩の小屋に下る
肩の小屋を目指す。ガイドブックでは急な下りということになっているが、大したことはないと思った。
後で思ったことだが、北岳登頂に関しては、前日8時間もかけ、捻挫までして登ってきたにもかかわらず、あまり達成感が大きくなかったというのが率直な感想だ。さほど展望が得られなかったせいもある。しかし、他にも原因はあるだろう。これはよく考えてみなければならない課題だ。

10:15 北岳肩の小屋着(2990m, 26.2℃)

10:42 肩の小屋発(2945m, 21.6℃)

水を補給(1リットル100円)して、出発。ここの水はカルキ臭がきつい。

11:05 小太郎分岐(2820m, 23.4℃)

小太郎尾根分岐直下の花畑
小太郎尾根分岐直下の花畑
下を見下ろすと花畑の片鱗がうかがえる。大期待。
どの斜面もトラノオが一面に咲いていた。ほかにはクルマユリ、ミヤマシシウド、チシマギキョウ、ウサギギクなど。

右俣コース

雲の岩峰とトラノオ
雲の岩峰とトラノオ
岩場もなく、たいへん歩きやすい道。なんといっても花が美しい。昨日の登りにこちらの道を選ばなかったことを悔やんだ。
ただ、やはり登りはそうとうキツそうで、登りの人とすれ違うたびに「稜線まであとどれくらいですか」と訊かれた。推定あと30分というところでは、休憩している人が10mおきにいた。

13:04 二俣着(2255m, 22.7℃)

15:38 広河原(大樺沢出合)着

広河原近くでこんな時間に今から登ってくる人に出会った。登り優先と思い道を譲ったら、曲がり角の向こうから続々とやってくる。実は総勢30人ほどの登山ツアーであった。こんな大パーティなんだったら逆に道を譲ってほしかった。おそらく御池に向かったのだと思うが、今ここにいるということは小屋に着くのも19時過ぎだ。小屋も同宿者もたいへんな迷惑だろう。
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