Bala -The Blue Castleとアヴォンリーの村の午後- 


 トロントの北へ200キロ程の森と湖の Muskoka 地方に Bala's Museum という小さな博物館があります。 Leaskdale の牧師館で生活していたモードが 1922 年に夏の休暇を過ごした場所で、当時食事をとったツーリストホームが Bala's Museum になっています。モードの PEI を舞台としない唯一の小説「青い城」のモデルになった場所です。ずっと訪れてみたいと思っていたところ、 Yuka さんより8月16日に恒例の第4回「赤毛のアンそっくりさん大会」 があるとのお知らせをいただきました。

 8月16日土曜日。トロントに時々やってくる蒸し暑いちょっといやなお天気です。ダウンタウンの予想最高気温は31度、 Muskoka の方が少しは涼しいかしら。ちょうど日本から遊びに来ていたアンシリーズを少し読んでいる友人と一緒にでかけました。彼女には「青い城」を数日前に渡しておいたら熱心に読んでいました。

 Freeway400 号を北へ、さらに 11 号に乗り換えて Gravenhurst で降りて169号を西へ向かいます。トロントの少し北のカナダワンダーランドまでは渋滞しましたが、それ以降は多少交通量は多いものの快適なドライブです。 11 号は制限時速100キロで信号は無いと言っても、道のすぐ脇にお店や側道があって出入りする車が沢山います。有料の日本の高速道路では信じられない光景です。 Gravenhurst は Muskoka 地方の入り口の街でしょうか、小さな市街地を過ぎると、そこにはもう森と湖の風景が広がっていました。松林と落葉樹の森が点在し、湖や湿地が見え隠れしています。山の無いオンタリオ州南部ですが、日本の高原をドライブしているような気分です。所どころにコテージや別荘らしき建物、キャンプ場やボートレンタルの看板を見ましたが、お店はほとんど見当たりません。

 Gravenhurst から20分程でしょうか、 Moon River の橋を渡ると Bala の小さな集落に着きました。 River Street を左に折れて住宅地(といっても点在しているくらいですが)を通りすぎると右手に Yuka さんのページで見た Bala's Museum がありました。まだ時間が早いせいか人影もないのでそのまま通りすぎ、表通りへもどって食事のできるところをさがしにいきました。結局レストランらしきは見当たらず、グローサリーストアー(肉やハムを売っているお店)のサンドイッチでランチタイム。でもさすがにハムはおいしかったです。

 赤毛のアンそっくりさん大会」の始まる2時少し前にミュージアムへもどってみました。いましたいました、三つ編みに麦わら帽子、コットンのワンピースにエプロンの女の子達とその家族。曇り空から一瞬大粒の雨が落ちてきましたがすぐに止み、ミュージアムのお庭は人であふれ始めました。お庭の入り口にいると、ちょうど Yuka さんと旦那様がいらっしゃいました。 Yuka さんは今日は審査員をたのまれているそうです。今年はアンだけではなく他のモードの小説のキャラクターならなんでもエントリーできるそうで、アンとカップルで歩いているダイアナも何人かいます。

 小さなお庭でアトラクションが始まりました。最初は二人三脚。アン姿の子も普通の洋服の子も入り交じってとっても楽しそう。でもやっぱり女の子が多いですね。それからスプーンレース。ドラマのアヴォンリーの村にタイムスリップした気分です。審査員は Yuka さんと2年前のアンそっくりさん優勝者のステファニーちゃん、それにおば様がお二人。エントリーしている女の子たちに一人一人インタビューをしています。アンが14人もいるとかで選ぶのも大変みたい。ゲームの後には操り人形のアンの物語が始まりました。

 アンを選ぶ基準は見た目だけでなく想像力があっておしゃべりで、そんな女の子みたいです。審査に時間がかかっているようで、その間に司会のジャック・ハットンさんがエントリーしている女の子たちをベランダに上げてインタビューしています。審査発表はステファニーちゃんからです。まずダイアナのウィナー、それからアンの第4位から。1位のアンは赤毛のかつらをかぶって私の目からはちょっと作りすぎの女の子。きっとおしゃべりが上手だったのでしょう。私のお気に入りの紺のワンピースに白いエプロンの女の子は第2位。とってもシャイでインタビューに対しても恥ずかしがってあまりしゃべらなかったそうです。最後にお庭でアンとダイアナとみんなそろって記念撮影。元新聞記者のジャックさんはニュース記事をお書きになるのか、最後までカメラを向けていました。

 大会が終ってから Yuka さんがミュージアムの中を案内して下さいました。このミュージアムが出来たのはちょうど5年前、研究者から Bala がモードの青い城のモデルとの話しを聞いたハットンさんご夫妻がモードが食事をとった場所を探し当て、ちょうど売りに出ていたのを買い取ったとのことです。ミュージアム全体がモードが Bala を訪れた1920年代をイメージして装飾されています。

 玄関を入って左側の部屋には、当時の衣装や蓄音機、奥様のリンダ・ハットンさんのお祖父様が撮られた当時の Muskoka の写真、ピクニックバスケットなどが展示してあります。右側の部屋はキッチンです。当時のものを苦労して集められたそうです。ライトグリーンのパステルカラーに統一されてとっても素敵なキッチンです。カナダでの初代型の冷蔵庫や電気のキッチンストーブがちょうど使われ始めた時代のようです。戸棚の中には当時のラベルのついた食品の缶や瓶が沢山はいっています。薬戸棚の中も同じです。中央のテーブルの上には調理器具がいっぱい。すべて開けても触っても構わないようになっています。苦労してコレクションされたことでしょう。

 1階の一番奥の部屋はギフトショップになっていました。実はここが当時モードが食事をとった部屋だそうです。 PEI へ行かないとなかなか売っていないような赤毛のアンとモードのグッズがいっぱい置いてありました。

 2階へ上がってみましょう。階段の左側、ちょうどキッチンの上の部屋にはモードの本のコレクションがいっぱいです。初版本から時代を経て、いろんな絵の表紙の本がガラス戸棚の中にならんでいます。時代によって描かれる女性の姿の移り変わりが良くわかります。モードの夫ユーアン・マクドナルド牧師の写真や、当時の男性の装束も飾ってあります。 Muskoka を訪れたマクドナルド一家の写真もありました。驚いたことに Leaskdale から車で裏道を走ってきたそうです。高速道路の無かった時代、いったい何時間かかったのでしょう。ジャックさん撮影の朝靄の Muskoka の湖の風景写真は、とっても素敵です。

 階段の正面はサンルームのような作りになっています。モードが結婚のお祝いに贈られたという銀のティーセットがガラスケースの中に展示してありました。時代を経ても奇麗に磨かれて光っています。奥のテーブルには当時のタイプライターが置いてありました。モードはこんな机で Leaskdale で物語を書いていたのでしょうか。日本語に翻訳された本も数冊置いてあります。ハットンさんご夫妻は日本からのお客様をとても喜んでくださるそうです。

 残る階段右手の部屋はヴァランシーが夢に描いた『青い城』の中の彼女の部屋のイメージに装飾してありました。すべて奥様のリンダさんが飾り付けをされたそうです。なんて素敵なお部屋でしょう。残念ながらこの部屋だけは中まで入ることができませんでした。やっぱりヴァランシーの夢にまで踏み込んではいけませんよね。

 今日は Yuka さんのお陰でくわしくお話しを聞くことができました。 Yuka さんは初めて来たときにジャックさんにミュージアムの端から端まで案内していただいたそうです。2ドル50のアドミッションでこんなに説明してもらっていいのかしらと思った程だったとか。ミュージアムのお庭で、 Yuka さんにさよならを言いに来たステファニーちゃんと一緒に写真を撮らせてもらいました。とても12歳とは思えない、背のスラッと高いしっかり話しをする素敵な女の子でした。きっとアンの様な女性になることでしょう。ミュージアムを出て道の反対側にあるローズローンコテージの方へ少しお散歩しました。 Moon River の川風が心地よく吹いてきます。ジェットスキーの騒音がするのがちょっと残念。トロント滞在中にコテージに泊まりに来られたら素敵でしょうね。


Last Update: 13 Sep 1997
冬☆ Leaskdale ☆ Norval ☆ Uxbridge   春☆ Uxbridge ☆ Leaskdale ☆ Uxbridge
夏☆ Leaskdale ☆ Bala   秋☆ Uxbridge ☆ Norval ☆ Jane


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