Science News 2009年9月14日
携帯電話
連邦政府当局健康影響を精査している


情報源:Science News September 14, 2009
Cell phones: Feds probing health impacts
By Janet Raloff
http://www.sciencenews.org/view/generic/id/47338/title/Cell_phones_Feds_probing_health_impacts
9/14/2009 Webcast of Labor HHS Hearing on Health Effects of Cell Phone Use

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年9月17日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/SN_090914_cell_phone.html


 世界の40億人の携帯電話ユーザーのために、本日の上院の保健福祉(HHS)公聴会で人を躊躇させるようないくつかの言葉が引き出された。それは10年あるいはそれ以上携帯電話を使用しているヘビー・ユーザーは脳腫瘍のリスクが増大しているかもしれないということである。あるいは携帯電話から放射される電波は、少なくとも携帯電話の研究では、DNAを損傷する。あるいは子どもたちの携帯電話使用が増えており、これらの機器が両親よりも子どもたち自身の脳に電波を浸透させるということである。

 今日まで、携帯電話の健康影響に関するほとんどの研究は国外(訳注:米国以外)で実施されたものである。アメリカの研究者らはこの間、どこにいたのか? 本日午後の上院歳出委員会における最大の関心ごとは精査ということであった。

 米食品医薬品局(FDA)は携帯電話電波の発がん性を研究するよう関連する連邦機関を指名した。その関連機関−国家毒性計画(NTP)(国立環境健康科学研究所(NIEHS)の所轄)が現在そのようなテストを実施しているとNTPの副局長ジョン・ブッチャーは述べた。

 今日彼は、NTPが携帯電話の使用による、がんを含む潜在的な健康への有害性を調査することになった3つの脅威の概要を説明した。

 現在の科学的証拠は、”携帯電話の使用と健康問題との関連性を決定的には結論付けていないが、我々や他の科学的組織は、携帯電話の使用に関連する低レベル電波放射による人への潜在的なリスクを調べるために、もっとよいデータを必要としている”と彼は述べた。実際携帯電話がいたるところで使用されているということは、”たとえそれらの使用が有害健康影響のリスクをわずかに増すだけであったとしても、著しい公衆健康問題になる可能性がある”と述べた。

 どのくらいのアメリカ人が無線で話をしているのであろうか? 約2億7,000万人であると彼は報告した。いくつかの初期の研究は有害性は見出されないと報告しているが、”最近、これらの携帯通信機器を長年使用している人々の間に脳腫瘍が増加しているといういくつかの報告がある”と彼は述べた。10年あるいはそれ以上である。

 ブッチャーへの質疑において、上院議員トム・ハーキン(民主、アイオワ)とアーレン・スペクター(民主、ペンシルベニア)は、携帯電話の使用から生じる可能性ある有害性に関する現在の連邦政府機関の研究プログラムは無気力であると示唆した。研究のための資金調達が必要であると彼らは示唆した。連邦政府機関はヒト健康に焦点を当てるべきであり、またどの研究が産業側から金が出ているのかを特定すべきであると示唆した。それはそのよう産業側の影響は、データ分析に多分バイアスがかかることになるからである。

 彼の回答の中で、ブッチャーは、この問題に関する調査は限られた彼らの予算に基づいており、予想されている程度に前進していると述べた。彼は、連邦政府の資金による多くの研究が現在実施されていると述べた。それらの中の主要なものには、シカゴのイリノイ工科大学における新たなげっ歯類での研究がある。彼らは、1日20時間、通算2年間、携帯電話の電波を自由にさせた動物に照射するために、それぞれがウォークイン・クローセットのサイズの21の部屋を用いている。

 ほとんどの今までのヨーロッパの研究は、拘束した動物を1日に2時間しか照射していなかったのだから、これらの大きな新たな檻は重要な意義があると彼は述べた。他の分野の研究が拘束はストレスを与えることがあることを示している。そこで、大きな檻を用いたことの理由は、どのような無線周波数の照射への反応もそのようなストレスによって影響を受けていたのではないかとの疑問に対応するためである。

 NTPの新たな研究に対し、国立標準技術研究所の科学者らは、携帯電話で使用されている周波数帯−900又は1900メガヘルツで統計的に一様な電磁場を生じるよう、遮蔽された部屋に設置する回転アンテナ・システムの設計を支援した。

 げっ歯類の妊娠から成熟期にいたるまで一生の全ての段階における影響を評価するために、オスとメスのマウスとラットは、妊娠したものを含めて、全て解剖されるであろう−とブッチャーは説明した。慢性毒性テストは来年遅くに開始し、2014年までにそれらの所見のピアレビュー分析が行われることが期待される。

 5つの大学における研究もまた、 携帯電話の放射を含んで、髄膜腫(meningiomas)を引き起こす潜在的な環境要因を研究するために連邦政府の資金供給を受けている。通常、良性(非がん)のこれらの腫瘍は脳や脊髄(spinal cord)を取り巻く細胞膜中に生じる。カリフォルニア大学ロサンゼルス校では、他の科学者らが携帯電話放射に暴露した10万人以上のデンマークの子どもたちの調査から得られたデータを精査中である。ここでは、科学者らは、てんかん発作、片頭痛(migraine)、睡眠障害、行動障害などを含んで非腫瘍性影響を調査している。

 この公聴会の議長であるハーキンは、ヨーロッパの研究者らは、大規模な INTERPHONE study (訳注1)などへの参加を通じて携帯電話技術のヒト影響の研究で先頭に立っているということを認めた。ハーキンは次のように質問した。なぜ、アメリカは子どもと成人に及ぼす携帯電話の影響を調査するこの大規模な試みに参加しなかったのか?

 ブッチャーは、国立がん研究所は INTERPHONE に少なくともある資金供給を行ったので、アメリカの研究コミュニティもある役割を果たしたと述べた。しかし、ハーキンは、アメリカは参加13カ国のリストの中に入っていないことを指摘し、そのことはアメリカの役割は、取り立てて言うほど重要ではなかったということを示唆した。
 スペクターはこの問題についてもう少し深く踏み込んで、アメリカの科学者らはこの問題についてもっとヒトについての研究をすべきではないかと問うた。

 ”確かにその通りであり、ヒトに関する研究がなされるべきであると”とブッチャーは答えた。 携帯電話研究のためにNIH以上にコストは割り当てられないのか? ”できると思う”とブッチャーは上院議員に答えた。

 ”ヒト研究にどのような種類の研究を勧告するのか、そのコストはどのくらいなのか”についてブッチャーは小委員会に勧告することができるか? NTPの役人(訳注:ブッチャー)は、できるが、直ぐにではないと答えた。よろしい。とスペクターは言った。”できるだけ、早くするように”。

 携帯電話信号が環境条件によってどのように影響を受けるかに関して専門家ではない我々のあるものは、上院議員のブッチャーへのさらなる質問から何かを学んだかもしれない。例えば、スペクターは、携帯電話はエレベータの中や地下鉄、その他、受信が弱い又は遮られる場所では使用すべきではないと説明を受けてきたと述べた。これは真実か? と彼はたずねた。

 その通りであるとブッチャーは述べた。”そのような場合には携帯電話基地局に達するために用いられるパワーがより高くなるからである”。ブッチャーは、この説明で幾分不確かな様子を見せた。そこで上院議員はすかさず高い調子で、調べた後に”もっと確かな答えをするよう”要請した。

 実際に、この最後の質問に答えるために、上院議員は Science News の読者層の中の技術者であって、生物化学者や毒物学者として訓練を受けたものでない誰かを招聘すべきであった。そして恐らく、後日のいつかに彼らは無線周波数の教祖(グル)を証言に招聘するであろう。ハーキンとスペクターは携帯電話と、いかにユーザーの電波放射暴露を制限するかが、今後さらに追求したいと望むテーマであることを示した。


訳注1:INTERPHONE studyに関する参考情報
訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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