欧州議会プレスリリース2009年4月2日
電磁界の潜在的なリスクを回避すること

情報源:European Parliament Press Release 02-04-2009
Avoiding potential risks of electromagnetic fields
http://www.europarl.europa.eu/news/expert/infopress_page/
066-53234-091-04-14-911-20090401IPR53233-01-04-2009-2009-false/default_en.htm


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年5月2日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/sick_school/emf/EP_Press_090402_avoiding_emf


 欧州議会により採択された報告書(訳注1)によれば、アンテナ、携帯電話マスト(アンテナ)、その他の電磁界(EMF)放出装置は、学校や健康施設などから一定の距離をおいた場所に設置されるべきである。欧州委員会は、情報を十分に与えられていないと感じている市民の電磁界暴露の影響について、信頼性のある情報をもっと入手しやすくすべきである。この報告書は賛成559、反対22、棄権8で採択された。

 この報告書は、無線技術と電磁波放出技術の広範な利用及びそれらの社会への便益を認めているが、それらの”可能性ある健康リスクについての不確実性が継続していること”に関する懸念もまた提起した。特に、子どもと若い人の電磁界への暴露について懸念がある。したがって、欧州議会議員はより厳格な規制と住民や消費者の保護を要求する。

”装置の最適な設置”によるEU市民のためのよりよい保護

 フレデリック・リエス(ALDE, BE)によって起草された同報告書は、産業利害関係者らは、生活空間に関連して、発信アンテナの方向や場所と発信機の距離などを含んで、すでに多くの安全に関連する要素に影響を及ぼすことができる。産業側当事者は近くに住む人々をよりよく保護するためにその持てる力を使用し、”マストや発信機の不適切な設置が拡大すること”を防止することが求められている。

 アンテナ、携帯電話マスト、及び高電圧送電線の設置は、健康リスクと訴訟を最小にするために、産業側当事者、行政当局、及び住民団体との間で協議されるべきである。このことはまた、EMF 発信装置が、学校、託児所、老人施設、介護施設などを避けることを確実にするであろう。これに加えて議会は、携帯電話事業者らは”公衆の 電磁界暴露”を低減するために基盤施設を共有することを協議すべきであると勧告している。

信頼性の情報へのアクセス強化

 最近の世論調査実施機関(Eurobarometer)の調査は、”当局は電磁界から市民を保護するための適切な措置について市民に知らせていないと市民の大部分は感じている”ことを示唆している。この点に関し、同報告書は欧州連合(EU) の市民が信頼できる情報にアクセスすることについて多くの改善を示唆している。それらの示唆にはインターネットで利用できる、EMF 発信装置の暴露地域を示す地図の作成を含む。これに関し、欧州委員会は、”EUにおける電磁界放射レベル”及びその発信源に関する報告書を毎年発行すべきである。

 欧州議会議員はまた、全ての無線装置の発信出力を示すであろうラベル表示義務を課すために欧州電気標準化委員会の技術基準を改定することによって消費者情報を改善することを求めている。

電磁界(EMF)制限の見直しと国際共同疫学研究(Interphone)の結果

 欧州委員会は、”勧告 1999/519/EC に示されている EMF 制限の科学的根拠と適切性を見直し”、議会にその結果を報告することを求められている。このことは、多くの加盟国がEUによって求められているよりもっと厳格な規制を自主的に導入しているという事実に基づいている。

 同報告書はまた、国際共同疫学研究(Interphone study)(訳注2)に言及しているが、これは2000年に開始されたもので、携帯電話と、脳、聴覚、耳下腺の腫瘍を含むある種のがんとの関係を調査するための広範な科学的プロジェクトである。その結果が出ることは2006年以来期待されているが、繰り返し延期されている。欧州議会は、国際共同疫学研究のコーディネータであるエリザベス・カーディスからの、”子どもたちに関し携帯電話は合理的な制限を超えて使用されるべきではない”とする”警告のためのアピール”によって特に懸念している。

 そこで同報告書は、この研究にかなりの財政的寄与をしている欧州委員会に対し、この研究の責任者に”なぜ結論が発表されないのか”問うよう求めている。議会と加盟国は、もし返答があるなら遅滞なく知らされるべきである。

子どもと若い人

 子どもと10〜20歳の若い人は携帯電話を最も使用する人々であり、”特に脳がまだ発達中の若い人”への可能性あるリスクについてまだ不確実性があるので欧州議会の懸念となっている。同報告書は、携帯電話の危険性についての意識を高めるとともに、ハンドフリーキットを使用し、通話時間を短くし、電源を切るなどの携帯電話の上手な使い方を促進するために、EMFs 研究に向けられている欧州共同体の資金の一部を意識向上キャンンぺーンに切り替えるよう提案している。

 ”子ども専用に設計された携帯電話の販売や、10代向けの無料通話時間パッケージ”などを含む電話事業者による積極的な営業キャンペーンもまた、欧州議会議員によって非難されている。


訳注1
REPORT on health concerns associated with electromagnetic fields (2008/2211(INI)) / Committee on the Environment, Public Health and Food Safety Rapporteur: Frederique Ries

訳注2:INTERPHONE studyに関する参考情報

訳注:関連情報


化学物質問題市民研究会
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