欧州環境庁(EEA)2013年1月 レイト・レッスンズ II
10. ビスフェノールA:
異議が唱えられる科学、異なる安全性評価 (概要編)

Lennart Hardell, Michael Carlberg and David Gee

情報源:European Environment Agency
EEA Report No 1/2013 Part A Summary
10 Bisphenol A: contested science, divergent safety evaluations
Andreas Gies and Ana M. Soto
http://www.eea.europa.eu/publications/late-lessons-2/late-lessons-chapters/late-lessons-ii-chapter-10

紹介:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico
掲載日:2013年2月19日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/precautionary/LL_II/10_Bisphenol_A_summary.html


 ビスフェノールA(BPA)は、現在、世界で最も売れている化学物質であり、主にポリカーボネート・プラスチックを製造するために使用されている。それは赤ちゃん用ほ乳瓶、家庭用電子機器、医療器具、食品容器のコーティングなどの一般的製品に広く使用されている。BPAは、女性ホルモンのひとつであるエストロゲン様の作用をし、それが使用されてる材料から漏れ出すことが知られている。

 研究は、たとえ低用量のBPAへの曝露であっても内分泌かく乱作用を引き起こすかもしれないことを示唆している。他のホルモンのように、発達中の有機体において最も感受性が高いが、その影響はしばしば生涯の遅くなるまで観察されない。このことは、影響が検出できる時にはその化学的曝露は消えて見えなくなっていることを意味する。このことは、ヒトにおける曝露と影響を関連付けることを極めて難しくしている。

 本章は、げっ歯類とヒトの研究で発見されたいくつかを描いている。それはまた、産業側の資金のついた研究と独立した科学研究の結果が著しく異なる場での科学的発見を評価することの課題を議論する。著者等は、科学的研究とテストから資金的利害関係を切り離す方法のための示唆を提供している。

 ビスフェノールAのような広く使用され拡散している産業化学物質は、政策策定者に影響を及ぼす内分泌かく乱物質の議論あるひとつの事例である。アメリカとヨーロッパの当局によるBPAのリスク評価への異なるアプローチが示されている。それは同様な証拠が異なるリスク評価手法で異なる評価結果をもたらす手法に光を当て、予防原則を適用するための課題を示している。

 BPAに関する激しい議論と科学的作業がテスト戦略を改善するプロセスにゆっくりと貢献している。従来の毒物学は、影響は被検物質(test agent)により引き起こされるという証拠として、単調増加用量反応関係に依存していたが、BPAやその他の内分泌かく乱化学物質(EDCs)はこのアプローチの限界を実証し、ある場合には調整がなされた。

 さらに、単純にBPAを弱エストロゲンと考えたり、もっと強い内因性エストロゲンに観察されることから外挿することで、影響を予測することはできないということが広く受け入れられている。この教訓は、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERMs)への医薬品の強い関心に特にはっきりと現われている。本章は、発がん性を特定するための動物テストの価値を分析するパネルが続いている。


訳注:参考資料


化学物質問題市民研究会
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