ワシントンポスト 2009年5月31日
BPAの使用禁止を阻止するための戦略を
産業界が練っている

情報源 Washington Post, May 31, 2009
Strategy Being Devised To Protect Use of BPA
Groups Hope to Block Ban of Chemical
By Lyndsey Layton
Washington Post Staff Writer
http://www.washingtonpost.com/wp-dyn/content/article/
2009/05/30/AR2009053002121.html


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2009年6月16日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/
kaigai_09/09_05/090531_WP_Strateg_Use_BPA.html



BPAフリー表示があるキャメルバックの水容器
(David Mcnew - Getty Images)
飲料・食品用の缶の製造者とコカコーラを含む最大のユーザーの何社かは金属缶とふたのライニングに使用される議論ある化学物質の政府による禁止を阻止するために、社会との関係とロビーイング戦略を工夫しようと試みている。

 ワシントン・ポスト紙が入手した私的な会合の内部資料によれば、苛立った産業界の重役たちは5月27日水曜日、ビスフェノールA(BPA)に対する社会の懸念にどのように対処するか検討するために長時間、協議した。同資料は、重役らは、しばしば家庭の買い物の選択を行い、健康についての懸念に関心が最も高い若い母親の見解について特に懸念していると述べている。

 コスモ・クラブで開かれた会合で彼等は、”法令のバランスと21〜35際の母親と学生への対応が彼等の産業の安全のために必須であると信じるが、同協会メンバーは研究を継続し彼等の産業を保護するための明確なプランを開発する”と、作成者不明の資料は述べている。

 産業代表者らは、人々をビスフェノールAを使用しない容器を選択することを思いどどまらせるために、消費者に委ねる戦略(例えば、”あなたは、冷凍食品や生鮮食品の様な高い製品を選ぶのか、または缶詰食品を選ぶのか、選択することができる”)とともに、脅かし戦略、(例えば、”赤ちゃん食品についてまだ議論したいのか?)などを含む広い範囲のアイディアを考えたと、その資料は述べている。

 同資料によれば、参加者らは、社会関係対応キャンペーンのためのメッセージを作りだすのに約50万ドル(約5,000万円)かかると見積もっている。彼等の最良の代弁者('holy grail' spokesperson)は国中でBPAの便益を伝えてくれる若い妊婦であろうと同資料は述べている。

 参加者らは、主要メディアは業界側の主張を無視していると述べ、また同グープは、”立法の戦いと立法プロセスを操作することができる味方にどのように焦点を当てているかについて述べた”と同資料は書いている。

 水曜日の会議を招集した北アメリカ金属容器連合及びその顧客の代理人である法律会社バーガソン・キャンベル社のロビーイストであるキャスリーン M. ロバーツは同資料が正しいことを認めた。彼女は、メンバーは金属缶中のBPAの使用を制限する又は廃止するであろうキャピトルヒル(訳注:米議会)とともに、国家立法部の手にある法案について懸念していると述べた。彼女はまたBPAは安全なのに活動家グループによって毒を塗られ、消費者はその重要性を完全には理解していないと述べた。

 ”我々は、はもしBPAが廃止され、適切な代替がが存在しないなら、その結果はどのようなものになるのか人々は本当には理解しているのか議論した”とロバーツは述べた。それは全てのことが議題に乗せられたブレ-ンストーミングであり、特定の決定は何もなされなかった”。

 BPAの禁止を望む環境団体エンバイロンメンタル・ワーキング・グループのリチャード・ワイズは、この資料はよく知られた手法で訴えていると述べた。”BPA産業は、タバコ産業やアスベスト産業と同じ戦略を採用した。彼等は適切な科学的根拠を持たないので、脅しと、社会への訴え戦術に頼った。非常に自暴自棄に見える”。
 1950年代から商業的に使用されているビスフェノールAは、プラスチックを強化するために添加されている。それはプラスチック・ボトルや食品容器など数百の家庭用品中に見出される。またスープ、乳児用粉ミルク、果物や野菜などの缶詰のライニングにも使われている。

 過去数十年の間に、多くの科学的研究が、実験動物でこの化学物質と乳がん、精巣がん、糖尿病、多動症、肥満、精子数の減少、流産、その他の生殖障害との関係を示している。最も新しいヒトのデータを使用した研究はBPAと心臓疾患及び糖尿病との関連性を示した。また乳がん患者の化学療法の効果を阻害することがわかった。

 研究者らは、例え低温度でもBPAが容器から食品や飲料中に漏れ出すことを見出した。今月初めに発表されたハーバード大学公衆衛生部門による研究はBPAを含むプラスチック・ボトルの飲料を飲んだ対象者は尿中のBPAが69%増加した。

 ビスフェノールAについての健康懸念を提起する政府の科学者や大学の研究室による100以上の研究が発表されているにも関わらず、米食品医薬品局は、両方とも化学産業側から金の出ていた二つの研究に基づきBPAは大部分は安全であるとみなした(訳注1)。

 FDAのBPAに関する立場は、BPAは子どもの脳とホルモン系に発達障害を引き起こすとする他の連邦政府機関である国立毒性計画(NTP)による報告と逆であった。そして、昨秋、FDA自身の科学諮問委員会が、化学物質の安全性を決定するのに産業界から金の出ていた研究に依存しているFDA担当官を批判した(訳注2)。

 カナダは、赤ちゃん用哺乳びんでのBPAの使用を2008年に禁止した(訳注3)。アメリカの6大哺乳びん製造会社はこの化学物質を使用しないことに合意した。今月、シカゴはアメリカで最初に哺乳びん及びシッピーカップでのBPA使用を禁止する都市となり(訳注4)、6つの州が同様な立法を準備中である。キャピトルヒル(訳注:米議会)ではいくつかの法案が全ての食品と飲料容器でビスフェノールAを禁止することになるであろう。

 一方、FDAは、新たな長官マーガレット・ハンブルグの指導の下にBPAをめぐる科学的環境の新たなレビューを実施している。


訳注1
訳注2
訳注3
訳注4


化学物質問題市民研究会
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