SAFENANO 2013年
ナノテクに関わる物質と製品の規制の現状

情報源:SAFENANO Regulation: Substances and Products, 2013
Current status of substances and products regulations for nanotechnologies
http://www.safenano.org/KnowledgeBase/
Regulation/SubstancesandProducts/tabid/178/language/en/Default.aspx


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2013年7月6日
更新日:2013年8月5日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/safenano/2013_current_status_of_regulations_for_nano.html


 ナノ物質は、他の新規出現技術を用いた製品と同様な規制の難しさを示している。しかし、ナノテクノロジーはどのような製品の中でも使用することができ、あるいはそのような製品を作ることができること、及びこのスケールでは、製品の安全と効果に関連する物質の特性が、サイズがナノスケールの範囲に入るとしばしば変化し、又はナノスケールの範囲内で変化するかもしれないという理由で、これらの難しさは増幅されるかもしれない。

 さらに、新たに出現している不確実な科学の特性と、製品の応用の急速な開発の可能性が、透明性のある一貫した予測可能な規制の経路の時宜を得た開発の必要性を強調している(FDA, 2007)。しかし、ナノ物質の環境、健康、及び安全に及ぼす影響に関する現状の不確実性のために、ナノテクノロジー又はナノテクノロジーに基づく製品は、政府が具体的に規制することに値するかどうかの激しい議論がある。

 いくつかの規制機関が評価活動を立ち上げ、ある場合には、下記を含む、既存の物質及び製品の規制の下にナノ物質をカバーできるとしている。
  • 欧州聯合(EU)
  • 米・環境保護局(EPA)
  • 米・食品医薬品局(FDA)
  • 米・消費者製品安全委員会(CPSC)
  • ヘルス・カナダ
  • オーストラリア・ニュージランド食品基準局(FSANZ)
  • オーストラリア政府保健・高齢者省
 これらの機関のナノテクノロジー規制に関する現在の立場は、下記の物質と製品の章にまとめられているが、さらなる詳細はそれぞれ関連するウェブサイトで入手可能である。

EU:ナノ物質の定義 (13/07/11)
 2011年に欧州委員会は、”ナノ物質の定義に関する勧告”を採択したが、それは”ナノ物質”を次のように定義している。
  • ”ナノ物質”は、非束縛状態(unbound)、又はアグリゲート(aggregate)又はアグロメレート(agglomerate)の状態であり、サイズ数分布が50%以上であるような粒子については、1 又はそれ以上の外形寸法が1nmから100nmの範囲にある、天然、非意図的、又は工業的に製造された物質を意味する。
  • 特別の場合には、そして環境、健康、安全、又は競争力に関する懸念について正当化される場合には、50%というサイズ数分布閾値は、1%から50%の間の閾値によって置き換えてもよい。
  • 上記第2項の例外として、1又はそれ以上の外形寸法が1nm以下のフラーレン、グラフェンナノフレーク、及び単層カーボンナノチューブはナノ物質とみなされるべきである。
 この定義は、特別の規定が適用されるかもしれない、例えば、リスク評価又は成分表示のために物質を特定すために主に使用されるであろう。これらの特別の規定は定義の一部ではなく、この定義が使用されるであろう特定の法律の一部であることが留意される。

 この勧告に関するさらなる情報、及び全文は、欧州委員会のウェブサイトから入手できる。

訳注:関連情報
RECOMMENDATIONS
COMMISSION RECOMMENDATION of 18 October 2011 on the definition of nanomaterial
http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=OJ:L:2011:275:0038:0040:EN:PDF

欧州委員会2011年10月18日 ナノ物質の定義に関する勧告
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/eu/EC_RECOMMENDATION_Nano_Definition.html


EU:REACHとCLP規則 (13/07/11)
 欧州委員会(EC)は、加盟国及びナノ物質に関するCARACAL[訳注1]サブグループ(CASG Nano)の利害関係者専門家と密接に連携しながら、REACH 及 びCLP [訳注2]の下でどのようにナノ物質を管理するかに関する助言を用意する。

 REACHは、化学物質の登録、評価、認可及び制限に関わるEUの規則であり、2008年6月に運用が開始された。REACH は、製造、上市、及び物質それ自身で、調合中で、又は成形品中での使用に適用される物質に関する条項を規定する。REACHは、製造者、輸入者及び川下ユーザーが製造、上市又は使用する物質が人の健康又は環境に有害影響を及ぼさないことを確実にするという原則に基づいている。

 REACHの中では具体的にナノ物質に言及する規定はないが、REACHは、サイズ、形状、又は物理的状態にかかわらず、物質を取り扱う。2008年欧州委員会(EC)文書”REACHにおけるナノ物質”で述べられているように、ナノスケールの物質はREACHによりカバーされており、したがってその規定を適用する。かくしてREACHの下では、製造者、輸入者及び川下ユーザは彼らのナノ物質が人の健康又は環境に有害な影響を与えないことを確実にしなくてはならない。欧州化学物質庁(ECHA)は、REACH登録の届け出を受付け、ナノ物質を含んで物質と調剤に関する情報の収集、評価、及び普及に中心的な役割を果たす。

 化学品の分類と表示に関する法律((67/548/EEC and 1999/45/EC))は、2009年に発効して世界調和システム(GHS)を実施する新たな分類・表示・包装((CLP)規則(1272/2008/EC)とともに、ナノ物質の分類及び表示のための一般的な枠組みを提供する。2009年にECは、”CLP及びREACHにおけるナノ物質の分類・表示・包装”に関する文書を発表した。それは、CLP規則の下に、有害であるとする分類のための基準を満たすナノ物質は、分類され表示されなくてはならないと述べている。これは、ナノ物質それ自体、又は物質の特別の形状としてのナノ物質に適用する。安全データシート及び分類と表示を含んで関連する規定の多くは、物質が製造又は輸入される重量帯域とは無関係に、すでに今日、適用されている。ナノ物質を含んで、有害であるとする分類基準に合致する物質は、2011年1月3日までにECHAに通知されているべきであった。分類に対するどのようなさらなる更新も遅滞なく通知されなくてはならない。ECHAは、その規則に従い提供される情報を含む分類と表示の目録を確立している。

ナノ物質の技術ガイダンス

 最近まで、ECHAのREACH技術ガイダンス文書は、ナノ物質に関する具体的なガイダンスを与えていなかった。しかし、最近の数年間にECHAは、REACHの下にナノ物質を登録しようとする人々のために、ガイダンスの利用可能性と適用可能性を確実にするための活動を立ち上げている。

 国際統一化学情報データベース(IUCLID)に用意されているナノ物質に関する情報を登録書類一式中にどのように含めるかに関するガイダンスを提供する技術マニュアルが2010年に発表され、その後2013年に更新された。このマニュアルは、登録者は、ナノ形状が実験的研究の中で使用されているときに、登録者はどのようにはっきり報告することができかに関する指示を含み、登録者がナノ物質又はナノ形状物質である物質のための登録書類一式を準備又は更新するのを助けることを目指している。

 2009年に欧州委員会は、ナノ物質に関するREACH実施の局面について助言するために、ナノ物質に関するREACHI実施プロジェクト(RIP-oNs)を立ち上げた。これらのプロジェクトからの最終報告は、下記が利用可能である。
  • Substance Identification of Nanomaterials (RIP-oN 1)
  • Specific Advice on Fulfilling Information Requirements for Nanomaterials under REACH (RIP-oN 2)
  • Specific Advice on Exposure Assessment and Hazard/Risk Characterisation for Nanomaterials under REACH (RIP-oN 3)
 RIP-oN 1 プロジェクトの最終報告書は利用可能であるが、このプロジェクト勧告に関しては専門家の間で合意に達することができず、勧告をECHAに渡すことができるようにするために、 CARACALと協力して欧州委員会のさらなる作業が求められるということに留意すべきである。

 しかし、 RIP-oN 2 & 3 最終報告書の中でなされた最先端の科学的及び技術的勧告に基づき、2012年4月30日にECHAは、ナノ物質の登録のための勧告を伴った情報要求と化学物質安全性評価(IR & CSA)のR.7a章、 R.7b章 及びR.7c章 を更新して、新たな3つの付属書を発表した。

ナノ支援プロジェクト

 2010年に環境総局は、”REACH の登録書類一式中のナノ物質の評価及び利用可能な情報の妥当性に関する科学的技術的支援”に関するプロジェクトを立ち上げた。このプロジェクトは、二つの任務(task)に分けられた。

Task I (2012年に完了)は、ナノ物質、これらの書類に含まれるナノ物質に関する情報の科学的評価、及び潜在的な横断的欠陥にどのように対応することができるかの提案をカバーするREACH登録書類一式の特定を必要とした。(最終報告書

REACH 法的文書

 2013年2月に欧州委員会(EC)は、REACH規則の5年目見直しを完了した。ナノ物質に関しては、EC報告書の公式発表前版は、ECは、”どの様にナノ物質が対応されるかについてのさらなる透明性と登録書類一式中で示された安全性を確保するために、関連する規制のオプション、特に可能性あるREEACH付属書の修正の影響評価を実施するであろう。もし適切なら、欧州委員会は2013年12月までに、実施法案を策定するであろう”と述べている。職員作業用文書の公式発表前版は特に、もしREACHが”他の理由で”修正する必要があるなら、その時には勧告2011/696/EU [訳注3]に矛盾しないナノ物質の定義の導入が検討されるべきである。REACH見直しのさらなる詳細はECのウェブサイトで入手できる。

 一般的な REACH と CLP に関するさらなる情報は、欧州化学物質庁(ECHA)ウェブサイトで見つけることができる。


訳注1:CARACAL (Competent Authorities for REACH and CLP (CARACAL)
欧州委員会(EC)及び欧州化学物質庁(ECHA)にREACH 及び CLP に助言を与える専門家グループ
http://ec.europa.eu/enterprise/sectors/chemicals/reach/caracal/

訳注2:CLP(Classification, Labeling and Packaging of substances and mixtures) EUにおける化学品の分類、表示、包装に関する規則であり、これまでのEUの分類、包装、表示システム(指令67/548/EEC、指令1999/45/EC)にGHSを導入し、REACH規則で導入された分類・表示インベントリーを包含したものである。 http://www.cerij.or.jp/service/10_risk_evaluation/international_regulations_01_file06.pdf

訳注3:勧告2011/696/EU
欧州委員会2011年10月18日 ナノ物質の定義に関する勧告


EU:新規食品規則 (13/07/25)
 欧州議会と理事会の1997年1月27日の規則 EC 258/97 は、新規食品と新規食品成分(欧州共同体内において1997年5月15日以前は人の消費に著しい程度には使用されていなかたもの)について詳細な規則を規定している。2010年7月に欧州議会により採択されたこの規則の更新草稿は、ナノスケールの成分についてのリスクがもっとよく理解されるまで食品での使用を禁止するとする条項を含んでおり、最終的に認可されたどのようなナノスケールの成分も明確にそのように表示することを求めることになっていた。しかし、欧州議会と欧州連合理事会は、食品中のナノスケール成分を含んで、いくつかの問題に対応すべき新規食品規則を更新することについて合意に達しなかった。欧州議会は、2011年3月29日に声明を発表したが、それは、この法案について合意に達しなかったことは、”食品中のナノ物質に関して特別な措置は何も取られない状態が継続する”ことを意味すると述べている。

 ナノテクノロジーと食品に関するさらなる情報は、 英国食品基準庁(FSA)のウェブサイトで見つけることができるが、そこでは、ナノテクノロジ利用(nanotechnology-enabled)の食品又は食品接触材料を開発しようとしている登録者は、一般的なことでも特定のことでも、規制上の助言を得るために英国食品基準庁(FSA)に連絡するよう述べている。最初の連絡は、 novelfoods@foodstandards.gsi.gov.uk 宛にメールすべきこと。


EU:化粧品規則 (13/07/25)
 2009年11月、欧州連合理事会は、化粧品に関連する55余りの指令を化粧品に関するひとつの規則、化粧品に関する2009年11月30日付欧州議会と理事会の規則 1223/2009 に再編することに同意した。特に、どのような製品中でもナノ物質を使用することに関連する規則を導入するために国家又は準国家で初めて立法化されるので、この規則は非常に重要である(Bowman et al., 2010)。

 この規則の目的のために、次の定義を用語”ナノ物質”に適用する。”1又はそれ以上の外形寸法、又は内部構造が、1から100ナノメートル(nm)のスケールである非溶解性又は生物蓄積の意図的に製造された物質”。この英議の採用は、EU ”ナノ物質”という用語の定義と調和させるために、現在検討中であると理解される。

 2012年7月、欧州委員会は、化粧品中のナノ物質の安全性評価に関するガイダンスを発表した。この文書は、化粧品産業界が化粧品に関するこの規則の第16条を遵守するのを助けるために、消費者製品に関する科学委員会(SCCS)により起草されたが、それはナノ物質を含む化粧品の届け出と評価のための厳格な条件と期限を責任者及び科学委員会(SCCS)にそれぞれ課すものであり、2013年1月から開始する。

 2013年1月11日から、化粧品産業は、化粧品届け出窓口を通じて、ナノ物質を含むすべての化粧品を市場に出す6か月前までに欧州委員会に通知することが義務付けられている。彼らはまた、リスク評価目的のための適切な特定データを提供しなくてはならないが、欧州委員会は、懸念がある場合には、それを消費者製品に関する科学委員会(SCCS)に提出する。要求されるデータのチェックリストは、彼らの作業を助けるために新たなガイダンス中に含まれている。

 ナノテクノロジー分野の急速な進展とナノ物質の安全性についての科学的知識が増大していることに照らして、現在のガイダンスは定期的に更新されるようである。

 上述した届け出要求に加えて、化粧品規則は成分リスト中に、ナノ物質の表示(【ナノ】とカッコつきで表示した後に成分名を記載すること)を求めている。ナノ物質の安全性についての懸念があるときには、欧州委員会は、消費者製品に関する科学委員会(SCCS)にリスク評価を求めるであろう。

 EU化粧品規則に関する情報はここで入手できる


米:環境保護庁 (13/07/29)
 米EPAの使命は、人の健康と環境を保護することである。EPAは、研究活動(内部の研究及び外部委託研究を含む)、パートナーとの連携、及び教育の効果を通じてこれを達成する。規制に関しては、EPAは、米議会により制定された環境法を、規制の展開と執行を通じて、実施することを任務とする。

ナノマテリアル・スチュワードシップ・プログラム(NMSP)

 2008年、EPAは、ナノ物質のEHS(環境・健康・安全)リスクについての情報を収集するために、製造者の自主的な参加に基づく、ナノマテリアル・スチュワードシップ・プログラム(NMSP)を立ち上げた(訳注1)。同庁は2009年1月に、NMSPに関する暫定的報告書[pdf]を発表したが、最終報告書は2010年に発行されるものと期待された。このNMSPは、市場に出ているナノスケール物質のうち限られた数のものに関して有用な情報を米EPAにもたらしたが、EHS(環境健康安全)について非常に多くのデータ・ギャップがある。これらのギャップに対応し、ナノスケール物質により及ぼされるかもしれない潜在的なリスクを防止するために、EPAは、有害物質規制法(TSCA)の下に、多くの規制措置をとっている。

ナノ物質とTSCA

 2008年10月、米EPAはカーボンナノチューブ(CNT)は、有害物質規制法(TSCA)目録にリストされているグラファイト及びその他の形状のものとは異なると発表した(EPA, 2008)。(訳注2)この発表は、他のナノ物質への影響に関して、利害関係者の中に大きな議論を呼び起こしたが、それらに特に次のようなものがある。
 全てのナノ物質は新規物質として登録され(、したがって米国内で製造又は輸入する90日前までの製造前 届出(PMN)の対象になるのか?又は
 消費者又は環境にリスクを及ぼすことが示される特定のナノ物質の使用を制限するために、EPAは重要新規利用規則(SNURs)のようなツールを実施するのか?

 現時点では、カーボンナノチューブ(CNT)以外のナノ物質の場合には、化学物質のサイズはその分子的同一性に影響を及ぼさないと考える当初のTSCAポリシーに立脚している。したがって、TSCA は、すでに既存目録中にある物質のナノスケールの物質については登録とテストを求めていないが、新たな分子構造を持ったナノ粒子は新規物質とみなしている(例えば、カーボンナノチューブ)。

 多くのナノスケール物質は、TSCAの下では”化学物質”であるとみなされている。人の健康と環境をナノ物の不合理なリスクから守るようなやり方でナノスケールの物質は製造され、使用されることを確実にするために、米EPAは、TSCAの下で包括的な規制アプローチの実施に従事している。それらには下記のようなものがある。
1. 製造前届出(PMN)

 TSCAは、新規化学物質の製造者に対して、化学物質の製造又は市場への導入に先立つEPAの審査のために、EPAに特定の情報を提供すること求めている。このことを通して、EPAは、人の健康又は環境に不合理なリスクを及ぼすこれらの化学物質が効果的に管理されることを確実にするための措置をとるかもしれない。

 EPAは、2005年以来、ナノスケール物質について、カーボンナノチューブを含んで、TSCAの下に100を超える新規化学物質届出を受領し審査してきた(EPA, 2011)。同庁はこれらの化学物質への曝露を管理し、制限するための多くの措置をとってきたが、それらには下記が含まれる。
  • ナノスケール物質の使用の制限
  • 不浸透性手袋やNIOSH承認防護マスクのような個人防護具使用の要求
  • 環境への放出制限
  • 健康と環境データを生成するためのテストの要求
 さらに、EPAは、TSCAの下に重要新規利用規則(SNUR)という行政命令の使用を通して、限定された新規ナノスケール化学物質の製造を認可している。同庁はまた、ある種の規制の免除の下に新規ナノスケール化学物質の製造を認可しているが、それは不合理なリスクから保護するために、(例えば、上述のような防護装置と環境放出の制限を用いた)厳しく管理された場合だけである。

2. 重要新規利用規則(SNUR)

 重要新規利用規則(SNUR)は、ある物質の製造者、輸入者、及び加工者は、EPAが”重要な新規利用”として指定したどのような行為をも開始する少なくとも90日前までに、EPAに届け出ることを求めている。

   2013年2月25日、米EPAは製造前届出の対象となる37の化学物質について、TSCAの下に 提案される重要新規利用規則(SNUR)を発表した(訳注3)。EPAは、提案された重要新規利用規則(SNUR)は、その化学物質名が”カーボン・ナノチューブ(CNT)”又は”カーボン・ナノファイバー”として知られる14の製造前届出(PMN)物質を含むことに特に言及している。もし最終的に発行されるなら、この重要新規利用規則(SNUR)は、その化学物質を製造、輸入、又は加工することを意図する者は、重要新規利用として指定されたどのような行為についても、その行為に着手する少なくとも90日前までにEPAに届け出ることを求めるであろう。EPAは、この要求される届出はEPAに意図される使用を評価し、必要ならその行為が行われる前に禁止又は制限する機会を与えるであろうと述べている。

 そのような重要新規利用規則(SNUR)は同庁に、化学的同一性、物質特性、物理的/化学的性質、商業利用、製造量、暴露と運命データ、及び毒性データのようなナノスケール物質に関する基本データ一式を提供するであろう。この情報は、同庁がこれらのナノスケール物質を評価し、人の健康又は環境に不合理なリスクを呈するかもしれない行為を禁止又は製塩するための措置を可能にするに違いない。

3. 情報収集規則

 すでに市場に出ているナノスケール物質のもっと包括的な理解を進めるのを支援するために、EPAは、TSCA第8条(a)の下に追加的な情報の提出を求める提案規則を開発中である。この規則は、これらのナノスケール物質を製造する者は、製造量、製造と加工の方法、暴露と放出情報、及び利用可能な健康と安全に関するデータを含むある情報をEPAに届け出ることを提案するであろう。

4. テスト規則

 TSCA第4条の下に、EPAはすでに市場に出ているナノスケール物質のテストを求める規則を提案することになっている。このことは、他の連邦政府及び国際機関によりまだテストされていないナノスケール物質の部類に特別に注目している。要求されるテストの結果は、EPAがナノスケール物質の潜在的な健康と環境への影響を理解するのに役立つであろう。それらはまた、化学的/物理的特性とそのナノスケール物質影響との関連性を確立するのに役立つであろう。

 EPAのナノテクノロジー活動に関するさらなる情報はEPAのウェブサイトで見つけることができる。


訳注1
EPA 2008年1月28日 ナノスケール物質スチュワードシップ・プログラム

訳注2
ナノテク研究プロジェクト 米環境保護庁のカーボン・ナノチューブ規制

訳注3
Bergeson & Campbell, P.C., 2013年2月28日 米EPA 37 化学物質に重要新規利用規則(SNUR) 14ナノ物質を含む


米:食品医薬品局 (13/07/29)
米:食品医薬品局(FDA)は、そのあるものはナノエクノロジーを利用している又はナノ物質を含んでいるかもしれない食品、化粧品、医薬品、機器、獣医製品、タバコ製品を含んで、広範な製品を規制している。

FDA ナノテクノロジー調査特別委員会

 2006年8月に立ち上げられたFDA ナノテクノロジー調査特別委員会(FDA Nanotechnology Task Force)は、ナノテクノロジー物質を利用するFDA所管の製品の革新的で安全で効果的な発展の継続を促進する規制アプローチを決定することを任務としている。2007年に同委員会は報告書を発表したが(訳注1)、それには下記が含まれている。
  • ナノスケール物質と生物系の相互作用についての科学の状況の概要
  • 科学的課題の分析と勧告
  • 規制政策の課題の分析と勧告
 この報告書の一般的な所見は次のようなものであった。

 ”ナノスケール物質は、他の先端技術を利用する製品と同様に規制に関する課題を提示している。しかしながら、ナノテクノロジーは、FDA所管のいかなる製品にも利用され得ること及びナノスケールではサイズがナノ領域になること又はその範囲で変化することによりFDA所管製品の安全性と効用性に関する物質の特性が繰り返し変化する可能性があることの双方の理由から、これらの課題は今後より大きくなると考えられる。さらに、本科学分野が新規で不確定な性質を有すること及びFDA所管製品への応用が急速に進展する可能性があることから、透明で一貫した予測可能な規制のための道筋をタイムリーに作成することが重要である。(厚労省訳を引用)”

ナノテクノロジー製品の規制に対するFDAのアプローチ

 2012年4月にFDAは、ナノテクノロジー・ファクト・シートを発表したが(訳注2)、それは次のように述べている。

 ”一般的に、FDAは、安全評価のための現状の枠組みは、ナノ物質を含んで様々な物質に適切であることに対して、十分に強固であり柔軟性があると考えている。”

 ”FDAは、その管轄下におけるそれぞれの製品の種類ごとに適用可能な特定の法的基準に従い、既存の法的権限の下に、ナノテクノロジー製品を規制し続けるであろう。FDAは、利用可能な最良の科学に基づく透明で予測可能な規制の道すを確実にすることを意図している。
  • ひとつのやり方が全てに合うわけではない。我々は適応性と柔軟性がある規制のアプローチを意図している。技術的評価は、個々の製品と意図される用途の特定の生物学的及び機械的な脈絡においてナノマテリアルの影響を考慮しつつ、製品に特有であることが必要である。
  • 個々の製品分野のための特定のアプローチは法的権限に従い変動する。本日発表された二つのドラフト・ガイダンス文書−ひとつは食品、もうひとつは化粧品−に含まれる範囲と論点は、このアプローチを反映している。
  • FDAの規制政策アプローチは、関連する包括的米政府の政策原則と一貫しており、適切な監視の下に革新を支持している。 ”

 さらに、FDAは、産業界は製品の製造に関わる技術の新たに出現している特性にかかわらず、安全基準を含んで、その製品が全ての適用可能な規制的要求を満たすことに責任があると述べている。

製品特有のガイダンス

 2011年6月にFDAは、ナノテクノロジーに関連する検討についての考えを示すために、『FDA 規制製品がナノテクノロジー応用に関わるかどうかを検討する産業向けガイダンス』というタイトルのドラフト・ガイダンスを発表した(訳注3)。そのドラフト・ガイダンスの中でFDAは将来、適切なら製品特有のガイダンスを発行するであろうと述べていた。

 それに応じて2012年4月に、FDAは、食品と化粧品産業によるナノテクノロジーの使用に対応して、ふたつの製品特有のドラフト・ガイダンス文書をパブリックコメントにかけた。すなわち:
  • 産業向けドラフト・ガイダンス:着色添加剤である食品成分を含んで、食品成分と食品接触材料の安全と規制状況に関する、新規出現技術を含んだ重要な製造プロセスの変更の影響を評価すること(リンク
  • 産業向けドラフト・ガイダンス:化粧品中のナノ物質の安全性(リンク

 両方のガイダンス文書は、FDAの2007年ナノテクノロジー調査特別委員会報告書の勧告についてFDAが現在行っている実施の一部として発表されているものである。

 FDAのナノテクノロジー関連活動と政策開発に関するさらなる情報は、FDAのウェブサイトで見つけることができる。

訳注1
FDA ナノテクノロジー調査特別委員会報告書(厚労省仮訳)

訳注2
米FDA 2012年4月20日 ファクトシート:ナノテクノロジー

訳注3
FDA 長官室 2011年6月9日 FDA 規制製品がナノテクノロジー応用に関わるかどうかを検討する産業向けガイダンス


米:消費者製品安全委員会 (13/07/31)
 米・消費者製品安全委員会(CPSC)は、1973年に設立された独立の規制機関である。CPSC の所管範囲は、例えば、法により除外されている自動車、タバコ、食品、医薬品、化粧品、ほとんどの医療機器、及び農薬などの品目を除いて、家庭やその周囲で使用される消費者製品の15,000以上を含む。 CPSC により規制されている製品の例には、衣料品、有害な家庭用洗浄剤、電気製品、器具、家具、建材、おもちゃ、子ども用品等がある。

  CPSC のナノテクノロジー声明(pdf)によれば;

 ”ナノ物質の潜在的な安全性とリスクは、消費者製品に導入されている他の成分と同様に、既存のCPSC法規、規制、ガイドラインの下に評価される。消費者製品安全法(CPSA)も連邦有害物質法((FHSA)も、製品の上市前登録又は承認を求めていない。したがって通常は、製品が商業的に流通するまで、CPSCは製品の公衆に及ぼす潜在的なリスクを評価しない”。

 ”明示的な規制がないので、他の消費者製品と同様に、職員は、とりわけ、欠陥のパターン、商業的に流通している欠陥商品の数、及びリスクの程度について、ナノ物質からなる又はそれらを含む欠陥製品が公衆に対して危害を及ぼす本質的なリスクを生成するかどうかを見ている”。(訳注1

 2013年の戦略的計画[pdf]で、CPSC は、選択された消費者製品からの潜在的なナノ粒子の放出を特定し、そのような曝露の潜在的な健康影響を決定するために、消費者製品中のナノテクノロジーに関連するいくつかの活動を完了させることを目指している。それらには次のようなことが含まれる。
  • 消費者製品からの大気浮遊ナノ粒子
  • 米・国立医学図書館((NLM)家庭用品データベースの強化
  • 消費者製品中のナノ物質の曝露及びリスク評価
  • スプレー及びエアゾール製品中のナノ物質
CSPCウェブサイトはここをクリック


訳注1
WWICS/PEN 2009年4月28日 元EPA高官 新たな環境消費者保護機関の設立を要求 技術の進歩が新たな監視を求める
”今日、EPAや消費者製品安全委員会のような機関は、先端的ナノテクノロジーや合成バイオロジーによって可能となる製品により及ぼされる課題に対応するために必要なリソースやツールが不足している”。


カナダ:ヘルスカナダ (13/07/31)
 ヘルス・カナダは、カナダにおいて、医薬品、生物製剤、医療機器、天然健康製品、食品と食品容器、農薬、新規及び既存物質、消費者製品、及び化粧品をふくむ製品と物質の規制に責任ある連邦機関である。

 ナノテクノロジー製品の定義に関する国際的な合意がまだ合意に達していないので、ヘルス・カナダは、ナノ物質を含むかもしれない規制される製品や物質を特定するためのいくつかの異なった規制プログラム領域を通じて、一貫したアプローチを提供するために、2011年10月にナノ物質の定義のための作業用定義を採用した。

 この作業用定義は、ナノ物質についてのカナダ保健省の作業用定義に関する政策声明訳注1)の中で述べられている 。この政策声明の目的は次のとおりである。
  1. ナノ物質を特定する作業手法を確立する。
  2. カナダ保健省が規制される物質、製品、ナノ物質である要素物質、成分、デバイス、又は構造に関する情報を収集し、内部用目録を確立するのを支援する。
  3. 関心を持つ関係者の幅広いコミュニティとのナノ物質についての情報伝達を支援する。
  4. カナダ保健省の権限の下に法的及び規制的枠組みの管理を支援し、ナノ物質に適用可能な政策、ガイダンス、プログラムの更なる開発を促進する。
 現在、ナノテクノロジーに基づく健康製品と食品に特化した規制は存在しない。ヘルス・カナダは、既存の法的及び規制の枠組みの中の権限に依存しており、それは、製品が販売のために認可される前に、カナダ人の健康と安全に対する製品の潜在的なリスクと便益の評価を求めている。

 ヘルスカナダのナノテクノロジー活動についてのさらなる情報は、そのウェブサイトで入手可能である。


訳注1
カナダ保健省2011年10月11日 ナノ物質についてのカナダ保健省の作業用定義に関する政策声明

ヘルスカナダ(カナダ保健省)のナノ物質の作業用定義
 カナダ保健省はどのような製造された(manufactured)物質又は製品及びどのような要素物質(component material)、成分、装置(device)又は構造が下記を満たすなら、ナノ物質であると考える。
  1. 少なくともひとつの外形寸法がナノスケール又はその範囲内、又は内部又は表面構造がナノスケールである、又は;
  2. 全ての外形寸法がナノスケールよりも小さいか又は大きく、ひとつ又はそれ以上のナノスケール特性(properties)/現象(phenomena)を持つ。
この定義の目的のために:
  1. ’ナノスケール’という用語は、1〜100ナノメートル(nm)を意味する(inclusive 訳注:1及び100を含む)。
  2. ’ナノスケール特性/現象’という用語は、サイズとそれらの影響に帰す特性を意味し、これらの特性は、個々の原子、個々の分子、及びバルクマテリアルの化学的又は物理的特性から区別できる。
  3. ’製造された(manufactured)’という用語は、工業プロセス及び物質の管理を含む。

オーストラリア・ニュージランド食品基準局(FSANZ) (13/08/05)
 オーストラリアとニュージランドで供給される全ての食品は、オーストラリア・ニュージランド食品基準法に従わなくてはならず、人間の摂取に安全でなくてはならない。安全性の懸念を引き起こすかもしれないナノテクノロジーを利用して製造されるどの様な新規食品材料も、他の材料と同じく、それらがオーストラリアとニュージランドで合法的に供給される前に適切な基準の下に包括的な科学的安全性評価を受けなくてはならない。FSANZ申請ハンドブック(pdf)に規定されている要求を満たす申請書が FSANZに提出されなくてはならない。

 利用可能な最良の科学的証拠を用いて、 FSANZは、公衆がどのような健康又は安全に関わる問題もにさらされることがないようにするために、食品中のナノ物質に関連する潜在的なリスクを絶えず見直し管理するための広範な戦略を採用したと述べている。これらの戦略は次のことを含む。
  • 新たな食品規則を支援するために、そして申請者がFSANZがリスク評価を実施するのを支援するために必要な全ての情報を提供することを確実にするために、 FSANZ 届出ハンドブックを更新すること。
  • ナノテクンオロジーに関わる食品産業にこの申請ハンドブックについて助言し、提案するナノテクノロジーの応用についての情報提供を産業に要請すること。
  • FSANZの規制対応を概説するために他の国家規制機関、産業、及び公衆と連携すること。
 FSANZは、まだ食品用途の新たな又は新奇のナノスケール粒子を承認するためのどのような申請も受領していないと述べている。

 食品中のナノテクノロジーについてのFSANZ の立場に関するさらなる情報はウェブサイトNanotechnology and Food (Last updated December 2011) で入手可能である。


オーストラリア政府保健・高齢者省(NICNAS) (13/08/05)
 1990年に制定されたオーストラリア政府保健・高齢者省(NICNAS)は次のことを実施している。
  1. 公衆、労働者及び環境を産業化学物質の有害な影響から守るための国家の届出及び評価計画を提供する。
  2. 健康と環境分野での安全性の懸念に対応して、オーストラリアにとって新たな全ての化学物質を評価し、すでに使用されている化学物質(既存化学物質)を優先度の高いものから評価する。
 オーストラリアの産業化学物質の規制は、”既存”産業化学物質と呼ばれるオーストラリア化学物質目録(AICS)にリストされているもの(すなわち、オーストラリアにおける承認と使用の実績がある化学物質)と、”新規”産業化学物質と呼ばれるAICSにリストされていないものとを区別する。

 2006年から2010までの利害関係者(産業及びもっと一般的に公衆)との広範な協議の後に、2011年1月にNICNASは、”新規”産業化学物質のための行政的手続きを変更し、これらの化学物質のナノ形状のものは、それらが市場に出される前に届け出られ、安全性を評価されなくてはならないとした。

 免除は、非常に厳格な基準の対象となる。この手続きは、産業ナノ物質の作業用定義及び、免除、許可、証明、条件、データ要求を含んで、届出者のためのガイダンス・ハンドブック(pdf)にまとめられている。

 この手続きが導入されて以来、NICNASは産業に、技術的支援を提供し;ナノ形状の新規産業化学物質の届出を把握し監視するために行政的変更を実施し、産業が確実に理解するよう遵守活動を立ち上げてきた。

 ”既存”産業化学物質のナノ形状のものの規制に適する手続きを提案する討議用ペーパーが、 2011年〜2012年のパブリック・コメントに基づき、NICNAS及び NICNASナノテクノロジー諮問委員会により策定中である。

  NICNASは、リスク緩和についての勧告で予防的アプローチを確実に取るための潜在的なハザードの特定とリスク評価手法、プロセス、及び実施のための能力構築を継続している。NICNASが特に関心を持つ技術的領域は下記を含む。
  • 工業的ナノ物質のリスク評価における国際的な最良の慣行
  • 商業化されている、あるいは商業化が近い選定されたナノ物質の毒性
  • 二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化セリウム、銀ナノ(これらのナノ形状に関する一連の出版物が開発中である)のハザード評価
 NICNAS はまた、NICNASが産業化学物質としてのナノ物質の潜在的な影響に対応するであろう戦略的な指令に関して助言するためのナノテクノロジー諮問委員会を設立した。同委員会の会合は、 NICNASナノテクイノロジー諮問委員会 結果表明(NICNAS Nanotechnology Advisory Group Meetings, Statement of Outcomes)報告されている。

 ナノテクノロジーに関するNICNASの規制活動の詳細はウェブサイトで入手可能である。


化学物質問題市民研究会
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