米FDA 2012年4月20日
ファクトシート:ナノテクノロジー

情報源:U.S. Food and Drug Administration, 04/20/2012
Fact Sheet: Nanotechnology
hhttp://www.fda.gov/Food/GuidanceComplianceRegulatoryInformation/
GuidanceDocuments/ucm300914.htm?source=govdelivery


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年4月30日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/FDA/FDA_120420_Fact_Sheet_Nano.html


■ナノテクノロジー概観

 ナノテクノロジーは、医療品、食品、化粧品を含んで広範なFDA規制対象製品で使用される可能性を持つ新規に出現している技術である。ナノテクノロジーを利用して開発されるナノマテリアルはナノメートル(10億分の1メートル)の単位で測定される非常に小さい物質なので、通常の顕微鏡では見ることができない。これらのナノマテリアルは、同一組成であってもFDAにより規制される多くの製品中で使用されているような通常のスケールの物質とは異なる化学的、物理的、又は生物学的特性を持つ。

 FDAは長い間、新規に出現している技術が伴う有望性、危険性及び不確実性のそれぞれに遭遇してきた。この点において、ナノリスクも例外ではない。ナノテクノロジーの応用を興奮させる生物学的、化学的、及びその他の特性のまさにその変化がまた、製品の安全性、効果、又はその他の属性を調べるための検査を必要とする。ナノテクノロジーの理解はFDAの最優先事項である。FDAは科学の進展をモニターしており、ナノテクノロジーを利用した製品の安全性と効果の評価に役立つ揺るぎない研究課題を持っている。

 強い科学は、FDAが現在実施中のFDA規制製品のレビューに重要である。FDAは、ナノマテリアルの特性を特定し、それらが製品に及ぼすかもしれない影響を評価するために必要なデータとツールの開発を含んで、FDAの科学的能力をさらに強化するためのFDA全体にわたるナノテクノロジー規制科学プログラムに投資中である。一般的に、FDAは、安全性評価のための現在の枠組みは十分に強固であり、ナノマテリアルを含む様々な物質のために適切であるべき柔軟性を持っていると考えている。

 FDAは、この新たに出現している技術を用いた製品を適切に規制するために製品に特有の科学に基づく規制方針を保持している。法的基準はFDAが規制する様々な製品クラスの中で変化する。FDAは、その管轄権の下に個々の製品タイプに適切な特定の法的基準にしたがい、既存の法的権限の下にナノテクノロジー製品を規制するであろう。FDAは、感情を交えずその真価によって個々の製品を評価するために慎重な科学的アプローチをとっており、ナノテクノロジー製品の安全性について広範で一般的な仮定を設けることはしない。

■FDA のナノテクノロジーへの取り組み

 2011年6月、FDAは、ナノテクノロジーに関連する検討についてのFDAの考えを示すために、『FDA 規制製品がナノテクノロジー応用に関わるかどうかを検討する産業向けガイダンス』と題するドラフト・ガイダンス(訳注1)を発表した[1]。そのドラフトガイダンスの中で、FDAは、適切なときに製品に特有のガイダンスを将来発表するであろうということを示した。

 従って、FDAは食品と化粧品産業によるナノテクノロジーの使用に対応するための製品に特有の二つのドラフト・ガイダンスをパブリック・コメント用に発表している。両方のガイダンス文書は、FDAが発表した『2007年ナノテクノロジー・タスクフォース・レポート』(訳注2)の勧告のFDA実施の一部として発表されるものである。それらは:
 ドラフト食品ガイダンスは、食品の安全性と規制状態に関して、ナノテクノロジーに関わるものを含めて、全ての著しい製造プロセスの変更による潜在的な影響に対して、製造者に注意を喚起するものである。このガイダンスは、既に市場に出ている食品の製造プロセスに著しい変更があるかどうか決定するときに製造者が考慮すべき要素について記述する。
  • 食品の同定(identity)への影響
  • 食品の使用の安全性への影響
  • 食品の使用の規制状態への影響
  • FDAへの規制的届出の正当性
 ドラフト食品ガイダンスはまた、既に市場に出ている食品の製造プロセスにおける著しい変更に関して、製造者はFDAと協議することを勧告している。

 ドラフト化粧品ガイダンスは、ナノマテリアルが化粧品中で使用されるときに、その安全性評価に関するFDAの現在の考え方を述べている。
  • 化粧品は上市前承認の対象ではないが、表示されている又は通常の使用条件の下に消費者にとって安全でなくてはならず、それらは適切に表示されなくてはならない。
  • ナノマテリアルを使用している化粧品製造者は、他の化粧品と同様な法的要求の対象となる。化粧品を市場に出す会社又は個人は彼等の製品に対して法的な責任がある。
  • 一般的に、安全性評価のために現在使用されているプロセスはナノマテリアルを含む化粧品にとって適切である。しかし、データの必要性とテスト手法は、化粧品中で使用されるナノマテリアルによって示されるかもしれない特性または機能に照らして評価されるべきである。
■FDAのナノ製品規制へのアプローチ

 FDAは、その管轄権の下に個々の製品タイプに適切な特定の法的基準にしたがい、既存の法的権限の下にナノテクノロジー製品の規制を続けるであろう。FDAは利用可能な最良の科学に基づく透明で予測可能な規制の道筋を確実にすることを意図している。
  • ひとつのやり方が全てに合うわけではない。我々は適応性と柔軟性がある規制のアプローチを意図している。技術的評価は、個々の製品と意図される用途の特定の生物学的及び機械的な脈絡においてナノマテリアルの影響を考慮しつつ、製品に特有であることが必要である。
  • 個々の製品分野のための特定のアプローチは法的権限に従い変動する。本日発表された二つのドラフト・ガイダンス文書−ひとつは食品、もうひとつは化粧品−に含まれる範囲と論点は、このアプローチを反映している。
  • FDAの規制政策アプローチは、関連する包括的米政府の政策原則と一貫しており、適切な監視の下に革新を支持している。

 産業界は、製品の製造に関わる技術の新たに出現している特性にかかわらず、安全基準を含んで、その製品が全ての適用可能な規制的要求を満たすことに責任がある。FDAは、ナノマテリアルを含有する製品の安全性、効果、又はその他の特性に関連する、又はそのような製品の規制状態についてのどのような質問に対しても、FDAと早めに相談するよう産業界に促す。

■ドラフト・ガイダンス文書へのコメント

  • 誰でもが、ガイダンスにもいつでもコメントしてもよい。FDAが最終ガイダンスを作成するためにこれらのドラフト・ガイダンス文書へのコメントを考慮することを確実にするために、これらのドラフト・ガイダンスに関する電子媒体または書面によるコメントは連邦政府官報での告知後90日以内に提出されるべきである。電子媒体のコメントは http://www.regulations.gov/3 に、書面によるコメントは Division of Dockets Management, (HFA-305), Food and Drug Administration, 5630 Fishers Lane, Rm. 1061, Rockville, MD 20852 に提出すること。
■更なる情報

原注[1]
Draft Guidance for Industry; Considering Whether an FDA-Regulated Product Involves the Application of Nanotechnology; Availability8. 76 FR 34715; June 14, 2011.


訳注1
FDA 長官室 2011年6月9日 FDA 規制製品がナノテクノロジー応用に関わるかどうかを検討する産業向けガイダンス

訳注2
FDA ナノテクノロジー調査特別委員会報告書(厚労省仮訳)



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