EPA 監察総監室 2011年12月29日
 EPA はナノ物質のリスクを
もっと効果的に管理する必要がある


情報源:US EPA / OFFICE OF INSPECTOR GENERAL December 29, 2011
EPA Needs to Manage Nanomaterial Risks More Effectively
http://www.epa.gov/oig/reports/2012/20121229-12-P-0162.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2012年1月8日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_OIG_111229_A_Report_by_OIG.html

訳注:EPA 監察総監室とは?(訳注1

まとめ (At a Glance)
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 分かったこと
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 我々は、EPAは現在、ナノ物質の人健康と環境リスクを効果的に管理するための十分な情報又はプロセスを持っていないことがわかった。EPAはナノ物質を規制する法的権限を持っているが、現在、効果的に管理するための環境的及び人健康曝露及び毒性学的データが欠如している。
 EPAは、連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の下に、新たに登録されるナノスケール物質を含んだ農薬を特定することを提案した(訳注2)。産業側の参加が最小であった自主的なデータ収集プログラム(訳注3)の後、EPAは連邦殺虫剤殺菌剤殺鼠剤法(FIFRA)の下にナノ物質のための義務的な報告規則を提案しており、また有害化学物質規正法の下に提案する規則を開発中である。

 しかし、たとえ義務的報告規則が承認されても、EPAのナノ物質管理の有効性は多くの理由により疑問が残る。
  • プログラム・オフィスは、潜在的に義務付けられた情報の普及と利用を調整するための公式のプロセスを持っていない。
  • EPAは、政策変更とナノ物質のリスクに関して外部の利害関係者に全体的なメッセージを伝えていない。
  • EPAは、ナノ物質を化学物質として規制することを提案しているが、ナノ物質管理の成功はこれらの適用可能な法律の既存の限界に関連する。
  • EPAのナノ物質管理は、リスク情報の欠如と産業側提出のデータへの依存によって限定される。
 これらの問題は、既存のリソースの困難さと合わせると、効果的なナノ物質管理に対する大きな障害となる。もし、EPAが内部プロセスの改善をせず、明確で一貫した利害関係者とのコミュニケーションを開発しないなら、EPAはナノ物質リスクを効果的に管理することを確実にすることはできないであろう。

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 勧告
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 我々は、化学的安全性と汚染防止担当のEPA副長官が、関連するプログラム室を横断的にわたるナノ物質情報の効果的な普及と調整を確実にするためのプロセスを開発することを勧告する。

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 EPAのコメントとOIGの評価
 Agency Comments and OIG Evaluation (Page 12)
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 EPA は関連するプログラム室を横断的にわたるナノ物質情報の効果的な普及と調整を確実にするための公式なプロセス求める我々の勧告に同意し、EPAは、我々の勧告に同意し、期日を示した工程表つきの調整された行動計画を提供した。EPA はまた報告書のタイトルを変更することを提案し、OIGはそれに同意した。

 EPA はまた、ナノ物質の健康と環境リスクを評価し管理するための化学的安全性と汚染防止室(OCSPP)が現在実施している取り組みに関する追加情報を提供した。それは、EPA内部、関連機関、及び政府内のレベルでのナノ物質関連の取り組みを示す多くの活動を特定した。OICは評価を行なうときに、これらの活動のほとんどについて言及した。我々は、報告書の第1章に”著しい実績”を追加したが、それはこれらの活動の概要を示すものである。

 EPAはナノ物質情報を公衆に明確には伝達していないというOIGの評価に同意しなかった。しかし、OIGは今でも、EPAは全体として透明な全体的メッセージを提供すべきであり、そのようにするためにウェブサイトをもっと利用することができると信じている。OIGは、EPAがナノ物質に関してもっと多くの情報を収集し、更なる措置をとる時に、公衆に対して、EPAの規制的アプローチはもとより、ナノ物質の便益、リスク、潜在的な曝露について伝達し続けることが重要であると信じている。EPAのOIG評価に対する詳細な対応は付属書Aに示されている。


訳注1:EPA 監察総監室 (US EPA / OFFICE OF INSPECTOR GENERAL)
  • 省庁内GAOの役割を担う監査総監(NTTデータ DIGITAL GOVERNMENT メールマガジン 2007年2月8日号)
    [監査総監(IG:Inspectors General)とは]
    ・各政府機関が財務管理や倫理上の規定を守り、適正に運営されているかどうかを審査する職務。1976年の医療詐欺事件をきっかけに、監察総監室を現在の保健福祉省に設置したことが始まり。2年後の1978年に監察総監法が施行され、現在は57の連邦機関が監察総監室を設置している。
    ・ミッションは、次の5つ。
    • 独立・客観的な監査・調査・検査の実施。
    • 無駄・不正・権利濫用の防止と発見。
    • 経済性・効果・効率の拡大。
    • 審議段階の法案・規制案の参照。
    • 各省庁の責任者と議会に対する最新かつ十分な情報の提供。
訳注2:ナノ物質データ収集システム
訳注3:ナノ農薬の規制


化学物質問題市民研究会
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