EPA 農薬プログラム室 2011年12月1日
EPA 布製品で使用する抗菌剤としての HeiQ AGS-20 (ナノ銀製品)を条件付で登録 情報源:EPA Office of Pesticide Programs Antimicrobials Division, December 1, 2011 Decision Document: Conditional Registration of HeiQ AGS-20 as a Materials Preservative in Textiles http://www.regulations.gov/#!documentDetail;D=EPA-HQ-OPP-2009-1012-0064 訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2011年12月6日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/nano/epa/epa_111201_conditional_registration_for_Nanosilver.html エグゼクティブ・サマリー EPAは、HeiQ Materials社の銀製品である”HeiQ AGS-20”(以降”AGS-20”と呼ぶ)を連邦殺虫剤・殺菌剤・殺鼠剤法(the Federal Insecticide Fungicide & Rodenticide Act : FIFRA)の3(c)(7)(C)(訳注:Authority to grant conditional registrations, conditioned on future submission orcitation of data)の下に、条件付登録を認めようとしている。EPAの条件付登録のベースは次のようなものである。
EPAは、労働者、消費者、及び環境が下記に曝露することがあり得ると決定した。 1) AGS-20 粒子から放出される銀イオン 2) AGS-20 の粒子 3) AGS-20 の粒子から遊離するかもしれないナノ銀 銀イオンへの曝露によるリスクについて、EPAは、銀のための既存の登録決定に信頼を置き、AGS-20で処理された布から放出される銀イオンへの曝露による人の健康又は生態系へのリスクには懸念はないと結論付けた。 AGS-20 への曝露によるリスクについて、HeiQ は、高レベル用量の AGS-20 を用いて実施した短期の急性動物毒性テストの結果を提出し、経口、皮膚、及び吸入からの経路による AGS-20 の投与の後、テスト動物に死亡又は異常はなかったということを示した。AGS-20 は、テスト動物の皮膚と目にほとんどないか又は穏やかな刺激を及ぼしたが、皮膚感作性はなかった。これらの結果に基づき、AGS-20 で処理された製品との接触が処理後12時間、制限される場合、及び、子どもが触れないようにするための容器包装をAGS-20 が求めない場合には、AGS-20 を入れた出荷用容器には”注意”と書いたラベルをつけることが求められる。 AGS-20 又は AGS-20から遊離するかもしれないナノ銀について、中期又は長期の人又は環境への毒性研究で利用可能なものはない。しかし、ナノ銀に類似した形状のものについては、科学的文献の中に中期毒性研究で利用可能なものがある。AGS-20 又は AGS-20から遊離するかもしれないナノ銀については中期毒性研究は存在しないが、EPAは、ナノ銀に関する科学的文献中のデータを使用して職業的及び消費者の曝露によるリスクを評価した。加えて、利用可能な曝露データは限定されるので、EPAは、AGS-20 中の全ての銀がナノ銀であると仮定して労働者の日々の曝露量を計算した。同様に、消費者の日々の曝露用量について、EPAは、AGS-20 で処理された布の染色堅牢度テスト(color-fast testing)からの洗濯排水中、及びAGS-20 で処理された布の乾燥中に検出される全ての銀がナノ銀であると仮定した。これらの仮定は両方とも、ひとりの人が AGS-20 を取り扱ったり、AGS-20 で処理された布を着たりする時に潜在的に受けるナノ銀の日々の用量を過大に見積もるものである。この評価が依存したこの研究は、人生の全ての段階にわたっての毒性又は潜在的な影響を評価していないので、AGS-20 から遊離するかもしれないナノ銀への曝露によるリスクを評価する時に、10倍のデータベース不確実性係数をEPAは使用した。 環境への影響は、ナノ銀に類似した形状のものについて、科学的文献の中で利用可能な生態毒性研究に基づき、環境曝露は3億の人々(アメリカの人口)がそれぞれ、AGS-20 で処理されたTシャツを購入し、これらのTシャツ中の銀が1年の間に全てナノ銀として放出されると仮定して評価された。 AGS-20 に潜在的に由来するとするナノ銀の用量を過大に見積もり、リスク不確実性係数の最大値を採用して得られた控えめな仮定を用いたので、EPAは、条件付登録の期間においては、AGS-20 で処理された布による子どもたちと環境への有害リスクの可能性は低いと判断できる。 かくしてEPAは、AGS-20 の使用は、新たに要求されるデータが開発されている期間、健康への不合理な有害影響は引き起こさないであろうと結論付ける。EPAは、混合と充填の操作でAGS-20 粉末を取り扱う時に、職業的曝露についてのリスク懸念を持っている。この懸念の結果、AGS-20 粉末を扱う時には個人用防護具を着け、工業的制御を使用することを作業者に求める農薬ラベルを表示するよう、HeiQ は申請を修正した。 登録の条件としてEPAは、条件付登録の期間内(訳注:最終報告は2012年第3四半期(Appencix A, Table 3A Enforceable Schedule))に多くの研究を実施するようHeiQ に求めている。要求されるテストは、ナノ銀がAGS-20から遊離するかどうかを調べるために製品特性と安定性テストはもとより、職業曝露シナリオのための特定経路の毒性研究を含む。もし、ナノ銀が AGS-20 又は AGS-20 で処理された布から遊離することが分かれば、AGS-20 由来のナノ銀の人と環境への影響を調べるための追加のテストが求められるであろう。これらの研究は、研究を開始する前の手順のレビュー、研究の完了、及び、研究結果のEPAのレビューに要する時間を確保できるよう選ばれた4年という期間内に完成しなくてはならない。これらのデータが条件付登録の期間内に提出されたなら、EPAは、AGS-20 の使用が不合理な有害影響を人の健康と環境に引き起こさないことを確認するために、これらをレビューするであろう。HeiQ が要求される研究を開始するために適切なステップを踏まなかった場合には、あるいは、HeiQ が手順書又はデータを提出しなかった場合には、EPAは、FIFRA section 6(e) の下における HeiQ の登録を取り消す意図を示す通知を発行するであろう。 EPAは、HeiQ の製品は公衆の利益になると信じている。AGS-20 の使用は、同じ用途パターンを持った現在登録されている製品と比べた時に、銀の環境的負荷を少なくするかもしれない。さらに、AGS-20 は、銀塩(silver salts)を含むすでに登録されている製品からの銀イオンの速い放出に比べて、銀イオンの遅い放出により微生物が引き起こす悪臭の発生を抑制する能力を長持ちさせるように見える。 訳注:関連情報
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