国際化学物質事務局(ChemSec) 報告書 2005年1月
REACHの中で我々が必要とすること
EUの新化学物質規制案についての見解

情報源:The International Chemical Secretariat at http://www.chemsec.org/
What we need from REACH - Views on the proposal for a new chemical legislation within the EU
January 2005
http://www.boots-uk.com/App_Portals/BootsUK/Media/PDFs/CSR/chemsec_publication.pdf
訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2005年3月11日
更新日:2005年8月31日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/reach/ChemSec/chemsec_reach.html

 The International Chemical Secretariat(国際化学物質事務局/スウェーデン)は、より強化された欧州化学物質規制を主張する企業や団体の新たな報告書 『我々がREACHから必要とするもの』 を発行した。

 内容紹介
  • はじめに
  •    
  • H&M(衣類、化粧品販売業)
  • 記事全文 
  • Boots/Marks & Spencer(小売業)
  • 記事全文 
  • ETUC(欧州労働組合連合)
  • 記事全文 
  • EUREAU(欧州上下水道組合連合)
  • 記事全文 
  • NCC (建設業)
  • 記事全文 
  • EURO COOP (欧州消費者共同組合連合)
  • 記事全文 
  • Electrolux (台所設備、掃除、屋外用機器)
  • 記事全文 

    はじめに

     2002年のユーロバロメータの調査によれば、ヨーロッパの93%の人々が化学物質は健康に有害な影響を与えると信じている。言い換えれば、ヨーロッパ市場の大多数の消費者は化学物質に対して否定的な態度である。これは、消費者と直接向きあう会社にとっては無視することのできない数字である。

     化学物質は工場のドラム缶や家庭の掃除用具戸棚のビンの中だけに見出されるわけではない。それらは、ほとんど全ての製品の製造過程で、及び製品そのものの成分として使用されている。しかし、我々はこれらの化学物質が環境や我々の健康にどのように有害であるかということについてほとんど知っていない。”有毒物質騒ぎ”が起こることを避け、顧客の長い信頼を得ることを望む企業は、現時点では必要とする情報を入手したりあるいは要求することは不可能である。

     我々は、新たな化学物質規制(REACH)のための欧州委員会の提案に関する議論において、化学物質についての不十分な情報のために金銭的な損失を最終的には被ることになる企業やビジネスのことが、ほとんど配慮されていないということは不適切であると考える。

     自社の製品が化学物質に依存している企業は、そのような情報は必ず必要であると確信している。市場で消費者と密接に関わっているのは彼らであり、なにか不具合があった場合に非難され、コストを負担させられるのは彼らである。この報告書において、国際化学物質事務局はいくつかの企業と団体に現状よりもっと厳格な化学物質規制を求める見解を述べる機会を提供した。

     数年間の調査、専門家会議、及び政治的討議の後、新たなEU規制は形ができてきた。現状の化学物質規制では人間の健康と環境を守ることができないことが明らかになったので、それは久しく待ち望まれていた改正である。EUの既存の約40の様々な化学物質規制法にパッチを当てながらしのぐという今までのやり方は、REACHという単一の法律によって置き換えられるであろう。

     当初の提案では、総合的な化学物質管理を行うために真剣な試みを取り入れ、あらゆる場所に存在する危険な化学物質をもっと環境にやさしい代替物質に確実に置き換えることが一般的に考えられていた。多くの企業もまた、彼らの事業をやりやすくすると考えて、この改正を賞賛した。例えば、REACHがあれば企業は化学物質供給者に情報を要求しやすくなり、将来発生するかもしれない汚染除去や補償のコストのリスクを削減できるであろう。

     新たな規制は企業の発展や革新を促すことになる。新たな市場、新たな消費者、より大きな信頼、将来のリスク低減などは現状の化学物質規制の改革によりもたらされる利点の一部である。

     残念ながら当初の提案は、化学産業側の徹底的なロビーイング攻勢により、多くの点で弱められている。しかし、化学物質政策は化学産業界だけの関心ごとではない。

     この報告書では、企業と団体は、本当に必要とするものをREACHが提供しないのではないかという懸念を述べている。

    企業・団体の見解の概要

    H&M (衣類、化粧品販売業)
     市場にあるほとんどの物質の有毒性データが欠如しているということは重大な問題である。有効なREACHシステムが適切に実施されれば、データのギャップを埋め、ヨーロッパ市場での全ての関係者のために同じ義務と権利をもたらしつつ、もっと公平な活動の場を生み出すであろう。
     H&Mは、”川上”の製造工程で使用されている化学物質を管理し監視するために金銭的に大きな負担がある。我々は、このシステムは、製造者にその製品にもっと明確な責任を負わせるためのコスト効果のあるアプローチであると考える。この責任には、彼らが取り扱う物質と製品についての情報を提供することも含まれるべきである。
     最もコスト効果があり、唯一の適切な管理方法は代替であり、危険な化学物質を使い続けることではない。
    H&Mの記事全文

    Boots/Marks & Spencer (小売業)
     信頼できる化学物質規制のシステムがなければ、小売業者は、化学物質の使用を ”自己規制” せざるを得ない。化学物質毎にある多くの異なる用途に対し、多数の小売業者たちが独自の矛盾する可能性のある見解を持つことになる。化学物質管理のための強固で総合な規制システムがないために、化学物質が消費者をますます悩ませることになり、現在の大きな社会的不満の原因となっている。
    Boots/Marks & Spencerの記事全文

    ETUC (欧州労働組合連合)
     既存の法規制は、危険な物質に曝露する労働者を保護することができない。労働者保護法によって要求される調査と防止措置を実施するためにも、データなくして、リスクは適切に評価することはできない。
    ETUCの記事全文

    EUREAU (欧州上下水道組合連合)
     発生源で物質を管理せよ。さもないとEUREAU(欧州上下水組合連合)は”労働現場の川上”にそれらの物質を流すことになる。我々の水源を守るために、リサイクルを可能にするために、そして供給系の末端での処理の必要性を減らすために、危険物質をその源で排除すること。
    EUREAUの記事全文

    NCC (建設業)
     我々利用者に引き渡される製品と物質が相対的に有害性がなく、化学物質製品と材料双方の成分に関し十分な情報を容易に得ることを確実にするために、供給者が”非常に高い懸念のある物質”を排除することに対する最大の責任を持つという規制法は、我々が多くの金銭的出費を抑え、より良い製品を提供することができるということを意味する。
    NCCの記事全文

    EURO COOP (欧州消費者共同組合連合)
     REACHは今日の知識のギャップを埋め、ヨーロッパ産業の競争力を維持強化し、化学物質を様々な方法で使用する誰に対しても重要な情報の公開を保証することを目指さなくてはならない−ということを考えよ。人間の健康と環境への影響が知られていない場合、産業側はそれらの化学物質を製品中に使用することを許されない。
     消費者は強化されたREACHのためにその価格を払うことを受け入れるであろうと我々は信じている。
    EURO COOP の記事全文

    Electrolux (台所設備、掃除、屋外用機器)
     化学物質の持続可能な使用のためには、健康と環境の影響が適切に評価できることが必要である。どのような物質に対しても許容できない特性が見つかったなら、我々は速やかに有害影響のない代替物質を採用しなくてはならない。物質、調剤、製品の情報が十分でないことが多い。
     REACHは、安全な製品、安全な製造、そして環境保護という我々の目標を達成する重要なツールであると我々は考える。
    Electrolux の記事全文

    What we need from REACH(pdf版 英文)のダウンロード


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