国際化学物質事務局(ChemSec) 報告書
健康的な環境を創造する
建設産業のビジネス機会
アルフ・ゴランソン (建設会社NCCのCEO)
情報源:The International Chemical Secretariat
http://www.chemsec.org/
Creating healthy built environments
A business opportunity for the construction industry
by Alf Goransson CEO, NCC AB
http://www.chemsec.org/documents/What%20we%20need%20from%20REACH.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2005年3月29日
更新日:2005年8月31日

NCC(建設業)

 NCC ABは、スカンジナビアにおける主要建設会社のひとつであり、我々はまた、バルト海地域でも積極的に事業展開している。我々の事業は、住宅、土地開発、道路、トンネル、等である。
 我々は、非常に大量の化学物質製品と工事資材を我々の工事のために使用し、これらの製品と資材の大部分は建物と構築物に組み込まれる。このことは、製品と資材は非常に長期間使用され、製品と資材に含まれる危険な化学物質はその建物を使用する人々の健康に、又は構築物の周囲の環境に、非常に長い間、有害影響を及ぼし続けるということを意味する。最終的には、我々が建設し構築した全てのものは廃棄物となり、それらは何らかの方法で処理されなくてはならない。ここで再び、危険な物質が危害を及ぼすリスクがある。

 過去に、建設会社と建設会社への製品/資材供給者によってなされた数多くの過ちの事例がある。化学物質製品や物品の中で広く使用されたアスベスト、密閉剤中で使用されたPCB's、塗料中の鉛、等々である。これらの過ちは、化学物質の使用に関する法規制が十分でないこと、自分たちの製品中で使用している成分の有害な影響についての供給者の知識不足、そして、製品と物品の化学物質成分に関する情報がユーザーにとって容易には入手できないという事実によって引き起こされた。これらの過ちを正すためのコストは莫大な額になる。ある場合には、そのダメージは取り返しがつかない。例えば、PCB類やその他の残留性化学物質は、すでに環境中に広く行きわたっている。

我々が必要とすること

 建設産業は、多くの化学物質製品や工事用資材に含まれる多くの化学物質を使用している大きな産業である。我々は、”非常に高い懸念の物質”の除去を考えており、我々が使用する化学物質製品や資材の成分についての完全な情報が、建設産業の成功要因として非常に重要であると考えている。我々のビジネスにとって、我々が建設した建物を使う人々が健康で満足し、我々の会社と製品を信頼してくれることが何にも勝る重要なことである。また、建物に使用した危険な物質を除去する要求や環境破壊に対する危惧の結果、生ずる経済的な打撃や信用の失墜を避けることが、非常に重要なことである。

 今日、我々は化学物質製品や工事用資材の成分について、できるだけ明確にし、最も危険な物質を避けるよう努力している。我々は供給者からこの情報を集めるために多くの時間を割いている。我々ユーザーが、我々に供給される製品と資材は相対的に有害性がないことに自信が持てるよう”非常に高い懸念の物質”を除去する最大の責任は供給者にあること、かつ、化学物質製品及び工事用資材の成分について完全な情報を我々が容易に得られるようにする法規制があれば、我々は多くの金を節約し、より良い製品を提供することができる。このことはまた、我々NCCの環境ポリシーとしての下記の使命を完遂するよい機会であると考える。

 ”NCCは、そこに住む人々のために健康的な環境を創造し、NCCは有害な物質の使用を減らさなくてはならない”。

ビジネス機会

 もし、我々が、EU域内で入手できる全ての化学物質製品及び資材は”安全”であるとの確信を持てれば、我々の母国以外の供給者からそれらを購入する可能性は増大し、このことは、REACHの目的である”域内市場での自由な流通”が達成されることを意味する。国際購入増大の可能性は、我々の建設費のコスト削減をもたらす。一方、もし供給者に対する法規制が非常に弱ければ、我々にとって最も容易なことは、”非常に高い懸念の物質”除去したいという我々の要求と望みをよく理解している国内の供給者と主に取引することである。

結論として、我々は下記のような展開を期待する
  • 供給者は自分たちの製品や物品の中で使用されている化学物質がいかに危険であるかということについて十分な知識を持つべきである。情報とテスト実施の要求は、大量製品だけでなく、製造量が10トン以下の化学物質にも適用されなくてはならない。
  • ”非常に高い懸念の物質”は、もし危険性のより少ない代替が存在するなら、化学物質製品や物品中で使用することが許されるべきではない。
  • もし、代替が存在しないなら、”非常に高い懸念の物質”は、その取扱いが全ライフサイクルを通じて安全に行われ、かつ、その物質を使用することに対する強い社会的経済的理由がある場合にのみ、許されるべきである。その許可は、期限付きであるべきである。
  • 供給者は、化学物質製品と物品の化学成分及び有毒性を明らかにすべきである。
  • 同じ法的要求が、EU内で製造される物品と同様に、輸入される物品についても適用されるべきである。
  • 物品中に存在する全ての危険な物質は、その物質がその物品の使用中に排出されるか否かに関係なく、そして、物品の種類ごとにどのくらいの量が使用されているかということに関係なく、登録されなくてはならない。たとえ少量の化学物質であっても、最終的には環境中に排出されることになる。


化学物質問題市民研究会
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