国際化学物質事務局(ChemSec) 報告書
安全で健康な環境に対する消費者の権利
EURO COOP (欧州消費者共同組合連合)
情報源:The International Chemical Secretariat
http://www.chemsec.org/
Consumers' Right to a Safe and Healthy Environment by EURO COOP
http://www.chemsec.org/documents/What%20we%20need%20from%20REACH.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/

掲載日:2005年3月30日
更新日:2005年8月31日

EURO COOP (欧州消費者共同組合連合)

  • EURO COOP −欧州消費者共同組合連合−は1957年に設立され、その事務局はブリュッセルにあり、今日、3,000以上の地方又は地域の消費者協同組合を代表しており、その会員はヨーロッパで2,200万人を越える消費者たちである。
  • EURO COOPは、設立以来、ヨーロッパで最も長い歴史を持つ消費者団体のひとつであり、その会員は、そのルーツが19世紀に設立された共同組合運動にあるヨーロッパの消費者団体である。
  • EURO COOPの目標は、消費者利益を代表し保護することに加えて、消費者共同組合の経済的及び社会的目標をヨーロッパにおいて推進することである。EURO COOPは、EU体制により設置された多くの諮問委員会の委員であり、消費者協同組合やその消費者会員に関連する問題について相談を受けている。
  • EURO COOPは、ブリュッセルで(EUにより)立案される法律や政策が可能な限り、全ヨーロッパの消費者協同組合やその消費者会員の懸念を確実に考慮するよう活動する。
  • 消費者協同組合は、その会員である消費者によって所有され管理されており、したがって、国レベル及び国際レベルでの主要な関心は消費者の利益の推進である。
 消費者協同組合は、品質のよい商品やサービスを提供するということだけでなく、地域の持続可能な発展のために活動する。この目標を達成するための方法のひとつは、会員誌、ウェブサイト、訓練プログラム、等の消費者情報や教育を通じて、消費者のよりよい購買選択を可能とするよう消費者会員を支援することである。

 したがって消費者共同組合は、消費者会員に製品と情報を提供することを通じて、より持続可能な発展と消費に貢献する重要な役割を果たしている。

新たな強力なEU化学物質政策の必要性

 EURO COOPは、環境と人間の健康のより良い保護のために、長年、EUの化学物質政策の改革を要求してきた。現在のEUの化学物質規制のシステムは機能していない。現状のシステムにおける既存化学物質の管理と分類は非常に遅くて不十分である。欧州委員会によれば、高生産量(HPV)化学物質のための優先リストにある140物質のうち、この10年間で、たったの11物質しか評価が終わっていない。

 現在の規制システムは約60の法規制の寄せ集めに基づいており、製造者にとって煩雑で分かりにくいシステムである。したがって現在のシステムは革新や代替を推進するものとはならない。

 EURO COOPの意見として、これからの戦略及び法規制は下記に基づかなくてはならない。
  • 予防原則
  • 汚染者支払い原則
  • 完全な知る権利。製品中にどのような化学物質が存在するかを含む。
  • 期限付きで市場にある全ての化学物質の安全性が独立機関により評価されなければならない。化学物質の全ての用途は承認され、合理的な疑いに対し安全であることが示されるべきである。
  • 残留性または生体蓄積性のある化学物質の段階的廃止
  • 安全性の低い化学物質をより安全な代替物に替える要求
  • 2020年までに有害物質の環境への全ての排出を止めるという公約
REACHに我々が望むこと

 EURO COOPは、REACHは今日の知識のギャップを埋め、ヨーロッパ産業の競争力を維持強化し、動物を守り、化学物質を様々な方法で使用する誰に対しても主要な情報を開示することを目指していると信じている。産業が人間の健康と環境に対する影響が不確かな物質を製品中に使用することを許してはならない。

 したがって、EURO COOPは、予防原則と、より安全な代替を求める原則がもっと展開され、もっと明確にREACH提案中に述べられるべきであると考える。このシステムがリスクのある化学物質を使い続けることを許すものであってはならない。その意図は、社会の必要性があり、他により安全な代替が存在しないということが証明できる場合を除いて、リスクのある化学物質を禁止することである。

REACHの特定領域

認可の範囲
 EURO COOPは、化学物質の混合により生じる相乗効果の可能性への対応に関するメカニズムが開発されることが重要であると考えている。さもないと、多くの化学物質が”カクテル”のように大気中、下水の汚泥中、水中、土壌中に現われて問題が生じているという事実にもかかわらず、個々の化学物質が影響を及ぼさないと推定される濃度(PNEC)であるという理由のために、それらの化学物質が認可されるというリスクがある。

予防原則と代替の原則
 EURO COOPはまた、予防原則と、より安全な代替物に替えるという原則がもっと展開され、もっと明確にREACH提案中に述べられるべきであると考える。このシステムがリスクのある化学物質を使い続けることを許すものであってはならない。その意図は、社会の必要性があり、他により安全な代替が存在しないということが証明できる場合を除いて、リスクのある化学物質を禁止することでなくてはならない。これに欠くことのできぬことは包装容器と製品の廃棄物の安全な処理を確保することである。

 これに関し、EURO COOPは、製造者が単に責任を回避するために禁止が発効する前に禁止される化学物質又はそれらを含む製品を小売業者に供給することをいかに避けるかという問題にREACHが目を向けることを望む。このことを避けるために何らかの措置がとられる必要がある。

動物テスト
  EURO COOPは、欧州委員会がデータ共有に関連する規定を強化したということは認めるが、我々はさらに、重複するテストを避けるために、データの共有の重要性を強調したい。テストの重複がないことを絶対的要求とすべきである。

 さらに、EURO COOPは、代替テスト方法の開発を推奨すること、及びもしそれが有効となったなら、特定の結果を求めるための標準テスト方法とすべきであると考える。

評価
 化学物質規制のシステムが機能するようにするために、それがどのようにうまく機能し、当初の目標に合致しているかどうかを評価するための期限を設定することが必要である。人間の健康と環境に対するある化学物質のより安全な代替物又は有害影響、又はその組み合わせの存在を示す科学的な証拠が出現したら、当初の目的のあるものを調整又は変更する必要がある。

 さらに、様々な化学物質の認可、非認可、あるいは使用制限のための時間表が最適のシステムをもたらすよう導入されるべきである。

研究開発
 EURO COOPは、より安全な代替物の更なる研究開発のために資金が手当てされることを望む。

情報
 EURO COOPは、REACHの中に単純で総合的な表示システムを含めることの必要性を強調したい。消費者は、与えられた情報で選択することができるよう製品の成分について知る権利がる。

 一方、小売業者もまた、彼らの顧客/消費者にアドバイスできるよう、その情報を必要とする。現在、製造者から川下ユーザー及び消費者への情報の流れを確実にするシステムは存在しない。

 しかし、産業側が消費者に責任を転嫁するために表示が使用されてはならない。産業側は製品の成分、正しい使用と処分について責任がある。

 表示がユーザー/消費者に理解しやすいということも重要である。したがって、消費者の化学物質に対するよりよい理解のために、情報キャンペーンやリーフレットなどの教育措置がとられなくてはならない。

省庁
 省庁の専門家委員会と管理委員会に関して、EURO COOPは、製造者から最終消費者まで全ての利害関係者が平等な基礎の上にこれらの委員会に参加できるべきであると信じている。

結論
 もしREACHが、環境と人間の健康、特に子どもたちのような弱い集団を保護できるのなら、消費者は強いREACHのための価格を払うことを受け入れるであろうと我々は信じる。

 したがって、EURO COOPは新たなEUの化学物質政策を支持する。これ以上遅らせるべきではない。



化学物質問題市民研究会
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