BBC ニュース 2014年4月30日
抗生物質への耐性は 今や”世界的な脅威”であると WHO が警告 情報源:BBC News Health, 30 April 2014 Antibiotic resistance now 'global threat', WHO warns By Pippa Stephens, Health reporter, BBC News http://www.bbc.com/news/health-27204988 訳:安間 武/化学物質問題市民研究会 http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2014年5月8日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/news/ BBC_140430_antibiotic_resistance_WHO_warns.html 抗生物質への耐性は公衆の健康に対する”重要な世界の脅威”をもたらすと世界保健機関(WHO)の報告書は述べている。 同報告書は114か国からのデータを分析し、耐性は現在、”世界のあらゆる地域”で発生していると述べた。 同報告書は、人々が数十年間治療可能であった単純な感染症で死ぬ”抗生物質後の時代”について記述した。 もし”有効な”措置が緊急にとられなければ、”壊滅的な”結果を生じることになりそうであると、同報告書は付け加えた。 同報告書は、肺炎、下痢、血液感染症のような一般的な重病を引き起こす7種の異なるバクテリアに焦点を当てた。 同報告書は、いくつかの国では治療を受けている人々の半分以上に最早効かない2種の主要な抗生物質を示唆した。 そのうちのひとつカルバペネム(carbapenem)は、バクテリアの肺炎桿菌(K.pneumoniae)により引き起こされる肺炎、血液感染症、及び新生児感染症のような生命を危うくする感染症の人々を治療するために、いわゆる”最後の手段”として使用される薬である。
WHOは、もっと新たな抗生物質が開発される必要があるが、一方政府と各人は、耐性を引き起こすプロセスを遅くする措置を取るべきであると述べている。 報告書の中で、大腸菌尿路感染症(E.coli urinary tract infections)のための抗生物質への耐性は、1980年代には”実質ゼロ”であったものが、今日では症例の半分以上に効かなくなっている。 いくつかの諸国では、そのバクテリアに対処するために用いられる抗生物質への耐性は、治療を受ける人々の半分以上に効かないであろうと同報告書は述べた。 りん病治療 ”失敗” WHO の事務局長補代理 福田敬二 博士(Dr Keiji Fukuda)は、”多くの利害関係者による緊急の調整された措置が取られなければ、世界は抗生物質後の時代(post-antibiotic era)に向かい、数十年間治療可能であった一般的な感染症や軽い疾患で再度人が死ぬことになる”と、述べた。 彼は、効果的な抗生物質は、人々の命を長らえ、健康な生活と現代医学からの便益に役立つ”柱”のひとつであった。 ”もし我々が、感染症を防止するための取組みを改善するための有効な措置を取らなければ、そしてまた、抗生物質を製造し、処方し、使用するやり方を変えなければ、世界はこれら世界の公衆保健の物資をますます失い、その結果は壊滅的なものとなるであろう”と、 福田敬二 博士(Dr Keiji Fukuda)は加えた。 同報告書はまた、不妊の原因となる性的感染症であるりん病治療の最後の手段がイギリスで効かなくなっていることを発見した。 それは、オーストリア、オーストラリア、カナダ、フランス、日本、ノルウェー、南アフリカ、ソルベニア、スウェーデンで同様であると、同報告書は述べている。 世界中で毎日、100万人以上の人々がりん病に感染しているとWHOは述べている。 ”行動せよとの警告” 同報告書は、抗生物質の必要性を削減するために、より良い衛生、きれいな水へのアクセス、医療施設での感染症管理、そして予防接種を要求している。 昨年、イングランドの医療主担当官である Dame サリー・デヴィーズ教授は、薬品耐性感染症の増大は、世界的に警告されるべき脅威であると述べた。 国境なき医師団(Medecins sans Frontieres)のアクセス・キャンペーンのディレクターであるジェニファー・コーン博士は次のように述べた。”ニジェールの栄養センターに収容されている子どもたち、そしてシリアにおける外科及びトラウマ施設における人々を含んで、我々の現地活動場所のどこでも、抗生物質耐性のものすごい発生率を見ている”。 ”最終的には、WHOの報告書は、特許と高価格に依存しない、発展途上国の必要性に合わせた新しい手ごろな価格の抗生物質を産業界が開発するインセンティブを導入するよう、政府に求める警告となるべきである”。 彼女はさらに次のように付け加えた。”我々が緊急に必要とすることは、品質の保証された抗生物質がそれらを必要とする人々に届くよう、しかし過剰に使用されない又は入手できない高価格ではない抗生物質の理性的な使用を提供する確固とした世界的行動計画である”。 英国微生物学会(UK Society for General Microbiology)の会長ニゲル・ブラウン教授は、抗生物質耐性に取り組むための新たなアプローチを開発するために、積極的な微生物学者とその他の研究者らが一緒に働くことが必要であると述べた。 ”これらのアプローチは、もちろん新たな抗生物質の開発を含むであろうが、しかしそれらはまた、新たな高速診断装置、微生物が薬に対してどのように耐性を持つようになるのか、そして人間の行動がどのように耐性の拡散に影響するのかを理解するための基礎研究も含むべきである”。 WHO 報告書: WHO’s first global report on antibiotic resistance reveals serious, worldwide threat to public health 訳注:関連情報
|