EHN 2011年9月26日
有機農業は 抗生物質耐性バクテリアを減らす 情報源:Environmental Health News, September 26, 2011 Organic farming reduces antibiotic resistant bacteria Synopsis by Renee Gardner http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/ 2011/09/2011-0925-organic-farm-resistant-bacteria/ オリジナル論文: Sapkota, AR, RM Hulet, G Zhang, P McDermott, RL Kinney, KJ Schwab and SW Joseph. 2011. Lower prevalence of antibiotic-resistant Enterococci on U.S. conventional poultry farms that transitioned to organic practices. Environmental Health Perspectives http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1003350. 訳:安間 武(化学物質問題市民研究会) http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/ 掲載日:2011年11月10日 このページへのリンク: http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_110926_antibiotic_resistant.html 従来の成長促進養鶏を行なっている農場に比べて有機農業手法に変えた農場は、人に感染症を引き起こすことができる抗生物質耐性バクテリア、特に1種類以上の抗生物質に耐性を持つバクテリアが減っている。 抗生物質耐性バクテリアは、従来の養鶏手法を続けている養鶏農場に比べ、有機養鶏の実施に最近切り変えた養鶏農場には少ないことが、米国大西洋岸中部地域における有機家禽農場の研究で判明した。この研究成果は ”Environmental Health Perspectives”のオンライン版に発表された。 この研究は、抗生物質の非治療目的での使用の削減もまた、鶏及びその排泄物中の抗生物質耐性のバクテリアを減少させることを示している。それはアメリカの農場に関する変化を検証した最初のもののひとつである。この研究結果は、同様な結果を報告しているこれまでのヨーロッパやアジアでの研究結果と一致する。すなわち、抗生物質の使用が少なければ動物及び食用製品中の抗生物質耐性バクテリアが少ないということを意味する。 従来の養鶏場における抗生物質の使用は、単に病気の鶏の治療だけのためではない。この薬はしばしば、狭い鶏舎に住む鶏の成長を促進するために餌に混ぜて与えられている。抗生物質の使用は1990年代に増大し、その増大の大部分は、いわゆる非治療用途のためのものであった。 しかし、このような過剰使用は施設内に抗生物質耐性バクテリアを増大させることになる。このバクテリは、動物に直接触れたり、肉製品を処理したり食べたりすることにより、あるいは作物や畑にまく厩肥を通じて人にまで拡散する。 抗生物質耐性バクテリアのために病院では治療上厄介なことなことになり始めているために、このことは問題となっている。抗生物質耐性バクテリによる感染症は一般的に患者にとって、より長期で重大な疾病であり、複雑で高価な治療を意味する。 抗生物質耐性バクテリアの蔓延が科学者や公衆からの注意を引くようになり、有機鶏の需要が高まっている。有機鶏の販売は、2003年から2006年の間に4倍増大し、鶏は最も成長の速い有機製品のひとつとなっている。この需要は、部分的には消費者の選択と有機的に育てられた家禽は従来の生育法法による家禽よりも安全であるという認識のためである。この需要がまた農場が従来法から有機法に切り替えることを促進している。 この研究で、メリーランド大、ペンシルベニア州立大、米国農務省、ジョンズ・ホプキンス大学の研究者らからなる研究チームは、有機農法へ移行しつつあった大西洋岸中部地域を研究対象とした。研究者等は、以前は従来の養鶏法であったが最近認証有機鶏を生産している5つの農場と、6種の異なる抗生物質を飼料に混ぜて従来農法を継続している5つの農場とを比較した。 研究者等は、水、飼料、及び、わらやおがくずなどの寝わら材、厩肥、羽、こぼれた飼料などからなる鶏舎の雑多な廃棄物をサンプルとして収集した。彼等は、これらのサンプルからバクテリアを培養し、様々な抗生物質へのバクテリア耐性をテストした。 著者等は、有機法及び在来法の両方に関して同じ系統のバクテリアを発見した。抗生物質耐性バクテリアは有機農場からのサンプル中では少なかった。抗生物質耐性バクテリアの大部分は、鶏舎廃棄物のサンプル中で見出されたが、飼料や水のサンプルからもいくらかは見つかった。 多種薬剤耐性の、すなわち、3又はそれ以上の種類の抗生物質に耐性を持つバクテリアもまた、有機農場では少なかった。従来の 鶏舎からのサンプルの42%は多種薬剤耐性であったが、有機農場からのサンプルの耐性は10%であった。従来農場からのバクテリアは、感染症の人に日常的に使用されているシプロフロキサシン、テトラサイクリン、ペニシリン、ゲンタマイシンのような抗生物質への耐性がより大きいようである。 |