The Intercept 2019年12月20日
ヨーロッパ諸国は有害な PFAS 化学物質を
2030 年までに廃止する計画を発表

シャロン・ラーナー

情報源:The Intercept, December 20 2019
European Countries Announce Plan to Phase Out Toxic PFAS Chemicals by 2030
By Sharon Lerner
https://theintercept.com/2019/12/19/pfas-chemicals-europe-phase-out/

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2019年12月28日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/news/191220_The_Intercept_European_
Countries_Announce_Plan_to_Phase_Out_Toxic_PFAS_Chemicals_by_2030.html

 スウェーデン、オランダ、ドイツ、及びデンマークの環境規制担当者らは本日、ヨーロッパの化学物質規制の枠組みの下に全ての PFAS 化合物類(パーフルオロアルキル化合物及びポリフルオロアルキル化合物)を制限するための計画を発表した。ブリュッセルでのその発表は、2030年までにPFAS 化合物類のほとんどの使用を廃止するという戦略を提示している文書を欧州委員会に提出した 1日後に、そして欧州員会が化学物質の全てのクラスについて飲料水基準を提案した 1週間後に、行われた。

 21ページからなるその文書 は、ヨーロッパが”不可欠(essential)”ではない PFAS の全ての使用を廃絶し、その化学物質類に個別的ではなく、グル−プとして対処するよう求めている。 ”PFAS 類のためのEU-戦略の要素(Elements for an EU-strategy for PFASs)”と題名のつけられたその報告書(訳注1)は、世界中で水を汚染しているその化学物質類に対する包括的な取り組みを提示し、アメリカ政府には大きく欠如している切迫感を伝えている。その文書は、欧州委員会の環境審議会(Environmental Council)からの求めに応じて 6月に作成されたもので、もし行動を起こさなければ莫大な健康的及び金銭的損失を被るという理由で、”できる限り全ての PFAS 類の放出(release)と暴露を止めるための迅速な行動”を求めている。それは、テフロンを含んで、泡消火薬剤、化粧品、食品容器、及び焦付き防止コーティングなどを製造するために用いられてきたその化学物質類 (PFAS 類)は、土壌中及び水中で極めて移動性が高いと述べ、”環境中に長い間残留する”と警告している。

 アメリカでは、 3M 社のある重役が最近、議員らに、”科学的証拠の重みは PFOS、PFOA、又はその他の PFAS が人間に有害な健康影響を及ぼすということはまだ確立されていない”と告げたが、ヨーロッパのその戦略文書はその化学物質類が人々を害することを明白に認めている。” PFAS 類は害を引き起こす”という見出しの着いたその文書のある章は、発達毒性、脂質代謝への影響、ひとつ又はいくつかの臓器での腫瘍の発生、及び”いくつかの PFAS 類への暴露後に実験動物で観察された影響”として免疫毒性をリストしている。リストされている人間の健康影響は、新生児の出生体重への影響、がんリスクの増大、免疫系への影響、及び甲状腺ホルモンかく乱を含む。

 その戦略文書はまた、移動性及び難分解性の化合物は環境中で浄化するのは極めて高くつくであろうと言及している。ヨーロッパにおける飲料水及び地下水から PFAS 化学物質を除去する費用は、20年間で 100〜200 億ユーロ(約1.2〜2.4兆円)であると見積もられているが、資産損失と生態系被害は”定量化できない”ので、その見積には含まれていないことをその文書は認めている。

 欧州委員会は、 PFAS を個別にではなく、グル−プとして規制することを勧告している。その理由は、そのクラスに含まれる数千の化学物質の全てにひとつづつ対応することはあまりにも時間がかかり過ぎて現実的ではないからである。グループ・アプローチはまた、”残念な代替(regrettable substitution)”を回避するためにも提案されていると説明し、PFAS で繰り返し生じている有害な類似物質への危険な代替という問題に言及している。

 ”PFAS の不可欠ではないどのような使用も可及的速やかに廃止されるべきである”と宣言し、不可欠であるとみなされる化合物も、段階的に廃止されることを求めているが、その EU 文書は二つのグル−プを区別することの難しさを認めており、いくつかの戦略を提案している。”ひとつのアプローチは、消費者製品はより不可欠ではないように見えるので、消費者用途の規制から始めることである(例えば、衣類、化粧品、おもちゃ、及び食品接触材)。今年の初めに発表された論文訳注2)は、もしそれらが健康、安全、又は社会にとって重要な機能として必要であり、実行可能な代替がないなら、 PFAS は不可欠であるとみなされるべきと提案しつつ、そのアプローチを概説している”。

 その戦略文書は、EU の化学物質規制の枠組である REACH を含んで、その化学物質類を効果的に制限することができる多くの可能性ある措置を提示している。”全ての PFAS を包含する REACH の下での広範な制限は望ましい選択であろう”と、欧州委員会は助言する。しかしその文書は、産業による排出(emissions)、水路、化粧品、労働者の安全及び廃棄物管理を統治する法律を含んで、他の法的ツールもまた、利用されるべきであると述べている。

 オーストリア、ドイツ、フィンランド、及びイタリアの環境当局者の支援レターとともに、デンマーク、ルクセンブルグ、ノルウェー及びスウェーデンの大臣により欧州委員会の当局者に送付されたその報告書は、政府の行動に焦点を当てているが、それは産業側もまた、”もっと責任を持ち”、自主的にその化学物質類を廃止するよう促している。”

 欧州委員会が PFAS への規制アプローチにどのような道を採ろうとも、その計画は欧州委員会が速やかに動き、” PFAS 類を廃止するために、遅くとも 2025年までに EU-レベルで行動がとられ”、2030年までに発効させるべきことを提案している。もし、彼らが PFAS 化学物質への真剣な取り組みを行なわなければ、”それらの濃度は増大し続け、それらの有害な汚染影響は元に戻すことが困難となるであろう”とその文書は警告している。


訳注1
訳注2
訳注:当研究会が紹介したThe Intercept/シャロン・ラーナーの PFAS 関連記事


化学物質問題市民研究会
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