The Intercept 2016年5月20日
EPA の新たな勧告で数十の地域社会の
飲料水が突然危険になる

シャロン・ラーナー

情報源:The Intercept 20 May 2016
With New EPA Advisory, Dozens of Communities Suddenly Have Dangerous Drinking Water
By Sharon Lerner
https://theintercept.com/2016/05/19/with-new-pfoa-drinking-water-advisory-
dozens-of-communities-suddenly-have-dangerous-water/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年5月26日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_16/
160520_Intercept_new_drinking_water_levels_for_PFOA_and_PFOS.html


 EPA は本日(5月20日)、飲料水中の工業化学物質 PFOA 及び PFOS の新たな健康勧告値を発表した。両物質についての新たな値 0.07 ppb は EPA が2009年に発表した基準である PFOA が 0.4 ppb、PFOS が 0.2 ppb より著しく低い値である。PFOA と PFOS の両方が存在する地域では、勧告は複合最大値を 0,07 ppb とすることを提案している。旧基準値は、人々は汚染された水を数週間又は数か月間だけ飲むとする前提に基づいていたが、新たな基準は生涯暴露を想定し、かつ新たな研究を反映している。

 新たな連邦基準は、これら過フッ素化合物(PFCs)の飲料水中の存在に対して一貫性がなかった公的対応を統一するかもしれない。それらはまた直ちに、全米の数十の市や町に公的な飲料水汚染危機を引き起こすかもしれない。

 1月に発表された規制されていない飲料水汚染に関する EPA の最新のデータによれば、全米で 14 の飲料水系の PFOA レベルが新たな連邦基準を上回り、40 の飲料水系の PFOS レベルが新たな基準値を超えていた。合計 18 の州とグアムで汚染されていた。

 これらの水系のあるものはすでに問題に静かに対応を始めていた。ニューヨーク州サフォーク郡水当局の水質検査サービスの長であるケビン・ダークによれば、公共飲料水用井戸の PFOS レベルが 0.33 ppb と 0.53 ppb を示したサフォーク郡では、汚染された水は”非検出のレベルまで下げるために他の井戸の水と混合されるか、又はその使用を可能な限り制限されている”。彼は地域の水道水中の PFOS のレベルを知らないが、ダークは e-メールで”検出されるどの様な化学物質のレベルも低減されているということは事実上確かなことである”と述べている。

 同様に、コロラドスプリングスの安全上下水道管区は、142件のテストが PFCs を検出したので、汚染水の浄化に取り組んでいる。同管区の統括者ロイ・ヒールドによれば、同管区は 26 の井戸のうち 7 つを閉鎖し、レベルを下げるために混合している。

 しかし、他の水道会社はまだ、 PFC のレベルを下げなくてはならない。最近の EPA のテストで 0.2 と 0.23 の PFOS が検出されたアリゾナ州スコッツデールのオートマン水道会社の所有主スティーブ・アンダーソンは、アリゾナ州環境品質局からの電話を受けた後、同社の水につい最近この化学物質が混入したことを知った。彼は、近くのオートマン消防局によって使用された泡消火剤に由来する PFOS ではないかと疑っており、”解決するよう試みている”と述べた。

 今日まで、健康への危険性を示す汚染レベルに関して広範な公式見解があった。火災及び墜落・衝突事故の訓練で汚染された664か所の大規模な浄化に苦闘している軍は、その取り組みの指針とし、誰が清浄な飲料水を受け、誰が汚染された個人用井戸の修復を受けているかを決定するのに役立てるために、 PFOA と PFOS について EPA の旧基準を使用してきた。(国防省は、新勧告基準はどの様に浄化計画に影響を及ぼすのかという質問に答えなかった。)

 もっと厳しい基準を適用しているところもある。1月28日、EPA はニューヨーク州 フージック・フォールズの住民に、PFOA レベルが 0.1 ppb 以上の水を使用しないよう助言した。そして PFOA を少なくとも 0.05 ppb 以上含む水を使用した約 70,000 以上の人々の調査に数年間を費やしてきた科学者らの委員会は、暴露のレベルと精巣がん、腎臓がん、甲状腺障害、妊娠中毒症、潰瘍性大腸炎、及び高コレストロールとの間のありそうな関連を見つけた。2010年にニュージャージー州の飲料水品質研究所は PFOA の 0.04 ppb という安全制限を計算した。バーモント州は現在、PFOA について 0.02 ppb という最も低い安全制限値を持つ州である。


EPA 報告書は、人間の”発達中の胎児と新生児は PFOA 誘因の毒性に特に感受性が高い”と言及した。

 本日発表された勧告値は、その化学物質を健康影響と結び付ける多くの研究に基づいている。PFOS については、報告書は次のように言及している。この化学物質に暴露させた実験動物の研究は、”発達影響(低体重、生存、及び血清ブドウ糖レベルの増加と成獣子孫のインスリン抵抗性)、生殖(交尾行動)、肝臓毒性(コレストロール低下と共に起きる肝臓重量、脂肪肝)、発達神経毒性(空間学習と記憶の変更)、免疫影響、及びがん(甲状腺と肝臓))”を報告した。

 報告書はまた、 PFOS と免疫低下、甲状腺障害、高コレストロール、及び繁殖力の低下との関連を見つけた人間集団に関する研究を認めた。それはまた、PFOS と膀胱がん、結腸がん、及び前立腺がんとの関連の可能性を認めた。

 PFOA について、その研究は下記の影響を示すサル、ラット、及びマウスに関する調査を含めた。 ”発達影響(生存、体重変化、骨組織生成の低下、開眼の遅れ、思春期の変化、乳腺発達の遅れ)、肝臓毒性(肥大、壊死、食物脂質の代謝と堆積への影響)、腎臓毒性(重量)、免疫影響、及びがん(肝臓、精巣、膵臓)”。

 PFOA についての新たな健康勧告はまた、”PFOA 暴露と高コレストロール、肝臓酵素の増加、ワクチン反応の低下、甲状腺障害、妊娠高血圧症/妊娠中毒症、及びがん(精巣、腎臓)”との関連を示した人間の調査に基づいている。EPA 報告書は、人間では”発達中の胎児と新生児は PFOA 誘因の毒性に特に感受性が高い”ことに言及した。

 ”まとめると”報告書は、”ヒト研究の証拠の重みは、PFOA 暴露は人間の健康ハザードであるという結論を支持するものである”と述べている。全く同様な言い回しが PFOS 報告でも用いられている。

 新たな勧告値を”正しい方向への非常にながらく待ちわびた第一歩”と呼ぶ一方で、ウェストバージニア州のデュポン工場近辺の PFOA 汚染に関する集団訴訟を指揮する弁護士ロバート・ビロットは、”新たなガイドラインのレベルの暴露であっても PFOA が増大し、容認できないレベルで人の血液中に蓄積し続けることを許すので、新たなガイドラインでもまだ高すぎる”と、警告した。

 ビロットはまた、新たな勧告値は、強制力のある規制制限とは対立するものなので、非公式なガイドラインであると述べた。”もしそれが強制力のあるものなら、EPA は、責任ある組織にそれを浄化するよう求める一方的な命令を出したはずである”と述べた。

更新 2016年5月19日

 この記事が発表された後、国防省の報道担当官は次のようなメールを送ってきた。”国防省は過去の汚染からの人の健康へのリスクを決定するために EPA の新たな健康勧告値を使用するであろう。国防省のアプローチは包括的であり、我々が PFOA 又は PFOS を放出した場所を特定し、その放出が環境保護庁の健康勧告値を超えて飲料水に影響を及ぼしているかどうかを決定するよう設計されている。そのようなことが起きた場合には、国防省は規制当局及び地域の共同体と密接に連携して代替飲料水を供給するであろう”。

関連情報:
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