The Intercept 2018年11月30日
PFOA と PFOS は、
少ない精子数と小さなペニスの原因となる

シャロン・ラーナー

情報源:The Intercept, November 30, 2018
PFOA and PFOS Cause Lower Sperm Counts and Smaller Penises, Study Finds
By Sharon Lerner
https://theintercept.com/2018/11/30/pfoa-and-pfos-cause-
lower-sperm-counts-and-smaller-penises-study-finds/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2018年12月5日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/news/181130_The_Intercept_
PFOA_and_PFOS_Cause_Lower_Sperm_Counts_and_Smaller_Penises_Study_Finds.html



テフロン有害物質 パート20
 焦げ付き防止なべ、防水製品、消火泡に使用されている有害化学物質 PFOA と PFOS について懸念される新たな理由がある。
 焦げ付き防止なべ、防水製品、消火泡に使用されている有害化学物質 PFOA 及び PFOS について懸念される新たな理由がある。11月初旬に発表された研究 (Endocrine Society pdf ADVANCE 版JCEM 有料版)によれば、 PFOA と PFOS は男性の生殖機能を損ねる。

 研究者らは、 PFAS(パーフルオロアルキルスルホン酸類) という分類で知られる二つの化合物、 PFOA と PFOS はオスのマウス、ラット、及びウサギの生殖能力を低下させることについては、すでに報告していた。ジャーナル『Clinical Endocrinology and Metabolism』に発表された今回の新たな研究は、それらの化学物質に暴露した若者らの生殖系には多くの問題があることを示しており、またこれらの化学物質がどのように細胞内でホルモンを干渉するのかを初めて示した。

 その研究は、産業用 PFAS が飲料水汚染を引き起こし、人々の血液内にその化学物質の蓄積をもたらした世界のいくつかの地域のひとつであるイタリアのヴェネトで実施された。デュポン社のプラントがその化学物質をオハイオ川に放出したミッド・オハイオ・バレーは別の場所である。

 研究者らは、ヴェネトで高レベルの PFOA と PFOS に暴露した男子高校生と暴露しなかった若者を比較し、暴露グループは、短いペニス、少ない精子数、低い精子運動、そして科学者らが生殖健康の指標として見る測定値である肛門生殖器間距離(AGD)の減少を発見した。暴露グル−プの中の正常な精子の割合はコントロール・グル−プ中の正常精子の割合の半分強であった。

 それらの化学物質は、”潜在的に男性の不妊をもたらすホルモン経路を直接干渉するので、人間の男性の健康に本質的な影響を及ぼす”と、ピアレビューされ、11月6日に発表された論文の中で科学者らは結論付けた。

 平均年令が18歳であるこれらの若者の異常を観察した後、研究者らはそれらの化学物質が彼らの生殖機能発達にどのように影響を与えているのかを見るために、さらに精査した。彼らがラボで実施した実験は、 PFOA と PFOS は、細胞内部のテストステロン(訳注1)受容体と結合し、ホルモンの正常な機能を阻害することができる。

 ”テストステロンと PFAS の構造は、非常に、非常に似ている”と、イタリアのパドヴァ大学の生物学者であり、論文の12人の著者の1人であるアンドレア・ディ・ニシオは述べた。”そして、それは同じように見える。したがって多分、 PFAS は細胞中でテストステロンのように振る舞った”。

 その研究は、北イタリア北部のわずか 212人の曝露した若者を 171人からなるコントロールグ・ル−プと比較したという小規模のものであった。それにもかかわらず、世界中の地域社会で彼らの水が PFAS 化学物質で汚染されていることを定期的に発見しているのだから、過去数十年間にわたり、その汚染物質に暴露してきた人々にとって、その研究は国際的な意味合いを持っている。

 ”PFCs(過フッ素化合物)の水汚染に関する最初の報告は 1977年にまでさかのぼり、したがって 1978年以降の若者の全世代に影響を及ぼしているのだから、問題の程度は憂慮すべきものである”。

 実際に、その研究は過去数年間、研究者らにとって謎であったある現象:精子数の気がかりな世界的な減少、にひとつの可能性ある回答を示唆している。マウントサイナイ医科大学及びヘブライ大学公衆衛生校によって実施された 2017年の研究(訳注2)によれば、過去 40年間にわたり、アメリカ、オーストラリア、ヨーロッパ、及びニュージランドにおける若者の精子数は 50%以上減少している。環境汚染がある役割を果たしているという認識はますます深まっているが、その世界的な減少傾向は大部分、謎であると見られている。

 PFOS と PFOA に加えて、”我々はその他のいくつかの候補を見ている”と、Environmental Health Sciences(環境健康科学)の創立者であり首席科学者であり、他の化学物質、特に添加剤であるフタル酸エステル類及び BPA の生殖健康に対する有害性について書いているピート・マイヤーズは述べた。これら二つの PFAS との相違は、これらは大幅に残留性が高いということである”。PFOS と PFOA は人間の体内に数年間滞留することができ、環境中には無期限に残留する。

 マイヤーズによれば、これら環境汚染物質のどれに対する暴露も累積的な影響を持つことができる。”PFOS と PFOA に暴露して、さらにフタル酸エステル類及び BPA に暴露すれば、それらの影響は合算される”と彼は述べた。

 PFOS と PFOA は、免疫機能の低下、肥満、腎臓がん、精巣がん、及びコレストロールの増加を含む他の様々な健康問題に関連している。

 将来の PFAS への発達期の曝露をどのように防ぐかについて考え始めているディ・ニシオによれば、ヴェネトで見られた生殖影響については、少なくともその害の一部は若者たちが生まれる前に起きているらしい。

 ”我々に、血液から PFAS をどのように取り除くかという課題が残されている”とディ・ニシオは述べた。それらの化学物質は妊娠中に母親から赤ちゃんに移動するので、”我々はそれらを取り除く方法を見つけなくてはならない”。もし、それができなければ、現状の化学物質暴露はもっと多くの少年たちに生涯にわたる生殖障害をもたらすかもしれない。


訳注1:テストステロン
訳注2:40年で精子数半減に関連する記事
訳注:当研究会が紹介した若者の精子数減少関連記事


化学物質問題市民研究会
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