Corporate Europe Observatory 2021年7月2日
研究が、EU のグリホサート評価は
欠陥のある科学に基づいていることを示す


情報源:Corporate Europe Observatory, July 2, 2021
Study shows EU Glyphosate assessment based on flawed science
https://corporateeurope.org/en/2021/07/study-shows-
eu-glyphosate-assessment-based-flawed-science


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2021年8月17日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/pesticides/210702_CEO_
Study_shows_EU_Glyphosate_assessment_based_on_flawed_science.html

 グリホサートの戦いが戻ってきた。新たな科学的分析訳注1)によると、グリホサートの安全性を証明するために EU 当局に提供された業界の研究のほとんどは、OECDによって設定された基本的な国際科学基準を満たしていなかった。これは、欧州食品安全機関(EFSA)が、悪名高い除草剤ラウンドアップの主要成分であるグリホサートの再評価を開始しようとしている(訳注2)正にその時に明らかにされた。

 2015年、WHOの国際がん研究機関(IARC)は、グリホサートはおそらく人間に対して発がん性があると結論付けた(訳注3)。 EUの法律によると、がんを引き起こす可能性のある農薬は禁止されなければならない。

 しかし、2017年、2年間の論争とスキャンダルの後、モンサントのグリホサート除草剤は、通常の15年間ではなく、5年間という異常に短い期間ではあったが、EUから再承認を受けた(訳注4)。

 その間、米国では、(IARCの意見に基づいて)数千人のがん犠牲者がモンサントに対して画期的な訴訟を起こし、バイエル(モンサントの新しい所有者)は数十億米ドル(約数千億円)の損害賠償を支払うことを余儀なくされた(訳注5)。これらの訴訟中に得られた証拠は、モンサントがグリホサートの有害な影響に関する科学を積極的に弱体化させたことを示した。

 2022年12月に、グリホサートの EU許可は失効する。 2019年12月、バイエルが率いる 8つのグリホサート・メーカーのコンソーシアムであるグリホサート・リニューアル・グループ(GRG)により農薬の再承認を求める書類が提出された(訳注6)。

 この新しい科学的レビューは、再び痛いところを指摘している。各国の規制当局とEU当局は、業界独自の研究の質を検討する際に、同様に綿密に精査しているようには見えない。同時に、彼らはほとんどすべての公的に査読された科学的研究を却下した。

 新たな科学的分析によると、グリホサート製造業者が以前のグリホサート承認プロセスで提出した 53の業界調査のうち、該当する OECDガイドラインを使用した場合、科学的に”信頼できる”と評価できるのは 2つだけである。研究のうち 34は”信頼できない”、17は”部分的にしか信頼でできない”とい結果であった(訳注7)。

 遺伝子毒性研究は、化学物質によって引き起こされるがんと生殖障害のリスクを示している。以前のヨーロッパの認可手続きに関与した公的機関(ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)および欧州食品安全機関(EFSA))は、これらの業界研究をグリホサートの遺伝子毒性がないことの重要な証拠として不当に受け入れた。

 業界の 2020年の新しいグリホサート申請書類の最初のスクリーニングでは、”純粋な”グリホサートに関する同じ遺伝子毒性研究のうち 38件が、有効または補足として業界から EU当局に再度提出されたことが示されている。

 他の市民社会組織とともに CEO は、EU当局に対し、環境と健康の観点から、これらの新たな発見を新たな認可手続きで考慮に入れるよう求めている。

参照
 ・新たな化学的研究
 ・研究に関するQ&A
 ・これまでのグリホサートの戦いに関する背景


訳注1:新たな科学的分析
訳注2:EFUSA による再評価
  • Assessment Group on Glyphosate - AGG (European Commission)
     15 June 2021: Draft Renewal Assessment Report submitted

  • Glyphosate: EU regulators begin review of renewal assessments (EFSA 15 June 2021)
    グリホサート:EU 規制当局は評価改訂のレビューを開始(欧州食品安全機関(EFSA) 2021年6月5日)
    (概要)
     世界で最も広く使用されている除草剤であるグリホサートは、現在、2022年12月まで EUでの使用が許可されている。EFSAと ECHAは、フランス、ハンガリー、オランダ、スウェーデンの 4 EU加盟国(グリホサートの評価グループ(AGG))によって実施されたグリホサートのドラフト評価を受けており、調査結果の検討を開始する。
      ECHAのリスク評価委員会(RAC)は、”分類、表示、包装に関す(CLP)規則”に基づくグリホサートの分類をレビューする。化学物質の分類は、物質の危険な特性のみに基づいており、物質への暴露の可能性は考慮されていない。ばく露は、EFSAが主導するリスク評価プロセスの一部と見なされる。
     グリホサートは現在、2017年の ECHAによる評価の前後で、深刻な眼の損傷を引き起こし、水生生物に毒性があり、長期的な影響を与えるという統一された分類がある。生殖細胞の変異原性、発がん性、生殖毒性の分類は正当化されていない。 4つの加盟国からの提案は、既存の分類への変更を予見していない。
     ECHAがその意見を採択すると、EFSAはピアレビューを最終決定し、2022年後半に予想される結論を発表する。このリスク評価に基づいて、欧州委員会はグリホサート規制の更新を決定する。

訳注3:国際がん研究機関(IARC)
訳注4:EU によるグリホサート更新
訳注5:モンサント裁判
訳注6:グリホサート・リニューアル・グループ(GRG)
訳注7:新たな分析が発見した産業側の研究の欠陥
  • GLYPHOGATE: EU authorities used faulty, industry-funded studies to justify authorizing glyphosate in 2017, and they could do it again (SumOfUs 7 July 2021)
    (概要)
     WHOの国際がん研究機関であるIARCは、グリホサートへの曝露が遺伝子毒性であり、「おそらくヒトに対して発がん性がある」という「強力な証拠」があると述べている。しかし、EUの欧州食品安全機関(EFSA)は、農薬業界の調査に基づき、そうではないと断言している。
     そのため、SumOfUs(訳注:国際的な消費者擁護団体)は、遺伝子毒性学の著名な専門家に、EFSAが最近発表したグリホサート遺伝子毒性研究の隠し場所を調べて、それらの何が特別なのかを確認するように依頼した。その結果は、業界研究の科学的品質の187ページの評価である。
     EUの現在のグリホサート認可に使用された53の業界資金による研究のうち、34は「信頼できない」、17は「部分的に信頼できる」、2つの研究のみが方法論の観点から「信頼できる」と特定された。専門家の Armen Nersesyan博士とSiegfried Knasmuller教授によると、グリホサートは遺伝子毒性ではないというEU当局の主張は、これらの研究に基づいて正当化することはできない。

  • Revealed: EU Glyphosate assessment was based on flawed science (HEAL, 3rd July 2021)
    (概要)
     新たな科学的分析は、欧州食品安全機関(EFSA)が、グリホサートは遺伝子毒性ではないと主張していることは、製造業者の研究に基づいており、正当化できないと結論付けている。 EU の現在のグリホサート認可に使用された 53の業界資金による研究のうち、34は「信頼できない」、17は「部分的に信頼できる」、2つの研究のみが方法論の観点から「信頼できる」と特定された。

  • New analysis of glyphosate industry studies finds them outdated, flawed (USRTK July 4, 2021)
    (概要)
     企業の研究は、規制当局によってさえ、長い間秘密にされてきた。しかし、ヨーロッパでは、欧州議会の議員グループによる訴訟により、そのような研究が数十件発表された。
     消費者擁護団体である SumOfUs は、ウィーン医科大学医学部がん研究所の Armen Nersesyan と Siegfried Knasmueller の2人の独立した科学者に、50を超える研究をレビューのために提供した。
     評価の目的は、調査した業界調査が化学物質試験に関する現在の国際ガイドラインに準拠しているかどうかを判断することであった。研究は、グリホサートの遺伝子毒性に関する研究である。  結果として得られた分析は 2021年7月2日にリリースされ、業界調査の大部分は時代遅れであり、現在のガイドラインを満たしていないと結論付けた。分析によると、一連の欠点と欠陥が調査で発見され、それらのほとんどが信頼できないとしている。
     実際、企業が規制当局に提出した 53の研究のうち、現在国際的に認められている科学的基準の下で受け入れられたのは 2つだけであると Knasmuellerは述べている。
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