バングラディッシュ その4


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Business Discussion



今日はディスカッションで明け暮れた日であった。
午前中10時から、ASA(Association for Social Advancement)とのミーティングをして、 午後2時過ぎから、JOBS(Job Opportunities and Business Support)。 最後に、5時頃からCDF(Credit and Development Forum)とのミーティングをした。 ASAとJOBSはマイクロクレジットの専門家であり、CDFはこれらのNGOをサポートする機関である。
先日のPKSF(Palli Karma-Sahayak Foundation)も含め、 BRAC(BangladeshRural Advancement Committee)やDSK(Dushtha Shasthya Kendra)など、 こちらに来て、約一週間の間にいろいろな機関のオフィスに行って、話を聞き名刺交換をしたので、 すべて含めると、もらった名刺はなんと19枚になった。
こういったことは、通常のビジネスマンでは日常茶飯事であるのだろうが、 私のような医療従事者には、無縁の世界であり、しかもどこに行っても、 financeやmicrocreditの話ばかりなので、大変であった。
しかし、おかげで、ビジネス英語の良いレッスンにはなった。 interestとprofitとselfsustainabilityがキーワードであり、 初めは、会話をフォローするので精一杯だったが、最後の頃は、一応少しは会話に加わることもできたので、 門外漢としては、これでも十分だと思っている。
こういったビジネスのnegociationというのは、虚々実々のかけひきがあるもので、 私の存在は、主に日本の医師が加わっているということで、 チームをより信頼性のあるものに見せるという効果を持つようで、 実際の交渉内容の際は、語学力の問題で、全く貢献していないが、それでも、存在する意味はあるのだそうだ。
まあ、よく分かったのは、自分がこういう仕事に向いていないということであった。 やはり病院で仕事をしているほうが、何倍も楽だということである。

Gazaria Thana Health Complexその1


今日は、朝6時45分にホテルを出てから、ガザリアに向かったが、 早くてホテルで食事が取れなかったので、途中、チャパティ屋で、朝食をとった。
ここで、チャパティを食べながら、いろいろと教わった。
基本的に、チャパティと、ナンは同様に小麦粉から作られるのだが、チャパティはフライパンで(写真左)、 ナンはツボのようなところで焼いて作られる(写真右)。
ちなみに、チャパティをオイルで焼くとポータになり、ナンを小さくしてやわらかく焼くとボンになる。
バングラの食事は、他には、米なのだが、味付けはすべてカレーである。 しかも非常にスパイシーである。 食べるのはもちろん手で食べる。

いままで、他の国でも、あまり手では食べてはいなかったが、ここでは手で食べるように追い込まれることが多いので、 よく手で食べるようになった。
その結果分かったことは、湿っている米は食べにくいということである。
湿っている米は手にへばりつくので非常に食べにくい。パサパサの米は、うまく固められるので、手につかず、食べやすい。
ということで、なぜ東南アジアでパサパサの米が汎用されるのかが分かった。
ちなみに、カレーをかけると、やはりご飯が湿るので食べにくくなる。 そういったときは、カレーを食べた後、再び白いご飯を食べると、手がきれいになる。 やってみると、いろんな事実がわかるものである。
また、手で食べるのは、行儀が悪いと思うかもしれないが、よく考えてみると、世界レベルでは、相当多くの人間が、 ご飯を手で食べている。
東南アジアはもちろん、インドからアラブ、そして、アフリカの国まで、ほとんどは手で食べる。 中国人と日本人は箸で食べ、欧米はナイフとフォークで食べるかもしれないが、ワールドワイドに見ると、 それらの習慣はマイナーであり、手で食べるほうがマジョリティーであり、 これは決して下品な習慣ということはできない。
実際、バングラデッシュでは、やや高級なレストランでも、手で食べることを前提として、 食事の前後に手を洗うための大きな洗面所が完備してある。
ということで、ここでは結構、手で食べるようになった。

ガザリアについて、今日は政府の病院、タナヘルスコンプレックスにいった。 ここで、これから一週間ほど働くことになる。
バングラディッシュの行政単位は、大きなほうから、ディストリクト、サブディストリクト、ターナ、ユニオン、ビレッジ となる。この内、政府系の医療機関は、ユニオンレベルにまで、完備されている。 しかし、このヘルスコンプレックスは、サブディストリクトレベルの病院である。

この病院は31床で、そのうち、下痢用の隔離病室が5床、男が13、女が13床だそうだ。 まず一通り、入院患者の説明をしてもらった。 入院患者は多岐に渡り、胃潰瘍や肺炎、喘息などが多いが、中には頭部外傷で意識がないが、貧しくて転院が出来ず、 仕方なくこの病院で見ているという患者もいた。

その後病院内を一通り回って説明してもらった。
ここには、小手術室があるが、全身麻酔は出来ないので、局所麻酔の小手術に限るそうである。 また分娩室はあるが、通常分娩しか出来ないので、帝王切開の場合は、他の病院に転送することになる。
一応、レントゲンも血液検査、尿検査も出来ることにはなっている。 外来医師1名、病棟医師1名で、運営しているが、他にファミリープランや結核、らい対策のスタッフなどを養成しており、 専門家によるレクチャーも行われていて、丁度今日はそのレクチャーの日であった。(写真左)

結核は、結構多いそうだが、基本的に入院はせず、外来でフォローしているのだそうだ。 そして、入院が必要な場合は専門の病院に送るということである。 しかし、結核の場合、大抵症状がなくなると、皆薬を飲まなくなるので、完全に治療が終了しないで再発するケースが多いそうであり、 そのため家庭に派遣して指導するスタッフを養成しているわけである。

その後は外来患者の診察にずっと立ち会った。 ここは、貧しい人々が来るので、日本ではなかなかお目にかかれない病気が、しょっちゅう来る。
たとえば、まず初めに子供の感染性疥癬が3連発で来た(写真左)。 これは、貧しい家庭に頻発するらしく、フリーフライディクリニックで、スラムの子供も、よく来ていた。
その後、やはり子供の上気道炎や下痢は沢山来て、患者の大半は子供である。 中に、全身のかゆみを訴えてきた子供がいたが、現地の医師によると、これは、通常回虫によって起きることが多いそうだ。
また、口角の潰瘍で来た子供(写真右)もいて、これはビタミン欠乏症であるとあっさり診断した。
確かに教科書には書いてあったような気がするが、実は日本で見たことは一度もない。 また、胃潰瘍がやけに多いような気がするが、バングラでもお金持ちは薬局でラニチジンやオメプラゾンを買うことが出来て、 しかも、両方同時に処方することも出来るため、場合によっては日本よりも強力な治療を出来ることになる。 逆に言えばそれだけ、具合の悪い患者が多いとも言えて、今日来た患者も、胃痛出来たのではなく、吐血を主訴にして来た。
しかもここで内視鏡が出来ないために、内視鏡なしで潰瘍と診断し、投薬を始めた。 まあ、どちらが良いかは難しい。
処方箋は来た人の経済力により、有料の処方箋(外の各局で買う)にするか、院内の処方箋にするか決める。 よって、政府の病院といっても、全員が無料にはならない。 これは医師が判断するが、たしかに、全員を無料にすると、病院が立ち行かなくなるだろうから、 こういうように患者を選別するのも仕方がないかもしれない。 また、薬の種類も、院外薬局の方が圧倒的に多く、院内で出すときは制限された薬しか出せない。
また来る前によく聞いていたが、裕福な患者からは、外来医師が直接診察料をもらっていた。 こういったことは本来、無料であるはずの政府系の医療機関では、あってはならないはずだが、実際は日常茶飯事であるようで、 そうしないと、医師は誰もこういった田舎の病院には来ないのだと思われる。 実際、今いる医師も、2ヶ月前にダッカの病院から来たばかりだそうで、こういった病院でキャリアのある優秀な医師が長続きするとは思えない。

この地域の問題として、井戸水への砒素汚染の問題がある。これは、1998年ごろから問題にされ始めて、 インドの西ベンガル地域と、バングラディッシュでは、非常に高い割合で、砒素の混入が指摘された。 現在では、汚染井戸は使用しないように指導されているが、バングラディッシュでは、3000万人が飲んだとされており、 すでに飲んでしまったことによる慢性的な影響は、相当数の人間に出ていると思われる。
だが、このヘルスコンプレックスには典型的な砒素中毒の患者は少数しか来ていないということである。 確かに地元の人間に聞くと、慢性中毒の典型的な皮膚症状を呈する砒素中毒の患者はみなすでに治療されていて、今現在はほとんどいないそうである。
しかし、他の症状、いわゆる不定愁訴と、吐き気、痛み、貧血、潰瘍、癌など、ありとあらゆる症状、病気を起こすそうである。 これらのすべてが砒素によるものがどうかを言うのは難しいが、実際、これらの症状が問題になっているようであり、 このため、現在この地域でアンケート調査をしてみようと思っている。
可能ならば髪の毛のサンプルももらって、小さなリサーチの形態をとろうとも考えている。

本日からの宿泊は職業訓練センターの建物内であり、まだ建築中であるが、かなり快適な環境になってきた。 電気もあるし、トイレも使える。

Gazariaその2


朝起きて、村のマーケットで、ナンと野菜カレーと卵とバナナを買い、朝食にした。 二人分で50Tkであった。日本円だと150円くらいである。 非常に安い。たとえば、同じものをダッカで買うと250Tkくらいすると思われる。 こういったバングラ風の食事にも大分慣れてきた。

今日は、金曜なので本当はお休みだが、スタッフと一緒に村に行って砒素中毒を含めた健康調査をすることにした。 そして、現地スタッフとともに村に入った。
ここは、多くの川に囲まれているエリアであり、どこに行くにも船に乗る必要がある。 しかしその値段は、往復で2Tkである。この辺の人たちは極めて貧しい人たちが多いので、物価は非常に安い。

村に到着して、早速調査を始めた。この調査は基本的な健康調査と、特に砒素中毒の検診をかねている。 プロジェクトの関係から、主に、ターゲットは女性になるのだが、驚くべきことに、聞く人聞く人すべてに何らかの症状があったり合併症があったりする。 もちろん、別に具合の悪い人を選んで聞いているわけではなく、たまたま行った集落にいる人に聞いた結果である。

このあたりの井戸には実際に、砒素の混入率が高く、皆一年前に飲むのをやめているが、その影響は残っているのかもしれない。
特に多いのは、頭痛と胸痛であり、胃潰瘍も多い。 全身倦怠感は、ほとんどの人があるようで、10代や20台の若者ですら症状があるケースが多い。
ただし、慢性の砒素中毒はありとあらゆる症状と病気を引き起こすとされているので、なにが砒素の影響で、 何が生活レベルや衛生環境の問題か区別することはむずかしい。 特にこのあたりは、単なる栄養失調の人も多いエリアであるからである。

中には、慢性砒素中毒特有のKeratosisと思われる症状を呈する人もいたが、最も典型的な色素沈着などがある患者は すでに病院に行って治療されているため、村で見ることはなかった。

この調査は、このあたりのいろんなエリアでおこなって見るつもりである。
調査終了後、 2時頃には村から帰って来て、センターに戻ってきた。その後睡眠をとり、きれいな夕日をみて、一日は終わった。