バングラディッシュ その3


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BIRDEM病院



今日は、BIRDEM病院の見学に行った。
ここはダッカにある、主要な病院の一つで、Diabetes Hospitalという名前がついているが、 530床ある大きな病院で、通常の総合病院としての機能も持っている。 各地にブランチがあるそうであり、基本的にDMの患者は外来で見るのだが、重症の場合ブランチから紹介されて来るようなシステムになっている。
プライベート病院であるため、施設は政府の病院よりも良いそうであるが、一般病棟は写真のようになんと20人部屋である。 建物自体も古い。
病院に着いたのが11時だったので、すでに外来患者は少なくなっていたのだが、それでも、十分に外来は患者であふれていて、 エレベーターにも行列が出来ていた。これが、受付開始時の8時頃だと足の踏み場もないほどの大変な状態になるそうである。 それでも、政府の病院よりは患者が少ないのだそうだ。
病院のレベルとしてはバングラディッシュでは、良い病院だそうで、レントゲン、CT、超音波など基本的な機械はそろっており、 検査も一般的なものは問題なく出来る。
政府の病院のように、フィルムが無くてレントゲンが取れないというようなことはないそうである。
まず、外科のDrにコンタクトを取って、回診に一緒についていった。
もともと糖尿病病院だけあって、Diabetic Footのケースは多く、入院患者の半数を占める。 ここでは整形外科もDiabetic Footをみるのだが、症例が多いので、外科も分担して見ているそうである。 しかし、他にはLapa CholeやGastrectomy、Colorectalの手術など一般的な外科の手術もあり手術数はかなり多い。
一般外科は3つのユニットに別れており、それぞれが週に3日手術をする。一日の手術数が4-5件であるから、 総手術数はかなり多い。 よって、Lapa choleの場合、基本的に、手術の翌々日には退院する。他の手術も退院は早く患者の回転は速い。
ここはプライベートの病院であるが、大きな病院なので、政府の援助も受けていて、公的な役割も持っている。 そのため、貧しい人々のために無料のベッドを60-70床確保しているそうである。 とにかく、この国はこのように貧しい人々が沢山いて、彼らの医療問題は深刻である。




JBFH


JBFH(Japan Bangladesh Friendship Hospital)は、 日本に留学したバングラデッシュの医師達が作ったプライベート病院である。 留学期間も5-6年から7-8年と長いので、皆日本語も上手で、この病院では十分日本語が通じる。 設立の際にはNGOから援助があったようだが、現在では、完全に彼らによって経営されており、独立採算である。
ベッド数は50床であるが、多くの専門医を有し、そのレベルは高い。
たとえば、外科のDr.Nayeemは東大の外科に留学していたのだが、 バングラディッシュで1993年に初めてLapa choleをした第一人者であり、以来、年間1000例近くのLapa choleをJBFHでやっている。 いまでは、バングラディッシュでも30人くらいの外科医がLapa choleをしているそうであるが、 やはりDr.Nayeemは有名なため患者が殺到しているそうである。 現在でも毎日コンスタントに3例ずつ位手術をしていて、今までの症例数は8000例くらいあるそうである。
それ以外にも、バングラディッシュ中のいたるところの病院から手術をやってくれという依頼があるそうで、 たとえば、今日も午前中に3件ほど、コンサルタントとして働いているBIRDEM病院で手術をして、 午後からJBFHで3件手術をするという感じである。
先日は北部の病院で、2日で20件の手術をしたそうである。
おそらくLapa choleに関しては、世界で最も症例をこなしている外科医ではないかと思われる。
私は、連日ディスカッションや、見学など、臨床以外の仕事ばかりで、いい加減飽きていたので、 今日はお願いしたら、快く手術に入れてもらえることになった。

手術室の設備は、日本と比べると、十分とは言えない。 たとえば、麻酔もベンチレーターが無くて、ジャクソンリースで手押しの麻酔である。 麻酔はもちろんハロセンである。
手術台や無影燈は、日本の病院のお古だそうである。 laparoの機械も、新しいものではない。
ただし、Dr.Nayeemの実力はさすがに申し分ない。 3件の手術はいずれも鮮やかに終わった。

3件目の手術は、子宮筋腫で、Histerectomyも同時にしたのだが、 そのため産婦人科の助教授がレジデントをつれてやってきて、手術をした。 このように、実力のある医師は、こういったプライベートの病院に呼ばれて手術をするので、 高収入が得られるわけである。 これはある意味、非常に公平なシステムであり、臨床の実力が金銭というかたちで帰ってくるわけである。 患者も、お金さえ払えば、大病院で長く待たされることも無く手術が出来るメリットがある。 日本のように、国立大学の医師が他の病院で臨床をするのを制限するなんていうのは、 全くナンセンスであるのが分かる。
もちろん、Dr.Nayeem自身NGOにかかわっているので、貧しい患者が来たときに、 無料で手術をすることも、よくあるそうである。
Dr.Nayeemの話によると、バングラディッシュには、患者は多いが、医師が足りないので、症例は非常に沢山あるらしく、 JBFHでDr.Nayeemと一緒であれば、臨床をするのも問題はないとのことで、 手術症例数を稼ぎたい日本の外科医にバングラディッシュにどんどん来てもらいたいそうである。
結構、興味をそそられる話ではある。