…っていうのを最近大人の皆様は色々考えてらして、例えば高齢者にスマホを問答無用で貸し出すとか、スマホ教室をショップで開いて普及に務めるとか、色々やってはいるのですけれども。
サポート現場で色んな方々のお話をお伺いして行く中で、実は一番辛いというか、どうしようもないというか、手も足も出ない、っていうのは、機器操作の話よりもむしろ「アカウント」なんですよね。
むしろ機器操作とかの話なら、まあ、電話にせよ対面にせよ説明は出来るし、最悪の場合操作してあげることも出来なくはない。なので現時点でサポート現場にいて一番悩ましい、で解決しようがない、のはアカウント。
IPv4 over IPv6の話の時も、プロバイダのID・PWわかんないとその時点でアウトって話を書いた のですけれども、お電話で対応していてもこの「アカウント情報不明でアウト」案件ばっかりで、結局解決に至らないことが多くて。ちなみに電話対応していて「解決したかどうか」もカウントさせられるんですよねオイラの職場。で日によっては解決出来た数が電話受けた数の1割以下だったりするの。残りは、他の窓口に振るしかないもの。その大半はアカウント不明案件。
PCのサポートが一番多いので、ダントツに多いのは「Microsoftアカウントの問題」の例の通知で、元々PC起動時にMicrosoftアカウントで入っている人は通知をクリックするだけで終わることが多いですが、諸事情でパスワード省略で入ってる人とかローカルアカウントとかだと、パスワード思い出してもらうのを待つ以外に手段がない。こちらでは何も出来ません。
PC購入した時、サービスで販売店がPCセットアップをしてくれたってパターンのお客様、ほぼ自分のマイクロソフトアカウント知らないんですよね…量販店がどういう商売しているのかほんっとに謎なんですけど、MicrosoftOfficeもご丁寧にセットアップしてあったりするんで作ってない訳ないんですけど。もうセットアップしたやつに聞いてとしか言いようがない。
あとこれも量販店のせいって訳じゃないんですけど、テレビでYouTubeとかネトフリとか見たいから、って理由で販売店に勧められてFire TV Stick買って来たお客様、Amazonアカウントで詰まる。当然のごとく。
Amazonでお買い物はしたことありませんか? ないです。そうですか…でもスマホにアプリは入ってる。そうなんですか? じゃ見せて下さい。スマホでアプリ起動してみていただくとアカウントある。…………ありますね。
お客様、えっ作った覚えないです(動揺)。
こういう場合はあれです、料金プランにAmazonプライムついて来る系サービス利用者。ショップの人が料金プラン決めるついでにAmazonプライムつけて、親切で Amazonの登録もしてあげる パターン。例によってお客様ご自身は全く把握してない。
多分、ショップの方が登録してさしあげる時にパスワードを店員が決める訳はない、と思うので、お客様本人が多分決めてるのよね。……ですよねショップ勤務の方!? なのでお客様が忘れてるだけなんだよね。多分ね。でも思い出せないと結局どうしようもないのよね。
なので。Fire TV Stickのセットアップの案内だけなら30分もかからん話なんだけど、Amazonアカウントのパスワード再設定の話にまで巻き戻らないとならないので、操作に不慣れな方だと2時間とか3時間とかお付き合い願わないとならない。
いやまあ、Amazonの登録されているメールがちゃんと受信出来るメールアドレスだったり、登録してある電話番号がちゃんとSMS受信出来る電話番号だったりすればそこまで苦労はしないんですけどね…そういう皆様、大抵の場合メールアドレス受信出来ないわ電話番号登録してないわ、なんですよね、あるあるです。かと言って別のAmazonアカウント作る訳にも行かないし(プライムビデオ使えるアカウントで入らないとTVでつなぐメリットが半減する)。
このサービスのせいで、個人で持っているスマホとタブとか、1台1台で別々にAmazonアカウント持ってたりして、1人の方が3つAmazonアカウント持ってる、なのにお客様本人はどれもパスワード知らん、とゆーか自分が3つも持ってることすら初めて知った、って現場に遭遇したことありますよ…どーすんですかこれ…。ドコモはAmazonプライムつけるサービス終わったので、今後はこういうことになるお客様は減るでしょう…そう願いたい…。
同じく動画をTVで見たい系の話でGoogle系(ChromeCastとか)の方だと、今度はGoogleアカウントの話になるのですが、とあるお客様、PCもご利用の方で、Google系の何かを求められるたび、自分のアカウント把握していないために新規でがんがん作っちゃっていたらしく、PCお持ちの方だったのでGoogleアカウント確認のためGoogleトップページに行ってみたら、かつてログインしたことのあるアカウントがずらずら出て来て頭抱えたことあります。さてどれならパスワード判ります? でまたお客様が思い出していただくのを待つのみ。
ちなみにブラウザが記憶しているパスワードは全くあてになりまへん。何故なら、ブラウザはログインに成功していなくても「覚えます?」と尋ねて来るからです。でこういう方は意味も判らず「はい」押しちゃうからです。なのでこういう系のお客様の場合、ログインに失敗した時のパスワードが出て来るだけです。意味ないです。これもあるある。
ちなみに、↑ではGoogleアカウントを例に出しましたが、同じようなパターンでTwitterアカウントを異常に大量に持ってる(でどれもパスワード知らん)っていう方にもお会いしたことがあります。そのうち1つは経営しているお店の名前で取ってて「お店の情報投稿出来なくなっちゃったわ、てへ☆」とか言ってる場合ではないでしょうお客様ぁ! 乗っ取られたらどうするんですかー! で私らみたいなサポートセンターがそれどーにか出来る訳ないじゃないですかー!
Amazonや楽天など、何かサービスを使う時にメールアドレスとして例えばGmailを使うと、パスワード忘れた時はそのGmailを受信しないと再設定出来ない、というのはよくある仕組みですが、この「メールを受信出来ないとパスワード再設定出来ない」のために、Aのアカウント回復するためにBのメールを受信出来るようにする……ためにはまずBのアカウントを回復しなければならない、そのBのアカウント回復するためにCのメールアドレスを受信出来るようにしなければならず、Cのアカウントを回復しないと……っていう数珠つなぎ状態になることも。
最終的に辿り着いたのがプロバイダメールで、メールパスワードが紙に書いてあるというのがどんなにスバラシイかをお客様と一緒にしみじみ実感することになりました。これで「え、プロバイダの紙なんてありませんけど」言われたら、その時点で辿った道筋全部ブン投げてプロバイダに振るしかない。そういう人もいます。
ahamoとかpovoとかエコノミーMVNOに行ってしまってるお客様はこういうアカウントの話は詳しく聞く前から割と絶望せざるを得ません。キャリアメールアカウントを連絡先やアカウントのIDにしていると、その時点でアカウント回復手段がないのが確定しちゃうので。電話番号登録してあればSMSでどうにか出来てまだ救いはありますけど、それが出来る場合はこっちに電話寄越すほど困らないですからねえ。こういうサービス系でメールアドレスを求められた時に安易にキャリアメールで済ませてしまう方々は、そもそもキャリアメールアドレスを何処に入力したのかということを自分で把握していない。ので、いざアカウントを求められてから困ることになる。
有料でキャリアメール持って行けるようになったので、この絶望は多少緩和…するのかなあ…。把握してないお客様はキャリアメール持って行こうという発想自体、ならないよーな気もする…。
……みたいな話は、もう山のようにあります。ある特定の1人のお客様の事例って訳ではなくて、もう「あるある」過ぎて。
パスワードを付箋に書いてパソコンに貼る、なんてのはもちろんダメなんですけど、でも、今はスマホアプリで色んなことをやろうとすればそのアプリ毎にアカウントを求められるかも知れない訳で、そーなるとスマホに付箋貼る訳にも行かない訳で。
スマホ貸すとか、使い方をスマホ教室で教えるとか、そういう時なんですけど、…「アカウント管理ノート」的なもの(100均でも売ってますよね)を配布しちゃった方がいいんじゃないですかねえ。
アナログの世界における「アカウント」は名前や電話番号や住所で事足りていたのですけれども、デジタルの世界の「アカウント」の複雑さは明らかに妨げている大きい原因だと思う。
以前、キャリアのケータイショップでは、新規でスマホ買った人のためにGoogleアカウント/Apple IDと、キャリア独自のアカウント(ドコモならdアカウントとか)をメモ出来るような紙をあげて、実際に設定したものを書き込んでいたらしい、のですが(サポートしていて、お客様がそれを探し出せて事なきを得たケースがある)、最近それもやらなくなっている様子なんですよね……。
と言うのも、最近、3Gケータイの停波を見越した勧誘に意味も判らず応じた両親がケータイからスマホ(android)に機種変更してしまって(とゆーか、停波の話出た時に4Gで使える折り畳み型のケータイタイプの端末があるって話はしたのに! なんで! おのれドコモ…)、画面見たらGoogleアカウント設定しないままで渡されて来てるんだな。
まあそれ自体はいいです、ウチの両親もアカウントなんてものは絶対管理出来るはずがないのは見てても判るし。なのでスマホ同士の連絡手段として一応プラメ(+メッセージ)だけ通しておきましたけど。
紙にパスワード書いておくなんて危険だ、とか言ってる場合ではないのですよ。もう。これから色んなものが「デジタル化」され、「スマホで手続き」を要求される時、「アカウント」を管理する手段がなければ、デジタルデバイドは絶対に埋まらない、と、思います。
日々お客様対応をさせていただいてる身からすると、「アカウント管理ノート」的なものは現状では、こちらに電話して来るような皆様方にとっては最適解だろうと思わざるを得ない。
パスワード以前に、どっちかというとIDがどれなのかとか、アカウントをそもそも持っているのかどうかとか、そういう段階からつまずいてるんですよ、今時の皆様は。なので、パスワード書くのが危険だというならパスワード書かなくてもいいから、とにかく何を持っていて何を使ったのかを「管理」して欲しい。
自分がどんなアカウントを持っているのか、アカウントに何を使ったのか(メールアドレスなのか、電話番号なのか)、そういうことすら理解していない人があまりにも多過ぎて、そっちの方が手に負えないんですよ。
メールアドレスなり電話番号なり、使ったものがこれだって特定出来れば、元々用意されているパスワード忘れた時用の復旧手段を進められる可能性はある。でも、そもそも、自分がアカウントを持っているのかどうか、アカウントに何を使ったのか、それすら判らなければ手の施しようがない。
アカウントという仕組み自体がめんどくさいのは確かだけれど、現状はどーしようもない。今現在、デジタル化を本気で目指すのであれば、求められるスキルは決して「機械を操作すること」だけじゃーない、と思うのです。
機械の操作方法だけ熱心に教えてようとしている人たちを見てると冷めるんだよな…。とゆーか、機械自体の操作なんてどーにでもなるでしょう。人に教わることだって代理で操作することだって出来ない世の中じゃないんだから。
固定リンク / 2021.12.17 / [コメントはこちらから]