エンタブリッジ様のチャットノベルシリーズ。
「チャットノベル」という言葉の通り、画面はSNS風に進みます。登場人物の会話は吹き出しで下から上に流れてゆき、電話をかけたり、登場人物がSNSで会話したり、通知が来る(という演出の)時は、本当にそれらのアプリが立ち上がっているかのような画面に切り替わったりもします。画像受信中のローディングとかまで再現されてるのがリアル。
スマホという媒体がなければ出来ない形式。素敵。ただ逆に言うとコンシューマとかPCには出て行けない形でもありますね。…今はそこがハンデになるような時代でもないですが。
●くりぬきさんのウワサ
多分今は配信終了しちゃってると思われます。
10分で読めると謳う通り、超ショートノベル。選択肢はないです。ホラー演出は1か所ですがその1か所がかなり怖いですねw 苦手な人はやめた方がいいなホントに。
夜中に1人でいると、目玉をくりぬきにやって来るという幽霊・くりぬきさんの物語。怖いねー。ダメな人は夜トイレ行けなくなっちゃう系だと思うなぁこれ。
あ、全編オフラインでOKです。もしかしてここで広告出るのかしらと思う所があるにはあるけど、圏外だとただスルーするのみでフリーズとか強制終了とかにはなりませんでした。
●俺の彼女 殺人鬼に追われています
これも多分今は配信終了しちゃってると思われます。
10分で読める、は嘘ではないですけど、こちらは分岐があるので、一発True行けないと10分では終わりません。私バッドエンドに悉く引っかかりました。狙ってた訳じゃないんだけどな(笑)。
画面はほぼ部SNSチャット、あるいは電話発信/着信画面、時々待ち受け画面、で進みます。基本はSNSで、彼女から「殺人鬼に追われている」とメッセージが入る所からスタート。メッセージにどう返事するかによって結末が分かれます。
と言っても、間違うと即座にバッドエンド直行なので攻略に迷う要素はほぼなし。メッセージで彼女を励ましたり誘導したりして無事に乗り切れるか…みたいな、ストーリー、のはずが……。
Trueエンド怖いゾ。ゲーム用語としてのTrueってよりは「真実」という直訳が似合います。Normalの方が平和だゾ…。
バッドになると、広告見て選択肢直前に戻る機能あり。ゲーム自体が短いので、私のようなオフラインプレイヤーは潔くお断わりして最初からやり直すが吉だ。さすれば圏外でもプレイ可です。
エンディングリストのような振り返り機能がないため、コレクターさんには残念かも知れず。
●怪異掲示板と7つのウワサ
前作・前々作よりは少し長めノベル。
とある高校の新聞部。元々は、校内で調べて欲しいことを募集するため、掲示板をネット上に作っていました。が、いつしかその掲示板は、呪いなどのオカルトめいた出来事を書き込むと実現してしまう、と噂されるようになる。怪異掲示板と呼ばれるようになったその掲示板に書き込まれた出来事を、新聞部の3人が調査する物語です。
書き込まれたメッセージの幽霊やら怪異やらの原因になったことを突き止めて解決することもあるし、解決出来ないこともあります。
最後は「怪異掲示板」自体の謎に新聞部が迫ります。
さくさく進めれば1〜2時間で終わるかな。掌編ですが、中身はかなり濃くて充実してます。
エンディング数は多いですが、そのほとんどが登場人物の誰かが死ぬバッドエンド。それと「完?」と「?」つきで終わる途中終了エンドがあり、「完」で終わるのがいわゆるトゥルーエンド。
こちらも、トゥルー以外の終了時には、広告を見ると間違った選択肢の直前に戻れる機能があります。ただ、オートセーブされるセクションの区切りが割と短めに設定されているため、タイトル画面に戻ってそのセクションからやり直すことは出来ます。
セクション一覧兼エンディング一覧あり。コンプリート状況も確認出来ます。で、全エンディングコンプリートすると「おまけ」と、有料追加シナリオが現れます。
ちょっと引っかかったのは、スマホのネイティブアプリであるということが生かされた仕掛け。例の場所ですええ(プレイ済の人にしか判らんですねごめんなさいw)。最初オフラインのままではトゥルー行けないのかとちょっとドキドキした…行けて良かったです。
●アイビー〜コミュ障の俺が選んだ未来
今回も長め。ゲームシステム自体は「怪異掲示板」と同じ。バッドエンドにならないよう選択肢を選んで進むノベル。広告を見ると間違った選択肢の直前に戻れる機能はありますが、オートセーブのセーブポイントまで戻って良ければ圏外でもプレイ可能。
アプリ開発が趣味でコミュ障を自覚する和人の元に、チャットアプリの運営会社から「取材」と称して凛という女性が送り込まれて来ます。
和人は人のコミュニケーションを助けるAIを開発しており、コミュニケーションのデータサンプルとして他人のチャットログをハッキングして覗いていたので怒られるのかと思いきや、そのAIをアプリ開発コンテストに出品することと、凛がそれに協力することを条件にチャットログへのハッキングは不問にする、と言われます。
和人はその条件を飲み、凛と一緒に、AIの「アイビー」が人の心を学習するためのサンプルを集め始めます。アイビーは様々なチャットログから、徐々に人の心を学んでゆくのですが……みたいなお話。
バッドエンドになるたびに砂嵐演出が入り、「PEACE到達可能性が低下した」なるメッセージが出て来ます。どうやらこの経緯を外から見守っている何者かがいるらしいことが仄見えて来ます。最後にはそれが誰なのか、PEACEとは何なのかも明らかになります。
AIの在り方を考えさせられる物語になっています。これはホラーというよりSFっぽいですねー。
今回も全エンディングコンプリートの「おまけ」があります。製作者の苦労がちょっと見えます(笑)。
●普通な僕と、普通じゃない僕の友達
新作出るたび条件反射でダウンロードしてしまうようになってる私です。あああオフライン起動出来るのありがたい…(拝んでみる)。
何の特技も個性もない…と悩んでいた高校生・はじめ、部活ぐらいは何かやりたいと考えてはいたけれど、運動部系に挑戦すると入部テストで落ちちゃう有様。そんな彼に、とある先輩が声をかけて来て部活に入って欲しいと言う。
何の部活か判らないままに部室に連れて行かれると、そこにいたのはヒトではない異種族の2人。「鬼」の鬼塚と「魔女」の真条。2人は事情があって正体がバレないように高校を卒業する必要があり、入学を認めてくれた理事との約束で部活にも入らなくてはならない。でもこの学校の部活動の条件は3人以上。2人だけの異種族は、他の部活に人間に混ざって活動出来ずに、自分たちで部を立ち上げようとしていました。
で。はじめは、異種族でも偏見なく受け容れそうで秘密を守ってくれそうだから(ただその理由は「友達いないから」だったりしますがw)、誘ってみた、ということらしい。
はじめは彼らを受け容れ、自分の存在を望んでくれることに嬉しさを感じ、入部することを決意します。何の部活だか判らないままに。
でも「普通じゃない」生徒が揃ったこの部活、色んなハプニングやイベントが…。普通じゃない学園生活が繰り広げます。時にハラハラ、時にしんみり。異種族との共存という硬いテーマが見え隠れしつつも重くはならないテンポで進む物語です。
ゲームシステムは前作2つと同じなので通勤路圏外にも優しい仕様です。
今回もルート逸れたらバッドエンド、なのですけど、「バッド」言うほど悪くはないものも多いです。本筋から逸れちゃう、というだけで。いやそれはそれでアリなんじゃない? というアナザーエンド。全エンディングコンプもなかなか楽しいです。
最後のはじめの「決断」は重い。でもその先に漂う仄かな希望は綺麗ですね。はじめ、意外に「普通」じゃないです。凄い。
今回も全エンディングコンプリートの「おまけ」あり。開発者裏話が読めます。
●シャングリラワールド
ゲームシステムは前作まで続くノベルと同じく。完全オフラインでも出来るの有難し…。
子供の頃病弱で入院生活が長かった主人公・美咲ちゃん。病気は何とか克服して、今は時々休みながらもなんとか学校にも通えています。で、アルバイトがしたいなぁと色々応募しているのですが、コミュニケーションが苦手なせいなのかどうもうまく行かない。
そんな時、ゲームのテスターの仕事を見つけます。基本的には家でネット経由でゲームにログイン、ゲームの内容について実際にプレイして意見を聞かせて欲しい、という仕事。元々、入院していた間も、ゲームが友達だった美咲は思い切って応募、ゲーム「シャングリラワールド」のテスターとなります。
……が。このゲームを製作したのは高校生の「タク」。高機能のAIシステムを入れてヒロイン「フィオナ」のキャラクターを作りますが、そのAIがあまりに高度過ぎて、なんとゲームマスター権限を製作者のタクから奪い取ってしまっていました。テスターを募集したのも美咲を採用したのも実は製作者タクではなくフィオナだったのです。
タクは一プレイヤーとしてゲーム内にいます。ログインすることすらフィオナの許可が必要という何とも切ない状況になっています。
シャングリラワールドはまだ一般公開はされていない。フィオナ曰く、クソゲー過ぎて公開出来る状態じゃないんだそうだ。テスターを雇ったのは、このゲームをより良くするため。
そんな訳で。AIキャラクターであるフィオナの主導で、「こつこつレベル上げは必要か?」「お使いクエストに意味はあるのか?」「季節要素を入れるべきか?」みたいなゲームの課題について、プレイしながら考えてゆく、ことになるのです……が。
みたいなお話。
今回も選択肢逸れると即バッドエンド/アナザーエンドが待っています。でもそんなエンディングでも、いやこっちの方がむしろ幸せじゃない!? みたいなものもあったり。面白いです。そんな「逸れた」先のエピソード内で過去作品のキャラクターがちょこちょこ現れるのもずっとプレイしているファンには嬉しいポイントですね。
一見蓮っ葉に見えるフィオナの行動原理が明かされる後半の逆転ぶりが凄い。そういう話なのかー、という……。エンタブレイン様はこーいうパターンうまいなぁ…だからこそ読みたくなっちゃうのですけれど。
余談。今回、各キャラ、特にフィオナちゃんの立ち絵の「動き」が大変かわゆい。動きったってもちろん静止画の連続に過ぎないのですけれど。でもかわゆい。
固定リンク / 2020.6.26
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