クール・セラミック・セーフティ・ハーシェル・プリズム その1
Baader Planetarium/Cool Ceramic Safety Herschel Prism
公開:2012年3月23日
更新:2012年8月1日
*双眼装置と倍率を追加。
2012年3月23日記
Baader Planetarium 社から、クール・セラミック・セーフティ・ハーシェル・プリズムCoo Ceramic Safety Herschel Prism がリリースされている。HαはP.S.T双眼で、白色光はハイランダーで楽しんで いるが、また別な太陽が見られるなら、試そうではないか。とにかく粒状斑をしっかり見たい。
という訳で、3月早々に注文した。当初、APM-Bino の対物レンズのコーティングへのダメージを心配して、とある廉価版長焦点10cm屈折に取り付けて見てみた。が、思った程見えない。ハイランダーで見ている白色太陽よりは見えるが、これでは国際光器の誇大広告か、とがっかりしていた。 しばらくして、念のため、とAPM-Bino に取り付けて見てみたら、驚愕! 黒点周囲のツブツブも表面の粒状斑もしっかり見える!
お気に入りの Docter UWA 12.5mm + Zeiss Abbe Barlow
と Leica Zoom でチェック。
とにかく面白くて、アイピースを とっかえひっかえして観望。10分でお休みなんて酷だ。もちろん、アイピース交換の時など、できるだけ太陽から望遠鏡を外す等、注意を払っている。プリズムに太陽が映るので、再導入は簡単だ。いろいろ試したが、一番見ごたえがあったのが、Baader V 双眼装置 + 1.7×リレー・レンズ + Panoptic 24mm 。やはり双眼効果のメリットが極めて大きく、粒状斑がコントラスト良く描出される。黒点とその周囲も見応え十分。対象が十分に明るいので、双眼ではなく双眼装置で十分だ。もう少し短焦点のアイピースでどうなるか、是非試したい。
当初、某10cm屈折であまり見えなかった一番の理由は、最初から比較的高倍率でアプローチした事だった。国際光器の写真に惑わされてしまった。この10cm屈折はとても良く見えるし、低倍なら十分このプリズムを楽しめる。しかし、APM
13cm屈折の優秀さは、単純に像の差として出てしまうようだ。考えてみれば当たり前の話で、太陽だって、優秀な屈折なら、より見える訳だ。
という事で、どうせ見るなら、やはりAPM 屈折で見よう!
シーイングにも大きく左右されるが、良い条件で優秀な15cm屈折で見たら、どんな姿を見せてくれるのだろうか。
手前は、APM純正2”アダプター + ハーシェル・プリズム、後ろはEMSアダプター +
EMS。
当然だが、使わない対物、ファインダーにはしっかりキャップをする必要がある。また、この鏡筒に2”プリズムを付けるためには、EMS接続アダプターの六角ネジを緩めて外し、純正2”アダプターに交換しなければならず、ちょっと面倒だ。そこで、EMS接続アダプターに直接2”バレルが差し込めるようなアダプターを制作してもらう事にした。写真の通り、双眼装置を使う場合にはゼロ・プロファイル仕様にしなければならず、ここは、私にとってのドラえもん・松本さんにお願いしている。
2”特製アダプター (2012年4月1日)
この写真は、以前使っていた旧型EMS用アダプター。65mmφで、私の新型EMSは100mmφに拡大している。この旧型アダプターを忙しい合間に2”アダプターに改造してもらった。それが、これ。
双眼装置を使った場合、バック・フォーカスが不足するので、ゼロ・プロファイルにしないとピントが出ない。そこで、アダプターの内側・奥で固定するようになっている。プリズム+双眼装置は重量級なので、バンド・クランプ、さらに2箇所ネジ止めになっていて完璧だ。
驚く事に、このアダプターは、リヴァーシブルになっていた! 固定リングを反対側・表面にクルクルとはめると、汎用2”アダプターになるのだ。これで、あっという間に普通の屈折望遠鏡に変身する! いかようにも実験・利用して下さい、という訳だ。さらに、もっと驚いた事に、写真・上中央のリングが付属していた。ゼロ・プロファイルで使う時は、アダプターの裏面からのネジの固定になるが、もしネジが緩んでしまったら、プリズムもろとも高価な双眼装置・アイピースが落下してしまう。アダプターにプリズムを差し込んだ後、このリングをアダプター・裏面からプリズムのバレルにねじ込んでおけば、もしネジが緩んだとしても、このリングのフランジがあるので、落下が防止される、という訳だ。写真では質感は伝わらないのが残念だが、このアダプターは飾っておきたい位、精密にきれいに見事に仕上がっている。
ケースには、アダプター・リングも収納できた
依頼者の要求通りに製作するのは、普通の信頼できる業者。これを確実に、精密に、見事に仕上げるのは、優れた業者。松本さんは、それどころか、依頼者の考え、将来をも超越した次元で製作していて、もう流石としか言いようが無い。また一つ、大切な宝物が増えた! いつも書いている事だけれど、優れた製品・工芸品を使う、という事は、設計者・製作者の意匠を感じ対話をする、という事でもある。だから、タイトルが2” 特製アダプター。
で、実際に使ってみた。EMS接続アダプターの長さは45mmで純正2”アダプターより25mm長く、ゼロ・プロファイルでもピントが出なかった。ところが、この特製2”アダプターは、ねじ込みの加減で、マイナス・プロファイルにもできる。やってみたら、この窪みでプリズムのバレル付け根の突起部分が吸収され、見事にピントが出た。
Hαダブル・スタックは太陽表面のコントラストが見事だが、シングルでもじっと見ていると、いろいろ見えてくる。このプリズムも同様で、じっと見ていると、白斑の様子が見事に見えてくる。太陽望遠鏡の真価は、ちょい見では絶対にわからない。
ハーシェル・プリズムは面白い。休日で晴れていて家にいる時は、積極的に覗く。アイピースは、単眼の場合はLeica Zoom のみ。自在に倍率が変えれるだけでなく、解像度も最高だ。このアイピースはHαでも最強だと思う。当初は、Baader V 双眼装置 + 1.7×リレー・レンズ + Panoptic 24mm も使っていたが、もう少し倍率を上げたいので、Pentax XW 20mm もラインアップに入った。Baader V 双眼装置は、ふだんはObsession 用にセットして収納しているので、ハーシェル・プリズム用に使うためには、2”GPC を外して固定リングを外して1.7×リレー・レンズ をはめ、再び固定リングをはめ、T2プリズムからショート・バレルを外して双眼装置に装着し、アイピースをPanoptic 24mm からPentax XW 20mm に交換しなければならない。けっこう面倒くさいのである。
そうこうしていたら、TeleVue の双眼装置:Bino View の中古が手に入った。これにPentax XW 20mm をデフォルトで装着しておけば、Hαの1.25”の双眼にも対応できるし、下の写真のような2”アダプターを装着すれば、ハーシェル・プリズムにも即対応できる。 昔、この双眼装置の前身のAtom 双眼装置+Pentax XL 21mm を使っていた事があったが、20年経って、進化した形で、また手にする事となった。
ケースは、例によってVanguard。またまたカッコ良く収まった。倍率、実視界は、以下の通り。
|
焦点距離 | 倍率 | 実視界 | 見掛視界 | アイ・レリーフ | 射出瞳径 |
APM 130mm f6 | 780mm | |||||
Leica Vario Zoom ASPH. | 17.8mm | 44 | 1.4° | 60° | 18mm | 3.0mm |
8.9mm | 88 | 0.9° | 80° | 18mm | 1.5mm | |
Baader V 双眼装置(1.7×) | 1326mm | |||||
Panoptic | 24mm | 55 | 1.2° | 68° | 15mm | 2.4mm |
Pentax XW | 20mm | 66 | 1.1° | 70° | 20mm | 2.0mm |
Bino View 双眼装置(2.0×) | 1560mm | |||||
Panoptic | 24mm | 65 | 1.1° | 68° | 15mm | 2.0mm |
Pentax XW | 20mm | 78 | 0.9° | 70° | 20mm | 1.7mm |
倍率には適正があって、むやみに拡大してもコントラストが落ちて、かえって情報量は落ちる。私の場合は、上記太字のアイピース程度に抑えている。見ていてとにかく面白いので、いっそ撮影でもしてみようか、などという誘惑すら生じているこの頃である(だって、とにかく晴れないので、薄雲越しの太陽位しか相手にしてもらえないじゃないの)。
続く.....!
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