双眼望遠鏡 APM/LZOS 130/f6 BINO その6
望遠鏡も双眼が基本です!

  公開:2024年8月4日
更新:2025年12月10日 松本さん、、逝ってしまった.... を追加

本機を手にしたのは、2009年4月で、はや15年になる。その歴史は私の天文本格活動期に正に一致していて、共に歩んできた戦友だ。また本機は、銀ミラー、EMSリミッター・ノブ、バンド・クランプ、SkySafariを使用した画期的・革命的観望手法の誕生と応用、等々の双眼望遠鏡の改革の歴史そのものでもある。天下一品の光学性能のみならず、その工芸品としての美しさも特筆ものであり、これぞ一生の宝物だ。

亀山湖へ遠征 (2024年8月3日)

 大口径の遠征は確かに多いが、本機も相変わらず活躍中である。目の延長として視野が展開する自然さは、何物にも代えがたい。今年の梅雨明けの観望は宮古島からだったが、8月の新月期は、幸い晴れの予報が目白押しだ。しかし、一般の予報は「晴れ」でも天文的には「曇り」も多く、Windyで唯一 一晩中「晴れ」の予報の亀山湖へ行ってきた。亀山湖は21時過ぎまで水銀灯が点灯しているので、それまでは天頂付近の観望となる。いつの間にか隣の敷地にソーラー・パネルが広がっていた。


隣にはWX 10×。これだって小型の双眼望遠鏡のようなものだ。

 土曜は、いつもは駐車場にはそこそこ車が停まっていていて、まあまあの賑わいだけれど、なぜか今日は誰もいない。19時半過ぎから観望開始。まずはいつものようにVegaで校正してこと座をチェック。今はデフォルト・アイピースは、NAV-HW 12.2mm:62× 実視野1.6°だ。この組み合わせでも。ダブル・ダブルの離角2.3”、2.4”の二重星を上下、左右に分離して見せる。そして、いつも言っていることだけれど、接近した二重星は本当に美しい。η 20Lyrも宝石のように奇麗で、散開星団にしても、まるで美術品、芸術品のようだ! さそり座のJabbahやξ(三重星)はEthos SX 3.7mm:211×、実視野0.52°できっちり分離するし、ヘルクレス座のラスアルゲティはEthos 8mm:98×、実視野1.0°で息をのむ程の色のコントラストで魅了する。星の色の鮮やかさは、はくちょう座のχの赤い色などでも、見事という他無い。

  口径 焦点距離 倍率 実視界 見掛視界 アイ・レリーフ 射出瞳径 備考
APM APO 130/780 f6 130mm 780mm            
EWO   40mm 20 3.54° 69° 20mm 6.7mm  
Masuyama   32mm 24 3.49° 85° 20mm 5.3mm  
NAV-HW   17mm 46 2.22° 102° 16mm 2.8mm  
NAV-HW   12.5mm 62 1.63° 102° 16mm 2.1mm  
NAV-HW with EiC   10mm 78 1.31° 102° 16mm 1.7mm  
Ethos   8mm 98 1.0° 100° 15mm 1.3mm  
XW   5mm 156 0.45° 70° 20mm 0.8mm  
Pentax XO   5mm 156 0.28° 44° 3.6mm 0.8mm  
Zeiss ABBE II   4mm 195 0.22° 43°   0.7mm  
Ethos SX   3.7mm 211 0.52° 110° 15mm 0.6mm  
XW   3.5mm 223 0.31° 70° 20mm 0.6mm  

 次々と各星座を訪れ、フィルター・ワークで星雲の見え方を楽しんだり、土星や木星で、アイピースの見え方を比較したり、と午前3時頃まで見て、気だるく心地よい疲労に包まれながら帰宅した。
 

 スター・ビーム ドット・ファインダーの装着位置の変更 (2024年8月4日)

 TeleVueのドット・ファインダー:スター・ビームは本体より右側に飛び出した形で装着していた。それより内側にはレーザー・ポインター用の台座が付いていて、スター・ビームが、やや外にあることで使い勝手を良くしていた。ところが出っ張りがあるので、運搬の度に当たってしまってよろしくない状態が続いていた。今はレーザー・ポインターは使用していないので、ここの位置にスター・ビームを装着するように変更した。

 という訳で、未だに進化し続けている本機であった。
 

土星食 を追加 (2024年12月8日)


右の画像はSkySafari

 今晩、土星食があった。横浜は、快晴。こういったイベントは、何たって双眼望遠鏡だ。ただ惑星が月に隠れて出てくる現象だけれど、それが実にチャーミングなのだ。そして、惑星の運行、月の運行、自分(地球)の運行を感じるのである。写真は多くの人達が撮るので、例によって眼視のみ。アイピースは、Ethos SX 3.7mm(211×)。シーイングは、やはり冬なので良くない。家内は、Swarovski NL Pure 10×52で参戦。

 18時、風が強く、望遠鏡がぶれる。寒い! タイタンを引き連れて月の影に接近していく。そして、18時18分37秒、土星が隠れ始めた。輪も隠れて、19分45秒には完全に姿を消した。その間、1分8秒。
出は、19時。最初は衛星ディオネ(11.1等)が姿を現すのだが、月が明るいので見えない。そして輪から見えてくるのだが、これも月明かりで認識できない。19時32秒、ようやく惑星本体が見えだしてくる筈なのだが、これが輪?という位、淡い。それだけ、月が明るいのだ。

 前日、給湯器が壊れ、本日夕方修理完了。テスト、ということで浴槽にお湯張りをしていた。冷えた体を包んでくれて、助かった。しかし、給湯器は寿命で、いつ壊れても不思議は無い、と脅された。 修理1回で18年稼働だから、文句なしなのだけれど。交換は、ちょっとした望遠鏡なみに高額らしいので、怯んでしまった。
 

松本さん、、 逝ってしまった..... (2025年12月10日)



素敵なマーク。最後にお合いする前に、最後のお仕事として端材でこのマークを彫刻していただこうと思っていたが、すぐにそれも無理だとわかった。

 このページの冒頭に書いた通り、本機を手にしたのは2009年9月で、はや16年になる。その歴史は私の天文本格活動期に正に一致していて、共に歩んできた戦友だ。また本機は、銀ミラー、EMSリミッター・ノブ、バンド・クランプ、SkySafariを使用した画期的・革命的観望手法の誕生と応用、等々の双眼望遠鏡の改革の歴史そのものでもある。天下一品の光学性能のみならず、その工芸品としての美しさも特筆ものであり、これぞ一生の宝物だ。 そして、本当に多くの部品を作って下さった。それは、打てば響く、を越えていて、打たなくても響いていて、私の意匠、機能を越えたものが電光石火の速度で届いていた。電話して「こういうものを」と連絡して翌日簡単な図面をメールしたら、もう送りました、なんてこともあったし、天文に関係無い回転連結ハンガーの部品まで作っていただいたこともあった。

 2年程前から闘病生活をなさっていて、ここ2ヶ月はwebsiteの投稿も止まっていた。心配で、先月頭にお見舞いに伺った時は相当お痩せになっていて、現実と幻想が交錯している時もあった。ずっと心配し応援もしてきたが、12月9日の朝、8日に亡くなりました、と連絡をいただいた。本当に残念でたまらない。

 彼は、もっと世界中でEMSが認められ、そしてそれが観望機材の標準化になることを望んでいた。しかし、生前にきちんと評価される人の方が少ないのが世の常でもある。また、彼は第三者のEMS制作をとても嫌がっていた(特許は、随分前に切れていた)。でも、第三者がその原理を用いて制作する、ということは、それだけ優秀な発明品であるということでもある。最後まで、それをそっと伝えていたが、最後にお合いした時も、やっと起きた体で無念さを滲ませていた。

 松本さんには感謝しかない。友人のSNSのコメント:どれだけお世話になったか、どれだけ無理をきいていただいたか.... まさにこれに尽きる。 胸に深くささって涙が出てきた。 心よりご冥福をお祈り申し上げます。 天国で、また双望会の時のように一緒に観望しましょうね! お誘いはしていたけれど、南天に行けなかったのは残念! 双眼望遠鏡で見る銀河中心は、どこを見ても宝石箱で、真骨頂なんですよ!
 でも、残った宝物の機材を使う、ということは心の中で彼と対面することでもある。私の中では、ずっと生き続ける。


 
   続く.....!

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