月のすきま(2001年11月)

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2001/11/01(木) 18:37:00  一瞬を

 うすく朱の入ったサザンカの花にキイロスズメバチがとまった。
 花粉にまみれ、蜜を舐め、恍惚…。
 秋が深まる前に、死に行く前に蜜を舐める…。

 鋏を構え、一瞬を閉じた。
 蜂は、胸部と腹部の、ちょうどくびれたあたりで切断された。
 激しく羽を震わせ、アゴをがちがちさせる頭胸部と、
 触れると静かに針を出す腹部。
 鋏を近づけると、前足を上げ、抵抗しようとする。
 それから仕事終わりまで、ずっと生きていた。
 いまも生きているかもしれない。
 

 

2001/11/03(土) 23:49:00  盲目


 マジッド・マジデイ監督の『太陽は、ぼくの瞳』を観た。
 イランの盲目の少年の物語。
 手のひらで風を観、光を感じる。
 目が見えないこと、耳が聞こえないこと、口がきけないこと、
 障害があること、
 ないこと…。
 ここにあるのはそういう欠如や基準の反転の物語ではない。
 世界を感じること。
 ただまっさらに世界を感じること。
 そのことを自分に引き受けること。

 監督が来日した時の記者会見の記事を検索した。  
 http://www.minipara.com/movies2000-1st/taiyo/kaiken.shtml

 彼らの世界を発見したという体験で驚いたのは、何かを触りながらまるでそれが点字のように言葉を読み始めたのです。私はそれがとても興味深くて彼らに「その石には何が書いてあるの?」と聞きました。ご存知のように点字は六個のドットが色々な形になって文字になるんです。
 ひとりの子供がその石を触りながら言葉を読んでいたのですが、私に「アラー(神)」と書いてあると教えてくれました。20分後に再び同じ石を「これは何て書いているの?」と聞きましたら同じように「アラー(神)」と教えてくれました。これは私にとっても驚きでした。子供達にとっても小石の言葉を読めたというのはとても嬉しかったそうです。

 神との出会いと言葉との出会いは同じ初源にあるのだろう。
 ただまっさらに世界を感じるだけで、踊り出したくなる、
 そんな日をつないで、ここに、こうしているのではなかったか。
 

 

2001/11/04(日) 23:53:00  そんなこんなの


 一年ぶりに中野の「まんだらけ」に行って、岡崎京子なんかを売ってきた。
 内田善美の「星の時計のriddel」は絶版ということもあって、三冊揃いで二千円の値を付けてくれた。全部で六千五百円。キャリアバックをガラガラ引っ張って中野まで行ったかいがあった。
 それから阿佐ヶ谷へゆき、なんとなく商店街を冷やかして、池袋ジュンク堂で九時閉店までただ読み。ありがたや。

 駅へ向かう人の波。
 ひとりで歩く女は、携帯の液晶画面を決まったように前に掲げ、のぞき込みながらスタスタ歩いてゆく。
 駅構内には、柱ごとに似たようなカップルがおり、みな配置したようにいちゃついている。
 電車の中では、強面のジャージ姿の兄ちゃんが、携帯で、思いっきりな人生相談していた。
 そんなこんなの日曜だった。
 都心ではなんでこんなに人が湧いてくるのだろう。
 むかしは人が集まるところに何か集約する次元があったが、
 いまは集まりながら拡散しているような気がする。
 いずれにしろ群衆は苦手だ。
 

 

2001/11/06(火) 07:13:00  「ぬ」の夢


 「ぬ」を7時に起こして、
 オレなんか5時から起きているんだぞ、と威張ると、
 「オレなんか夢でプーチンと話したんだぞ。15分もだ」と威張り返された。
 「しかも向こうから電話がかかってきたんだ」
 ほう…。で、何を話したの?
 「…小泉の衆愚政治についてだ」
 へぇ…。プーチンはなんて言ってた?
 「非常に感銘を受けていた。電話でこんなに話したのは初めてだ、と言っていた」
 えらいえらい、えらいなぁ〜。
 頭をなでてやると、「ぬ」は満足して、
 「電話で長く話したから耳が痛えよ」と耳をパタパタさせた。
 

 

2001/11/07(水) 06:24:00  朝の色


 夜明けの匂いにはもう冬が混じっている。
 寝起きで朦朧としたアタマを窓の外へ出し、大気の引き合った音を聴く。
 雲間から差す光に野菊、ススキ、コスモス、セイタカアワダチソウ…
 いろいろな色が収束し、結実へ向かう。
 今日もむげえの若いおっかさんは、朝早くから洗濯に精出し、
 手すりを力いっぱい拭き拭きし、家族のものをベランダいっぱい干してゆく。
 これも朝の色。
 

 

2001/11/07(水) 18:40:00  空の中


 赤松の幹肌を手の平でしごいて色を出す。
 女の肌をさするように、母の病を癒すように。
 かさぶたが取れて、古皮がとれて、秋の日差し…。
 ふんわり柔らかくなった緑に、幹肌の赤、黄金の光、
 ナナカマド、モミジ、ニシキギ、……紅
 ケヤキ、イチョウ、ハギ、カリン、……黄
 サザンカ、キク、キキョウ、……花
 秋の色でございます。

 植木屋やっててよかったと空の中。
 

 

2001/11/09(金) 06:25:00  キリンさん


 一服の時の手すさびに、手近にあった梅の枯れ枝を、木鋏で削りはじめた。
 うむ…。
 何だろう…。
 何かになるな…。
 あ、キリンさんじゃないか!
 それ以来、ポケットに忍ばせて、一服の度に取り出しこさえている。

 枝折戸を木蔓で止めてから、蔓細工にも興味が出てきた。
 手入れで蔓が出るたびに持ち帰って陰干ししている。
 これでビワの葉を天日干しするカゴを編み、窓辺に吊す予定。
 このあいだは山椒の太枝が出た。乾燥させてスリコギにする予定。
 竹ひごに和紙を張って、ランプシェードを作る予定。

 なんだか予定がいっぱいでうれしい。
 小中のとき技術家庭科が苦手だった反動だな。
 

 

2001/11/09(金) 19:25:00  浅い世界


 今日、自衛隊の護衛艦が米軍支援のためインド洋へ出航した。
 このあいだ与党の3幹事長が、パキスタンの大統領に、「ぼくたちの軍隊も出させて下さい。でも戦場には近づきません」と雁首揃えて言いに行って、軍人出身の大統領に思いっきり「?」顔をされていた。
 この3幹事長のパキスタン訪問の顛末は、以前紹介した現地在住のオバハンのリポートに詳しい。↓

http://www.pat.hi-ho.ne.jp/nippagrp/obahan.htm

 アフガン北部カザフスタンの、油田パイプラインをめぐるポストタリバンの利権漁りに食込みたいのか、自衛隊を軍隊に昇格して「一人前」の国家面したいのか、いづれにせよ現場の自衛官はやりづらいこと甚だしいだろう。
 その自衛官の後方支援の1日の危険手当は5万円で、一方、中村哲医師の試算によれば、カブールの1家族10人が3力月の冬を越すのにたったの6000円で済む。

 そんなこんなの話を小梅と夕食しながら話して消化が悪い。
 こういう話はすぐに感情的になる。
 どこか浅いところで世界と繋がっているからだろう。
 

 

2001/11/12(月) 06:38:00  祖母に会いにゆく


 祖母に会いにゆく。
 「ばあちゃ〜ん」と甘えて懐に入り込むため。
 祖母は行政のデイケアを受けている。
 なかなか感じのいい人たちだ。
 祖母の孫娘がもう色づきはじめたので膝に抱いてやる。
 敏感なところが触れ合う。
 枯れ木のうろに孫娘と自転車を止めようとしたら、上からふたり人が落ちてきた。
 「落ちる途中に声をかけたんだけど、聞こえなかった?」
 きこえるわけないですよ。それより大丈夫なんですか。
 「大丈夫です。自分らは仕事ですから」
 といってロープをするすると上ってゆく。
 孫娘と繋がりながら、もうひとりの孫娘もねらっている。
 いろんな色のくだもの、色づいて。
 祖母に会いにゆく。
 祖母はもう死んだのだけれど。
 

 

2001/11/12(月) 21:31:00  オーロラ


 雨の中、工場の落葉掃除。
 長年堆積した落葉は、ほとんど堆肥化している。
 晴れの日の数倍重い落葉を、シートに乗せて引張る。
 えんえん。
 雨の日の昼寝はクルマの中で新聞にくるまる。
 今日たまたま広げた古新聞にオーロラの写真があった。
 NASAが打ち上げた観測衛星が、南北両極同時にオーロラが踊るさまを捉えている。
 あいだの山や海、幾多の国々を無視した、一個の電磁界としての地球の姿。
 無数の蛾や蝶が蛍光色の鱗粉を撒き散らし、両極で舞っている。
 世界は何も知らず、政治や経済や戦争をしている。
 漆黒の大宇宙にぽつんと浮かんで、大吟醸でもやりながらこんな光景を見てみたい。
 穴のように無関係にこの星を眺める。
 それには巨大な距離が要るのだろう。
 それを上手に折り畳んで、日のすきまに入れ、
 両極のオーロラをみる。
 

 

2001/11/13(火) 18:39:00  工場の昼休み


 工場の昼休み、運転席からむくりと起きると、
 斜め向こうで、モンゴルの女とブラジルの男が、楽しげに立ち話している。
 むかし吉永小百合の青春映画で観たような、工場の物語。
 始業のチャイムが鳴って、ふたりは、小走りでそれぞれの持ち場に戻る。
 午後もラインで洗濯機を作るのだ。
 

 

2001/11/14(水) 21:08:00  「ぬ」の電話


 家に電話をかける。
 「もしり、もしり…」

  …あ、
 「ぬ」だ。

 「ぬ」、今なにやってんの?
 「なばばを、もささ、もささしてるの」
 …バナナをもしゃもしゃ食べているのか。
 「ちゃりすけは?」
 オレは家に電話かけてんだよ。誰かいないの?
 「ぬがいるよ」
 ぬしかいないの?
 「ぬとね、にきと、ねきと、あと5にんのるーとらがいるよ」
 いっぱいいるなぁ。
 「5にんのるーとら
  すっぽんぽん、あ、すっぽんぽん
  5にんのるーとら
  すっぽんぽん、あ、すっぽんぽん、すっぽんぽん」

  …………。
 

 

2001/11/15(木) 19:09:00  親方


 仕事帰り、用事で久しぶりに親方の家にゆくと、酔っぱらってちゃぶ台のまわりをハイハイしているのが見えた。
 窓越しに眺めながら、親方トシとったなあ…、と思う。
 親方は自分の実の叔父で、自分が植木屋をはじめるきっかけになった人だ。
 この人のことを書くと、一冊の本になるくらい、ぐちゃぐちゃ色々あった。
 どこから手をつけていいか分からないくらい個性的な人で、情の深い人なんだ。
 その親方がおれの顔を見て泣いた。
 「ババアがよぉ、肝臓の方までやられちゃってよぉ、…」
 叔母は乳癌が転移して再入院している。
 「あのくそアマと思っても寂しくてよ、きのうは仕事も休んじまってよ…」
 だからって、酒飲んで晴れるもんでもねえだろ
 と、おれは毒づく。 しっかりしろよ
 「ああ、そうだな…。 上がっていかないのか」
 いいよ、まだ仕事中だから…、
 つっけんどんに言ってトラックを出す。

 叔母への恨みは消えないので、まだ見舞いにも行っていない。
 ひとりの車中で何かを抱きしめる
 

 

2001/11/16(金) 06:52:00  主人公


 「オレはオレの生死とは無関係だ」という主体がある。
 この主体は、この身が土に還った後、どこへゆくのだろう。
 この主体は、どこにあるのだろう。
 たぶんここに、個と全体性、魂と他者の問題が横たわっている。
 

 

2001/11/17(土) 05:40:00  けーん、


 朝からなんだか体調が悪い。
 河口の公園で高木の移植工事。
 八掛けの根杭をけーん、けーん、と打つ。
 もう三日もやっている。
 いつまでたっても暮らし向きはかわらねえな、けーん、けーん、
 明日も仕事だ、けーん、けーん、
 貧乏ひまなし、けーん、けーん、
 もう疲れちゃったよ、けーん、けーん、
 ………
 気持ちはどんどんネガティヴになる。
 と、目の端をビロード色のものがよぎった。
 キジだ!
 とととと、と灌木の中を走ってゆく。
 近くに宮内庁の鴨場があるから、そこから飛んで来たのだろう。
 気が付けば、晩秋の午後の金色の日差しの中、
 この世はあの世と雉がゆく。
 

 

2001/11/18(日) 05:50:00  職人たち

 
 昔世話になった植木屋の手伝いに呼ばれて行った。
 4年ぶりくらいだ。
 規模は小さいが、江戸職人の匂いを残す老舗だ。
 問わず語りに、職人達のうわさ話になる。
 タケさんは白内障で2ヶ月入院した。
 ナンバさんは不整脈でもう出てこない。
 マーちゃんは仕事のケガがもとで手が使えなくなった。
 今度生活保護を申請するそうだ。
 トモちゃんは、アパートにボヤを出して中国に強制送還された。
 職人達のほとんどは、年金にも健康保険にも入っていなく、税金も納めていない。
 出面でその日その日を暮らしている。
 「年末はさすがに忙しいけどよ、2月3月なんかは10しか出れなかったよ」
 仕事がない日はじっとおとなしく部屋にこもり、
 仕事に出ると酒宴を開いて使っちまう。
 そうして歳を取ればよれよれになって死んでゆくのだ。
 そんな職人達が久々のおれの顔をみてニッコリ笑った。
 

 

2001/11/21(水) 20:29:00  薔薇


 チャボヒバを爪引いていちにち

 日が暮れた

 気が付けば後ろに冬そうび
 

 

2001/11/22(木) 22:04:00  大映vs東宝

 
 帰りの首都高は大渋滞。
 同じニュースを何度も聞く。
 ビルの谷間をぎっしりヘッドライトとテールランプ。

 ゴジラが来るぞ。
 ゴジラが来たらどうするんだ!
  
 田舎の場末の映画館で手に汗握っていた子どもはどこへいった。

 おれはガメラに乗って逃げる。
 

 

2001/11/23(金) 22:10:00  きょうも一日働かせてもらいました


 シイノキの樹冠に入り、今日の陽にあたっていると、
 あちこちから灯油屋の声が聞こえる。
 アダモの「雪が降る」、
 堺正章の「北風小僧の寒太郎」、
 「とーゆ、18リッター、○○円」、
 「ゆ〜きやコンコン、あられやコンコン」、
 オルゴールの奴もある。
 昼休みは駐車場のコンクリの上に新聞紙を敷いて寝た。
 ぽかぽかと言うよりジリジリと温かい日だった。
 夜はぼさぼさの髪を妻に切ってもらった。
 少し風邪気があるのでカリン酒を飲んで寝た。
 

 

2001/11/25(日) 18:36:00  11月の休日


 妻の話によると、ゆうべ夜中にバンザイの格好で両手を5〜6回叩き、それからむくりと起きて便所に立ったそうだ。
 便所に立ったことは覚えている。
 ひどく寝汗をかいてシャツを取り替えた。
 真っ暗な夜。

 今日は久々の休日。
 免許の更新にゆく。
 バスに乗ると窓に殺人犯の手配書が出ている。
 顔を見ているとやったことが見えてくる。
 この人たちはどんな年末を過ごすのだろう。
 どこでどんな格好で眠るのだろう。

 午後は植彰さんに教えてもらった店まで電車でゆき、腹掛けと乗馬ズボンを買った。鳥打ち帽も買った。
 股引はいいサイズがなかった。江戸一の手拭いが400円と安かったのでたくさん買った。小梅は自分に合う手甲を捜したけれど、どれも、ぶかぶかでダメだった。

 このまちの神社の銀杏が見事だった。
 小梅がデジカメに収めた。
 小梅はいつもデジカメを首からぶらさげている。
 それがちょこちょこと走ってはカメラを構える。
 (金と銀とが…)

 今日は結婚記念日だ。
 ちょっとこじゃれた喫茶店に入ったら、店員が茶髪のネエちゃんばかりだった。
 コーヒーとケーキの味は酷いものだった。
 妻は黙ってコーヒーを灰皿にぶちまけた。
 おれは黙って金を払った。

 松井計「ホームレス作家」幻冬舎を電車の中で読む。
 夜は鍋焼きうどん。
 明日はまた4時起き遠出。
 

 

2001/11/27(火) 06:55:00  物忘れ


 あきれるほど物忘れが激しくなった。
 いま具体的な笑い話を書こうとしたら、それすらも忘れてしまった。
 いったいこの先どうなるのだろう。
 それでもそのぶん気持ちは楽になった。
 たぶん忘れたことはどうでもよいことだったんだ。
 以前は朝目が覚めると、きのうまでのことが高速で押し寄せてきてどうしようもなかった。
 いまはスコーンと抜けた曠野に何かがちらりほらり…。
 お〜い。

 そのうち自分のことも忘れた野原になるのだろう。
 そうしたら初めましてだね。
 

 

2001/11/28(水) 18:25:00  明王


 社長や職場の人間達のあまりのうすら馬鹿さにうんざりして、ギリギリと牙を研いで帰る。
 いやいやいけません。看脚下、足下を見よ、おのれを顧みよ。
 ギリギリ、ギチギチ、ぎお! ぐお! baooooonn!
 憤怒の明王、大魔神姿で玄関に立ち、出迎えた妻に、着替えて風呂に入るまで一気にまくしたてる。妻はニコニコよちよちと聞いている。
 ビワの葉を入れた風呂に入り、身を沈め、「おおんぼろぞ〜」と身毒を吐いて風呂上がり、赤い発砲酒をくか〜!

 小梅がHPをリニューアルしたので見てください。フォントが悪い、リンクの画像が出ていないと文句を言ったらいじけてしまいました。 
 

 

2001/11/29(木) 19:06:00  十三夜


 手を入れ始めて四年目のシイノキに上る。
 今年もまたのぼらせてもらいますよ。
 また一年経ちました。
 いろんなことがありました。
 けれど相変わらずですよ、
 あまり進歩がありません。
 おや、こんなところに、こんなに太い忌み枝が。
 ごめんなさい。
 つまり去年までは気づかなかったわけで。
 それがこの一年ということで。
 ああ、足袋が黒の地下足袋だ。
 きねやの藍染を履いてくればよかった。
 (香りが違うもの…)
 ここをこう廻って、この枝に手をかけて、
 そうすれば自分ひとりが入れるすきまがあって、
 そうやって空に出て、
 …おやまあ、ずいぶん元気な「ずや」ですな。
 一年、おおらかにのびのびと、
 あの時も、あの時も…。
 それらを鋏んで、小さくか弱いものに、世界を見せる。
 こんどはこの枝や芽が、また新しい空や時を受けるのだ。
 夕暮れ、地面に下り、
 今日関わったものを見る。
 東天に月。
 ほぼ満月。

 いのちなりけり。
 

 

2001/11/30(金) 06:42:00  染まる


 楓をゆすり黄葉を散らす。
 公孫樹、桜、満天星(ドウダン)、辛夷(コブシ)、様々な色。
 懺悔の姿で色を浴び、色を受け、色を仰ぐ。
 染まるのは、いつも、初めての、始まりのかたち。