日本被団協は6月20日~21日、東京・港区の東京グランドホテルで第68回定期総会を開きました。人数制限なしの対面開催で、全国から被爆者、被爆二世、支援者など約80人が参加。基調報告、活動報告、決算、運動方針、予算、役員選出、総会決議と特別決議を承認・決定しました。
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日本被団協は定期総会翌日の6月22日、全国の被爆者、被爆二世など約60人が参加し参議院議員会館会議室で中央行動を行ないました。
午前11時から1時間厚生労働省交渉、午後は政党への要請行動でした。
厚労省交渉(2面に要請書)では、原子爆弾被爆者援護対策の岡野和薫室長ほか担当者6人が出席。7項目の要請事項について口頭で回答を受けました。
現行法の国家補償法への改正については、「国の責任において」と前文に明記した現行法の考え方を強調。非核三原則法制化と核兵器禁止条約への参加は所管外とするなど、積極的回答はありませんでした。介護手当の受給が少ないことに関しては、現状を至急確認すると答えました。
午後1時30分からの政党要請(2面に要請書)には、公明、維新、立憲、国民、共産、れいわ、社民の各党から、被爆二世を含む9人の国会議員が参加。党首宛要請書を手渡し懇談しました。
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総会終了後の6月21日午後、約30名が参加してノーモア・ヒバクシャ9条の会(NH9)の全国交流会が開かれました。
はじめに被爆者運動が、9条をはじめ日本国憲法の基本精神を生き、実践してきた歩みを事務局から紹介し、議論に入りました。
「援護法は国家をしばる抑止力。そのとおりと思った」「国家補償は平和に生きる権利を保証するものだが、二世委員会でも、国家補償って何や、という声がある」「今は分かるが、受忍は当たり前と思っていた」「受忍論を憲法との関係で分かりやすく伝えられないか」。
率直な意見とともに、被爆後、中学・高校で「あたらしい憲法のはなし」を学んだ感動や、憲法を支えに被爆者として生き、被爆者運動をしてきたゆたかな経験が語られました。
貴党が「ふたたび被爆者をつくらない」という被爆者の、そして人類の願いを実現するためにご尽力くださるよう、下記のとおり要請します。
1.「原爆被害への国家補償」を実現すること
現行の「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」は、われわれが悲願としてきた「原爆被害への国家補償」に基づく法律ではありません。原爆被害への国家補償実現へどんな法律が考えられるか、提案していただきたく、お願い申し上げます。
2.核兵器の禁止、廃絶を実現すること
①日本政府が速やかに「核兵器禁止条約」に署名、批准するよう国会で議論し採択してください。
②日本が核兵器廃絶へ世界をリードしてください。
③アメリカの核の傘から離脱し、非核三原則を法制化してください。
3.政党と日本被団協が法律の制定について協議する場を設けること
広島・長崎への原爆投下から78年、日本被団協第68回定期総会で全国の被爆者、被爆二世、支援者が集まりました。日本被団協の結成から2021年1月22日核兵器禁止条約発効までの長い長い道のりを思い、原爆に命を奪われた家族・友人・多くの死者たちや被爆者運動の先達の姿を思いうかべての参加です。
核兵器が人間と共存できない「絶対悪の兵器」であることを国の内外で伝える実相の普及が、今、より一層求められます。ウィーンで開催の第11回NPT再検討会議の準備委員会、ニューヨークで開催の核兵器禁止条約第2回締約国会議に参加し、核兵器の反人間性を、こころに届く被爆の実相を、訴えます。
日本被団協は結成から今日まで、願いを要求に、要求を運動にと大きくひろげてきました。国が国民に対し、もう戦争はしない、ふたたび被爆者をつくらないと約束する「国家補償」の実現は喫緊の課題です。また、被爆者は、憲法違反の戦争犠牲「受忍論」に怒りをもって反対し、その撤回を求めます。あわせて被爆二世に対して被爆者に準じた施策を実施すること、空襲被害者などすべての戦争被害者に国の償いをすることを求め、運動をすすめます。結成宣言の「世界への挨拶」、「原爆被害者の基本要求」、「被爆者からあなたに」、「国連原爆展」などについて、話し合い学び合いましょう。これらの活動をとおして、「日本政府に核兵器禁止条約の署名、批准を求める」署名をすすめましょう。
被爆者の減少、高齢化が進んでいます。病気や介護が必要となった被爆者が最後まで、人間として誇りをもった生活が送れるよう、相談活動に取り組みます。
全国各地、被爆者の組織や運動を維持していくにはたいへん厳しい状況にあります。被爆80年に向けて日本被団協のすべての組織、会議をとおして討議をおこない、被爆者と支援者、諸団体とも懇談、協議を重ね、2024年度の総会に、全国各地の取り組みを土台に「新たな運動と組織の在り方」を持ち寄りましょう。
被爆者は訴えます。核兵器や戦争で人間のいのちやくらしを守ることはできません。憲法改悪を許さず、憲法9条にもとづいて、特定の国を敵視する軍事同盟や軍事力の強化ではなく、交渉・対話によって国家間の紛争を解決すること求めます。
日本被団協の結成宣言「世界への挨拶」の「私たちは自らを救うとともに、私たちの体験をとおして人類の危機を救おうという決意を誓い合った」を胸に、「戦争もない、核兵器もない世界」へ、すべての核被害者、戦争被害者、平和を願う人々と歩みつづけることを決意し、本総会の決議とします。
被爆78年目を迎える今年、私たち被爆者は世界各地で起こっている紛争、わけてもロシアのウクライナ侵略に始まった戦争に、核兵器使用の危惧をいだきながらも、国際社会の指導者たちはどのような判断を下すであろうか、と一縷の望みをもって迎えたのがG7広島サミットでした。
しかし、私たちの思いを全く蔑ろにした「広島ビジョン」が発表されました。被爆者、非人道性、核兵器禁止条約、の文字も見られません。それに代わるのが「我々の安全保障政策は、核兵器は、それが存在する限りにおいて、防衛目的のために役割を果たし、侵略を抑止し、並びに戦争及び威圧を防止すべきとの理解に基づいている」とする「核抑止」論でした。
G7は本来経済問題を世界規模の観点で議論する会議です。今回は今般の世界状況から核軍縮もその議題の一つとして取り上げられ、その開催地が、広島となったことで、核兵器の問題がどのように議論されるか大きな関心事となりました。
被爆者を含む市民レベルでも多くの集会が各地で開催され、サミットへの要望や期待が表明されていました。
しかし開幕即日の19日に発表された「核軍縮に関するG7首脳広島ビジョン」の内容は、NPTを核軍縮と核不拡散の礎とする不拡散体制の強化、核戦力の開示と透明化、核兵器数の削減努力などに加え、これまで長年会議も開かれていない条約の交渉会議の開催を求めるなど、これまで外務省との要請・懇談の場で毎回耳にしてきたことの繰り返しでした。
ビジョンの中に「我々は77年に及ぶ核兵器の不使用の記録の重要性を強調する」とあります。岸田首相は「核兵器が使われなかった歴史を蔑ろにしてはならない」とのべました。そうです。二度と被爆者をつくってはならない、世界中の誰にも自分たちと同じ経験をさせてはならないと、私たちの経験を蔑ろにしないように、訴え続けてきたのは私たち被爆者です。
ロシアの核による威嚇で、日本国内での「核共有」の提言や「非核三原則」の見直しの発言が強まり、巨額の防衛費の増額は国会の審議を経ないまま閣議決定されました。「核の傘」の下で、国民の生命と生活を守ることが、戦争被爆国日本のとるべき政策でしょうか。国民の7割が核兵器禁止条約に参加すべきと回答しています。被爆者はこれからも国内外の多くの支援者の方々と共に、核兵器廃絶を目指して運動を進めます。
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兵庫県被爆二世の会は5月27日、神戸市立東灘区文化センターで2023年度定期総会を開催しました。会員31人(内三世2人)が出席。2022年度末で会員数は122人です。
2022年度は大学生の平和活動グループ「KNOW NUKES TOKYO」との交流ができ、議員ウォッチの活動に参加できたことを報告しました。紙芝居2作目として松井清さんの証言を元に制作した『長崎で原爆にあって』のDVDが完成し、総会後に上映しました。
総会後開催した集団証言の会「ピアノと声で伝える原爆」には被爆者10人と一般市民、合わせて約70人が参加(写真)。広島女学院同窓会発行の「平和を祈る人たちへ」から原爆炸裂時の悲惨な状況を女学院の後輩が朗読。被爆者の手記を本人の子どもである被爆二世が読み、二世としての思いを語りました。この会は昨年に続き2回目。参加者の「この企画を続けて」の声に押され、来年も「ピアノと声」で原爆の実相を伝えることを決めました。(中村典子)
5月27日、岐阜市内で「ピースカフェ」が開催されました。「ピースカフェ」は生活協同組合コープぎふが、組合員同士平和について気軽におしゃべりする場として定期的に開催しているものです。今年度はコープ共済連の「地域ささえあい助成事業(生協と生協以外の団体が協働で取り組む活動を支援する事業)」の助成を受け、社会福祉法人いぶき福祉会とコープぎふが共同で学習会を開催することになっており、今回はその取り組みの第1回となりました。
コープぎふの組合員やいぶき福祉会の仲間たち(通所者)、職員、地域の方など約20人が参加。「被爆体験のお話を聞こう」をテーマに岐阜県原爆被爆者の会の加田弘子さんと木戸季市さんの話をお聞きしました。
交流タイムでは質問が多くあり時間が足りないほどでした。「加田さん、木戸さんの『体験』は写真、音楽、文章では得られない胸打つものがあった。参加出来てよかった」「戦争、被爆の体験だけでなく、被爆国日本の立場など今まで知らずにいたことを教えて頂けてよかった」などの感想が聞かれました。
「私の平和はストレスを溜めないようにボウリングで遊ぶこと」「核兵器がなくなって平和に生きられたらいいな」という仲間たち。木戸さんの「原爆は一瞬にして長崎の街を何もない世界に変えた。怖いも何もない。お友達や家族と一緒に生きていけるということが幸せの出発だよね」の言葉に平和の大切さを改めて感じました。(コープぎふ・堀美奈子)
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愛知県原水爆被災者の会(愛友会)は5月20日名古屋市総合福祉会館で定期総会を開きました。
総会の議事を短く簡潔にし、総会後に交流・懇談の時間を設けました。なかなか会えない被爆者どうし、この機会に顔を合わせて近況を交流し合い、日頃の悩みや心配事も懇談されました。
また、支援者・団体にはオブザーバー参加を呼びかけ、激励のあいさつが寄せられました。
年々参加者が少なくなっていた総会でしたが、今年は多くの出席者があり金本弘理事長が「とても励まされました」とあいさつ。議案と予算を議決し、「大軍拡をすすめる政策は憲法九条違反であり、岸田首相にその撤回を求める」などの内容を記した定期総会アピールを採択しました。
(大村義則)
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静岡県原水爆被害者の会は6月11日、静岡市のはーとぴあ清水で第65回定期総会を開きました。
会員約20人と県健康福祉部疾病対策課長代理ほか来賓が出席しました。
あいさつに立った石原洋輔会長は、議長国として岸田首相が主導し被爆地広島で行なわれたG7サミットの成果について「核兵器廃絶の方向に向くことはなかった。皆さんもがっかりし、怒りを覚えたことと思います」と述べました。
23年度活動方針では、岸田内閣が見直した安保3文書について、先の大戦の教訓を忘れ去り、歴史認識が全くないことを強く批判。その上で「日本政府に核兵器禁止条約への署名、批准を求める署名活動に積極的に取り組みましょう」と訴えました。(静岡県被団協)
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6月17日午後1時30分から1時間、柏駅東口で署名行動をしました。
「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める千葉の会」の参加団体4団体から17人が参加し、リレートークで訴えました。最初はタスキをかけた被爆者が「日本政府が禁止条約に参加していない、世界で唯一の戦争被爆国だからこそ核兵器廃絶の先頭に立ち世界をリードほしい」などと語り、署名への協力を呼びかけました。各団体からも広島サミット、核軍拡、核の傘からの離脱、核抑止力についてなどを訴え、72人の署名が寄せられました。
行動の1時間の間に、マイクを持って訴える人に近づいて「核兵器を持ってなにが悪い」と大声をあげる人、また「核抑止力は必要だ」と署名を拒否していた学生が被爆者との対話の中で「時間があるときにもっと話を聞きたい」言って署名するなど、様々なことがありました。
路上に置いた募金箱に2千円、新婦人柏支部から1万円の募金が寄せられました。行動のまとめの報告が終わり、お疲れさまでしたとそれぞれ声を掛け合い帰路につきました。(児玉三智子)
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心に刺さった言葉がいくつもある。「原爆は人間として死ぬことも人間らしく生きることも許しません」の「人間として死ぬこと」もその一つ。
長崎の墓に両親の名前を刻んだころ、並んでいる3人の「八月九日」の意味を考えることなく生きてきた自分に、やっと向き合いはじめた。3人とは、父の母、妹、弟である。どこで亡くなったのか、ずっと知らなかった。
その場所を求めて、古い地図を片手に歩き回った。「たぶんここ」と立ち止まったのは原爆資料館裏。原爆中心地を示す塔がすぐそこに見えた。あの日の「ここ」はどんな世界だったのだろう…。
「人間として死ぬこと」は、「ここ」に立ったときの私の思いを蘇らせる。「ここ」で生きていた50歳、14歳、10歳の3人は、突然に人生を断ち切られた。人として弔われることもなく消えた。
本書に3人の死の意味を教えてもらったと思う。これから二世の会の仲間とともに、被爆者の願いとぶれることない運動の本質を、本書から学び続けたい。自分の言葉で「核兵器は人間の存在とは相いれない」と語れように。
【問】介護保険でヘルパーがきてくれますが、電球の取り換えやエアコンのフィルター掃除などをお願いすると「そうしたことはできない」と言われます。そういうこともやってもらわないと困るのですが、頼めないことなのでしょうか。
* * *
【答】電球の取り換えやエアコンのフィルター掃除、カーテンの取り外しなど生活していくうえでは雑事と思われることが案外多いものです。高齢になるとこうした作業は危険も伴います。
ところが介護保険制度ではこうした仕事はサービス外とされていて、ヘルパーさんには頼めないことになっています。
そこで、自治体の社会福祉協議会の有償ボランティアや生活協同組合、地域の民医連などの協同組織で助け合いをやっているところがあるので、連絡してみてはいかがでしょうか。
社会福祉協議会の有償ボランティアは、庭の掃除や植木の剪定、大きなものの買い物など広範囲に対応してくれるところもあり、必要な時、あるいは毎週何曜日などと決めて依頼できるようです。費用は地域ごとに決められています。
生協では、組合員に対して支援を行なっているようです。
民医連の協同組織での取り組みは、今のところ実施地域が限定されているようです。
いずれにしてもお住まいの地域でそれぞれ問い合わせてみてください。
こうした生活上の困りごとは、被爆者だけの問題ではありません。一人の相談が取り組みを始めるきっかけになり、相互扶助が組織されるかもしれません。地域の被爆者の会や支援者とともに申し入れをすることも大事だと思います。
日頃からの、皆さまからの大きなご支援に深く感謝申し上げます。日本被団協の運動を支える「被爆者運動強化募金」を訴えます。
二大要求である「核兵器廃絶」と「原爆被害への国の償い」の実現を訴えて運動を続けてきた日本被団協は、国際的に「核兵器の反人間性」を明らかにし、すべての国民にがまんを強いる「戦争犠牲受忍論」に抗い、原爆被害をはじめ、すべての戦争被害者への国の償いを実現する道筋を切り開いています。
このような活動を進める日本被団協の財政は、その多くを募金に支えられています。被団協運動を支えるため、より一層の募金の協力をお願いいたします。
なお、この「被爆者運動強化募金」は、各都道府県被団協に所属している方からの募金のうち3割を、各都道府県被団協に還元します。
送金先=郵便振替00100―9―22913日本原水爆被害者団体協議会。一部の地域を除いて同封しています振込用紙をご使用ください。
読者の皆さんからの原稿を募集しています。
氏名、年齢、住所、電話番号を明記して、郵送かEメールまたはFAXでお送りください。写真はEメールに添付、またはプリントを郵送してください。郵送の宛先はクイズと同じ。Eメールは1面左上アドレスまで。