被団協新聞

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「被団協」新聞2008年 7月号(354号)

被爆の実態見つめ、原爆症訴訟の全面解決を
長崎地裁でも勝訴 仙台・大阪高裁判決−国が上告断念

 長崎地方裁判所は6月23日、原爆症認定集団訴訟で、原告27人のうち20人勝訴の判決を出しました。7人の訴えは認めませんでした。
  判決は、原因確率論を適用し残留放射線による被曝や内部被曝を無視した審査の方針は審査基準として不適切である、と断じています。

肝障害等認める

 また判決は、「新しい審査の方針」で積極認定の対象外となった肝機能障害の6人全員を認定するとともに、ガラス摘出後遺症、変形性膝関節炎、狭心症なども、幅広く認めました。
  日本被団協などは声明で、国は控訴を断念し「新しい審査の方針」を抜本的に見直すとともに集団訴訟を直ちに全面的に解決すべきである、と主張しました。

高裁判決確定

 国は6月10日、原告が全員勝訴した仙台高裁および大阪高裁判決に対する上告断念を発表し、合わせて11人の勝利判決が確定しました。しかし国は、「他の高裁の判断を仰ぐ」と述べて、全国15地裁4高裁での訴訟はさらに争う姿勢です。

福田総理の決断を

 日本被団協などは6月12日、総理大臣官邸で大野松茂内閣官房副長官と面会。福田康夫総理大臣に対し、新認定基準再改訂の指示と、集団訴訟原告全員を認定して訴訟の全面的解決を図ることについて決断を求める要請書を手渡しました。

第6回協議

 6月3日に行なわれた被団協、原告団、弁護団の3者と厚労省との第6回協議は、2つの高裁判決に従うことと新基準の見直しを求めて被爆者が次々に発言。厚労省側を圧倒しました。

早期解決を要望

 長崎地裁の判決について6月23日、次のような見解が表明されました。
  金子原二郎・長崎県知事(記者会見) 県としては国に対し、被爆者の立場に立った認定制度の運用により、審査の迅速化と問題の一日も早い解決を要望していきたい。
  田上富久・長崎市長コメント 国は今回の司法の判断や被爆者援護法の趣旨を踏まえ、被爆者の立場に立って原爆症認定問題の早期解決に努力していただきたい。
  永田雅英・長崎弁護士会会長声明 (1)国は長崎判決に対し控訴することなく、棄却者を含め原告全員を速やかに原爆症と認定すること(2)全国の裁判所で係争中の全原告について一括全面的解決を図ること(3)厚労省は真の被爆者救済にかなうよう基準を見直すこと。

要求実現へ4項目 日本被団協第53回総会

 日本被団協は、6月10日と11日、東京で第53回定期総会を開きました。全国から100人を超える被爆者が参加。原爆症認定制度抜本改善運動の成果と到達点を確認し、基本要求に基づく運動をいかに作り出していくか、活発な討論が交わされました。

運動の成果を確認

 活動報告では、原爆症認定集団訴訟を中心とする認定制度の抜本改善を求める運動で、世論を盛り上げ、司法と政治を動かして、「原因確率」の事実上廃止となる新基準をつくらせるところまで国を追い込み、大きな前進を勝ち取ったことなどを確認しました。

今年度の取り組み

 運動方針では、4つの運動目標のもとに活動を展開していくことを確認しました。
  (1)「核兵器も戦争もない世界」をめざした活動をより積極的に進め、なかでも核兵器廃絶へ向けての国内外の世論の喚起につとめる。
  (2)国家補償をめざす運動として、基本要求にそって提起した「原子爆弾被害者対策の抜本的改善を求める当面の要求」(06年10月発表)の実現に向けた取り組みをすすめる。原爆症認定集団訴訟の原告全員の認定を勝ち取るとともに、その運動の成果と教訓をくみとり活かすものにする。
  (3)高齢化した被爆者はさまざまな問題をかかえている。国民的な運動と連帯して「健康とくらし、平和」を守る活動に積極的に取りくむ。
  (4)相談活動をふくめて組織問題、財政問題がかかえている難問と向き合って、活動の活性化に取り組んでいく。
  総会は、新年度役員を選出。「決議‐国民へのアピール」と「特別決議」を採択しました。
(討論の一部、役員、各決議要旨を2面に掲載)

国外からの被爆者手帳申請実現へ

 在外被爆者の手帳申請が現地で行なえるようにする、原子爆弾被爆者の援護に関する法律の改正案が、6月11日の参議院本会議で可決成立しました。
  在外被爆者問題は、韓国の郭貴勲さんが提訴し、在外での手当て受給を実現させた大阪高裁の判決(2002年)以後、多くの裁判に勝訴を重ね着実に改善されてきたものの、手帳取得問題は最大の難関として今日まで残されてきました。在外被爆者団体の強い要望と超党派の議員連絡会議の努力、そして原爆症認定制度の見直しをめぐって昨年発足した与党プロジェクトチームの取り組みによって、ようやく実現をみたものです。
  改正された法律の条文は、被団協のホームページで公開中。

第53回日本被団協定期総会決議‐国民へのアピール

〈要旨〉 
  2007年度は、世界平和にとって、注目すべきニュースが相次いだ。キッシンジャー元米大統領補佐官らが、核兵器廃絶を要求する声明をだしたこと。核兵器実験が一度も実施されなかったことなど。世界平和を願う運動の前進を示すものだった。
  しかし、宇宙を核戦場にするミサイル防衛計画が日本政府を含めて進行していること、横須賀の原子力空母母港化が強行されようとしていること、憲法第9条を改悪する動きが執拗に続けられていることなど、日本の平和に暗い影を残す動きを、私たちは見逃すことはできない。
  被爆者運動では、原爆症認定集団訴訟での相次ぐ勝利と、これに後押しされて原爆症認定制度が多くの問題点を残しながらも改正へ前進した意義は大きい。司法を動かし、政治を動かし、行政をも動かしたことに私たちは大きな確信を持った。
  こうした情勢にあって被爆者は日本被団協を中心に結束を強め、足並みをそろえて「憲法が生きる日本、核兵器も戦争もない21世紀を」めざし、運動を続ける。

原爆症認定集団訴訟の全面解決と認定制度の抜本改定を求める特別決議

〈要旨〉 
  日本被団協は、原爆症認定集団訴訟の勝利をめざすとともに、認定制度を被爆の実態に沿った制度に変えるよう全力を挙げてたたかった。全国の支援者が協力し、支え、励ましてくださった。
  この結果、仙台、大阪の両高裁では、原告全員勝訴を勝ち取った。判決は、厚労省が4月から実施した「新しい審査の方針」の枠を大きく超えるものであった。
  世論に押されて、厚生労働省は6月10日、上告断念を発表した。しかし断念はするが、判示のあった疾病を他に援用することについては拒否し、4高裁、15地裁の裁判はつづけると言明した。
  日本被団協はこれまでも、被爆者を距離や入市時間で選別しないこと、積極認定の疾病をがんと白血病に限定せず、広く医学的知見や裁判例で認められた疾病にすることなどを要求している。
  仙台・大阪両高裁判決を機会に、私たちは、改めてこれらの要求の実現を求める。
  そして、305人の原告全員の認定、被爆の実相に即した認定制度への抜本的改革を要求する。

訴訟全面解決求め大行動

 日本被団協と全国原告団、全国弁護団および全国支援ネットは、5月末の仙台・大阪高裁判決をはさみ、集団訴訟の全面解決をめざして多彩な行動を繰り広げました。全国から被爆者、原告、弁護士、支援者が多数参加しました。

パレードと決起集会

 4日午後、日比谷公園を出発した「にんげんをかえせ」パレードは、約200人の参加で国会議事堂まで行進しました。衆・参それぞれの議員面会所では、党派を超えて多数の国会議員が出迎え、請願を受けました。
  続いて開かれた総決起集会(星陵会館)には300人が参加。訴訟の全面解決求めるアピールを採択しました。

座り込み

 6月3〜5日と10〜12日、厚生労働省前にテントを張って座り込みを決行。また5月27〜29日と6月9日〜11日は、首相官邸前で行動しました。

全国会議員に

 衆・参の全国会議員に資料を届け、毎日FAX速報を送信。面会しての要請も行ないました。

院内集会

 6月2日、被団協が呼びかけた院内集会に、各党から15人の国会議員が参加し、運動への激励と決意を述べました。

厚労大臣に面会

 5日には原告らが舛添要一厚労大臣に面会。署名2万人分を手渡して訴訟の早期解決を訴えました。12日には首相官邸で大野松茂内閣官房副長官に面会。署名5千人分とともに福田首相宛の要請書を手渡しました。

各党党首に要請

 日本共産党の志位和夫委員長、社会民主党の福島みずほ党首、国民新党の綿貫民輔代表、新党日本の田中康夫代表、新党大地の鈴木宗男代表に面会し要請しました。

ノーモア・ヒバクシャ9条の会交流会

 被団協総会終了後の6月11日、御茶ノ水のホテル聚楽で「ノーモア・ヒバクシャ9条の会」の全国交流会を開きました。
  冒頭、9条世界会議のシンポジウムにおける吉田一人さんの発言をDVDで上映すると、会場を埋めた約50人の参加者に感動が広がりました。
  1年間の活動報告を受け、各地の動きを交流。9条の運動に被爆者が十分に位置づいていないことが話題となりました。行政の憲法問題への自主規制も目立つなかで、積極的に戦争・原爆の体験を語り、被爆者の願いと9条を結び付けて語り広めていくことの大切さを確認し合いました。

風紋

 ◇…「NHKラジオ深夜便」6月21日午前4時台の「こころの時代」に本紙連載漫画「おり鶴さん」の作者西山すすむさんが登場しました。題して「おり鶴さんの祈り」。
  ◇…大分県で生まれ、長崎三菱造船所で被爆。救援で行った爆心地の惨状に声を詰まらせ、漫画家・被爆者として生きた戦後の辛苦を淡々と語る西山さん。福岡市原爆被害者の会の会長です。
  ◇…「おり鶴さん」は来年で連載30年。毎号アイディアで苦労するけれど「自分の被爆者人生をぶっつけている」と言います。番組の中では、5月号の「おり鶴さん」が西橋正泰アンカーとの会話で紹介されました。

相談のまど 原爆症認定新基準

 【問】このたび認定基準が新しくなったようですが、その中に認定される病気として「放射線起因性が認められる心筋梗塞」とあります。
私は2年前に心筋梗塞と言われて、現在も投薬などの治療を続けています。被爆したのは、広島の皆実町2・2キロです。該当するのでしょうか。
***
  【答】4月から適用がはじまった「新しい審査の方針」で、新たに心筋梗塞が認定の対象となりましたが、厚生労働省からは詳しい説明がありません。また心筋梗塞で認定された被爆者がまだ少なく、「放射線起因性が認められる」ということが具体的にどういうことか、はっきりしません。
  しかし、今度の「新方針」による審査では、原因確率は使われませんので、「近距離」での被爆に限定するなどの線引きは、基本的にはないと思われます。
  「新方針」で積極認定の対象となる被爆状況は次のいずれかとなっています。(1)約3・5キロ以内で直接被爆 (2)原爆投下後約100時間以内に約2キロ以内に入市 (3)100時間を過ぎて、原爆投下から2週間以内に、約2キロ以内に入市後1週間以上滞在。
  この3つのいずれかの被爆状況にあてはまり、現在「心筋梗塞」であれば、「放射線起因性が認められる」として原爆症と認定される、と理解できます。
  現在、当相談所でわかっている心筋梗塞での認定例は、1・2キロから1・3キロで被爆された方です。

ツボはここ 冷房病対策

 7月は、7日が小暑(しょうしょ)、22日が大暑(たいしょ)、24日は土用の丑と、本格的な夏です。日の出は早く、日暮れが遅いこの時期、ついつい頑張ってしまいがちですが、身体のためにはあまり頑張らないことが大事です。
  近年冷房病と言われる現代病に悩む人が、年齢、性別を問わず増えています。手足が冷えると腰にも冷えがまわります。
  夏の冷房病対策に、次のことを心がけましょう。(1)靴下を履くなどして下半身を温かくする (2)入浴時に足首や足の指を回転させ、血液を循環させる (3)ウオーキングなど全身を使う運動を心がける (4)冷たいものをとり過ぎず、野菜は生より茹でたものを食する (5)下肢の内側にあるツボ「三陰交(さんいんこう)」をお灸や指圧で刺激する。お試しください。