被団協新聞

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「被団協」新聞2007年 12月号(347号)

2007年12月号 主な内容
1面「原爆なんて、もうあってはいけない」―全国ですすむ100万人署名
2面被爆者と憲法
中央相談所各ブロックで学習と交流
●非核水夫の海上通信
3面エジプトで原爆展
イタリア3都市で原爆展
広島市が想定-核攻撃で死傷者83万
「風紋」
4面「相談のまど―歯科治療について」

■「原爆なんて、もうあってはいけない」
署名、折り鶴とともに励ましの声

全国ですすむ100万人署名

   12月4日の行動にむけて、各地で取り組みが進んでいます。署名は11月19日現在の概数で、北海道2千、東京1万、神奈川6千、愛知5千、広島1万2千、熊本3千など。折り鶴も続々と届けられています。

 458人分を集めた兵庫県丹有原爆被害者の会の梅垣努事務局長は「会員の85%以上の人が応じてくださり驚きと嬉しさでいっぱいです。毎日のように送られてくる署名に力づけられ、頑張らなくてはと思いました」と報告を寄せています。

 
がんばる原告

 各地の集団訴訟の原告も、積極的に署名に取り組んでいます。
  札幌地裁の原告・加藤政子さんは、足が不自由なため、ご主人が近所を回って署名を集めています。10月の中央相談所北海道講習会に、96人分の署名を持って参加し「今からももっと集めます」と張り切っていました。
  また、岡山地裁の原告・川中優子さんは、11月の岡山での中央相談所講習会の時「今170人の署名を集めました。もっと集めて12月の行動に参加したい」と元気に報告しました。

『原爆のせいだと認めて』

  日本被団協では、被爆者の声を直接届けようと「舛添要一厚生労働大臣への手紙」を集めています。これまでに被団協に寄せられた中から、抜粋して紹介します。
                 *  *  *
  人間の心と命の根本の問題です。非人間的な核兵器の恐ろしさ、苦しさの体験は、私たち被爆者だけで充分です。原爆症認定を希望するのは、お金が欲しいからではありません。私たち被爆者の病気は被爆の故であることは明らかです。認めてください。お願いします。人間だから、人間として。(三重・男性)
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  薬を使わない日を1日でもよいからすごしてみたい。薬を使わない日が来たら、どれほど楽しいことだろうと思う。(宮崎・男性)
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  私どもは、永劫の罰責をうける地獄に居なければならないのでしょうか。(島根・男性)
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  二度と核のない世界へと願いをこめてお願いします。残り少なき人生の私のねがいを。切に切にお願い申し上げます。(佐賀・女性)
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  被爆者と名乗って生きることさえ難しい中で、認定申請することはかなりの勇気がいることなのです。勇気をふるって申請した人達がどれだけ苦しんできたか、お察しいただきたいのです。(石川・女性)

被爆者と憲法

 原爆被爆者が国に、原爆被害への国家補償を要求しているのは、単に原爆による被害者の疾病等に対する「救済」ではなく、米国が広島・長崎に原爆を投下するに至った日本政府の戦争責任の追及と、「ふたたび被爆者をつくらない」という国の証の実現を求めているからであります。
  「ふたたび被爆者をつくるな」は、私たち被爆者のいのちをかけた訴えです。それはまた、日本国民と世界の人々のねがいでもあります。
  今年4月に全国の被爆者の有志が集まり、被爆者運動の支援者とともに「ノーモア・ヒバクシャ9条の会」を結成し、次のようなアピールを発表しました。
  「『政府の行為によって再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすること』を決意した日本国憲法、とりわけ『戦争の放棄、戦力の不保持、交戦権の否認』を定めた9条は、『ヒロシマ・ナガサキをくり返すな』の願いから生まれました。被爆者にとって、生きる希望となりました。その9条がいま、変えられようとしています。戦争への反省と多くの人々の命を忘れ去り、日本はふたたび『戦争する国』になろうとしています。『ノーモア・ヒバクシャ』を願う私たちは、心から訴えます。憲法9条は、絶対に変えてはなりません(抜粋)」。
  9条を守ることは被爆者の基本要求と結びついた大事な運動なのです。

中央相談所 秋の講習会―各ブロックで学習と交流

【岡山】11月1〜2日岡山県児島で中国ブロック講習会が開かれ、230人が参加しました。
  広島の福島生協病院院長斎藤紀医師、日本被団協田中熙巳事務局長、相談所伊藤直子相談員がそれぞれ講義しました。
  斎藤医師は「この間の裁判と集団訴訟にかかわってきたが、それは高邁な理念からではなく、国がまやかしやごまかしで被爆者を切り捨てていることが許せないのです」と話し、日本被団協が原爆症と認定するよう要求している疾病とその根拠を説明しました。
【静岡】8〜9日静岡県日本平で開かれた東海北陸ブロック講習会は、140人の参加でした。
  精神科の中澤正夫医師、集団訴訟名古屋弁護団樽井直樹弁護士、被団協田中事務局長、相談所伊藤相談員が講義。
  中澤医師は「心の問題は統計に出るものではない。一人一人違うし、被爆者はなかなか話してくれない。心の傷は、あの地獄を体験した被爆者全員にあると思うが、体験した人しかわからない。しかし、それでは困る。どう捉え、どうして伝えていくか」と、「心の傷」について語りました。
  樽井弁護士は、原爆症認定制度を改善する運動が今非常に重要なところにあることを訴え、署名を集める意義などを話しました。
【高知】14〜15日高知で開催された四国ブロックの講習会には35人が参加しました。
  集団訴訟高知弁護団の谷脇和仁弁護士、被団協田中事務局長、相談所伊藤相談員が講義。
  谷脇弁護士は「裁判に一つ一つ勝っていくことが大事。裁判を起こしたくても起こせない人がいる。早く制度の改善をさせることが望まれる」と高知での裁判の現状と全国での集団訴訟について話しました。
【大分】九州ブロックの講習会は、19〜20日大分県日出町で開かれ、350人が参加しました。
  1日目、寺内大介弁護士が、原爆症認定制度改善の現状について講演。年明けにも予想される長崎地裁判決で引導を渡そうと呼びかけました。
  斎藤紀医師は「被爆後60年を生きた被爆者の今後の健康管理」と題して講演。「62年経ってもたくさんの病気が放射線に起因していることが明らかになっている。被爆者は検診を受けて早く対策をしていくことが大事」と話しました。
  このほか被団協田中事務局長、相談所伊藤相談員も講義。
  2日目は、相談活動、医療・健康問題、被爆者運動と二世問題、体験の継承の4分科会に分かれて討議・交流がおこなわれました。

エジプトで原爆展

 今年の国連軍縮週間に合わせて10月23〜28日、エジプトの首都カイロを中心に原爆展とセミナーが開かれ、日本からの代表団に日本被団協の岩佐幹三事務局次長が参加しました。この企画は、日本原水協の申し入れによりエジプト政府の後援で実現したもの。以下岩佐さんからの報告です。

  カイロの公立図書館ムバラクセンターでの原爆展のほか、カイロ大学の学生たちとのセミナー、原爆展開会を記念してのパネル討論、外交官研修所での新任外交官への講演、中学生との対話などが次々と開かれました。これらの企画には、エジプト側からも外交問題評議会議長や外務次官等が参加し発言。会場から、原爆被害の実態や核抑止論の現状、被爆者の米国に対する責任追及についてなど、鋭い質問もあり、驚かされました。
  現地では、広島を訪れたことがある元外務次官アブデルモネム氏が準備段階から中心となって尽力くださり、おかげで原爆被害の実相を訴え、核兵器廃絶への願いを伝えるという目的を効果的に果すことができました。
  エジプトは、新アジェンダ連合(国連総会第1委員会で核兵器の廃絶を求める決議案を、98年からほぼ毎年提出している非核保有国7カ国)と非同盟運動の二つのグループで指導的役割を果しており、中東の非核兵器・非大量破壊兵器地帯を提唱するなど、国際政治において重要な役割を果している国です。アメリカの基地を抱え込んでいる我が国と比べて、羨ましさを覚えずにはいられませんでした。

 

イタリア3都市で原爆展 現地在住の日本人が活躍

 10月下旬から11月上旬にかけて、イタリアの3都市で原爆展が、5都市でシンポジウムなどが開かれ、日本から、被爆者で名古屋大学名誉教授の沢田昭二さん、立命館大学国際平和ミュージアム館長の安斎育郎さん、被爆二世で高知市平和資料館の山根和代さんが参加し、証言や講演をしました。
  ローマ、マネルビオ、ポリデノーネ、ベルガモ、ミラノの各会場には、中学生、高校生、大学生をはじめ多くの市民が訪れました。
  イタリア在住の横田早苗さん、西村重雄さん、山田真喜子さんらの企画により、自治体などにも大胆に働きかけて、約1年間の準備を重ねて実現したもので、今後の継続、発展も期待されます。

 

核攻撃で死傷者83万 広島市が想定

 広島市国民保護協議会の専門部会(部会長=葉佐井博巳・広島大名誉教授)は、広島が核攻撃を受けた場合、死傷者は6万‐83万人に上るとの被害を想定した最終報告書を10月31日、発表しました。報告書は「市民を守るには核廃絶しかない」と強調しています。
  報告書は、広島市が核攻撃されたときの被害を4通りの場合で試算。1メガトン級の水爆の場合では、死者37万2千人、負傷者46万人、爆心地から0・9キロ以内で屋外にいた人は放射線だけで全員が死亡すると想定しています。

  国民保護計画は「武力攻撃事態等における国民保護法」に基づく「国民保護基本指針」「国民保護モデル計画」によって地方自治体に策定が義務づけられています。核攻撃を受けた場合の対策も含まれており、すでにほとんどの自治体が策定を終えています。
  国民保護法が審議された04年4月の衆院特別委員会では石破防衛庁長官が「広島や長崎の爆心地近くでも生き残った方がたくさんおられる」と原爆被害の実態を無視した答弁をしました。政府は05年3月、核攻撃を受けた場合は「手袋、帽子、雨ガッパ等によって放射性降下物による外部被ばくを抑制する」という、核被害を極端に軽視した「国民保護基本指針」を閣議決定しています。
  広島市は「基本指針」「モデル計画」には核攻撃による具体的な被害想定やそれに基づく対応策が示されていないことから、人類史上最初の被爆都市の使命として市国民保護協議会に核兵器攻撃被害想定専門部会を設けて独自に被害想定を研究してきました。核兵器被害を自治体独自で想定したのは全国で初めて。
  専門部会の報告書は結論として「核兵器攻撃から市民を守ることはできず、市民を守るためには核兵器攻撃の発生を防止する他に方策はなく、そのためには、唯一、核兵器の廃絶しかない」と指摘し、「核兵器廃絶に向けて広島市が果たすべき役割は極めて大きい」と強調しています。
  報告書は「ふたたび被爆者をつくるな」と訴えている被爆者運動にとって大きな励ましになるものです。

<風紋>

○…米とロシア、核大国の国民は核兵器廃絶を望んでいるのだろうか。米メリーランド大学などが世論調査をしました。
  ○…「検証体制が確立された場合、核兵器全廃への合意を支持するか」との質問に米国で73%、ロシアで63%が「支持する」と答えています。また「自国政府の核廃絶努力の強化を望む」人は、米で79%、ロシアで66%にのぼりました。
  ○…「核兵器の臨戦態勢解除」についても、検証体制の存在を条件に、米国の64%、ロシアの59%が支持を表明しています。米国は核先制攻撃戦術を捨てていませんが、国民の多数はそれを支持していないのです。
  ○…「核戦争起こすな核兵器なくせ」という被爆者の訴えは、核大国の国民の中にも、じんわりと染み込んできているのですね。

相談のまど

 【問】今年の初め頃に虫歯の治療で、歯に金属をかぶせました。最近これが取れてしまったので、同じ歯科に行ったところ「同じ部位の治療の場合、2年経たないと保険は使えない」といわれました。これはどういうことでしょうか。
*  *
  【答】歯科治療の診療報酬は、虫歯にかぶせ物をした場合、確かに「2年以内に同一部位の治療を同一の歯科医で行なう時は、保険は使用できない」ということになっています。それは歯科医に対して「2年間は再治療の必要がないように治療しなさい」ということでもあるわけですが、あなたの場合、同じ歯科医では保険は使えないということになります。
  保険が適用されないと、被爆者健康手帳による公費負担も受けられず、治療費はすべて自己負担になります。
  しかし「同一の歯科医」でなく、別の歯科医にかかれば、保険を使って治療を受けることができます。
  このように「2年以内」で保険が適用されなくなるのは、虫歯にかぶせ物をしたときだけで、詰め物の場合は、2年以内でも保険が使えます。
  歯科治療の場合、インプラントや保険適用外の材質の入れ歯のように、保険を使わない治療もありますので、確認をして治療を始められることをおすすめします。