被団協新聞

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「被団協」新聞2004年 7月号

2004年7月号 主な内容
 
1面日本被団協定期総会
中央相談所が総会
2面集団訴訟のうごき
平和市長会議の2020ヴィジョン
●「非核水夫の海上通信」
3面都道府県だより
●被爆者・青年トークトーク
4面相談のまど「被爆者手帳と原爆症認定」

日本被団協第49回定期総会開く

 日本被団協は6月8日と9日、東京・日本青年館で第49回定期総会を開き、40都道府県から参加した110人が熱心な討論のすえ新しい運動方針を決めました。
  総会一日目は安原幸彦弁護士から特別報告「東原爆裁判の勝利判決と集団訴訟」を受けました。つづいて、岩佐幹三事務局次長が活動報告。健康管理手当の更新手続きの前進、東訴訟の東京地裁の勝利、集団訴訟運動の広がりなど、被爆者が高齢化してもがんばったことを強調しました。
  二日目は、田中煕巳事務局長が2004年度運動方針を提案。「被爆60周年にあたる2005年に向けての運動は被爆者の総力を結集した運動になる」として、国連での原爆展、国際市民会議、集団訴訟の三つの課題に取り組むこと、「原爆被害聞きとり・語りつたえ運動」などみんなができる行動を発展させることを提起しました。
  討議では、「被団協新聞を会員以外に100人が読んでいる」(静岡)、「杉並区の助成を受けて区内の被爆者四百人の調査をした。郵送のほか、一軒ずつ訪ねて58%の回答をえた」(東京)、「語りつたえ運動で県庁に助成を要求、県は厚労省に要求した。被団協も要求してほしい」(千葉)、「230の学校に証言活動の文書を送ったら20校から要請がきた。これまで語ったことのない人にいってもらおうとお願いしている」(福岡)など各地の運動が紹介されました。
  また、「被爆60周年に2000人の被爆者集会、全国の学校に体験記を送るなど、大運動を」(埼玉)「北朝鮮問題をめぐる6カ国協議の機会に、被団協から6カ国の非核化申し入れを」(三重)と積極的な提案もありました。
  活動報告と方針、予算を承認し、役員を選出。総会決議と特別決議「原爆症認定制度の抜本的改革を求める」を採択。「原爆許すまじ」を全員で合唱して閉会しました。

元気に中央行動

 日本被団協は6月10日、総会出席の各県代表と首都圏の被爆者85人が参加して中央行動をおこないました。
  核武装検討を主張している議員を訪ね、公開質問状に回答を要求。応対した秘書の多くは「先生の真意でない」などとのべ回答を約束しました。
  民主党(海江田万里議員ほか)、共産党(山口富男議員ほか)、社民党(阿部知子議員ほか)、公明党(斉藤鉄夫議員ほか)と厚生労働委員会所属の議員には、国家補償を明確にした法改正などへの協力を要請しました。
  各省交渉は防衛庁(別項)、外務省、厚生労働省と交渉。厚労省は健康局総務課の仁木壮課長が出席し、「被爆の影響が否定できない疾病はすべて認定を」などの要求は拒否し、被爆六十周年で実態調査を実施する、墓参などの助成を検討したいとの考えをしめしました。

防衛庁に抗議

 石破茂防衛庁長官が「爆心地近くでもたくさん生き残った」と発言した問題で、日本被団協の坪井直代表委員らが中央行動の中で防衛庁を訪ね抗議しました。被団協と防衛庁の会見は初めて。
  防衛庁は文書課請願担当の緒方康人係長らが対応し「長官の発言は被爆者を軽視したものではない」などと釈明しました。被爆者はながながしい釈明を途中でさえぎって「爆心間近で被爆した私の家族はすべて亡くなった。長官発言の根拠は何か」(米田チヨノ東友会副会長)など口々に語り、「被爆者は怒っている。長官発言は断じて許さない」と訴えました。

集団訴訟の動き

 新しく6人の提訴があり、原爆症認定集団訴訟の原告は16都道府県11地裁で144人となりました。提訴は、今後も次々と予定されています。

ビデオ上映決まる

【長崎】5月25日、第7回の口頭弁論が開かれ、原告の近藤勲さんが被爆後の健康状態などについて意見陳述、弁護側は「原因確率」の非科学性を指摘しました。
  原告側が申請してきたビデオ「ヒロシマ ナガサキ 核戦争のもたらすもの」は、地裁が採用を認め、次回弁論で法廷内上映されることになりました。

新提訴で公判頻繁に

【北海道】6月14日に、安井晃一氏、館村民氏、柳谷貞一氏の集団訴訟および加藤政子氏の第6回口頭弁論が開かれました。
  弁護団は東京地裁の東判決、最高裁の松谷判決を引用し、被爆の実相を理解するとともに、未曾有の凄惨な被害にあった被爆者の身になって判断をするように強調しました。
  6月9日には新たに星野禮子氏が提訴し、公判は毎月開かれることになりそうです。

遺族が思いを陳述

【静岡】6月4日、第1回口頭弁論が開かれ、死没者原告の遺族から、亡き父の無念の思い、継承した家族の気持ちが述べられました。
  続いて、弁護団はもう1人の原告が現在入院中で食事が喉を通らず点滴を受けている現状を報告、臨床尋問などをしてほしいとの意見を述べました。

三人が新たに提訴

【名古屋】6月17日、第6回口頭弁論に先立ち、3人の被爆者が追加提訴しました。記者会見では原告の話に迫力があり予定時間を上回りました。
  弁論では前回延期された投影機を使っての説明がどうなるかが注目されましたが、今回も投影は見送り。ただし、裁判長から「双方の争点整理の説明会で行うことを検討している」との発言がありました。これは、抗議ハガキなど裁判支援運動の成果といえるでしょう。

スライド使い反論

【熊本】6月18日に行われた第6回弁論では、弁護側がスライドを使って「原因確率」について反論しました。スライドは図表などが豊富にで示され、裁判官にも傍聴者にもわかりやすいものでした。
  裁判後の報告集会では、熊本県被団協谷口清美会長が、「自分も近く申請し、却下されたら訴訟に入る。国の被爆者行政の姿勢を正すたたかいに力をあわせていきましょう」と締めくくりました。

法廷でVTR上映

【大阪】6月23日の第7回口頭弁論では、NHKスペシャル「十秒の衝撃」というVTRを編集し直し、上映しました。
  前回弁論から裁判長が交代していますが、報告集会で弁護団からは、「人間らしく対応してくれる裁判長だ」という評価が聞かれました。

放射線問題で記念講演

【広島】「原爆症認定を求める集団訴訟を支援する広島県民会議」(代表世話人・田村和之龍谷大学教授)は、6月12日アステルプラザで第2回総会を開催、71人が参加しました。
  総会では、「低線量・内部被ばくなどについて」と題して、沢田昭二名古屋大学名誉教授(理論物理学)が記念講演。 「原爆投下に発生した放射性微粒子などが、口からちりやほこり、食物として体内に入り込み、残留放射線を受け続ける内部被ばくの影響は深刻になりつつある」と述べました。
  また、放射性降下物(黒い雨、ちり、ほこりなど)の原爆被害を無視または過小評価した現行の認定基準を批判。「被爆の実相とかけ離れた被爆者行政を正し、国際法を無視した核兵器の存在と、非人道的な核兵器の残虐性を明らかにして、被爆60年を核兵器のない世界への転機にしよう」と訴えました。
  田村代表は総会で「会員を増やし支援を強化しよう」とあいさつ。原告団の重住澄夫団長が「広島で必ず勝利したい」と決意を表明しました。

 「集団訴訟運動を支援する全国ネットワーク」では、好評をいただいている「焼き場の少年」のポスターを増刷しました。今後の集団訴訟の取り組みにぜひご活用下さい。ポスターの申し込みは、全国ネット事務局(電話03-3438-1897)まで。