被団協新聞

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「被団協」新聞2002年 7月号(282号)

2002年7月号 主な内容
 
1面日本被団協定期総会
原爆症認定−人生かけて訴える(2)
2面定期総会(続き)
●「核かくしかじか」
3面中央行動内容
都道府県だより
●被爆者・青年トークトーク
4面相談のまど

日本被団協第47回定期総会−中央行動

 日本被団協は6月6日、全国から100人以上の参加で政府・省庁、政党、大使館等に向けた中央行動を行ないました。
  中央行動は、総会で決めた運動方針を実践する最初の場。4、5日に開かれた日本被団協総会でも原爆症認定集団訴訟運動とならんで批判の意見が多数出た官房長官らの非核三原則見直し発言や有事法制などに対し、首相官邸前で抗議行動。被爆者の怒りをぶつけました。

 改築中の官邸前は狭く、警備も厳重でしたが、被爆者50人余が結集。拡声器の使用が許されないため肉声で日本被団協の抗議文を読み上げ、各県の代表が声をふり絞って訴えました。
  「5人の子がいるが、ガンや甲状腺機能障害で苦しんでいる。私の被爆が原因ではないかと不安でいっぱいです。それでも核兵器が違法ではないというのですか」と涙を浮かべながら訴えた北海道の越智晴子さん、「私は21回(うち3回はガン)の入退院をくり返している。いまの政治を見ていると『いつか来た道』だ」と身を震わせた熊本の谷口清美さん――訴えが始まると、警備で騒々しかった官邸前が一瞬静まりかえりました。
  長野の前座良明さんは「首相も官房長官も戦争の本当の悲惨さや原爆被害の実態を知っているのか。何が有事法制だ」と一喝。愛知の殿原好枝さんも「病身を押して上京したのは、首相と官房長官にひとこと言いたかったから。国是を否定したり有事法をつくるのではなく、憲法九条を守ってください」。毅然として訴えました。
  被爆者の迫力ある訴えの前に、抗議文を受け取りにきた秘書官も立ち去りかねる様子でした。
  新潟の板垣幸三さんは「被爆国の高官が非核三原則を否定するような発言をするなど被爆者を侮辱するものだ」と怒りをあらわにし、千葉の青木茂さんは「被爆者の実情も知らないで簡単に非核三原則見直しを言うなど官房長官失格だ」と迫力あふれる抗議。
  最後に、参加者全員で官邸に向けてシュプレヒコールをあげ、被爆者の思いをぶつけました。

総会内容

 日本被団協第47回総会が6月4、5日、東京で開かれ、43都道府県から120人が参加。活動報告、運動方針と予算を採択。新役員を選出し、三つの決議を採択して閉会しました。
  山口仙二代表委員のあいさつに始まって、熱のこもった総会でした。原爆症認定で国の姿勢を改めさせる集団訴訟運動について、支援態勢の作り方や中央の指導強化など多くの発言がありました。有事法制、非核三原則見直し問題で、各地の代表が原爆被害体験者の立場から強い危機感を表明したのも特徴です。

活動報告

 活動報告は、岩佐幹三事務局次長が提案。同時多発テロ以後、報復戦争やアメリカの核戦略見直しなど好戦的な情勢のもと、それに対応した活動を報告しました。
  被爆の実相普及委員会を再開し、証言活動の進め方、国連原爆展、核兵器の犯罪性を裁く市民会議などを推進。「テロと報復反対、核兵器なくせ」の行動や核戦略見直しに抗議行動。米、国連、ギリシャ、アイルランドへ遊説・実相普及を行ないました。被団協は国連NGOに登録、国際的活動の舞台を広げました。
  国家補償をもとめる運動は関連団体と連帯して行動。集団訴訟運動を提起し、推進委員会設置などをすすめました。

運動方針

 2002年度運動方針は田中煕巳事務局長が提案。有事法制立法化に直面して、被爆者の役割と運動の重要性を強調しています。国際市民会議(「法廷」を「会議」に変更)を2005年開催に向け推進、「核兵器廃絶の明確な約束」実現のため国連を舞台にした実相普及、集団訴訟運動などを重点に取り組みます。
  集団訴訟運動については山本英典代表理事が、経過と今後の日程について特別報告。7月9日のいっせい申請に向けての取り組みが、各地から報告されました。
  総会で採択された決議は、「決議」「特別決議=非核三原則の見直し発言に抗議する」「特別決議=原爆症認定の集団申請、集団訴訟を成功させよう」の三本。アメリカの臨界前核実験への抗議も確認されました。

被爆者中央相談所総会

 被爆者中央相談所の第25回定期総会が6月4日、東京で開催され、正会員63人が出席しました。
  総会では、肥田舜太郎理事長が「ふたたび戦争の道を歩まないと決意したことが切り崩されようとしている。被爆者として、再び被爆者を作るなと元気に声をだしていこう」と挨拶。事業報告、会計決算、監査報告、事業計画、会計予算は満場一致で採択されました。
  総会では、とくに集団訴訟運動について各地から取り組みを報告。いままで「自己規制」をしてあきらめていた人たち、「このままでは死に切れない」と思っている人たちの思いを受け止めていくことが重要だということが強調されました。今年度は役員の改選はありませんでした。

<6月6日の中央行動>

厚生労働省交渉

 厚生労働省には6月6日午前、総会に参加した各県代表約10人が訪問。被団協から田中煕巳事務局長が要請書を読み上げ約1時間交渉しました。厚労省側は健康局総務課の岡山幸平課長補佐が回答しましたが、要請をすべて拒否。参加者からは「木で鼻をくくったようで話にならん」「過去の話し合いの積み上げを無視した態度は不当だ」など怒りの声が出ました。要請は7項目ですが、主な問答は次のようです。
  ▽国家補償の立場で援護施策をすること=現行法制定の過程で論議をふまえて前文ができた。国家補償は考えない。
  ▽被爆の実状と現在の疾病の実状に合った原爆症認定を。すべてのガンを原爆症と認定せよ=放射線による起因性について、個人の状況を勘案して審査している。健康管理手当は「相当程度の蓋然性」でよいが原爆症認定は「高度の蓋然性」が必要。すべてのガンを認定することはできない。
  ▽医療検討会に被団協が推薦する委員を参加させよ=専門性、中立性がもとめられるので、外部団体の推薦は受けない。

外務省

 外務省は、軍備管理・軍縮課の古谷主席参事官が対応。非核三原則問題では「当課としては見直すことは考えていない」と回答。核兵器廃絶の努力については「米大統領が変わってきびくなった」というだけでした。国連での原爆展については「関心はある。側面から何かの援助ができないかと考えている」との回答。しかし、政府として被爆の実相普及の具体策はないようでした。

政党要請

 民主党は、山本たかし議員と高木義明議員が対応。非核三原則問題では、すでに持ち込みの既成事実があるので難しい問題だと回答。
  日本共産党は、佐々木憲昭、井上美代、小池晃の三議員が対応。集団訴訟、非核三原則問題、有事法制など、被爆者の要求を受け止めて対応する旨、三議員からそれぞれ発言がありました。
  社民党は、金子哲夫議員が対応。在外被爆者問題は議員懇談会で努力中、国連での原爆展は賛成だが、日本政府にやらせたいと発言しました。
  公明党は、担当議員が不在のため党本部市民活動委員会の山田修生部長が対応。与党であり、厚生労働大臣を出している党として被爆者の要求を受け止めて欲しいとの要請に、「代表に伝える」と回答しました。

アメリカ大使館

 米エネルギー省は6月7日(日本時間8日)、通算17回目の臨界前核実験を強行しました。
  核実験の予告があった6日、日本被団協は中央行動に参加した全国の被爆者代表ら15人がアメリカ大使館に「核実験やめよ」と抗議。日本被団協や東友会などの抗議文を手渡し、宮城や静岡の代表が被爆者の思いを訴えました。
  緊張の度合いを深める核保有国のインドとパキスタン両大使館に「核兵器使うな」と要請しました。それぞれ参事官が対応に出て「核廃絶の思いは同じ」と発言。「ならば話し合いで解決せよ」と、被爆者の願いを強く申し入れました。