被団協新聞

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「被団協」新聞2001年 7月号(270号)

2001年7月号 主な内容
 
1面日本被団協第46回総会報告
在外被爆者裁判勝訴
2面中央相談所第24回総会
●「21世紀 被爆者宣言」
3面中央行動で120人が要請
各地で平和行進
●「核かくしかじか」
4面相談のまど

日本被団協第46回総会ひらく

 21世紀最初の日本被団協第46回定期総会が6月4、5の両日、東京・水道橋のグリーンホテルで開かれ、全国42都道府県から120人が参加しました。
  総会は、山口仙二代表委員の力強いあいさつではじまり、活動報告、運動方針などについて2日間にわたり熱心に討議。「21世紀 被爆者宣言」と、 郭貴勲判決への控訴断念 など二つの 決議 を採択し、閉会しました。

活動報告

 「2000年度活動報告」は山本英典事務局次長が提案。日本被団協が四度目のノーベル平和賞候補に推薦されたように、被爆者の運動が内外で大きく注目されてきたことが報告されました。
  「原爆と人間展」パネルを950セット普及し、新たに230セットを製作、被爆の実相普及に全力を上げていること。昨年8月の「世界のヒバクシャ連帯集会」、11月の「地球市民集会ナガサキ」などで他団体との連帯・交流が広がったこと。国際的には、昨年5月の核不拡散条約(NPT)再検討会議での「核兵器廃絶への明確な約束」の合意達成に貢献、アメリカやドイツ、南アフリカなどへ遊説活動を行なったこと。松谷裁判、京都裁判での勝訴を教訓に、東京・東、北海道・安井の両裁判の勝利をめざす運動、「すべてのガンを認定」させる運動など、多彩な活動に取り組みました。
  また、藤平典長期活動展望委員長から、各地の活動調査の報告がありました。

運動方針

 「2001年度運動方針」は、田中煕巳事務局長が提案。日本被団協結成45周年の今年、21世紀の早い時期での核兵器廃絶の実現をめざして、国の内外で大きな世論をつくり出す運動が提起されました。
  被団協がよびかけて、2005年をめどに「核兵器の犯罪性を裁く国際市民法廷」の開催準備をすすめます。
  「原爆と人間展」や「聞き書き・語り残し」運動など被爆の実相普及を強化し、非核・平和宣言自治体を巻き込んだ運動をめざします。核兵器廃絶を求める広範な運動と連帯した集会の開催に取り組みます。
  結成45周年記念事業として、核保有国などへの要請行動・遊説団派遣を推進。「核兵器廃絶の明確な約束」の実現を強く迫ります。
  原爆被害への国家補償の実現をめざして、現行法が「国家補償」になっていない事実を国民に広く知らせ、国への働きかけを強めます。また東海・北陸ブロックから、現行法成立の運動を「総括」することの意義と重要性を三重の嶋岡会長が訴え、了承されました。
  最後に、「21世紀 被爆者宣言」 を採択。新役員を選出して閉会しました。

在外被爆者裁判 郭貴勲さんが勝訴

 韓国人被爆者の郭貴勲さんが、帰国後も健康管理手当の支給継続を求めていた裁判で、大阪地裁は6月1日、郭さんの主張を認める判決を下しました。
  判決は、現行の「原子爆弾被爆者にたいする援護に関する法律」には受給資格について国籍、居住地等による制限は何も書かれておらず、法文どおりに支給するよう明快に結論づけました。
  日本被団協はこの判決を支持。国が控訴しないことを求めた「特別決議」を5日の総会で採択し、ただちに関係省庁に申し入れました。全国からはファックスなどで「控訴するな」の要請が寄せられ、12、13日には支援団体の協力も得て、首都圏の被爆者が厚生労働省前で座り込みを行ないました。 原爆裁判

国側が控訴

 国側(主管=法務省)は控訴期限の6月15日、被爆者や支援者の願いを踏みにじって大阪高裁に控訴しました。
  当該省庁としての厚生労働省は同日、坂口大臣が記者会見して控訴理由を説明。日本被団協はただちに「冷酷な控訴」と抗議声明を出しました。

中央相談所第24回定期総会

 (社)被爆者中央相談所の第24回定期総会が6月4日、東京で開かれ、全国の正会員60人が参加しました。
  午前11時からの総会では、「高齢化して困難が増す中、心と頭を強くしていくことが相談事業の課題」と肥田舜太郎理事長があいさつ。つづいて藤平典日本被団協代表委員が「夢があれば人生に『余生』という言葉はない。夢をもって頑張ろう」とあいさつ。高橋健常務理事が事業報告を、田中煕巳常務理事が会計収支報告を、楠本熊一・杉山秀夫の両監査からは業務・会計監査の報告が行なわれ、質疑の後採択されました。
  午後には、肥田理事長から事業計画、田中常務理事から収支予算を提案。討議では、被爆二世対策の全国化や被爆者検診の充実などの意見が出されました。さらに保健所の統廃合によって、検診を受けに保健所に行くことが困難になっている状況も報告されました。
  肥田理事長は、「被爆者が高齢化して、ほとんどが医療機関で診察を受けている。そこで必要な検査を受けるなど、被爆者検診にだけ頼るのではなく、被爆者が検査について知識をもつことが大事。被爆者検診を医療機関にも広げるよう要求したい」と答えました。
  最後に新役員を選出して閉会しました。

総会後の央行動

 日本被団協は総会後の6月6日、政府、政党、核保有国大使館への要請を行ない、120人の被爆者が参加しました。
  厚生労働省と法務省にたいしては「在外被爆者への援護法の適用を認めた大阪地裁判決に控訴するな」を中心に要請。外務省には「核兵器廃絶への明確な約束が一日も早く実行されるよう日本政府は関係国に働きかけよ」と。文部科学省には「核兵器容認の教科書ではなく、核兵器廃絶を明確にした最良の教科書を」と要請しました。
  この日応対した政党は、民主、共産、社民、保守の各党。認定基準の問題などで要請しました。緊急の課題として、郭貴勲裁判の判決に控訴させるなと、「在外被爆者に援護法適用を実現させる議員懇談会」「韓国の原爆被害者を救援する市民の会」と共同行動。坂口力厚生労働大臣をはじめ民主、公明、共産、社民、自由、さきがけの各党の党首、幹部クラスと懇談しました。
  大使館要請では、中国、フランス、インド、ロシアの四カ国が応対。被爆者の代表が核兵器廃絶の努力を求めたのにたいし、中国は「核兵器は自衛のため。先制使用はしない」と強調。フランスは従来の「抑止力」をくり返し、インドは「核武装は自衛のため。けっして使用しない」と発言。ロシアは「アメリカと削減の話を進めている」としつつも、廃絶の約束についてはコメントを避けました。
  それぞれ、要請の主旨を大使と本国政府へ伝えると約束しました。

議員懇が対応を検討

 6月6日に国会内で会合を開き郭貴勲裁判の大阪地裁判決に国側を控訴させない取り組みを確認した「在外被爆者に援護法適用を実現させる議員懇談会」は、15日に国側が控訴したため19日に緊急の会合を開き、今後の国会内外での活動を検討。厚生労働大臣が言及した「現行法の見直し」についても、「控訴しておいて『見直す』というのは、悪い方向での見直しになりかねない」と懸念が相次ぎました。