被団協新聞

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「被団協」新聞1999年 10月号(249号)

1999年10月号 主な内容
 
1面東海4県の会が「福祉事業」の具体化を要求
広島、長崎で要請
原爆松谷裁判
在外被爆者が署名活動
2面感動呼んだ「広島宣言」 相談所の講習会始まる
3面インド、南アフリカで原爆展
「世界の子ども像」をつくる会、募金始める
4面相談のまど「介護保険」

国と県は「福祉事業」を具体化せよ

 静岡、愛知、岐阜、三重の東海四県の被爆者の会は8月29日、名古屋で代表者会議を開き、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」にある「福祉事業」が、法律施行後四年も経っているのに、さっぱり具体化されないことを問題にし、国と県と議会に、具体化を求める要請を行なうことを決めました。
 また、介護保険制度の介護保険料の軽減と国庫負担の増額、被爆者にたいする介護利用料軽減も求めることにしました。  現行法の第38条は、日常生活に支障のある被爆者に、居宅や施設で入浴、排泄、食事についてのサービスや短期間の養護を受けさせる事業を、都道府県が実施することができるとあります。
 第39条では、養護施設に入所して必要な養護を受けさせることもできると定めてあります。
 しかしこれが実施されているのは広島、長崎の四県市だけ、他県の被爆者は放置されています。
 厚生省に具体化を求めると「都道府県が実施したいといわないから」といい、都道府県に迫ると「国が予算をつけないから」といって、らちがあきません。このため東海四県の被爆者の会は、国と県への同時要求に踏み切ったものです。
 介護保険料の軽減と国庫負担の増額要請は、日本被団協が全国によびかけており、東海四県もこれをうけて要請するとともに、さらに介護利用料の軽減もあわせて要請することにしたものです。
 国への要請は地元議員への要請を基礎に中央行動でつめ、県への要請は県議会の協力を得て押していくことにしています。

広島被爆7団体に首相が確約 「介護保険不利にはしない」

 広島では8月6日の平和祈念式典後、小渕恵三首相による「被爆者代表から要望を聞く会」が行なわれました。広島県被団協の伊藤サカエ理事長ら被爆7団体は、23項目の要望を出し、実現を求めました。
 要望書は冒頭で、「被爆者援護対策は、国家補償にもとづいてなされるべきです」とし、現行法の「早急な改正・改善と、被爆者および遺家族の救済」を要望しています。介護保険制度については「被爆者に新たな負担が生じることがないよう」求めています。  首相は要望にたいし、「個別補償は困難」「国内に居住または滞在している被爆者」なら給付が可能など、これまでと同じ回答をしました。
 介護保険制度では「被爆者に新たな負担が生じたり不利にならないようにする」とのべました。

長崎では厚相に陳情

 長崎では8月9日の祈念式典後、宮下創平厚生大臣に長崎被災協の葉山利行会長ら被爆五団体が9項目を陳情しました。  第1で、「核兵器廃絶と原爆被害への国家補償を」を要求。第2では「被爆地域の不合理是正」「適正な原爆症認定作業の実現」「手当の更新手続きの改善」「在外被爆者への現行制度の適用」などの実現を求めました。
 宮下厚相は、国家補償や定制度是正には「むずかしい」とのべるにとどまり、介護保険制度については「実施にあたり、現在の被爆者援護措置よりとくに不利な取扱いとならないよう配慮する」などとのべました。

原爆松谷裁判 最高裁へ要請署名

 原爆松谷裁判ネットワークは、9月21日、国の上告を一日も早い棄却を求めて、9回目の最高裁前ビラ配布と要請行動を行ないました。
 配布したのは、「原爆松谷裁判全国支援ニュース」第2号で、これには33人の著名人の支援・激励のことばと、日本キリスト教矯風会の上申書が掲載されており、支援の広がりを示すものとなっていました。
 この日提出された個人署名は23,600人分で、累計で434,090分。団体署名は75で累計4,975。上申書は23通で累計401通です。 最高裁第3小法廷の松谷裁判担当裁判官はこのほど二人が交代しました。

在外被爆者が署名活動

 在外被爆者への「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」の適用を求めている韓国、アメリカ、ブラジルの被爆者たちが、日本政府・外務大臣と厚生大臣、それに大阪地裁と長崎地裁に、現行法の適用を求める署名運動を始めました。  在外被爆者が日本国内法の適用を求める署名運動にとりくむのははじめてで、被爆以来放置されてきた在外被爆者の要求の強さと思いの大きさを示すものとして注目されています。
 韓国被爆者の署名は、第1項に「在韓被爆者は、日本の植民地支配の結果原爆被害を被ったという歴史的事実を正しく認識すること」という、韓国人被爆者ならではの要求をかかげています。
 アメリカ、ブラジルの署名は「日本政府から平等に援護を受ける権利を有している」ことの確認と、「すべての被爆者に『被爆者援護法』を適用する道を開くこと」を要求しています。
 署名簿は、10月22日に日本被団協が行なう四カ国共同行動のさい、各国被爆者代表から政府に提出される予定です。

インド、南アフリカ「原爆と人間展」に反響

 海外に贈られた「原爆と人間展」パネルが活躍しています。
 ふくしま生協と愛知平和委員会からインド平和・軍縮・環境保護研究所に贈られたパネルが、8月6日から9日までナグプール市の中央文化センターで催された平和展で展示され、一般市民と学生が多数参観しました。
 英字および現地語の有力新聞各紙は好意的にとりあげ、州のテレビニュースでも平和展の模様を報道してくれました。
 同研究所代表のバルクリシュナ・クルベイさんは、「会場に置いた感想ノートを見ると、インドの人々が通常兵器と原爆の違いを知らなかったのがよくわかる。インドのような発展途上国でこのような展示を広げる必要性を強く感じています」と語っていました。

パグウォッシュ会議でも

 南アフリカ共和国のルステンブルグで第49回パグウォッシュ会議が開かれました。
 この会議に、名古屋大学名誉教授の沢田昭二さんが寄贈した「原爆と人間展」パネルが特別展示されました。
 会議の冒頭にマリー・ミュラー会議委員長が、「しっかりと展示をみるよう」参加者に促し、会議終了後も「南アの各地で展示される」と発言。
 来年の会議開催地イギリスの科学者グループは、ぜひケンブリッジの公共図書館で展示したいと意欲的でした。