被団協新聞

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「被団協」新聞1998年 11月号(238号)

1998年11月号 主な内容
 
1面健康管理手当手続き廃止せよ
在外被爆者問題
2〜3面米の臨界前核実験に抗議
各地で相談所講習会
愛知の高校生が被爆者訪問
別府原爆センターに児童がお見舞い
4面相談の窓−健康管理手当

健康管理手当の更新手続き廃止せよ

 日本被団協は10月5日、厚生省保健衛生局企画課の高山康信課長らと「緊急三項目」要求についての交渉を行ないました。

 この三項目は、健康管理手当の更新手続きの廃止、被爆者のガンを原爆症と認定すること、在外被爆者に制度を適用することを求めるものです。

 伊藤直子相談員から、健康管理手当の更新手続きが8月から簡素化されましたが、現場では混乱が起きていることが報告されした。厚生省様式どおり8月から実施されたのは岩手と長野の2県しかなく、千葉、石川、福井、長崎では新様式を使用しないと決めているなどの説明があり、「高齢被爆者のために簡素化がはかられたはずだが、実際には混乱と複雑化をつくりだしている。65歳以上の高齢者と固定疾患については更新手続きを廃止するしかない」と要求しました。

 省側は、医療の現場で混乱が起きていることは認めましたが、「1〜2年はようすを見たい」と答えました。

 日本被団協は重ねて廃止を迫り、今後は要求をいっそう強めることを強調しました。

 ガンを原爆症と認定すること、在外被爆者への法の適用については、別項記事にあるような事例や裁判が起きていることをあげて、厚生省の対応の改善を要求しました。

原爆症認定 わずか1,229人

 厚生省が行なう原爆症の認定、却下についての10年間の推移が、今年9月明らかになりました。

 これによると、被爆者手帳所持者は32〜3万人いるのに、「原爆症」と認定されたのはこの10年間に1,229人しかいないこと、ではこの人たちをふくめて医療特別手当の受給者数が増えているかというと、ちっとも増えていないことがわかります。これは、認定被爆者が次ぎつぎ亡くなっていること、あるいは認定が出るのが死の間際であったり、死後認定が多いことを示すものと見られています。つい最近も東京で、死後6か月たって認定通知がきた例もあります。

 認定申請が遅れる理由の一つに、ガンであることを本人に告知できないという問題もあります。

 日本被団協は、このような例から、「被爆者のガンはすべて原爆症と認定せよ」と厚生省に要求し、交渉を重ねています。

在韓でも手当の継続支給を 韓国人被爆者が大阪地裁に提訴

 韓国原爆被害者協会の郭貴勲元会長が10月1日、国と大阪府を相手どって「健康管理手当を、韓国に帰ると打ち切るのは不当」とする訴えを大阪地裁に起こしました。

 郭さんは、1944年(昭和19年)に施行された朝鮮人徴兵令で召集されて広島市の西部第2部隊に配属されているときに被爆しました。

 帰国後は在韓被爆者への日本政府の国家補償を要求して運動をつづけ、92年から93年にかけて会長を勤めました。

 98年に渡日治療のために来日し、「運動器機能障害」と診断され、同年6月から2003年までの5年間、健康管理手当を大阪府が支給するとの決定をえました。

 手当は6月、7月受けましたが、8月に韓国に帰るとともに打ち切られました。

 大阪府は打ち切りの理由を、74年7月に出された「厚生省保健医療局長通達」で、「日本の領域を越えて居住地を移した被爆者には、失権の取扱いをするものと解されている」としています。

 郭さんは、「原子爆弾被爆者に対する援護に関する法律」には失権規定がないのに、局長通達で権利を打ち切るのは不当として、提訴に踏み切ったものです。

在外被爆者問題パネルディスカッション 4カ国代表が発言を予定

 11月13日に行なわれる日本被団協主催「在外被爆者問題パネルディスカッション」のパネラーが決まりました。

 韓国は、韓国原爆被害者協会の崔日出(チェ・イルチュル)会長。郭貴勲元会長も参加の予定。

 アメリカは、在米被爆者協会の倉本寛司名誉会長。友沢光男会長も。

 ブラジルは、在ブラジル被爆者協会の森田隆会長。森田綾子事務局長も。

 日本は、日本被団協の藤平典事務局長。  

 会場は参院議員会館第 1会議室、午後1時から。

米の臨界前核実験に抗議

 アメリカ政府が9月27日に、ネバダの核兵器実験場の地下で、臨界前核実験を強行したことについて、日本被団協と各県被団協はいっせいに抗議声明を発し、抗議行動を行ないました。各地から通信を紹介します。

 東京  東京では9月29日に、JR渋谷駅前で抗議宣伝を行ないました。これには日本被団協と東京、千葉の被爆者ら35人が参加。あいにくの雨のなか、傘をさしてビラを配ると、通行の都民は傘もつ片手で受け取るなどして、40分間で500枚を配りきりました。

 一行はアメリカ大使館に向かい、「原爆と人間展」パネルをかざしながら、「新たな核兵器開発を許すな」「すべての核兵器をなくせ」「ノーモア ヒバクシャ」と唱和をぶつけました。

 愛知  愛知県原水爆被災者の会(愛友会)は27日、クリントン大統領あてに抗議文を送り、名古屋市中区の栄噴水前で、「アメリカ、ロシアは未臨界前核実験をやめよ」「あらゆる形態の核実験を禁止せよ」と大書した横幕をかかげて、抗議の座り込みをふくむ宣伝行動をしました。

 熊本  熊本県原爆被害者団体協議会は27日、クリントン大統領に抗議文を送り、熊本市下通りアーケード街のパルコ前で、抗議文のビラを配布し、「核兵器なくせ、原爆被害への国家補償を求める国会請願署名」を呼びかけました。

 あいにくの雨でしたが被爆者18人が参加。48人から署名が寄せられました。

 県被団協では、先のインド、パキスタンの核実験のさい、県内全議会に「核兵器廃絶国際条約締結のための意見書採択を求める陳情」を行ないました。9月末までに63議会(66.3%)が採択しました。県被団協では全議会に採択を働きかけていきます。

 島根  島根県被団協は10月2日、浜田市役所前で役員30人による座り込みの抗議行動を行ない、アメリカ大使館に抗議電報を送りました。 

 三重、京都  三重県原爆被災者の会は9月29日、京都府原爆被災者の会は28日、「臨界前核実験は人間として断じて許せない」クリントン大統領に抗議文を送りました。

各地で相談所講習会

【近畿ブロック】  10月7日、奈良県で近畿ブロックの相談事業講習会が開かれ、60人が参加。肥田理事長、伊藤相談員の講演のほか、原爆松谷裁判の原告、松谷英子さんが支援を訴え、参加者に大きな感動をあたえました。

【中国ブロック】  10月21、22の両日、山口県で中国ブロックの講習会が開かれ、150人が参加。伊藤サカエ相談所理事の主催者あいさつ、妹尾日本被団協代表理事などのあいさつの後、肥田理事長、伊藤相談員の講演があり、原爆症の認定問題、二世対策などについて活発な質問が出されました。

 翌日は、原爆松谷裁判の意義や最高裁への運動の意味が報告され、嶋岡代表理事から「国民運動」について講演がありました。

関東甲信越ブロック会議

 10月6、7の両日、越後湯沢で関東甲信越ブロック会議が開かれ、地元・新潟の12人と8都県の代表、日本被団協の藤平事務局長など33人が参加しました。

 1日めは、藤平事務局長が近年10年間の運動の特徴と成果、松谷裁判、緊急要求署名、国会請願署名など現在の運動の重点を報告した後、各県の運動を交流。2日めは、非核自治体宣言運動の交流や健康管理手当更新手続きの簡素化での各県の対応などが話し合われ、首都圏をかかえる関東甲信越ブロックの奮闘で11月行動を成功させようと確認しあいました。