被団協新聞

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「被団協」新聞1998年 5月号(232号)

1998年5月号 主な内容
 
1面千葉全自治体で非核宣言
平和記念館問題
原爆資料館委託
韓国原爆被害者協会会長来訪
2面インドで原爆展
各地の「原爆と人間展」
3面 慰霊碑建立

千葉で全81自治体が非核宣言

 千葉県のすべての自治体での非核平和宣言が3月に実現しました。

 千葉県では昭和57年の習志野市の宣言を皮切りに、その後粘り強く各自治体への働きかけが続けられ、被爆50周年には県議会の多数を占める自民党と千葉県被爆者友愛会が協議して請願を全会一致で決議。これがはずみになり市町村でも宣言が進みました。

 昨年時点で残り5自治体。協力諸団体から「締めくくりは友愛会で」と励まされ、それらの自治体に要請した結果、4自治体が昨年12月に、最後の自治体が今年3月に宣言し、全81自治体での非核平和宣言が実現しました。 (千葉県友愛会会長・青木 茂)

国の原爆死没者追悼平和祈念館問題

「再検討」に被爆者反発 −広島

 広島、長崎に建設を予定している「原爆死没者追悼平和祈念館」について、小泉厚相が3月13日の衆院厚生委員会で「つくるかつくらないかをふくめて再検討すべきだ」と発言したことについての説明会が、4月15日に広島市で行なわれました。

 厚生省からは、木村企画課長ら、現地からは広島県被団協の伊藤サカエ理事長ら9団体18人が出席しました

 木村課長は、大臣発言について「行財政改革が急がれるなかで、既存の施設との違いが分からないということで、建設中止を前提にしたものではない」とのべました。

 さらに木村課長が、被爆者からの質問に答えるなかで「私の立場から造る、つくらないとはいえない」とあいまいな答弁をしたため参加者がいっせいに反発。「何のために検討だったのか」「厚生省に建設の熱意が感じられない」など、きびしい発言が相次ぎました。

「再検討することない」− 長崎でも検討委が反論

長崎では4月11日に建設問題検討委員会があり、厚相発言についての説明がありました。  同委員会の土山秀夫委員長は、小泉厚相の発言について、4月3日の朝日新聞「論壇」で、「大臣発言については地元として承服しがたい要素をはらんでいる」「私たちの報告書にまじめに目を通していたとすれば、重複うんぬんの発言は出なかったに相違ない」「国の約束は、大臣が代われば事情によっては反古(ほご)にされないほど軽いものなのだろうか」と、きびしく批判していました。

 これをうけての説明会でしたので、厚生省・木村企画課長が「重複しないよう再検討を」と述べたことにたいし、土山委員長は「長崎は検討結果をすでに提出しており、国から再度検討を依頼されても応じられない」と発言、「早急に国の最終意見をまとめてほしい」と要望しました。

「原爆資料館」ついに委託 − 広島市が強行

 広島市の原爆資料館の管理・運営を、市の「直営」から「外部団体に委託」することについて、日本被団協と広島県被団協は「外部委託は平和行政の後退につながる」と反対してきましたが、市議会は2月26日、組織改正条例を可決、市は4月1日から、「広島平和文化センター」への委託を実施しました。外部委託決定を前に、広島県被団協は市当局にたいして、「平和行政は市政のカナメ。その原点が原爆資料館。これを外郭団体に委託するのは、国が外交を外郭団体に委託するのと同じ。やってはいけないことをやろうとしている」、「行財政再建のために、平和行政をリストラの対象にあげたこと自体が、平和行政の後退を示すもの」(高橋昭博日本被団協代表理事)として、委託問題でのシンポジウムの開催を要求し、外部委託の再考を要請していました。

 2月18日夕には、平和公園の慰霊碑前で「原爆資料館の外部委託に反対します」の横幕を掲げて座り込み行動を50人参加で行ないました。

 市は「委託によって世界への発信、学芸機能の充実など、柔軟な運営をねらう」「『官』でなく『民』の英知を結集する」といいます。 広島県被団協は今後、委託問題でのシンポを重ねて要請、市側の対応を見て被爆証言者の派遣拒否、被爆者が貸している被爆資料の引き上げも検討するといっています。

韓国原爆被害者協会 崔新会長が来訪

 韓国原爆被害者協会の崔日出(チェ・イルチュル)新会長が4月3日、新任のあいさつで日本被団協を来訪、藤平事務局長らと懇談しました。

 崔会長は、64歳。広島市舟入本町で被爆。日本語が堪能な方です。

インド首都で原爆展

 核武装を政策に掲げたインド人民党政権下で、広島・長崎両市とインドの科学者団体主催の「広島、長崎原爆展」が、首都ニューデリーで4月10日から5月15日まで開かれており、新聞報道では、さまざまな問題と反響がでています。

 まず、被爆資料の通関手続きがおくれ、開催日には手荷物で持ち込んだ資料10点で対応、4日目にようやく予定の25点が通関できたこと。

 二つ目は、展示パネルは52枚の予定でしたが、このうち6枚が撤去させられたこと。開催1週間前に原子力エネルギー庁と、人的開発省の役人が展示会場の国立科学センターを訪れ、「インドの核政策にそぐわない」として、会場使用の取り消しを示唆しながら撤去を迫ったといいます。

 これにはマスコミも「不当な検閲」と批判していましたが、核開発を続けながらCTBT(包括的核実験禁止条約)への署名を迫る核保有大国へを批判する意見が圧倒的ということでした。

 このなかでも平岡市長は、「CTBTの抜け道を非難するだけでは、核兵器廃絶への事態は打開できない」と語っていたということです。

 三つ目は、今年1月にムンバイ市で20日間展示をしたときには、5万人を超える市民が参観し、大成功をおさめました。核政策を掲げる政権のもとで今度はどうなるか、関心を呼んでいます。

 平岡市長によると、原爆展は今後、26カ所ある国立科学センターでひき続き行なわれます。バングラデシュ、パキスタンの市民団体からも原爆展開催の打診がきているということで、今後が注目されます。

撤去させられたパネル

 インドの原爆展で撤去させられたのは、世界で核実験をした国、核実験に抗議するデモ(カザフスタン)、いまなお残る核実験・核開発のつめあとということでネバダの核実験場のクレーターを示した写真、NPT(核拡散防止条約)の署名・非署名国、CTBTの国連での採決など6枚と伝えられています。

各地で原爆と人間展 

和歌山県北部の那賀町で昨年11月30日に開かれた紀ノ川収穫祭に合わせ、「原爆と人間展」が開かれました。

 この収穫祭は産直活動で有名な紀ノ川農協が中心に開催しており、毎年2〜3万の人出でにぎわいます。今回は前日の大雨のため出足は減りましたが、会場横の体育館で開いた「原爆と人間展」は約1,000人が参観。他の行事と兼用の会場で少々雑然としましたが、参加者からは「パネルに書いてある証言にうたれた」という声がたくさん寄せられました。(和歌山・楠本熊一) 長岡市で4月7、8の両日、チェルノブイリ被曝で苦しむ子どもらへの医療救援を訴える公演に合わせて「原爆と人間展」が開催されました。

 新潟県原爆被害者の会は、この公演のためにベラルーシ共和国から来日した子どもたちとスタッフ20人の受け入れに協賛し、実行委員会に加わりました。

 公演に先立って市立図書館で、公演当日に会場のリリックホールで、チェルノブイリ写真展と同時に「原爆と人間展」を開催。多くの市民が参観してくれました。

 なお、新潟市でも昨年に続く2回目の原爆展を市内の繁華街で今夏開催する企画がすすんでいます。(新潟・板垣幸三)

<各地の開催予定>

宮城県原爆被害者の会は、5月2日から4日まで仙台市のエルパーク仙台セミナーホールで「原爆と人間展」を開催します。
神奈川県原爆被災者の会は、6月5日から9日まで「原爆と人間展」を開催します。会場は、通りすがりの人たちが気軽に立ち寄れる場所を考え、横浜そごう前の「新都市プラザ」にしました。

慰霊碑建立 今年も2県で

鹿児島県原爆被爆者福祉協議会(県被団協、1,700人)は、長年の希望であった慰霊碑の建立が実現することになり、被爆者、遺族を中心に募金活動を開始しました。

 碑のデザインは黒御影石製で高さ2.6メートル、碑文には「被爆者は原爆後遺症と闘いながら懸命な運動をつづけている」という趣旨の一文も刻まれます。建立場所は鹿児島市の厚意で城山公園(探勝園)内に無償提供。除幕および慰霊式は11月の予定です。

 総費用約1,000万円のうち約570万円が国と県の補助金でまかなわれることになり、残額を自分たちで集めようと500万円の目標で募金がよびかけられました。

 県被団協は、碑は原爆犠牲者を慰霊するとともに、これまで被爆者が続けてきた「核兵器のない平和な世界づくり」を後の世代に伝え、その願いを広めていくためのシンボルにしたいと話しています。

 被爆50周年には建立場所問題で実現しなかった原爆犠牲者追悼碑が、金沢市からの土地貸与が決まり、国・県の助成のもと、建立できることになりました。除幕は8月9日になります。

 碑は2体のブロンズ像からなり、折り鶴を頭上に掲げた男児を女児が見つめているという構想で、モデルは副会長の親類の子どもに決定。製作を、長崎の平和祈念像製作者の孫弟子にあたる金沢市在住の彫刻家に依頼しました。

 会員を中心に募金が寄せられていますが、県内の被爆者は181人。必要額を集めるのはたいへんです。「折り鶴カンパ」と銘うち、除幕式で使う折り鶴と合わせて一般の人にも訴えています。全国のみなさん、どうぞお力添えください。(西本多美子)
【募金振込先】 郵便局 名称「平和基金」口座番号 00770−9−4−1395
広島市の白島九軒町(中区)と金輪島(南区)の2地区でも、原爆慰霊碑の建設を計画。市へ助成を申請中です。