名鉄NSR車の動きを追う

●2004〜2008公開の古い記事ですが

2005.1.29のダイヤ改正で運用が全く変わり、記録する動機となったリバイバル色の5500系が引退になりました。当ページの更新終了から年月が経過しています。さらには、本稿で登場する車両は全て過去のものになっています。それでも、複雑と言われる名鉄における注目車両の運用実績を永くご覧いただくことは価値があるここと思います。2005.1まではこうだったという視点でご覧いただければ幸いです。(2020.1)


SR車との併結運用が注目されるNSR車について、いつも拝見している目撃情報掲示板の情報をまとめ、運用記録を中心に更新を続けてきました。調査記録についてはお陰様で1年を経過し、推定の部分を含みながらも大多数の記録を残すことができました。
 今年度に計画された新型車の製作が進み、一部は既に試運転が行われています。2004.1.29、中部国際空港が開港するタイミングに行われるダイヤ改正時には大きな動きが発生することが予想されます。時期は不明ながらも、調査のきっかけとなった5500系も姿を消す日は遠くないものと思われます。そこで、完結の機会を視野に、特定の時期に限られたままになっている考察に普遍性を持たせ、資料としての見やすさについても改善を図りたいと考えています。
 また、2003年年末以来、長期入院を強いられましたが、その後は静養がてら撮影のチャンスがあり、貴重な編成も記録できました。まだ完成したとは言えない状態ですが、ダイヤ改正までの期間が短くならないうちに写真、資料の追加、差し替えなどを行いました。

●きっかけはリバイバル塗装の5500系との併結

初めての方のために、そもそもなぜNSR車を調べるようになったかについて触れておきましょう。
 NSRは7000系6連3本、5700系6連2本が共通で運用され、SR車併結可が売りのグループです。(注:5300系、5700系を指してNSRと呼ぶこともありますが、本稿では併結可能な7000系または5700系の6両編成という運用上の区分を指します。)しかし、2003年3月改正によって併結列車が大幅に減り、平日伊奈から出る1運用のみとなっています。そんな中、2003年7月から5500系リバイバル塗装車が登場し、これらがNSRの先頭に立つことから、俄然注目を浴びる運用になりました。

たまたま撮影できた832レに偶然にも5517Fが入っていました。展望席付き車両の前に他の車両が連結されることは全国一般では考えにくいところですが、それが当たり前のように行われているのは名鉄ならではです。7000系が他系列と併結できるように改造されたのはラッシュが激しくなった後年のことと思われますが、仮に昭和40年代当初には実在しなかったとしても、ピンクや黄色の5500系がP車の先頭に立つ姿は名鉄らしく、大きな魅力を感じます。

しかし、そこは悲しいかな社会人。平日の朝しかない運用では撮影できるチャンスは滅多にありません。少ないチャンスを生かして撮影するなら、後ろが確実にP車であってほしい。リバイバル色が「現役」だった当時にはなかった5700系では名鉄らしい特異さもなくなって魅力半減以下です。

第1編成、7001Fが6連に組み替えられて7.10に走行を開始。 ならばNSR車の流れを読んで確度の高い予測をするしかありません。まずは運用をと、目撃情報を基に作成された運用資料を公開されている『名鉄電車の部屋』『名鉄運用研究所』からダウンロードさせていただきました。
 5本が予備なしで運用されているのならば、順番どおりにラウンドする運用なのかと思えばさにあらず。平日、休日とも随所に運用トレードを行うポイントが隠されていて、運用順序が変わることがあります。単純で(趣味的には)つまらない運用でないところが名鉄らしいといえばそのとおりなのですが。



■参考資料と運用実績表

前置きが長くなりましたが、目撃情報、参考資料に基づく運用記録を掲げます。なお、詳しくご覧になりたい方は下記のサイトで公開されている運用資料をあらかじめ出力されることをお勧めします。碧電での更新終了からずいぶん年月が経過しましたが、まだ当時の運用の公開を継続していただいているようです。

名鉄電車の部屋、P車研究室

●運用実績表


■運用トレードのパターン

NSRグループは5本あり、その全てが使用されるため、グループ内には予備車がありません。そのため、平日、休日とも運用トレードのポイントが設けられ、適宜編成の差し替えを行うことによって検査に対応したり、走行距離の調整を行ったりしているようです。トレードは頻繁に行われるものから滅多にないものまで様々です。

●平日、金山におけるトレード

「美」と「内」の差し替えが行われる頻度が高く、「常」、「内」のどちらへ流れるのが通常の運用とは言えないところです。(以下の資料では「名鉄電車の部屋」の資料に準拠し、「内」ループを基本と仮定して赤線で表示しています。)
 「内」の運用は1147Bレで金山へ到着したあと、1162Gレへ流れた場合は内海ループとなるケースが多くなりますが、夜間「内」→「河」となる場合も時々発生しています。それ以外は「美」の編成とのトレードによって大江へ回送されてその夜は常滑停泊となります。


●平日、新岐阜で「常」と「河」のトレード

平日夜間、犬山における運用トレード極めて頻度が低いトレードです。
 1577Aレで新岐阜に到着した「河」の編成は通常は折り返し1760レとなりますが、到着後に回送で引き揚げ、代わりに三柿野に留置されていた「常」の編成が送り込まれて来ることがあります。三柿野留置の編成は通常犬山へ回送されるため、臨時の回送列車が2本運転されることになるという手の込んだ差し替えです。
 平日は通常「河」の編成が伊奈停泊となり、翌日の727レとなりますが、この差し替えが行われると、前日「常」に入っていた編成が充当されることになります。日中「河」に入っていることが確認されて「明日の727レの後ろは****Fだな。」と思っていてもそうならないことがあり得ます。

●(*2)平日夜間、犬山で「内」と「常」のトレード

これも頻度が低いトレードです。1862レで犬山に到着した編成は通常いったん引き揚げた後、2063レ新岐阜行きとなりますが、これに三柿野留置の編成(常)を充当することがあります。1862レで到着した編成は代わりに2167レに充当されて河和停泊となります。
 平日で「美」→「河」となるものは金山で「内」と差し替えが行われ、さらに犬山で差し替えが行われることになります。
 例外的なものとして、2004.4.2(金)、平日では唯一の記録である「河」→「内」が確認されています。これは図中のトレードが両方同時に行われれば可能となります。


●(*3)伊奈停泊車と美合停泊車のトレード

伊奈で停泊する車と回送で美合へ向う車のトレードが行われることがあります。この場合727列車は2日連続同じ編成が入ることになります。

元々727レがP車か57かを予測するために始めた運用チェックですが、P車が順当に流れて来ても前夜になって57に化けることもあり得る恐ろしいトレードです。

●休日、茶所における「美」と「伊」のトレード

休日ダイヤのハードな運用

珍しく休日ダイヤの豊橋急行に充当された7025F 2004.8.13 名古屋本線 富士松−一ツ木休日の「伊」は新岐阜−豊橋を2往復したあと茶所へ入区します。一方、「美」は同様に新岐阜−豊川稲荷を2往復したあと茶所へ入区します。最近は再出区の際、「伊」が1754Cレで知多半島へ入り、常滑停泊、「美」は1722レで再び豊川急行をこなして夜は美合に戻ることが多いのですが、1754Cと1722のチェンジが行われることがあります。(ただし、豊川急行の3往復目、1722〜2011は新岐阜16:41着のP6がそのまま折り返すことがしばしばあるようです。)
 「美」は新岐阜−豊川稲荷を3往復し、その前後の運用も入れれば4往復に近い距離を走り抜くハードな運用です。(P6充当時は1往復減)調査開始以来休日には7025Fが圧倒的な高確率で投入されており、休日ダイヤ時の日中は「新岐阜」「豊川稲荷」以外の方向版をなかなか見ることができません。
 7041Fに続いて7025Fも編成替えによる4連化が計画されていると言われていますが、ブック式方向版を掲げる唯一の6両編成となった同編成を今のうちに記録しておきたいものです。

●休日、犬山でのトレード

休日は日中から夜間にかけて「常」、「河」、「内」、「伊」(「美」の場合あり)の4本が犬山へやってきます。4本が揃う時間帯はありませんが、運用のつながりには図のようなパターンが確認されています。「伊」(または「美」)は素通りで差し替えの対象にはならないようです。「内」の編成はK2096レが発車してから到着するために「伊」へつながらないことを除けば、それぞれが相互にトレードされた実績があります。
 平日と同じく、「常」は「河」へ、「河」は「伊」へつながることが多くなっています。

1:「常」三柿野から回送

(1-1) 2163レ→河和へ
 (1-2) K2096レ→伊奈へ
 (1-3) 2176Aレ→内海へ
 (1-2)は比較的少ないようです。休日明けの727レは「河」の編成の場合が多くなっていますが、「常」の車が入ることが時々あります。


2:「河」犬山13:21着(1350レ)

犬山で発車を待つ2176A列車急行内海行き

(2-1) K2096レ→伊奈へ
 (2-2) 2176Aレ→内海へ
 (2-3) 2163レ〜新岐阜2372Aレ→河和連泊へ

調査開始以来、「河」→「河」となったのは数回です。

3:「内」犬山20:21着(2050レ)

(3-1) 2176Aレ→内海へ
 (3-2) 2163レ〜新岐阜2372Aレ→河和へ


■運用上の注目点

●SR2併結列車の一般的傾向

832列車の後部に連結された珍車7101F。727列車(伊奈6:30→新岐阜8:09)に着目すると、表の作成を始めた2003.9.5以来、月、火が7019Fまたは7041F(2004.7.10から7001Fに交代)、水曜5701F、木曜5702F、金曜7025Fの頻度が高く、曜日によって充当される編成が限られる傾向にあります。
 いっぽう、前寄りに併結されるSR車2連は基本的には5300系または5500系ですが、三河線ワンマン仕様の7700系または7101Fが充当されることも時々あります。編成数が最も多い5300系の頻度がどうしても高くなりますが、調査開始以来1年間では5500系もかなりの高確率で充当されています。
 一度727レの運用に入ると同じ週にもう一度入ることがしばしばある一方、入らないときには長期間充当がなく、長いものでは4ヶ月も充当されない編成があるなど、編成毎の充当頻度には大きな波があります。
 予備車的に充当される7700、7100系ではさらにその傾向が顕著です。1編成のみの珍車7101Fは2003.9以来、ずっと727レに入ることはありませんでしたが、7.6に充当された後は8.20、8.24と繰り返し充当されています。
727レの先頭に立つモ7716
5300系は他形式が入場などで不足した場合の代走運用に優先的に使用される傾向にあり、2本が本来の運用から外れることもあります。この場合は5500系や7700系が充当される機会が増えますが、残り3本の5300系がフル回転して必ずしもそうならない場合もあるところが予想を難しくしています。
 727レを撮るチャンスはそこそこありましたが、ローテーションの関係からか、なかなか7700系が入りませんでした。その結果、77+P6の編成は撮れず仕舞いとなりました。


●検査入場による代走

7019F全検入場による代走編成のハイライトNSRグループには予備車がないため、故障、事故、大がかりな入場検査がない限りは毎日運用があります。しかし、前述のような理由で使用できない編成が発生するとSR車と併結可能な編成によって代走が行われます。また、SR車を併結しない運用に限ってP6(非併結)が代走を務める場合があります。6両貫通で代走に充当できる編成がないため、P4(7000系4連)、SR4(5300系または5700系4連)、SR2(5300系、5500系、7700系)を組み合わせて4+2の6両編成が充てられます。

この1年で最も長期間となったのは7019Fの全般検査に伴う代走です。調査開始以来、短期間であったり休日に偏っていたりで、SR2と代走編成の組み合わせは実現しませんでしたが、7.14〜8.10の間に3回実現しています。
 中でも注目されたのは7.21の727〜832レで、舞木で検査を受けていた5515Fが出場回送の代わりに727レの先頭で営業運転に復帰。たまたま後部が代走編成(5309F+7033F)であったため、3形式混合の8両編成が実現しました。パノラマカーを含むにぎやかな編成は2扉車を寄せ集めて通勤輸送をさばいていた一昔前の名鉄を彷彿とさせました。 記事はこちら

■あとがき

知立を発車する5310F+5701F。) 2004.6.302003.10、初めて本稿をアップしましたが、どのような形で更新を続けていくかのビジョンがない状態でのスタートでした。冒頭にも記したとおり、もともと、5500系リバイバル色との組み合わせに関心を持ち、より確度の高い推定をしようと考えたことが本稿制作のきっかけでした。調査開始から1年が経過し、個人的には当初の目的を達成できたと考えています。したがって、今後は記録を残し続けることに視野を転換していくことになります。
 自らなかなか調査に出掛けられないのは心苦しく、また、いつまで続けられるかもわかりませんが、まずは5500系との組み合わせが続く限りは調査を続けることを当面の目標にしたいと思います。
 最後になりますが、観察記録を公開していただいた皆様の情報はたいへん役立ちました。地道な成果を参考両サイト掲示板にて公開いただきました皆様にお礼申し上げます。

■旧NSR編成その後の動きから

2005.1.29のダイヤ改正以降、P、SR車6連と他車との併結がなくなり、運用を区別する必要がなくなりました。その結果、旧NSR編成のうち、6両組成の編成は併結不可のP6と共通運用されるようになりました。このコーナーではその後の動きとして、4連化されたものを含めて動向を整理していきたいと考えています。
3ヶ月間を過ごした猿投を去る7025Fと見送るファン4連化された7025Fは08.6.29改正前日限りで営業運転から離脱。その日の深夜、三河線内は7101Fに先導されて猿投検車区に疎開留置されました。そして、10.5の夕方、約3ヶ月を過ごした猿投を離れ、廃車準備のため舞木検査場へ回送されました。

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