三つ巴で切磋琢磨:
ミッドローユニットであるFPS(平面パネルスピーカー)をスピーカーケーブルの結線変更だけで
聴けるように
したことを受けて、三つ巴となるようなスピーカー構成で楽しんでいる。低域と高域ユニットは設定も含め同じままで、ミッドロー、ミッドハイを以下の様に三通りに切り替えるスタイルである。
第一構成:ミッドローはSB Acoustics(
MW16TX-8
)、ミッドハイはAccuton(
C51-6-286
)
第二構成:ミッドローはFPS(
FPS2030M3P1R
)、ミッドハイはSONY(
SUP-T11
)
第三構成:ミッドローはSB Acoustics、ミッドハイはSONY
現在のミッドローの受け持ち帯域は160Hz~710Hz、ミッドハイは710Hz~4000Hzとしており、三通りのいずれの構成でもクロスオーバー周波数は同じである。ただし、設置位置の違いがあるので、タイムアライメント調整のためのディレイ設定はそれぞれ異なったものになる。このような環境設定はデジチャンのメモリ保存機能によって簡単に切り替えられるのはやはり楽チンというか、デジチャンがなければこのような臨機応変の使い方はできないだろうと思う。
三通りの構成の周波数特性は(微妙な違いはもちろんあるのだが)ほぼ似たようなものなので、パッと聴きは印象はそう大きくは変わらない感じ。だが、所謂音像、音場ということにも注目して聴けば、第一の構成はやはりサウンドステージの表現が得意だと思う。我が家の場合はスピーカーの設置場所を壁から充分に離すということができていないので限界があるのだが、それでも比較すれば音場型となろう。音は全体としては現代的で爽やかタイプだと思う。第二の構成は音の解像度や実体感に優れると思うがその分音像型であることは間違いない。ある種、古典的と云えるのかもしれないが、ボーカルや楽器の数が少ない音源には説得力があって音源とのマッチングが良ければまさに聴き惚れてしまう。第三の構成はある意味で当然かもしれないがその中間にあり中庸型と云えるだろう。だが、この構成で聴くことが実は現状では案外と多い。ということはそれだけ自分の「好みに近い」音がすると云えるのかもしれないが、やはりホーンの音が好きなんだろうと自己分析してみる。うまくは表現は出来ないのだが音の質感がドーム型のミッドハイのユニットとはやはり異なっているとも感じる。Carbon Textremeとホーンのマッチングが意外にもバランスが取れていて、ひとつひとつの音を魅力的に聴かせるという観点から自分の感性に刺さってくる。音場、音像の観点で云えばどっちつかず、というものなのかもしれないが、ここにひとつの解を求めてしまうと答えを出せないオーディオの難しさがある。
現状の(理想とは云えない)スピーカーレイアウト:
もちろん、各構成における使いこなしの課題もあるので、ここでの感想が絶対とは思わないが、三つ巴の構成を聴き込んで、聴き込んで朧げに見えてくるものがある。そしてやっと始めて「ユニットの評価」というものが多少なりとも出来るんだろうとな、と。姿形にも惚れ込んで(FPSは例外!)購入したユニットを4wayマルチアンプシステムに組み込んで音楽再生をしてもおそらくひとつだけの構成で聴いていたら、個々のユニットの音が全体に埋没してしまってそれと分からないことがあるし、設定や設置やその他の要因も絡むので(自分なりに)正しいユニットの評価が出来るとは限らない。できる限り各構成の出っ張り、引っ込みを均し、その上で本来のポテンシャルを見極めていきたいと考えている。
ただ、オーディオにおいてこのような切磋琢磨が必須なのかどうか、自分でも疑問はある。だが、良い音を沢山聴かなければ、自分なりの良い音のイメージを具現化した最終的なシステムを造り上げることはできないと思う。そして好みの音に近づける(大きな)要素のひとつであるスピーカーユニットそのものの吟味がちゃんとできなければ、己れの理想には近づけないだろう。これはマルチアンプシステムの熟成のためには完成品のスピーカーシステムとはまた異なるアプローチが必要なんだと強く思う所以である。
かっては憧れであったALTECもJBLもElectro Voiceのユニット達も経年の過程で自分の評価の中では落第していった。PioneerもJM Labo(現Focal)のシステム達も然り。それはただ使いこなせなかった、ということかもしれないが、、、しかし、現状手元に残っているものは己の我侭な要求に応えてくれているものであると思うし、今の自分にとってはかけがえのないスピーカーユニット達なのだ。
旧宅の頃のサブスピーカー達(懐かしい):
(閑話休題)トランスポートも三つ巴?:
同様の三つ巴が最上流となるデジタルトランスポート(あるいはPCオーディオ、ネットワークオーディオ機器)でも我が家では起こっている。PCオーディオとしてのAoE Symphonic-MPD(フロントエンドがPC、バックエンドがラズパイ4)、ネットワークオーディオ機器(ネットワークストリーマー)としてのBluesound Node。この二つが今までの環境であったのだが、単体のラズパイで稼働させているMoode Audio(ラズパイ用音楽ディストリビューションのひとつ)を加えて俄かに三様となっている。
前者の二つについては拙ブログでも度々取り上げているので今回ここでは詳細は触れないが、長らくPCオーディオなどをやってきた当方としては集大成に近いレベルのものだと考えている。これらはどちらもRCA同軸によるS/PDIF出力の構成である。ここにラズパイ単体でのMoode Audio(割と最近大きなバージョンアップがあったもの。現状7.4.1という最新版を使っている)が加わった。ラズパイに関しては、HATからのS/PDIF出力を念頭に追いかけてきたのであるが、今回のMoode AudioはUSB出力に戻ってトライしている。つまり全く何の変哲もない裸のラズパイ1台だけで「勝負」というものである。
もちろん、Moode Audio自体は各種のHAT(S/PDIF出力、I2S出力、DAC搭載によるアナログ出力)を全てサポートしているのだが、原点とも云うべきスタイルである。HATを載せないので、必然的にUSBでのデジタル出力となる訳だ。かってUSB出力はJPLAYで相当あれこれやった経験があるが、今回は究極の音を求める、というよりは一台で稼動させるというシンプルさで、簡単でありなおかつそこそこの音を求めてみようというのが出発点。ラズパイユーザーで高音質を目指す向きにとっては、USB出力を採用するというのは多少マイナーなアプローチと思う。
一方で、世の中的にはUSBを受け付ける単体DACは当たり前である現状から考えれば、否定してかかってはいけないだろう。JPLAY構成の時代にUSB出力をあれこれ研究した成果として
Intona USB Isolator
が手元にあり、いろいろなUSBに係わる懸念(音の劣化要因)をこのアイソレータによってかなり払拭できるということを実感として持っているので、それが背中を押してくれているのかもしれない。
改めて、
Moode Audio 7
について触れれば、これはラズパイ特有の細かい設定等をテキスト編集などの作業で行う必要がないディストリビューションとなっており、全ての設定と再生のコントロールをWEB UIにてブラウザーから行うことができるため、かなり取っ付き易い。今やこのこと自体は珍しいものではないが、選択可能な機能がとにかく豊富。一般的なMPDによる音楽再生はもちろん当然としてもそれ以外の機能がテンコ盛り。詳細はMoode Audioのホームページを参照していただくのが手っ取り早いと思うが、Air PlayやUPnP(レンダラー、サーバー)などのいろいろな機能を欲しいものだけ動的に選択できる。
これによって、単体のミュージックプレーヤとしても良いし、UPnPサーバーとなる使い方も可能。あるいは別のサーバー(NASなど)から音源を読み込む分散構成としても良いし、UPnPレンダラーだけというプレーヤ機能に限定することも設定ひとつで出来てしまう。さらにはAir PlayのみならずRoon Bridgeにも対応しているなど本当に融通無碍なので、この点に惹かれて、まぁテストしてみようかと考えた次第でもある。もうひとつ興味深いのは、CamillaDSP(注記)並びにパラメトリックイコライザやグラフィックイコライザもご希望とあれば使えるし、従来のMPDが不得意としていたサンプルレートの柔軟な制御もセレクティブリサンプリングという機能で対応している。
(注記)CamillaDSPについては
ここに
設定や使い方の詳細がある。ちょっとややこしい面もあるが使いこなせればかなり強力なDSPツールである。
環境としてはとにかく一台のラズパイで完結させること。これを目安としたので、音源も別のNASなどから読み込むのではなく、USB接続のドライブとした。Air PlayによってAmazon Music HD(Spotifyも可)を聴くのであれば、音源の接続も不要。電源も実験として敢えてラズパイのACアダプターで行くこととした。とにかく徹底的にシンプルな構成とした上で使い勝手や音を評価してみようと。
テスト項目概要:
1.Air PlayによるAmazon Music HD再生
2.MPDによるUSB接続音源の再生
3.UPnPレンダラとしてUPnPサーバからの再生(レンダラ、サーバ(USB接続音源)をこの一台のラズパイで)
4.各種のDSP(による補正機能)
5.MPDのセレクティブサンプリング機能を使ったサンプリングレート制御
(注記)ストリーミングに関してはTidalは未テスト、Roon BridgeによるRoonからの再生も現状未テスト。
環境はラズパイ4Bとラズパイ3B+の二機種でテスト。ラズパイ4Bが本命のUSB出力(Intona USB Isolator経由)、ラズパイ3B+は比較対抗用としてHAT(Hifiberry Digi+Pro)によるS/PDIF出力とし、いずれも
MUTEC MC3+USB
にてリクロック後デジチャンに接続するというスタイル。なお、USB出力ではDSD対応できるが、S/PDIF出力ではDSDは不可となる。
上記テスト項目のいずれについても設定や再生コントロールはブラウザ(FireFox)で行ったが、すべて全く問題なくスムーズ。一台のラズパイ(というこの超廉価な機器)でここまでの対応が可能となっていることに改めて感銘も受けたし、音も本当にまずまずである。Air Play経由でAmazon Music HDを聴くための送り出し環境ならこのラズパイ1台とiPADがあれば良いだけなので極めてシンプル。ラズパイの機種の違いやUSB出力、HAT出力の差もそれほど感じることはなかった。ただし、これはIntona USB Isolatorの貢献もあるので、お持ちでない向きにはやはりラズパイ特有の構成であるHATの使用を推奨する。なお、ラズパイのモデルについてはイコライザ等の各種DSP機能を使う場合はやはりCPU速度もそこそこ影響するのでより高速な4Bがベターと思われる。
サブシステムとしてお気楽に音楽再生(含むネットラジオ)を行うのであればシンプル、廉価で二重丸。メインシステムで聴いても厳密さを求めて細かいことを云わなければBGM用として充分楽しめる高いレベルにある。とにもかくにもテンコ盛りの機能なのでどのように使うか、あれこれ弄るだけでも面白い。おそらくはラズパイユーザーであれば余っているラズパイの1台くらいあると思われるので是非是非遊んでみてはいかがだろうか。
4way MW16TX構成の設定暫定値(2021年10月6日更新)
項目 |
帯域 |
備考 |
Low |
Mid-Low |
Mid-High |
High |
使用スピーカー ユニット |
- |
Sony SUP-L11 |
SB Acoustics MW16TX |
Sony SUP-T11 |
Scan Speak D2908 |
- |
能率 能率(90dB基準相対差) |
dB |
97.0 (+7.0) |
87.5 (-2.5) |
110.0 (+20.0) |
93.0 (+3.0) |
|
DF-65の 出力設定 |
dB |
+0.7 |
+0.7 |
-10.5 |
+4.7 |
|
マスターボリューム アッテネーション |
dB |
-9.0 |
-3.0 |
-3.0 |
-5.0 |
|
パワーアンプでの GAIN調整 |
dB |
0 |
0 |
-12.0 |
-12.0 |
|
スピーカーの 想定出力レベル |
dB |
88.7 |
85.2 |
83.5 |
80.7 |
|
クロスオーバー 周波数 |
Hz |
~ 160 |
160 ~ 710 |
710 ~ 3550 |
4000 ~ |
High Pass ~ Low Pass |
スロープ特性 設定 |
dB/oct |
flat-48 |
48-48 |
48-24 |
24-flat |
|
DF-55 DELAY 設定 |
cm |
-10.0 |
+28.0 |
-37.0 |
+27.0 |
相対位置と 測定ベース |
極性 |
- |
Norm |
Norm |
Norm |
Norm |
|
DF-55 DELAY COMP (Delay自動補正) |
- |
ON |
自動補正する |
DF-55デジタル出力 (Full Level保護) |
- |
OFF |
保護しない |
|