オーディオ日記 第37章 夢の旅路は続く(その11)2016年3月10日


TOP Audio Topics DIARY PROFILE LINK 掲示板

果てしなきオーディオの夢は終わらない。

いつも自分のシステムの音にはそこそこの不満がある。僅かな時もあれば、結構な不満の時も。それがどこに起因しているのか具体的に把握し、どのように解決に向けてアプローチして行けば良いのか判らないことも多く、自分の頭で考えているだけでは堂々巡り。そんな時にオーディオ仲間の素晴らしい音を聴かせていただき、あわせてシステムを構成する上での考え方などをお聞きすると、お~そうなんだ!と納得することが多い。また、自分のシステムでは出せていないような魅力的な音に触れると、よっしゃ、何とかこういう感じを出せるように頑張ってみよう、となる。新しい機器などの情報も自分のアンテナだけではやはり不十分で、おおっ、それは知らないけど、なんだか良さそうね~ということがままある。

一連のPCオーディオのブラッシュアップに取り組むことになったきっかけもそうだし、自分なりのセッティングの見直しを行ったことや、USBアイソレータという機器の導入もそう。もちろん、たくさんの情報がある中で自分にとって適合しそうなものを取捨選択することも重要だと思うが、ヒントになったことが結果として自分のシステムの音の改善にちょっぴりでも繋がってくるととても嬉しい。

今回新たに導入した Intona USB アイソレーター は当方の掲示板にコメントをいただき初めて知ったもの。それまでもUSBアイソレータというものの存在は知っていたが、USB Audio Class 2.0に対応できるものは当方の把握している限り今までは無く(参考情報1参照)、それ以上の特段の検討はしてこなかった。しかし、改めてこのUSBアイソレータを少し研究してみると「なかなか面白そう」だと感じた。もとより産業用(医療や計測など)ということでオーディオ用の製品ではないので、国内ではあまり使用例がなく評価の記事もほとんどない。海外のサイトでも、当初XMOSを使用したUSB DDC周りで接続に関するトラブルがありその解決が比較的最近であったために、まだまだ 議論や評価 がそれほど活発とは云えない。

(2017年6月30日追記)
当方は Intona社 より直接購入したが、現在は イーディオ が国内での取扱を開始しており購入可能。
また、同等品(内部基板は同一のもの)がJCAT製品として、 JPLAYホームページ からも購入可能となっている。ちょっと感慨深い、、、

コンパクトなサイズで軽い:
Intona USB Isolator

このUSBアイソレータの特長として当方が注目したのは以下の項目。USB信号ラインに介在させる単なる「ノイズフィルター」機能によるものではないことが重要な観点であると思う。

・産業用途として高い電圧遮断(Galvanic Isolation)機能を持つ
・USB信号を向かい合う二つのFPGA間で再生成(Re-Packetize)して受け渡している
・Hi-Speedモードのサポートにより176.4KHz、192KHzのPCM信号、DSD信号にも対応
・外部電源を必要せず、超低ノイズの5Vを再生成

内部基板(USB信号のRe-PacketizeはXilinx製Spartan FPGAで行われている):
Intona USB Isolator inside

これらの結果として、USB信号ラインにおける電源系のノイズ(ノーマルモード、コモンモード)を限界近くまで軽減することになる。一部のオーディオファイルが注目したことも理論的に考えて頷けるものがある。PCオーディオにおけるUSB接続というのはその簡便性からも普通のユーザーにとっては既に「必要(悪)」なものになってしまっているが、一方でUSBインターフェース自体がオーディオ的な観点からは決して望ましいものではないこともまた事実である。そのために、USB電源線をカットしたり、別に5V電源を供給したり、信号線と電源線を分離したり、といろいろな策を生じる必要性が出てきてしまっている。そのような観点でこのUSBアイソレータを眺めてみると直感的にも何とも壺に嵌りそうな気がしてくるのだ。

同社のHP上の FAQ などをいろいろと漁ってみると、接続に関してRME社での 試験結果 の掲載もあり、接続はFully Compatibleであること、またRME社にてノイズを計測(大幅低減!)した資料なども添付されている。 また、USB信号自体を解析した下記の画像もあって、この結果がなかなか素晴らしいのだ。このような経緯と、かつ理論武装されたドイツ製品であることから、PCオーディオにいろいろと手を入れてきたことの総仕上げとしてこれはチャレンジせざるを得ない、と考えた次第。

アイソレータを経由したUSB信号のキャプチャ(左)とアイパターンの解析結果(右):

*Intona社転載許可済み

接続自体はPCとUSB DDC/DACの間に介在させるだけで特に世話はない。当方が実際に行った接続であるが、PC側は 先に作成 したシールド付き、電源ラインにのみファインメット等のノイズフィルターを挿入した0.7mケーブル。Intona USBアイソレータからUSB DDC/DAC間は15cmのUSBケーブル(こちらも銅箔シールドを念のため)で接続。PCからみて、USB DDC/DACのデバイス認識には全く問題なし。アイソレータ自体はPCからはデバイスとしては認識されずトランスペアレントな存在である。なお、オーディオ的な視点でこの機器をみると安直なプラスチックケースでかなり寂しいものがある。まあ、「縁の下の力持ち」的な位置付けなのでUSB DDC/DACの陰に置いて頑張ってもらえば良いかなと。

ケーブルの状態(DDC/DAC側は直結のUSBアダプタでも良いかも):
Intona USB Isolator connection

しかし、肝心なのは最終的な音への関与度である。

USB信号にどの程度のノイズが乗ってしまっているのかは、それぞれのシステム環境によって千差万別であると思う。したがって、ここでの評価は「当方の環境において」という付帯条件が付いてしまうため普遍的なものとは云えないかもしれない。当方はそれなりにPCオーディオ環境をノイズ対策という観点で整備を進めてきたこともあって、実のところ多少の改善は見込めても、大きな変化というほどの高望みは(期待しつつも?)していなかったのだが、、、

結論ならびに感想である。これは我が家の「秘密兵器」として、また箱入り娘のようにちょっと隠しておきたいと思ってしまうような存在である。加えてMozartがやっと「爺」の子守唄になってくれたことにただ感謝。そしてこれ無しで最早音楽を聴こうとは思わない、、、それ以外の言葉で伝えることは当方にはできそうにもないのだが敢えて表現すれば、一聴して音場が前後に深くなることが判るのだが、音楽のディテールはむしろ克明になるという不思議な感じ。低域は引き締まるのだが、体感的にはマッシブに押し出してくるような気配。何だか矛盾しているとは思う。やはり文才はない。しかし、ついつい音量を上げたくなってしまう気持ち良さがここにあることは確かだ。

USB周りの改善については、オーディオ用USBケーブルを選択するのも良し、いろいろなUSB改善グッズを試してみるのも良しといろいろなアプローチはあるのだが、是非一度は聴いてみて欲しい、試してみて欲しいと思う。これが産業用だなんてとてももったいない。また、オフ会等にも積極的に持参して(自分の駄耳だけではなく)オーディオ仲間の厳しい耳でさらに評価をしてもらおうと思っている。

さてこれで、電源系ノイズ対策からスタートしたPCオーディオ関連機器の対策とブラッシュアップはひと段落となった。やはりシステムの上流は重要であるとまたまた再認識させられた次第。結果にはかなり納得できる状態となり嬉しいのだが、まだ終わりではない。fidataがプレーヤ機能を装備してUSB DDC/DACと直接接続できるようになったことでもあるので、やはりこれと対決してみたいと真剣に考えている。

(参考情報)
1.USBアイソレータが対応する通信速度の留意点
USB2.0には通信速度のモードが3種類(Low、Full、Hi-Speed)あり、この内Hi-Speed(480Mbps)に対応していることによりUSB Audio Class 2.0における、176.4KHz、192KHzのPCM信号ならびにDSD信号を通すことが可能となる。従来のUSBアイソレーションを行うチップ(Analog Devices ADUM4160など)やアイソレータ製品(Acoustic Revive RUI1など)はこのHi-Speedモードがサポートされていないので留意しておく必要がある。

DSDを含むいろいろなハイレゾ音源を試してみたが全く問題なく安定して再生してくれる。また、音の改善効果に関してはハイレゾ音源の方が高いようにも感じる。これはより時間密度の高い伝送を行っているので、ノイズ耐性の恩恵が大きいのかもしれないと推測している。

2.NFオプション
標準仕様では通信状態を示すLEDが点滅するようになっているがオーディオ的観点からこれは好ましくない。このため、オーディオファイル向けに「NF-option」(No Flushing)というオプションがあり、オーダー時に依頼すれば、USB2.0で接続した時にLEDが常時点灯するような仕様に変更できる。当方はこのオプションを選択した。PCサイドの電源があがるとこのLEDが点滅を開始し、USB DDC/DAC側の電源をオンにするとLEDが点灯状態に変わり、USB2.0でのコネクション完了を教えてくれる。この指定はPAYPAL上のコメントとして記入すればOK。ただし、コメントの記入場所がちょっと分かりにくいかも。

3.Hi-Speedモードをサポートする他のアイソレータ製品
いろいろ検索してみた結果、 Cool Gear USB Isolator という製品もHi-Speed(480Mbps)モードをサポートしているようだがその効果などの詳細情報はまだほとんど無い。

4.INTONA USBアイソレータのファームウエア更新に関する情報(2016年3月18日追記)
ファームウエアの不具合によって万が一接続が出来ない場合、「field programmer」という手段によって送り返さずにファームウエア更新ができるという情報がComputer Audiophile上の こちら に記載されている。当方環境で一通り試験した結果では接続の問題はないが、もしそのような状況があった場合はINTONA社にコンタクトすれば対応してもらえるようなので為念。


next index back top