2021年4月の映画  戻る


パーム・スプリングス PALM SPRINGS
2020年 90分 米国
監督 マックス・バーバコウ
脚本 アンディ・シアラ
キャスト アンディ・サムバーグ(ナイルズ)/クリスティン・ミリオティ(サラ)/ピーター・ギャラガー(サラとタラのパパ)/J・K・シモンズ (ロイ)
メモ 2021.4.24(土)なんばパークスシネマ
あらすじ
米国のTVドラマ「ブルックリン・ナイン-ナイン」(ブルックリンの刑事たちのおばかコメディ)のジェイク役アンディ・サムバーグが、アロハシャツを着て砂漠の結婚式場パーム・スプリングスに乱入してくるちゃらい男。主役。こいつは、ブライズメイドの彼氏で結婚式にくっついてきていた。倦んだ雰囲気ながら、結構こなれたスピーチをする。
感想
スクリューボールコメディのSF仕立て。
タイムループ物は数あれど、「すごいな」と思ったのは京アニが描いた「涼宮ハルヒ」の「エンドレスエイト」。
ハルヒが遊び倒しているのにどこかか物足りないらしく、夏休みが終わらない。キョンが気づいた時点で1万回を超えていた。
アニメも何週にもわたりほぼ同じ夏休みが続いた。ここがすごい。視聴者も長門有希となりついて行った。
 
考えて見ると、ループ物ってよくわからない。
他のみんなはループしている事に気づいていない、脱出できるまで未来はなくループは続くのか。
(たぶん「涼宮ハルヒ」はみんなが足踏みしているんやと思う)
この映画は違うのかな。パラレルワールドなの。
それとも脱出できたひとは気づかなくなっただけで、全員が脱出できるまで繰り返すのかな。
と思うと、「アウターリミッツ」やったと思うねんけど「時間の狭間に閉じ込められた人たち」に近いのかも。
 
サラとタラのおばあちゃんと、酒場でカウボーイハットをかぶっているおねえさんがタイプは違えどよかった。
カウボーイハットの方はデイル・ディッキーって俳優さんのようです。
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サンドラの小さな家 HERSELF
2020年 97分 アイルランド/英国
監督 フィリダ・ロイド(「マンマ・ミーア!」)
キャスト クレア・ダン(サンドラ)/イアン・ロイド・アンダーソン(ゲイリー)/ハリエット・ウォルター(ペギー「キリング・イヴ3」)/コンリース・ヒル(エイド)
メモ 2021.4.17(土)なんばパークスシネマ
あらすじ
激高した夫に手を踏まれ大けがをしたサンドラは、夫を見限り幼い娘のモリーとエマを連れて逃げ出す。
福祉の手助けでなんとか生活は始まるが、公営住宅は順番待ちで紹介されたホテル暮らし。
ホテルといえば聞こえはいいが、みすぼらしい一家はホテルは裏からしか入れてもらえず
いかに清掃の仕事で疲れていようが荷物があろうがEVを使わせてもらえない扱い。子供たちは自由に遊ぶこともできない。
サンドラは自分で家を建てることを決意する。掃除に通っている老婦人の善意で裏庭を貸してもらえることになった。
感想
ほー。こういう展開とは。思い切ったなあ。
 
自分の家って大事やね。一戸建てがいいのかな。不安な老後も家があればなんとかなる(たぶん)って言われてる。
大工仕事はど素人の女の人が、自分で家を建てる方法とつてをスマホで探し、色んな人の力を借りて家を建てていく。
といっても、電気がほんのちょっと出てくるだけで給水、排水などの配管工事は描かれておらず(パイプは埋めないのかな)
「まあプロにまかせるしかないか」と思うもんのまったく無くてちょっと残念。
 
主人公サンドラ役でアイルランド出身のクレア・ダンという女優さんが案を考え脚本も書き、映画に仕上げはったらしい。
左目の下に小さなあざがあり「女優には向かない」と言われたけれど気にしなかったと新聞のインタビューで言われていた。
 
家を建てる映画と言えば、以前(白状すると大昔)イタリア映画を見た。
若夫婦が結婚して幸せいっぱいやねんけど、戦後のローマは住宅不足で家を用意できず、
夫の両親、兄夫婦と子供、そして自分たち三家族がちっちゃなちっちゃな家で同居する。
プライバシーもへったくれもあったもんやない。兄と喧嘩し新婚夫婦は荷物を持って実家を飛び出すが、家はない。
困りはてた夫婦は、空き地を見つけ一晩で家を建てることを決意。
おまわりさんの朝の巡回までに建てれば、罰金だけで居座ることができる。水道もトイレもない。
必要なのは「壁、屋根、ベット」だけ。屋根も△やなく_(平屋根)やったんちゃうかな。
夫は借金して材料をかき集め、仲間に手伝ってもらい夜を徹して作業をするが若い職人の寄せ集めで間に合いそうもない。
こらあかんと妻は仲たがいした兄に頭を下げ力を借りるが後少しの所で夜が明け、お巡りさんたちが来てしまう。時間切れ。
そこで機転をきかせた仲間が近所の赤ん坊を新妻に渡す。新妻と赤ん坊に負けお巡りさんは見逃すねん。
調べたところ1956年作の「屋根」という映画でした。
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すばらしき世界 
2020年 126分 日本
監督・脚本 西川美和(「ゆれる」「永い言い訳」
原案 佐木隆三「身分帳」
撮影 笠松則通(「どついたるねん」「顔」
出演 役所広司(三上正夫)/仲野太賀(津乃田龍太郎)/橋爪功(弁護士)/梶芽衣子(弁護士の妻)/六角精児(スーパーの店長)/北村有起哉(生活保護の担当者)/長澤まさみ(TV局の人)/白竜(三上正夫の兄貴分)/キムラ緑子(あねさん)/安田成美(三上正夫の元妻)
メモ 2021.4.8(木)大阪ステーションシティシネマ
あらすじ
十犯六入の三上正夫は、殺人10年の刑期を13年かけて旭川刑務所を出所し身元引受人の弁護士を頼って東京までやってくる。
生活保護を受けて暮らすことになるが、まっすぐひとりで生きてきた三上は身をゆだねることがなかなかできない。
その上、体にはもんもんがある。銭湯に行くのも難しい。
感想
何故この作品を見たかと言うと、「喜劇 愛妻物語」の監督、足立紳さんが新聞のエッセイで「自分はアルバイトでいつも怒られ、今も取説は読めずパソコンも使えない。」と書かれ、小学生の息子さんも(ずるくも人をいじめるわけでもないが)「他の人の気持ちをわかりましょう」の練習をされているそうだ。その文章の中で「生きづらい人」とあげられていた映画中の人物が「すばらしき世界」の役所広司さんと「MOTHER マザー」の長澤まさみさん(こっちはちょっと記憶があいまい)。
足立紳さんが言われるには「困った人は 困っている人
というのを読んだから。
 
娑婆にでてから、多動性というのかな、内にマグマを抱えているみたいにいつも小刻みに動いている三上が少しずつ収まっていく役所広司さんがいいな。
 
お話を追うのでいつもいっぱいいっぱいやねんけど、この映画では目立つ小物がふたつあった。
ひとつは、主人公(役所広司)が電話しているシーンで公衆電話の上に置かれたデニム生地の小銭入れ。ステッチがかかっている。「手作りなんやろな」と思う。主人公はコツコツ物を作るのが好きなん。いい家具職人とかになりはったやろな。
もうひとつは、主人公の兄貴分の携帯電話。スマホやなくてケータイであり代紋らしきものがある。この人は今も現役の親分子分の世界の人やねんな。主人公と違い背負っているもんもおおそうやもんな。
 
印象に残る場面は、橋。
空撮の離れていく東京湾のブリッジ、九州で三上と津乃田が会う橋、三上が育った施設へと辿る橋、そしてと自転車に乗った三上が通勤に渡っている橋。色んなあっちの世界とこっちの世界をつないでるみたい。
もうひとつ記憶に残るのは上の方のシーン。空。月が照る夜空、三上が見上げる星、東京タワー、スカイツリー。最後は三上自身が見る俯瞰なの。
 
「すばらしき世界」って題名も気になる。どういう意味なんかな。
「馬鹿ブス貧乏で生きるしかないあなたに愛をこめて書いたので読んでください。」で著者は、「落ち込んだとき、身の回りを見渡す。TVもスマホもあらゆる物は自分が作ったものじゃない。(自分はなにも作ることができないのにもかかわらず)快適に幸せに生きていける。」
そうやねんな。平々凡々な自分でも恩恵を受けるすばらしい世界のはず、なんやけどな。「すばらしい」には「ひどい。とんでもない」の意味もあるらしい。
主人公はまっすぐやねんけど瞬間湯沸かし器。「すばらしき世界」での妥協のさじ加減がわからない。
 
そんなこんなでも仕事を始める主人公を見てて思う。新しい環境になじむってたいへんやね。誰でも怖気づく。
振り返ってみれば、勤めはじめてから職場も仕事も変わっていない。もともと乏しかった「新しい環境でみんなに溶け込む」スキルも忘却の彼方。
コロナ禍であろうがなかろうが、これまでもこれからも家でぬくぬくしてると思う。
もしこれから「新参者」になるとしたら、老いさらばえて生き残こった時に老人施設に入る時なんちゃうやろか。
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ミナリ MINARI
2020年 116分 米国 
監督・脚本 リー・アイザック・チョン
編集 ハリー・ユーン
キャスト スティーヴン・ユァン(パパ・ジェイコブ)/ハン・イェリ(ママ・モニカ)/アラン・キム(息子・デビッド)/ノエル・ケイト・チョー( 娘・アン)/ユン・ヨジョン(おばあちゃん・スンジャ)/ウィル・パットン(ポール)
メモ 2021.4.3(土)TOHOシネマズなんば
あらすじ
レーガン大統領の時代(1981-1989)韓国からアメリカに移住した一家はアーカンソー州ののっぱらに移植する(こんなところにまで水道が引いてあった)。韓国では生きづらかった父・ジェイコブは「ひよこの尻を見ているだけの人生」やなく土地を開墾して野菜を育てるのだと意気揚々だが、母・モニカは心配でたまらない。幼い息子が心臓に病をかかえているのに病院まで1時間もかかる地で暮らせと? しかもいわくつきの土地らしい。
韓国系アメリカ人の監督さんが自らの体験を元にした作品だそうです。
感想
どちらも「フロンティア(開拓者)精神」やけど、「ノマドランド」とは対照的に本作品は土着の話。
多くを語らずとも、この家族の事情が推測できる脚本が巧みと感じる。音楽も控えめで感動させようとはしない。
 
韓国から孫の面倒をみにやって来た母方のおばあちゃん(ハルモニ)は、この家族のルーツ。
おばあちゃん(ハルモニ)は朝鮮戦争で夫を亡くし、戦後ひとりで娘を育てたらしい。ミナリ(セリ)を植えるために種を持ってきたことや、花札が得意なところプロレス好きから、色んなことをして生き抜いてきはってんやろなというのがうかがえる。
おばあちゃんは、孫を連れてミナリ(セリ)を川のほとりに植える。
(外国から種を持ち込んでええの? 税関は?って思うねんけど、トウガラシやら煮干しやら薬草やらをたんと持ってきているところで、このおばあちゃんは食品に紛れ込ませて税関も通り抜けたんやろなと想像する。従姉が留学している次男のために和菓子を持ってオーストラリアへ行ったところ、税関でとがめられいくら「日本のお菓子(Japanese Sweets)」と言っても精巧過ぎて通らなかったらしい)
 
ハイカラな料理ができないおばあちゃん(ハルモニ)に、薬草茶を飲まされる孫はこんなのおばあちゃんじゃないと断固拒否する しかし、この一風変わったハルモニはただものではなかった。何しろ動じないし淋しがらない。神も信じていない。神様ノーサンキューなのだ。
このハルモニはアカデミー助演女優賞を受賞しはるんちゃうやろか。
 
映画を見ながら、このおばあちゃん役の女優さん最近みたなーと思って(こうなったら止まらない)頭の中をかき回していたら、思い出した。