レーガン大統領の時代(1981-1989)韓国からアメリカに移住した一家はアーカンソー州ののっぱらに移植する(こんなところにまで水道が引いてあった)。韓国では生きづらかった父・ジェイコブは「ひよこの尻を見ているだけの人生」やなく土地を開墾して野菜を育てるのだと意気揚々だが、母・モニカは心配でたまらない。幼い息子が心臓に病をかかえているのに病院まで1時間もかかる地で暮らせと? しかもいわくつきの土地らしい。
韓国系アメリカ人の監督さんが自らの体験を元にした作品だそうです。
感想
どちらも「フロンティア(開拓者)精神」やけど、
「ノマドランド」とは対照的に本作品は土着の話。
多くを語らずとも、この家族の事情が推測できる脚本が巧みと感じる。音楽も控えめで感動させようとはしない。
韓国から孫の面倒をみにやって来た母方のおばあちゃん(ハルモニ)は、この家族のルーツ。
おばあちゃん(ハルモニ)は朝鮮戦争で夫を亡くし、戦後ひとりで娘を育てたらしい。ミナリ(セリ)を植えるために種を持ってきたことや、花札が得意なところプロレス好きから、色んなことをして生き抜いてきはってんやろなというのがうかがえる。
おばあちゃんは、孫を連れてミナリ(セリ)を川のほとりに植える。
(外国から種を持ち込んでええの? 税関は?って思うねんけど、トウガラシやら煮干しやら薬草やらをたんと持ってきているところで、このおばあちゃんは食品に紛れ込ませて税関も通り抜けたんやろなと想像する。従姉が留学している次男のために和菓子を持ってオーストラリアへ行ったところ、税関でとがめられいくら「日本のお菓子(Japanese Sweets)」と言っても精巧過ぎて通らなかったらしい)
ハイカラな料理ができないおばあちゃん(ハルモニ)に、薬草茶を飲まされる孫はこんなのおばあちゃんじゃないと断固拒否する しかし、この一風変わったハルモニはただものではなかった。何しろ動じないし淋しがらない。神も信じていない。神様ノーサンキューなのだ。
このハルモニはアカデミー助演女優賞を受賞しはるんちゃうやろか。
映画を見ながら、このおばあちゃん役の女優さん最近みたなーと思って(こうなったら止まらない)頭の中をかき回していたら、思い出した。
「チャンシルさんには福が多いね」の大家さん、「それだけが、僕の世界」のイ・ビョンホンのお母さんやった。
WOWOWで放映されていた「第93回アカデミー賞ノミネーション徹底紹介」で映画評論家の町山智浩さんは、この飄々とした演技のユン・ヨジョンという女優さんはいわば「韓国の樹木希林さん」とのこと。
もうひとつ町山智浩さんが言われるには、お父さんの名前ジェイコブはヤコブ、息子の名前デビットはイスラエルの王ダビデであり、旧約聖書のお話をアメリカに持ってきているそうです。監督さんの名前アイザックはイサクですね。