夫が売れても美容師をやめようとせず、自分を持っていた夏子。ふたりは子を持たず共通の関心ごともなく、別れることもなくなぜ一緒にいるのか考えることもやめ、そして突如襲った
幸夫は陽一の息子真平が塾に行っている間、陽一の家で4歳の灯(あかり)と一緒に留守番を始める。兄と妹と交流するうちに父性というか大きいお兄ちゃんのような気がしているのをマネージャーに見透かされ、心の中でせせら笑われている。決して相手にさとらせない心の内をめくり、
いじわるな展開と思う。そやねんけど、この体育会系のマネージャーが「よくできた妻」の夏子を苦手としていたり、灯が変わった目の練習をしたと白状したりと全体にユーモアもあって幸夫のじたばたぶりもおかしい。4歳の灯も含めてどの人も、上手に自分の事を語る事のできる人たちやねんなと思う。
小さい頃や若い頃は自分のことだけで生きているけど、年をへるごとに好きなことだけしていられず背負う荷物は重たくなり、荷物が無くなっても何かが残ったままで、その何かと折り合いをつけていかなくちゃ生きていけない。読んでいるさなかは、向田邦子さんの再来かもと思ったりもした。でもあまり暖かくない。突き放したクールさがある。